勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十七日目② メリットとデメリット

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「で?それだけじゃないでしょ?」

 キャサリンさんを見ると、少し驚いた表情をしていた。

「そうね、それだけじゃないわね。あなたの存在に各ギルドマスターが期待をしているってところかしらね。特にあなたが作った作業台。公爵様とギルマスで話し合って、各ギルドに内密に伝えたのよ。そうしたら度肝を抜かれていたそうだわ。だから、ギルドマスター達からの伝言よ。『さっさと強くなってレシピを増やせ!!』だそうよ。」

 うわぁ~、完全に期待過多でしょこれ……
 レシピ増えたって有用か否か分からないのに、ってあれだな、逆か。
 ただ俺の考えている懸念事項を差し引いてでも必要だってことかな?
 
「いや、あれをやるとかなり競合してしまうんじゃないですか?だからあまり広げないと思ってました。」
「そうね、でも市民は大歓迎よ。低い品質とはいえ、安く手に入るんですから。効果の高い高品質品との差別化を図るそうよ。薬師ギルドなんて、倉庫を押さえて低レベルの薬師を集めて量産するそうよ。彼らには報酬をきちんと支払って、安定的な生活を保障するとか。」

 いわゆる現代日本でいうところの近代工業化に近いのかもしれない。
 薬師ギルドは製薬工場を作って、安価量産するつもりだろうな。
 各ギルドは安価低品質と高価高品質の二極化を進めるつもりなんだろう……

 ってか、それって俺の負担がやばくないか?
 全部の作業台作らないといけないってことだろ?

 まさか……
 そのために強くなれってことかよ。
 強くなればSPが増える。
 つまり、大量に作ってもSP切れが発生しない……

 完全に馬車馬じゃないか……
 ここから逃げだしていいですか?

「その顔は馬車馬のように扱われるんじゃないかって心配をしてるわね?」
「そりゃそうですよ。俺しか作れないんですから。」
「そうですよキャサリンさん。さすがにそれでは王国と何も変わりがないじゃないですか?!」

 ここまであくまでも話の中心は俺だと思っていたようで、隣で静かにしていたエルダが一番怒りをあらわにした。
 まさかエルダが怒ってくれるとは思わなかったな。

「その辺はきちんとコントロールするわ。今まで通り、冒険者ギルドが窓口になるし、カイト君が作れる量を把握して、無理のないレベルで発注することになるわね。できれば3日に1日のペースで作成してくれる日を設けるとかいろいろ考えましょう。」

 うん、なんかこっちにきちんとメリットが有るように聞こえるな……
 デメリットは……
 あれ?俺が大変だって以外ないんじゃないか?

「それに報酬は……。収納箱(簡易)の時と同じように、製品ごとに報酬額を決めて支払うわ。どう?」
「喜んで!!」

 ちょっと、エルダさんや!!
 またしても俺じゃなくて、あなたが返答してどうすんですか?ちょっと食い気味だし……
 しかも、目が金貨だし……
 これはもう止まらないかな。
 エルダにはいつもお世話になってるし、なんだかんだで秘密を共有してくれる。
 だから、少しは恩返し出来るのかな……
 出来るよね?

 本当に、エルダのこれが無かったらザンネンじゃないんだけどな……
 もう気もそぞろといった様子でエルダはそわそわとしていた。
 こうこれ断れないやつだわ……

「はぁ~。わかりました。あとでこの話は詰めましょう。あと、材料はそちら持ちでいいんですよね?」
「それで構わないわ。おそらく数日中に薬師ギルドから注文が入るはずよ。」

 早くね?ってか俺今OK出したところなんだけど。
 これって俺がOK出さなかったらかなりまずいんじゃないかな?
 
「わかりました。でもこの話ってあくまで宣戦布告を遅らせられたらってことですよね?」
「そうね、そうなるわね。でも大丈夫。ギルマスたちが何とかしてくれるはずだから。」
「期待だけはしておきます。」

 キャサリンさんが席を立とうとし時、慌てて話を始めた。

「そうそう、公爵様からの伝言を忘れてたわ。『勇者らしき存在を確認。場所は2か所。エルフの国【エルフィンド】。教会が事実支配をしている【ゴーヨクォート正教国】。追報を待て。』だそうよ。」

 待ってキャサリンさん。
 俺としてはかなり大事な案件だったんですけど……
 そうか、西森は無事なのか……
 教会に確保されていないことを祈ろう。

「それと、教会は大々的に【勇者】を表に出すそうよ。そのための準備を進めているって。これがどこまで本当かはわからないけど。注意は必要ね。」

 それって教会に確保されてるってフラグじゃないの?!
 どうしてそんなに冷静なのだろうか。

「ちょっと待ってください。それって教会に確保されたってことじゃないですか?!」
「それがそうじゃないかもしれないのよ……。おそらく偽物の勇者じゃないかな?」

 もうなんだかお腹いっぱいです。
 つまり【勇者】を政治的意図で使っているってことか。
 でも、偽物だって決めつける決定的な証拠が出たとか?

「本物か偽物かについては公爵様が調べるそうよ。だからあなたたちは強くなることだけを考えていてね?」

 そう言うと改めて席を立ったキャサリンさんは、ギルドへと帰っていったのだった。

 本当もうお腹いっぱい過ぎて逃げ出したいです……
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