勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十八日目③ ダンジョンの変遷

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「ようこそ鉱山跡地ダンジョンへ。2人でいいのか?」

 リヒターさんとの会話を終えた俺たちは、改めてダンジョンの受付を行っていた。
 いつもの魔族のではなかったけど、感じのいい雰囲気の係員だった。
 なんでまた国王は戦争なんて仕掛ける気になったもんだろうね全く……
 
「はい、2名です。」
「じゃあ、これを読んで納得したらサインしてくれるか?」

 俺たちに渡されたのは注意事項の書かれた紙だった。
 それも1枚だけじゃなくて、意外と事細かく注意事項が書かれていた。
 
「え?前はこんなの無かったですよね?」
「まぁ、読めばわかるさ。」

 渡された書類に目を通すと、その理由に納得できた。

①準戦時中の為、内部変遷が発生した際の一切の責任を追及しない。
②内部で死亡した場合、一切の責任を追及しない。
③内部変遷が理由で迷子になった際の一切の責任を追及しない。
④上記の内容を理解し、内部へ侵入する。
 ※復活の腕輪は機能しており、最悪緊急脱出は可能である。

 要約するとこんな感じだろうか……
 これは致し方ないのかもしれない。
 開戦前の両国なんだから、俺たちが中に入るのは自己責任って奴だろうな。
 
 そして、さっきすれ違った冒険者たちが荒れるのも無理はない。
 下手したら、戦闘以外での死亡の可能性があるのだから。
 おそらく、冒険者保険も出ない可能性が高いのだから。

「エルダ、サインでいいよね?」
「えぇ、私も復活の腕輪を持っているから問題ないわ。」

 俺たちはそろって書類にサインをした。
 出来上がった書類を提出すると、書類不備のチェックを受けて、晴れて侵入の許可が出た。

「悪いね。当分の間は各ダンジョンでこれを毎回書かないといけないから、面倒をかける。」
「いえ、問題ないですよ。それより、戦争回避されることを祈りますよ。」
「確かにそれだな。」

 受付の魔人族は豪快に笑っていた。
 本当に、なんでこんないい人たち相手に戦争なんか仕掛けようとするのかね。
 馬鹿なの?

「本当に要らないことしかしない国王だわ。これだから先王陛下と比べられるのよ。」
「お?ねぇちゃんも先王陛下のファンか?俺たち魔人族の間でも人気があった王様だからな。本当に惜しい人を亡くしたよ。」

 エルダの愚痴を聞いた、受付はしみじみと語っていた。
 つか、他国にも信頼される王様ってどんだけだよ。
 そして、現王はどれだけ信用無いんだよ。
 もうさ、降りてもらった方がいいんじゃないかとすら思えて来たよ。
 むしろ、負けて魔人国なったほうが幸せなんじゃないか?
 あ、さすがにそれは言いすぎか。
 まあ、俺がどうこうできる話じゃないから、良いんだけどさ。

「じゃあ、そろそろ行こうか。」
「そうね。それじゃあ、行ってきます。」
「おう、気をつけてな。無理ならすぐに脱出するんだぞ!!」

 受付の男性に見送られて、俺たちはダンジョンへ侵入した。
 そしてこの後速攻で後悔することになる。



 第1層に入った瞬間に、無理するなって言われた意味が分かった。
 モンスターの数が異常に多い気がする。

「カイト、すぐに職業を斥候に切り替えて。おそらく、モンスターが異常発生しているわ。普通に進めると確実に下から喰われるわよ。」
「まじかよ!?」

 俺は慌てて、職業を変更した。

『職業:なんでも屋の起動を確認しました。職業:斥候(なんでも屋)へ一時変更します。』

スキル【気配探知】【集音】!!

 スキルを起動すると、エルダが焦った意味が分かった。
 先程何となく感じていた気配がくっきりとわかる。
 確かに異常発生している。
 しかも、この気配はロックワームだ。
 これが、第1層なのか!?

「エルダ、さすがにやばくないか?」

 俺はつい慌てて声を出してしまった。
 それも無理からぬことで、俺たちが入ってきた入り口はまだセーフゾーンらしく、【ロックワーム】は居なかったけど、ある線を境に大量発生しているのが感じ取れたからだ。
 
「そうね。まずは第1層で様子を見ましょう。だめなら即離脱で。」
「OK。それにしても本当に要らないことしてくれたなあの王様。」
「今更愚痴っても仕方がないわよ。行きましょう。」

 エルダとともにセーフティーゾーンから一歩踏み出すと、そこはモンスター天国だった。
 どこを見てもひたすらモンスターしかいない。
 常に【気配探知】を発動させていないと、どこで襲われるか分かったもんじゃない。
 SPだって有限だ。
 【気配探知】が毎分1消費するのに対して、回復も1。
 つまりSPの自然回復が見込めないってことだ。
 幸いといっていいのか、MPの常時消費は無いので、水魔法は使っていけそうだ。

「よし、魔法で先制攻撃を仕掛けてどんどんつぶしていこう。」
「まってちょうだい。それだと意味がないわ。ここに何しに来たの?」
「何しにって、装備の性能テスト……ってまさかエルダさんや……わざと食らうようにとか言わないよね?」
「え?ちがうの?」

 はい、スパルタ入りま~~~~す!!
 マジ泣きそうなんですけど?!
 だって、あのミミズの体当たり食らうんだよ?
 さすがに生理的に無理だって!!

「だいじょうぶよ。その装備なら、おそらくダメージは無いはずよ?たぶん。」

 精神的ダメージは考慮していただけない模様。

「ならさ、1匹残して狩ってからテストって言うのでどう?」
「それならリスクも少ないし、いいんじゃないかしら。」

 エルダさんの許可も出たので、改めて魔法を使っての殲滅戦を開始したのであった。
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