83 / 322
第2章 これから始まる共同生活
二十六日目② おっちゃんの執務室にてまたも密談
しおりを挟む
ギルド会館に着くと、キャサリンさんとは一旦お別れとなった。
キャサリンさんは、足早にギルド会館に入っていったんだけど……
その状況に驚いた。
なんと、誰ともぶつからなかったのだ。
ギルド会館は、探索の準備をする冒険者でごった返していた。
正直、ぶつからなかったためしはない。
なのにだ……。
ただのギルド職員のはずのキャサリンさんは、ぶつかるどころか相手に気付かれさえせずに、通り抜けていったのだ……
本当に、キャサリンさんは何者なんだ……
エルダを見ると、目をそらされてしまった。
きっとあれだ、知ってはいけない情報なんだ……
俺はそっと、その疑問に蓋をした。
気を取り直してギルド会館へはいると、案の定、人で溢れかえっていた。
掲示板の前では依頼書の争奪戦が繰り広げられていた。
「俺が先に手にした!!」
「いや!!俺たちが先だ!!」
「なにおぅ?」
「やるか!!」
「おう!!上等だ!!一緒に行くぞ!!」
「おう!!」
うん、仲良しさんだね……
そんなやり取りを横目に受付まで行くと、さらに驚いた。
キャサリンさんがすでに仕事を始めていた。
しかも同寮より処理速度が速い……
ほんと、何者ですかあなたは……
実は双子です的な落ちはないよね?
「さっきぶりです。キャサリンさんって実はすごい人なんですね?」
「そんなことはないわよ?それで、依頼受けるの?」
「いえ、その前にギルマスに用事がありまして、今会えますか?できれば至急案件です。」
「わかりました。ライル君!!ギルマスに「カイト案件」って至急伝えてきて一!!」
ライルと呼ばれた職員さんは手にしていた仕事をすぐに中断して、猛ダッシュで奥へと走っていった。
ちょっと待て。その『カイト案件』について詳しく教えてほしい。
場合によっては”脱毛剤”を本気で作れるように研究するぞ?
慌てて戻ってきた職員さんが、キャサリンさんに耳打ちをしていた。
「カイト君。これから大丈夫?今ならまだ手が空いているみたいだけど。」
「じゃあ、お願いします。できれば早い方がいいと思うので。」
「わかったわ。ついてきて。誰か、ここお願いしますね。」
「イエス!!マアム!!」
ん?なんか気のせいか?敬礼が見えた気がした……
き、気のせいだ……きっと……
キャサリンさんの後をついてギルマスの執務室へと移動した。
コンコンコン
「シャ……。ギルマス。カイト君たちをお連れしました。」
「ね……。おう、入ってくれ。」
ん?なんだ今の一瞬のやり取りは……
言い間違いなのか?
ま、気にしても仕方がないかな。
キャサリンさんの案内で部屋に入った俺たちは、勧められるままソファーに腰を下ろした。
シャバズのおっちゃんも仕事がひと段落していたようで、すぐにこっちのソファーに腰を下ろした。
「で?」
「いきなり第一声が「で?」は無いんじゃないのか?」
「いやいや。お前さんが来るときは大体厄介ごとだからな。話は簡潔の方がいい。」
「なんか納得いかな気がする……。まぁ、良いか。じゃあ簡潔に。簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
……
…………
………………
何故沈黙が流れるのか……
奥の給湯室でキャサリンさんがお茶を入れる音だけが響いていた。
「わりぃな。俺は耳が悪くなったようだ。もう一回いいか?」
「え?だから、簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
あれ?おっちゃんの顔が青くなっていくのは気のせいだろうか?
うん、きっと気のせいだ。
「おまたせ。お茶が入ったわ。熱いからきをつけてねって……どうしたの?」
「いや、「簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」って伝えたらこうなったんです。」
あれ?キャサリンさんのカップを持つ手が震えてる。
「エルダさんや。みんなどうしたの?」
「カイト……。事の重要性をもっと認識した方がいいわよ?これは革命とか改革とかそんな次元じゃないわ。いわば、異常事態よ?」
うん、それは理解してる。
だからおっちゃんに丸投げしようとしてるんじゃないか。
「カイト……。お前はどうしてこうも爆弾をぽいぽい俺に投げつけるんだ?俺を過労死させるつもりか?」
フリーズ状態から回復したおっちゃんが、何故か俺に文句を言い始めた。
解せぬ……
「カイト君。これは冒険者ギルドでどうにかできるレベルをはるかに超えてしまったわ。先日行われたギルド間定例会議の第一議題で取り上げられてもおかしくない話なのよ?下手をすると王国だけではなくて、この世界に存在する国に狙われることになるんだから。」
「えぇ、だからシャバズのおっちゃんに丸投げしに来たんです。それに、よく考えてみてよ。この前冒険者ギルドに机(簡易)と椅子(簡易)を卸しましたよね?その時SP回復補正が付くの確認しましたよね?つまり、俺が作る物の効果は、他の人にも及ぶってことですよ?それに収納箱(簡易)だって同じことが言えます。ということは、作業台だって使える可能性が高いってことです?だからエルダに試してもらったら、問題なく使えたってだけです。」
ぎろりとシャバズのおっちゃんが、俺を睨んでいる。
まあ、睨まれてもどうにもできないんだけどね。
「わかった。わかりました!!たく……ついてねぇなぁ~。この件は俺預かりする。カイト、この件絶対にもらすんじゃねぇ~ぞ。公爵閣下には俺から話を通す。たぶん数日中に呼び出しがあるから覚悟しておけよ?いいな?」
ですよね~。
キャサリンさんは、足早にギルド会館に入っていったんだけど……
その状況に驚いた。
なんと、誰ともぶつからなかったのだ。
ギルド会館は、探索の準備をする冒険者でごった返していた。
正直、ぶつからなかったためしはない。
なのにだ……。
ただのギルド職員のはずのキャサリンさんは、ぶつかるどころか相手に気付かれさえせずに、通り抜けていったのだ……
本当に、キャサリンさんは何者なんだ……
エルダを見ると、目をそらされてしまった。
きっとあれだ、知ってはいけない情報なんだ……
俺はそっと、その疑問に蓋をした。
気を取り直してギルド会館へはいると、案の定、人で溢れかえっていた。
掲示板の前では依頼書の争奪戦が繰り広げられていた。
「俺が先に手にした!!」
「いや!!俺たちが先だ!!」
「なにおぅ?」
「やるか!!」
「おう!!上等だ!!一緒に行くぞ!!」
「おう!!」
うん、仲良しさんだね……
そんなやり取りを横目に受付まで行くと、さらに驚いた。
キャサリンさんがすでに仕事を始めていた。
しかも同寮より処理速度が速い……
ほんと、何者ですかあなたは……
実は双子です的な落ちはないよね?
「さっきぶりです。キャサリンさんって実はすごい人なんですね?」
「そんなことはないわよ?それで、依頼受けるの?」
「いえ、その前にギルマスに用事がありまして、今会えますか?できれば至急案件です。」
「わかりました。ライル君!!ギルマスに「カイト案件」って至急伝えてきて一!!」
ライルと呼ばれた職員さんは手にしていた仕事をすぐに中断して、猛ダッシュで奥へと走っていった。
ちょっと待て。その『カイト案件』について詳しく教えてほしい。
場合によっては”脱毛剤”を本気で作れるように研究するぞ?
慌てて戻ってきた職員さんが、キャサリンさんに耳打ちをしていた。
「カイト君。これから大丈夫?今ならまだ手が空いているみたいだけど。」
「じゃあ、お願いします。できれば早い方がいいと思うので。」
「わかったわ。ついてきて。誰か、ここお願いしますね。」
「イエス!!マアム!!」
ん?なんか気のせいか?敬礼が見えた気がした……
き、気のせいだ……きっと……
キャサリンさんの後をついてギルマスの執務室へと移動した。
コンコンコン
「シャ……。ギルマス。カイト君たちをお連れしました。」
「ね……。おう、入ってくれ。」
ん?なんだ今の一瞬のやり取りは……
言い間違いなのか?
ま、気にしても仕方がないかな。
キャサリンさんの案内で部屋に入った俺たちは、勧められるままソファーに腰を下ろした。
シャバズのおっちゃんも仕事がひと段落していたようで、すぐにこっちのソファーに腰を下ろした。
「で?」
「いきなり第一声が「で?」は無いんじゃないのか?」
「いやいや。お前さんが来るときは大体厄介ごとだからな。話は簡潔の方がいい。」
「なんか納得いかな気がする……。まぁ、良いか。じゃあ簡潔に。簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
……
…………
………………
何故沈黙が流れるのか……
奥の給湯室でキャサリンさんがお茶を入れる音だけが響いていた。
「わりぃな。俺は耳が悪くなったようだ。もう一回いいか?」
「え?だから、簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」
あれ?おっちゃんの顔が青くなっていくのは気のせいだろうか?
うん、きっと気のせいだ。
「おまたせ。お茶が入ったわ。熱いからきをつけてねって……どうしたの?」
「いや、「簡易薬物作業台でエルダが回復ポーション(低)の作成に成功。あとはよろしく。」って伝えたらこうなったんです。」
あれ?キャサリンさんのカップを持つ手が震えてる。
「エルダさんや。みんなどうしたの?」
「カイト……。事の重要性をもっと認識した方がいいわよ?これは革命とか改革とかそんな次元じゃないわ。いわば、異常事態よ?」
うん、それは理解してる。
だからおっちゃんに丸投げしようとしてるんじゃないか。
「カイト……。お前はどうしてこうも爆弾をぽいぽい俺に投げつけるんだ?俺を過労死させるつもりか?」
フリーズ状態から回復したおっちゃんが、何故か俺に文句を言い始めた。
解せぬ……
「カイト君。これは冒険者ギルドでどうにかできるレベルをはるかに超えてしまったわ。先日行われたギルド間定例会議の第一議題で取り上げられてもおかしくない話なのよ?下手をすると王国だけではなくて、この世界に存在する国に狙われることになるんだから。」
「えぇ、だからシャバズのおっちゃんに丸投げしに来たんです。それに、よく考えてみてよ。この前冒険者ギルドに机(簡易)と椅子(簡易)を卸しましたよね?その時SP回復補正が付くの確認しましたよね?つまり、俺が作る物の効果は、他の人にも及ぶってことですよ?それに収納箱(簡易)だって同じことが言えます。ということは、作業台だって使える可能性が高いってことです?だからエルダに試してもらったら、問題なく使えたってだけです。」
ぎろりとシャバズのおっちゃんが、俺を睨んでいる。
まあ、睨まれてもどうにもできないんだけどね。
「わかった。わかりました!!たく……ついてねぇなぁ~。この件は俺預かりする。カイト、この件絶対にもらすんじゃねぇ~ぞ。公爵閣下には俺から話を通す。たぶん数日中に呼び出しがあるから覚悟しておけよ?いいな?」
ですよね~。
1,155
本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
お気に入りに追加
3,346
あなたにおすすめの小説
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。