勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十一日目① 討伐戦闘準備

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 よくよく考えると、俺は初めての野営活動だったかもしれない。
 隣にエルダが居るせいではないと思う。
  つまりその……うまく寝れませんでした。

 夜の闇がその存在の終わりをつげ、朝日が野営地を朝を告げる。
 人の動き幾分活発になり、その喧騒が聞こえるようになってきた。
 そろそろかと思い俺は外に出ると、冒険者たちが準備を開始していた。
 エルダも、ノソノソとテントの外へ這い出てきた。
 ぐっすり寝ていた辺りは、さすが冒険者だなって思ったくらいだ。

「おはようエルダ。よく眠れたみたいだな。」
「おはよう。そういうあなたは……無理だったみたいね。まあ、初めてだろうし仕方ないわよ。」

 エルダの寝顔が気になりすぎて寝むれなかったなんて……
 なんとなく負けた気がするので口にしなかった。

 エルダが身支度を済ませるのを待って集合場所へ行くと、ほとんどの冒険者が準備万端で集合していた。
 そこは一種異様な光景だった。
 パーティー単位でまとまっているのか、上位陣のヒリ付くような殺気の様な緊張感が漂っていた。
 何とも言えない張り詰めた空気が集合地点には漂っていた。
 たぶん俺一人でこれに参加していたら、この緊張感に飲み込まれていたかもしれない。
 隣にエルダがいることが、これほど心強いこととは思いもしなかった。
 そんな緊張感に包まれた中でもエルダは普段通りの様子だった。
 さすが慣れてるだけあるね。
 軽くあくびをするあたり、緊張感が無いのかなと持ったけど、それを見た俺の緊張感も少しだけ緩和していた。
 うん、狙ってそれをやってくれてるんだったらさすがとしか言いようがないけど……
 絶対それ本気で眠いよね?
 
 しばらくすると、サブギルマスのブースが壇上へと上がった。

「おはよう諸君。本日から予定時刻をもってゴブリン集落の掃討作戦に入る。今回はおそらくジェネラルクラスまで進化した個体がいる可能性が高い。よって長期戦も視野に入れての戦闘となる。一度突撃し、状況を見て退避。そしてまた翌日突撃をするという流れになる。補給についてはEランクパーティーがピストン輸送で請け負ってくれるから心配はいらない。諸君は全力で戦闘に当たってほしい。」

 簡単な説明の後、詳細が発表された。

 ファーストアタックは、ブースのマジックアローで入り口付近のゴブリン達を掃討。
 セカンドアタックは、Cランクパーティーの突撃。集落内のホブゴブリン・ハイゴブリンを中心に掃討。
 サードアタックで、Dランクバディ8チームが集落内のゴブリンと掃討。バックアップとして残りのDランクバディ6チームが集落周辺のゴブリンを掃討。
 ラストアタックで、Bランク2パーティでゴブリンジェネラルまたはそれ相当のモンスターを討伐。

 以上が大まかな流れになる。
 場合によっては変更があるが、その際は先行偵察隊が伝令の役割を果たすそうだ。
 俺とエルダはサードアタックのさらにバックアップ。
 正直な話、取り漏れたゴブリンの掃除だ。
 強敵についてはセカンドとサードでそのほとんどを討伐する予定になっているから、俺のところまでくることはほぼないはずだ。
 まあ、エルダには悪いことをしたなとはおもう。
 どうしても報酬の分配は危険度が高い戦闘員や貢献度によって変わってくる。
 外周の掃除なんて危険度も低く、貢献度もそれほど高くないはずだ。
 収入面やランク昇格に必要はギルド貢献度的にも旨味なんてあまりないはずだから。

「以上が本作戦の概要だ。諸君一人一人の戦いにかかっている!!健闘を祈る!!」
「「「「「うぉ~~~~~~~!!!!!!」」」」」

 ブースの挨拶に一斉に雄たけびを上げた冒険者たち。
 気合の入り方は尋常じゃなかった。
 おそらくこれもブースのスキル【軍勢指揮】の効果なんだろうな。
 
 こうして作戦前の集会が終わり、俺たちは出撃の最終確認を行ったのだった。

——————

 一方そのころ。
 先行偵察隊が掃討作戦準備の為、集落の偵察を開始していた。
 集落の出入り口ではいまだにゴブリン2匹が歩哨に立っている。
 前日の偵察結果と同様で、特に異変はないと考えていた。

 しかし、取り囲むように周辺を警戒していた偵察班の一班が、この状況に何か違和感を覚えた。
 あまりにも静かすぎるのだ。
 昨日までの騒がしさがほとんど感じられなかった。

 さらに周辺の警戒を続けていると、そこにあってはならないものを発見した……

 それは、地下に繋がっている穴だった。
 その方角を確認すると、集落に向かって一直線に延びていると思われた。

 偵察班員はすぐさま班長へ報告を行った。
 一時間前にはなかった穴だったのだ。
 班長は嫌な胸騒ぎを覚えた。
 そして出して結論は……〝強襲〟。
 班長は緊急報告の為、班の中でも飛び切り足の速い隊員を報告に走らせた。

 次の瞬間だった。

ドゴ~~~~~~ン!!

「遅かったか!!」

 野営陣地の方角から土煙と爆発音が鳴り響いた。
 焦る班員を尻目に班長は冷静に判断を下す。
 伝令一名を除いて、集落の強行偵察を決行したのだった。

——————

 時同じくして、野営陣地後方より土煙と爆発音が鳴り響く。
 哨戒に当たっていた冒険者から叫び声が聞こえる。

『敵襲!!敵襲!!ゴブリン軍団襲撃!!数は目視で300オーバー!!おそらくその倍は迫ってきている!!すぐに行動に移せ!!!!』

 最悪の展開がすぐそこまで迫っているのだった。
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