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第3章 ここから始まる転換点?
二十九日目④ 告げられた真実とこれからの二人
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「そうだ、それとは別……ってわけじゃないけど、一つ懸念があるんですが。」
「どうしたのカイト君。」
俺はキャサリンさんに、前にダンジョンの受付の魔人族から聞いた話をした。
ダンジョンは魔人族の橋頭保で、どのダンジョンも魔人国に塚がっている。
ダンジョン内部はいくらでも変遷ができて、人間を脅威にすら思っていない。
「そう、それを教えてもらったのね。」
「驚かないんですね。」
俺は何となくそうじゃないかと思っていた。
キャサリンさんがあまりダンジョンについて慌てた様子を見せないからだ。
「そうね。その辺りは先代国王陛下から聞き及んでいますから。今回の件はこちら側の協定違反で魔人族が行動に移したに過ぎないわ。」
「ということは、スタンピートの可能性は?」
「このままいくと高いわね。発生したら、おそらく半数以上の国民がその命を終えることになるわ。」
えらく重い話になってきたな、まったく。
それにしても半数以上か……頭の痛い話だな。
本当に逃げ出していいですか?
「最後に、新しくできた【ゴブリンダンジョン】はどうなっているんですか?確か騎士団で管理していると聞いていますが。」
「あそこは確か……第2騎士団が管轄しているはずよ。訓練がてら間引きもしているはずだから、問題ないと思うわ。あ、違うわね。今回は変遷後のスタンピートになるから、間引きも意味がなかったわね。」
キャサリンさんはそう言うと、城の方に視線を向けた。
その視線には侮蔑が存分に含まれているのが手に取るように伝わってくる。
むしろその殺気って間違いなく高ランク冒険者が身に付ける眼力に気がするんですが気のせいですか?
何て冗談はさておいて、本当に俺たち何もできそうもないな。
「それにしても急な出兵だったな。ギルドマスター達はどうしてそんな中で俺たちを組ませたんだ?」
「たしかにね~。私たちがパーティー組んだ翌日にこんなこと起こるなんて、あまりにも出来すぎ感が有るよね?」
俺もそれは考えた。
偶然……にしては出来過ぎだ。
俺の護衛を増やすため。そんな感じがしてならない。
そもそも人数を増やすことになった理由ってエルダの指摘からだよな?
俺はそっとエルダを横目で見ると、少し動揺が見られた。
どうして動揺しているんだ?
「エルダちゃん。もういいわよ。そろそろ話してもいい頃でしょうね。今後の事も考えると、頃合いだわ。」
キャサリンさんはエルダを慰めるように声をかけていた。
エルダはうつむいたまま顔を上げることはなかった。
そしてキャサリンさんはそんなエルダを気遣いつつも俺の方を振り向くと、急に頭を下げた。
「ごめんなさい、カイト君。彼女『エルダ・クリスティ』は当ギルドがあなたにつけが護衛兼パーティーメンバーであることはわかっているわよね?」
「そうですね。ギルマスからもそのように聞いています。」
「そのほかにもう一つ任務を与えていたの。『ギルド調査員』。それが彼女の任務よ。問題のある冒険者を監視・報告する任務。理由は……言わなくてもわかるわよね?」
「えぇ、俺が転移者だから。もしくは『勇者』への道標。」
だと思った。
でなきゃこんな美人な娘が、いきなり俺と同棲なんかするはずがないんだから。
最初からずっと仕組まれていたんだろうな。
「ごめんなさいカイト。あなたをだまし続けていたことを後悔しているの。カイトから家族になろうって言われて本当にうれしかった。好きとか愛しているとかよりもずっとずっとうれしかった。」
泣きじゃくるエルダの独白に、俺はなんと答えていいかわからなかった。
今までの事が頭をよぎって……
そして、それが偽りなんじゃないかって思えて……
でも信じたい気持ちもあって……
「キャサリンさん!!エルダになんて事させるのよ!!エルダは純粋なの!!乙女なの!!こんな裏仕事できるような人間じゃないの!!そういうのは、私みたいな人間がやるべきことですからね!!」
デイジーは急に大きな声で怒り始めた。
その手は泣きじゃくるエルダを抱きしめていた。
守る様に強く強く抱きしめていた。
ちょっとだけうらやましくも思えてしまった。
俺にはそんな人いなかったから……
「カイト君。改めてごめんなさい。あなたは警戒するに値する人物だったのよ。最初に職業診断したでしょ?あの時にステータスも魔導士団の方で確認を行っていたの。そしたら初期ステータスのはずが全く違ったわ。中堅冒険者としてもやっていけるほどのステータスだったの。まぁ、脳筋だったけど。」
うん、褒められてるのかディスられているのかわからなくなってきたぞ。
「わかりました。スパイ行為については、気にしても仕方がないですね。それをするのがギルドの仕事だったのなら、俺からは何も言えませんから。」
この話はこれで終わりにしたい。
「それに、今のエルダを信じようと思います。俺はエルダの家族になるって約束しましたから。だから家族としてエルダを信じます。」
「カイ……ト……ごめんなさい……わたし……わたし……」
泣きながらつぶやいたエルダの声が本当に愛おしく感じてしまった。
俺は絶対にエルダを護れる男になろうと心からそう思った。
ふと、エルダの隣にいるデイジーを見るとニヤニヤしていたので、あとでお仕置きをすることを心に誓ったのだった。
「どうしたのカイト君。」
俺はキャサリンさんに、前にダンジョンの受付の魔人族から聞いた話をした。
ダンジョンは魔人族の橋頭保で、どのダンジョンも魔人国に塚がっている。
ダンジョン内部はいくらでも変遷ができて、人間を脅威にすら思っていない。
「そう、それを教えてもらったのね。」
「驚かないんですね。」
俺は何となくそうじゃないかと思っていた。
キャサリンさんがあまりダンジョンについて慌てた様子を見せないからだ。
「そうね。その辺りは先代国王陛下から聞き及んでいますから。今回の件はこちら側の協定違反で魔人族が行動に移したに過ぎないわ。」
「ということは、スタンピートの可能性は?」
「このままいくと高いわね。発生したら、おそらく半数以上の国民がその命を終えることになるわ。」
えらく重い話になってきたな、まったく。
それにしても半数以上か……頭の痛い話だな。
本当に逃げ出していいですか?
「最後に、新しくできた【ゴブリンダンジョン】はどうなっているんですか?確か騎士団で管理していると聞いていますが。」
「あそこは確か……第2騎士団が管轄しているはずよ。訓練がてら間引きもしているはずだから、問題ないと思うわ。あ、違うわね。今回は変遷後のスタンピートになるから、間引きも意味がなかったわね。」
キャサリンさんはそう言うと、城の方に視線を向けた。
その視線には侮蔑が存分に含まれているのが手に取るように伝わってくる。
むしろその殺気って間違いなく高ランク冒険者が身に付ける眼力に気がするんですが気のせいですか?
何て冗談はさておいて、本当に俺たち何もできそうもないな。
「それにしても急な出兵だったな。ギルドマスター達はどうしてそんな中で俺たちを組ませたんだ?」
「たしかにね~。私たちがパーティー組んだ翌日にこんなこと起こるなんて、あまりにも出来すぎ感が有るよね?」
俺もそれは考えた。
偶然……にしては出来過ぎだ。
俺の護衛を増やすため。そんな感じがしてならない。
そもそも人数を増やすことになった理由ってエルダの指摘からだよな?
俺はそっとエルダを横目で見ると、少し動揺が見られた。
どうして動揺しているんだ?
「エルダちゃん。もういいわよ。そろそろ話してもいい頃でしょうね。今後の事も考えると、頃合いだわ。」
キャサリンさんはエルダを慰めるように声をかけていた。
エルダはうつむいたまま顔を上げることはなかった。
そしてキャサリンさんはそんなエルダを気遣いつつも俺の方を振り向くと、急に頭を下げた。
「ごめんなさい、カイト君。彼女『エルダ・クリスティ』は当ギルドがあなたにつけが護衛兼パーティーメンバーであることはわかっているわよね?」
「そうですね。ギルマスからもそのように聞いています。」
「そのほかにもう一つ任務を与えていたの。『ギルド調査員』。それが彼女の任務よ。問題のある冒険者を監視・報告する任務。理由は……言わなくてもわかるわよね?」
「えぇ、俺が転移者だから。もしくは『勇者』への道標。」
だと思った。
でなきゃこんな美人な娘が、いきなり俺と同棲なんかするはずがないんだから。
最初からずっと仕組まれていたんだろうな。
「ごめんなさいカイト。あなたをだまし続けていたことを後悔しているの。カイトから家族になろうって言われて本当にうれしかった。好きとか愛しているとかよりもずっとずっとうれしかった。」
泣きじゃくるエルダの独白に、俺はなんと答えていいかわからなかった。
今までの事が頭をよぎって……
そして、それが偽りなんじゃないかって思えて……
でも信じたい気持ちもあって……
「キャサリンさん!!エルダになんて事させるのよ!!エルダは純粋なの!!乙女なの!!こんな裏仕事できるような人間じゃないの!!そういうのは、私みたいな人間がやるべきことですからね!!」
デイジーは急に大きな声で怒り始めた。
その手は泣きじゃくるエルダを抱きしめていた。
守る様に強く強く抱きしめていた。
ちょっとだけうらやましくも思えてしまった。
俺にはそんな人いなかったから……
「カイト君。改めてごめんなさい。あなたは警戒するに値する人物だったのよ。最初に職業診断したでしょ?あの時にステータスも魔導士団の方で確認を行っていたの。そしたら初期ステータスのはずが全く違ったわ。中堅冒険者としてもやっていけるほどのステータスだったの。まぁ、脳筋だったけど。」
うん、褒められてるのかディスられているのかわからなくなってきたぞ。
「わかりました。スパイ行為については、気にしても仕方がないですね。それをするのがギルドの仕事だったのなら、俺からは何も言えませんから。」
この話はこれで終わりにしたい。
「それに、今のエルダを信じようと思います。俺はエルダの家族になるって約束しましたから。だから家族としてエルダを信じます。」
「カイ……ト……ごめんなさい……わたし……わたし……」
泣きながらつぶやいたエルダの声が本当に愛おしく感じてしまった。
俺は絶対にエルダを護れる男になろうと心からそう思った。
ふと、エルダの隣にいるデイジーを見るとニヤニヤしていたので、あとでお仕置きをすることを心に誓ったのだった。
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