勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十七日目④ 伝わった思い

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「俺はエルダが好きだ。」
「え?」

 ついに言ってしまった。
 でも、もういいよな。
 きちんと伝えないと。

「この気持ちが女性として好きなのか、家族として好きなのか、パーティーメンバー・友として好きなのか。正直まだ良く分からない。でも昨日の件ではっきりと分かった。俺はエルダを失いたくないと心から思った。それだけは本当の気持ちなんだ。」

 俺の告白を聞いたエルダに戸惑いの色が見えた。
 おそらくエルダは俺を”異性”として好きではないと思う。
 どこか一線を引いているのか、それとも演技なのか……
 それはわからない。
 でも、本当の気持ちで話をしてくれていないのではないかと思っている。

「カイト……。私は……。私はどうしたらいいの?わかんないよ。」

 エルダの目にはまた涙が溜まっていく。
 悲しませないって決めてたのにな……

「ここにいるのだって、冒険者ギルドからの依頼だったから。でなきゃ、会って間もない男性と同棲なんてありえないもの。」

 確かにその通りだよな。
 正直、まともに会って2日か3日目に同棲が決まるってありえないものな。
 むしろ、良くのこの指名依頼を引き受けたもんだよ。
 あとでシャバズのおっちゃんをとっちめてやらないと。

「だからわからないの。これが男性として好きという気持ちなのか。でも、それとも違う気がするの。」

 そうか、嫌いではないんだね。
 それだけでも安心したよ。
 もし依頼だからって嫌々ここに居るなら、さすがにギルマスに文句言ってやろうかと思った。

「たぶん、私はお兄ちゃんが欲しかったんだと思う。家族が欲しかったんだと思う。カイトと居ると、家族を強く感じるの。」

 家族か……
 確かに俺もエルダと居ると、ホッとするんだよね。
 とくに、なんていうか年下に悪戯されているようなドキドキ感みたいなのもあるけど、でも一番は……
 うん、家族だ。
 それが一番ぴったりくる気がする。
 そう考えると、心にかかった靄が取れ、なんとなく腑に落ちた。

「そっか、家族か。確かにそうかもしれないね。エルダに言われて腑に落ちたよ。うん。家族だ。」
「家族……」

 エルダは家族という言葉を何度も反芻するように、呟いていた。
 それはその言葉自体を確かめているようにも見えた。
 
「なあ、エルダ。」
「なに、カイト?」

 エルダはそう言うと、涙で晴れた目できょとんとしていた。

 うん、可愛いって思っても不思議じゃないよな。
 庇護欲がこう、掻き立てられる見ないな。
 やっぱりエルダと一緒にいたいという思いが俺の中で大きくなっていく。 
 
「なあエルダ、俺は言葉をうまく選べない。だから単調直入に言うね。俺の……俺の家族になってくれないか?俺はあのくそったれな国王によってこの世界に呼ばれて、天涯孤独の身になってしまった。聞けば聞くほど元の世界に戻れることはないんだろうなと思う。まあ、元の世界でも親はもういないんだけど。だから……」

 俺は一つ一つ俺自身の思いを紡いでいく。
 おそらく伝わらないかもしれない。
 それでも伝えたいんだ。
 俺の思いを。
 
 そしてエルダの目にはもう先ほどまでの涙はなかった。
 代わりに顔が真っ赤に染まっていた。
 最後にはうつむいてしまった。
 失敗だったかな?
 だけどもう後には引けない!!

「もう一度言わせてくれ。俺の家族になってほしい!!」

 ……
 …………
 ………………

 あれ?反応がないんだけど……
 まずった?

 俺は深く下げた頭をゆっくりと上げると、困惑の表情を浮かべつつも照れ臭さそうにしているエルダの姿があった。

「ねえ、カイト。そのセリフってさ……。プロポーズよ?分かっていってるの?」

 ん?兄妹になるんじゃないの?
 家族じゃダメなの?

 あれ?
 年頃の男女が”家族”になろう……
 ”家族”になろう……
 ”家族”に……

「あ、いや。その、あの、えぇ~~~~と…………」
「ぷっ!!あはははははははは。」

 こらえきれなくなったエルダは盛大に笑い声をあげた。
 それはもう今までにないくらいエルダは笑っていた。
 あまりの笑いに立っていられなくなったのか、その場にしゃがみ込んでしまった。

「あ~笑った。もう、カイト焦りすぎ。わかってるわよ。兄妹になろうってことでしょ?本当に言葉のチョイスがおかしいわよ。」

 分かってるなら最初からそうしてくれよ……
 真面目に恥ずかしかったんだからさ。

「じゃあ、これからは『カイトお兄ちゃん』だね?」

 エルダがいたずらっ子のように見上げてくる。
 きっとこれが”本当のエルダ〟なんだと思う。
 そう、だよね?
 これも演技だったら、たぶん俺は人間不信になる自信しかないよ。

「さすがにそれはやめてくれ。こっぱずかしいから。カイトでいいよカイトで。」
「わかったわ、じゃあこれからもよろしく『カイトお兄ちゃん』!!」

 絶対ワザとやってるだろ!!

 そう言うとエルダは走る様にして作業場を後にした。
 ただ、その背中から喜びの感情が伝わってきたから良しとしよう。

 それにしても家族か……
 とうの昔に諦めていたものだったな。

 ありがとうエルダ。


 さてと、気持ちを切り替えて作業に移ろう。
 出来当たった防具を鑑定しないとな。

スキル【鑑定】!!
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