勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十七日目⑥ おっちゃんとの取引

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「よし、わかった!!カイト、こいつを1日預けろ。俺が調整してやる。少しはましになるはずだからよ。」
「いいのかおっちゃん。」

 俺が造った岩蠕虫シリーズを見つめていたおっちゃんが、膝を叩きながら調整をかって出てくれた。
 これは願ったり叶ったりだ。

「とりあえず、うまく調整すればそこそこの性能までは引き出せるはずだ。それと、これは交換条件だが……」

 おっちゃんがズイッと俺に顔を寄せてくる。
 うん、ワイルド髭おじさんの顔のドアップはうれしくないな……

「今後作った装備は俺に見せに来い。調整くらいはしてやる。」
「でも、おっちゃんにメリットがないじゃないか?」
「カイトはこれからいろいろな素材で武具を作るんだろ?だったら俺の刺激にもならぁさね。どうだ?」

 どうだって言われてもねぇ。
 こっちにデメリットが無い以上、問題も無い訳で。

「おっちゃんがそれで良いなら、頼んでも良いか?」
「おう、任せとけ。漢ガンテツ、二言はねぇよ。」

 何この人、かっこいいんですけど。

「エルダさん、どこいってたのかな?」
「え?サブウェポンを選んでたんだけど?」

 そう言うとエルダは選び出した短剣を見せてくれた。
 その短剣は華美な装飾もなく、一見地味にさえ見える。
 ただ、ふと感じる雰囲気になんだか怖さも感じてならない。

「お、なかなかいいの見つけて来たじゃねぇか。さすが、エルダ嬢ってところだな。」
 
 おっちゃんに褒められたのがうれしかったのか、エルダはにこにこ顔だった。
 おっちゃんもエルダの目利きに感心した様子を見せていた。
 さすがエルダってところかな?
 
「これいくらで売ってくれる?」
「そいつは金貨50枚だ。」
「そ、なら問題ないわね。」

 え?俺なんか置いてけぼりなんですけど?
 二人で話進めないでくださいな。
 支払いって誰がするの?
 まさか……

「ごめんなさい、カイト。すっかり忘れてた。この短剣はマジックウェポン『幻惑の短剣』。効果は『幻影の刃』を作り出して、投擲する。ってところかしら。ちなみに、『幻影の刃』にはダメージは無いわ。ただし、精神的ダメージを受けるから、受けた本人は斬られた。または刺された感覚が残るの。」

 一気に情報過多なんですが……
 とりあえず、魔法の短剣で相手の隙を作るって感じかな?

「エルダ支払いは?」
「私一応Cランクよ?蓄えくらいはあるに決まってるじゃない。」

 ちらりとおっちゃんを見ると、お前が支払えって顔をしていた。
 きっとここは漢を見せる場面なんだろうな。
 つか、プレゼントが短剣ってどうなんだよって突っ込みをしたくなるのを必死で抑えた。

「おっちゃん、支払いって冒険者ギルドの預金引き落としってできるのか?」
「おう、冒険者ランクD以上なら可能だ。カイト、お前さんはランクいくつだ?」
「一応Dランクだよ。」
「なら問題ないな。じゃあここに金額とサインを書いてもらえるか。これで俺がお前の預金から代金を引き出せる権利がもらえるからな。」

 なんと素晴らしい。
 クレジットカード的な考え方なんだろうな。
 きっとこれも前に召喚された異世界人がもたらした、知識チートの一つかもしれない。
 俺はおっちゃんからもらった紙に金額とサインを書いた。
 すると、もらった紙が薄っすら光って書いた文字が消えなくなった。

「おっちゃん今一瞬光ったけど、今のなに?」
「あぁ。カイトは初めてか。こいつは魔道具で【契約紙】と【契約インク】ってのだ。こいつで書かれたことが不履行になった時に、対応したギルドにその連絡がいくって代物だ。つまり、お前さんが不履行になろうが、今度はギルドが立て替えてくれるから問題ないって話だ。そしてお前さんはギルドから制裁を食らうってわけだな。」

 よし、絶対に不足しないようにしないとな。

「あのぉ~二人とも。私の意見は聞かないの?」

 そっと会話に入ってきたエルダは、ものすごく困惑していた。
 素直に受け取るべきか否か判断に困っているようだった。

「気にしなくてもいいよ。エルダに必要なものを買うのに遠慮はいらないからね?それだのことをエルダはやってくれているんだから……ね?」
「そう?ありがとう、じゃあ素直に受け取っておくわね。」

 喜んでもらえて何よりだ。
 今度はプレゼントらしいプレゼントを贈りたいものだね。

 さて、そろそろ店の中も騒がしくなってきた。
 依頼から帰ってきた冒険者たちがおっちゃんに修復の依頼に来ているのだ。

「じゃあ、また明日来るよ。装備よろしく頼むな。」
「おう、任された。」

 俺たちはそう挨拶を交わすと、そそくさと店の外に出た。
 辺りは少し暗くなりはじめ、街の街灯が辺りを照らし出していた。

「夜はどうしようっか?」

 店の前でエルダに尋ねると、少し困った顔をしていた。

「今日は……どうしよ?もういっそ買って帰ろっか?」
「う~ん、そうだ!!『森のアナグマ亭』にでも行かないか?久しぶりにダニエルさんの料理食べたくない?」

 エルダは『森のアナグマ亭』の名前を聞いた瞬間、フリーズしてしまった。
 俺、何かまずいこと言ったかな?

「どう?」
「いく……」

 短い会話だったけど、行くことは決定したのだった。
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