勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十八日目① 『ガンテツ武具店』にて

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 あれからエルダは無言のまま自宅へ戻ったのだった。
 しかも俺は完全放置のおまけ付きだ。

 朝からテンションが上がらないのは仕方がないよな……
 俺は重い足取りでエルダが起きているであろうリビングに降りていく。
 そこにはすでに朝食の準備を終え、自分の席に座っているエルダの姿があった。
 まだ食べないで待っていてくれたみたいだ。

「おはようエルダ。」
「えぇ。」

 まだ怒ってるの?!
 というか、何に怒ってるの?!

「エルダさん?昨日から何に怒ってらっしゃるのですか?」
「別に。」

 恐る恐る聞いてみたものの、エルダからつれない返事しか返ってこなかった。

 うん、もうお手上げです。

 俺が両手を上げて降参ポーズをしたのを見て、エルダが突然噴き出していた。
 その雰囲気は別段怒っている様子ではなかった。
 やはり冗談だったんだろうか。
 俺にはさっぱりわからなかった。

「ごめんなさい。カイトの困った顔が面白くてつい。でも、すぐにごめんなさいってするつもりだったんだけど、なんだか言い出せなくなっちゃって。」
「そっか。ならよかった。頼むから冗談でやるのはやめてくれないか?心臓に悪すぎる。」
「ごめんなさい。」

 エルダは俺からの注意を素直に受け止めて、頭を下げていた。
 これ以上怒っても仕方がないので、エルダと一緒に朝食を摂り始めた。

「そうだカイト。今日はガンテツさんの処に装備を取りに行った後、ダンジョンに向かうので良いの?」
「そうだね。その流れで行く感じだね。」
「じゃあ、朝ごはんの後にすぐに向かいましょう。昨日の予定がつぶれちゃったから、時間がもったいないわ。」

 確かになんやかんやで予定が変わってるし、急ぐことに越したことはないかな?
 俺たちは朝食を摂ると、『ガンテツ武具店』に向かうことにした。


 
 『ガンテツ武具店』は朝から賑わっていた。
 これから依頼に向かう為に最後の調整をしに冒険者たちが集まっていたらしい。
 ガンテツさんの店にはメインウェポンの他にもサブウェポン的な投げナイフなども数多く取り揃っていた。
 使い捨ての場合が多いためか質もそれほど高くなく、数をそろえることに重点を置いた品ぞろえになっていた。
 だけどここにあるのはガンテツさんが作った武器たち、質がそれなりだと言ってもそのそれなりのレベルがかなり高い印象を受けた。

「あれ?エルダじゃない?夫婦でこれから出勤?」

 俺とエルダが客が引くのを待っていると、女性冒険者から声をかけられた。
 どっかで見た女性だと思ったら、前に冒険者ギルドで会ったエルダの知り合いだった。

「イライザ!!夫婦じゃないわよ!!家族よ!!」
「え?冗談のつもりだったんだけど、結婚したの!?」

 ちょッ!!エルダさん言葉選ぼうよ!!

「え?エルダさんが結婚⁉どこのどいつだ!!エルダさんを誑かしたのは⁉」
「え、え、エルダ様……。その男……許すまじ……。」

 えぇ~⁈
 なんか呪詛みたいなのも聞こえるんですけど?!
 これどうやって収拾付けるんだよ?!

 エルダがいろんな冒険者に説明を求められて、もみくちゃになっていた。
 さすがに助けないといけないかと思ってたら、さらに爆弾が投下された。

「助けてカイト!!カイトお兄ちゃん!!」

 エルダさ~~~~~~ん!!
 絶対ワザとでしょ⁉

キラーン!!

 なんか冒険者全員の視線が刃物になって切り付けてきているみたいに刺さるんですけど……

 この状況にどうしたものかと頭を悩ませていると、店の奥から助け船がやって来た。
 どっしりとした物腰とそのぶっとい腕は、その辺の冒険者なんて一発KOなんじゃないかって思えるほどだ。

「おうおう、てめぇら。人の店先で何騒いでんだ。喧嘩なら余所でやって来いよ。」
「あ、ガンテツさんおはようございます。」

 不機嫌全開で姿を現したのはこの店の店主であるガンテツさんだった。
 手にしたどでかい金槌がいかにもって空気を醸し出していた。
 
「おう、カイトか。頼まれた物出来てるぞ。ほらお前たちこれ以上騒ぐんだったら装備を見てやらんぞ?」

 ガンテツさんの一言でみんな一斉に騒ぐのをやめた。
 うん、ガンテツさんすげ~
 でも、一部の冒険者の視線は依然として凶器となって俺に刺さってくる。
 目力強すぎだからね?

「ありがとう、ガンテツさん。じゃあ、試着してもいいの?」
「あぁ、奥に準備してある。着てみてくれ。最終調整もするからよ。」

 俺は案内された通り、店の奥にあった装備品を装着してみた。

 装着してみて俺は思った。
 一流の職人って本当にすげ~
 語彙力が下がるくらいに凄いって思えた。
 自分で作った時よりもはるかに動きやすかったからだ。
 たった一日でこれだけ変わるのだから、ガンテツさんが切れた理由が良く分かった。
 俺が自分で作った装備では命を懸けるに値しない。
 きっと、ガンテツさんみたいな職人が作った装備だから命を懸けられるんだって。

「カイト、装備の調子はどう?」

 仲間の冒険者から解放されたエルダが、小走りでこちらにやってきた。
 見た目が若干着崩れていて、さらに汗ばんでいるもんだから一瞬ドキッとしてしまった。
 うん、エルダにばれてないよな?

「あぁ、こんなに変わるとは思っていなかったよ。ありがとうガンテツさん。」
「おうよ。それが職人作業ってもんよ。わかったか?」
「えぇ、十分すぎるほどに。」
「それがわかれば十分だ。定期的にもってこい。メンテしてやるからよ。」

 本当に漢だよあんたは……



 ガンテツさんの店を後にした俺たちは、その足で鉱山跡地ダンジョンへ向かった。
 さすがに面倒事は起きないよ……ね?
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