勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十四日目② ギルド間定例会議 会議前②

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 シュミット公爵閣下が、豪華とは言い難いがそれなりに仕立ての良い馬車から降りてきた。

「皆おはよう。今日は大事な会議だと聞いたものでな、儂も参加させてもらうことにしたのじゃよ。商業ギルドのギルドマスター・ドルー殿には話を通してある。あくまで儂は傍聴者である。」
「そうでしたか。しかしこれは心強い。カイトの事を考えると、これほど安心できる材料はありますまい。公爵閣下、感謝申し上げます。」

 そう言うと、ギルマスは深々と頭を下げた。
 俺とエルダもこれに見習い、頭を下げたのだった。

「なに、そなたらと儂は一蓮托生。これから大いに頑張ってもらうのだ、先行投資というやつじゃよ。それにの、ここでカイトを商業ギルドだけに抑えられたら、大損失もいいところなのでな。」
「公爵閣下……。閣下の商会の事も考えておられるのでは?」

 ギルマスがシュミット公爵閣下に少しだけ食って掛かった。
 この辺りからもギルマスが俺を守ろうと思っていることが伝わってきた。
 
「さすがはウィリアムズ殿じゃな。お見通しというわけか。そうじゃの、あやつは最近なりふり構わず動いておる。おそらく商業ギルドも私物化される恐れも出ておる。なので何としてもここで釘を刺さねばならぬのだよ。そのために使わせてもらうといったところかの。」

 うん、政治の話はよく分からない。
 とりあえず、俺の事を使って何やらやるみたいだけど……
 全くついていけませんって。
 狸の化かし合いそっちで勝手にやってほしいものだよ。

「さて、ここで立ち話をしていても始まるまいて、会場へ向かおうではないか。」
「はっ。ではまいりましょう。」

 ギルマスを先頭にして俺たちは会館へと入っていったのだった。



 会館内部はとてもこざっぱりとしており、嫌みも何もなかった。
 ここも売買カウンターがあった。
 ただ、ここで一番特徴的だったのは、併設されたオークションハウスだった。
 オークションハウスでは個人売買や買取が難しい商品や素材を取り扱っている。
 ドラゴン種の素材がごくまれに持ち込まれるそうだ。
 ちなみに、ドラゴンの鱗一枚で白金貨が乱れ飛ぶことがあるそうだ。
 俺には縁のない話だけどね。

 ギルマスに案内されながら俺たちは奥へと進んでいった。
 会館の奥につくと、そこには大きな扉が立ちふさがっていた。

「カイト、ここが大会議場だ。こういった時だけ使用される特別室みたいなものだな。一応ここには妨害系の魔道具がてんこ盛りで使われているから、情報漏洩は特に心配ないだろうな。」
「ほう、これはすごいの。王宮にも勝るとも劣らない性能ではないか。さすがといったところかの。」

 シュミット公爵閣下は感心したように自身の顎を撫でつけていた。
 ただ、王宮にも引けを取らないって……
 どんだけの防備だよ。
 
「公爵閣下はこちらは初めてでございましたかな?」
「うむ、儂の商会ではここを利用することは無いからのぉ。おそらくここを使うのは古参の大商会かこういったときくらいであろうな。」

 閣下もどうやら入ったことの無い部屋らしい。
 うん、扉が大きいのには意味があるのだろうか?
 普通に出入りできればいいんだから人のサイズでよくない?ゾウさんだって入れるゾウ。って思うのは日本人だからだろうな。



 ギルマスに連れられて中に入った俺たちが見たものは、質のいい調度品で彩られた豪華絢爛な部屋であった。
 会館の入り口からは想像のつかない仕様に、さすがに面食らってしまった。
 ギルマスは知っていたのだろうか普通にしていた。
 閣下も慣れているようで、大して驚きはしていなかった。
 俺とエルダは本気で委縮してしまったのだった。

「おぉ、シャバズ。最近見ていなかったが調子はどうだ?」

 最初に話しかけてきたのは、ザ・筋肉だるまのビア樽人間だった。
 背は140センチくらいか?ただその特徴的な筋肉は相当なものだった。

「紹介しよう。鍛冶ギルドのギルマス、ロベルト・バイエル殿だ。」
「儂がロベルトだ。よろしくのぉ。閣下も久しぶりですな。確か炎龍討伐作戦の時以来ですかな?お変わりなく元気そうでなによりだ。」
「ひさしいのぉ。確かに炎龍以来であろうな。もう30年近くも前の話だぞ?さすがに儂も老いるというものだ。」
「何を言いますやら。あの当時の閣下と言ったら最恐の軍師で名が通るほどではないですか。」
「あぁ、昔話はこれくらいでよかろう。今度うちに来い。上等な酒を用意して待っていようぞ。」
「では。お言葉に甘えさせてもらいますかな。」

 閣下と一通り話し終えたロベルトさんは、俺に向き直ってさらに話を続けた。

「お主がカイトか……。うむ、何とも言えないオーラを纏っておるの。ガンテツが気に入るわけじゃ。話はシャバズにあらかた聞いておる。そう、身構えんでもいいぞ。取って食ったりはせん。」

 ガハハハッって豪快に笑う様はまさにドワーフそのものだった。
 その後ろから3名の男女が現れた。

「ロベルト親方、うちらにも紹介しとぉくれやす。」
「おぉ、すまんすまん儂ばかり話しておってはいかんな。まずはみんなも知っておろう、カール・フォン・シュミット公爵閣下じゃ。儂も昔世話になったお方だ。で、この若者たちはシャバズが目にかけている新進気鋭の冒険者たちだ。」

 ロベルトさんが俺たちに話を振ってくれたので改めて挨拶をした。

「カイトです。Dランク冒険者で、まだまだ新米です。」
「エルダ・クリスティです。Cランク冒険者です。」

 エルダの名前を聞いたとたん、ほかのギルドマスター達も色めきだした。
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