勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第2章 これから始まる共同生活

二十日目③ 勇者召喚魔法の推測

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 そこは見覚えがない天井だった。

 俺はベットから起き上がると、自分の身体が濡れていることに気が付いた。
 どうやら寝ている間に大量の汗をかいていたようだ。
 辺りを見回すと、ここは新居の自室であることが理解できた。

 そうか、あれは夢だったのか。
 安心とともに、虚無感が押し寄せてきた。
 両親の死を思い出してしまったから。

 外を見ると、すでに日が昇り始めていた。
 ゆっくりとベッドから起き上がり窓を開けると、清々しく心地よい風が吹き込んできた。
 ここが異世界だとしても、風の心地よさと太陽の暖かさは変わらないんだな。
 俺はこの世界で生きているんだと、あらためて実感した。
 

 
 着替えるを終え朝食の為にダイニングへ向かうと、すでにエルダが起きて朝食を準備してくれていた。
 豪華とは言えないながらも、色とりどりの食材に彩られた食卓だ。
 それはとても暖かく、とても優しい料理だった。

 感慨にふけりながら朝食を食べていると、エルダが心配そうに見つめていた。
 こうやって心配してもらえるって幸せなことなんだと思えた。

 俺はエルダに、これまでをかいつまんで説明した。
 俺の世界の事。
 俺の今までも人生の事。
 そしてこれからの事。
 
 エルダはただうなづきながら話を聞いてくれた。
 時折目に涙を浮かべながら。

 そして最後に一つの懸念を話した。

 もしかしたら、後輩が俺と同じようにこの世界に召喚されているかもしれないということだ。
 だから、もし可能なら後輩を探し出したいとも思っていることを伝えた。
 エルダからは賛成とも反対とも取れない答えが返ってきた。
 俺の今の立場上、まだ「力」が足りないそうだ。
 権力・財力・武力・知力。
 全てにおいて3流以下でしかないから。
 だからこその各ギルドへの繋ぎである。
 今はまだ「力」を付ける時期だ。
 つらいけど我慢するしかない。
 そういわれると、俺は同意するしかなかった。
 エルダが俺の事を本気で心配してくれているのだから。
 無理をしてエルダを悲しませてしまったら、メアリーさんに確実に殺される……

 エルダの提案で、このことをギルマスに相談することにした。
 ギルマスはなんだかんだ言って大物だ。
 この大陸の冒険者ギルドを束ねる組織、『ギルドマスター統括理事会』の理事を務めていた。
 この、『ギルドマスター統括理事会』は各ギルドのギルドマスターが所属する組織で、いろいろな調整を行ったり、国との折衝を行ったりする組織だ。
 そこなら何かしらの情報が入っているはずだってことらしい。



 冒険者ギルドにつくと、朝の依頼書争奪戦でかなりばたばたしていた。
 俺たちはその合間を縫いながら受付窓口へと向かった。
 受付でギルマスへ相談がある旨を伝えると、すぐに会ってくれることになった。

 ギルマスの執務室へ到着し、中に入ると………屍が転がっていた!!
 くそ!!いったい何があった!!

 って冗談はさておき、ギルマスは書類の山で死にかけていた。
 書類整理がひと段落するまでソファーでくつろがせてもらった。
 出された紅茶はものすごく香りが高く、渋みと甘みが交互に襲い掛かる何とも言えない味だった。

 その傍らで、ギルマスのうめき声が聞こえてくるが、全無視でエルダと二人紅茶を楽しむのだった。



「待たせたなぁ~。」

 久しぶりにスネークさん的な良い声が聞こえてきたな。
 まだまだ大丈夫そうだ。
 ギルマスは疲れた体をドカッとソファーに預けると、一息つくため紅茶を煽り飲んだ。

「で、相談事ってなんだ?お前さんが持ってくる相談なんだ、ただ事じゃねぇ~んだろ?」

 俺はギルマスに今日の夢の話……記憶の話をした。
 そして、最後に召喚される際の説明をしたとき、ギルマスは手にしたカップを落としてしまった。
 ギルマスの顔がみるみる固くなってくる。
 そして、深いため息の後手で顔を覆い、天を見上げたのだった。

「カイト、お前さんが召喚者であることは知っている。前にも説明した通りだからな。でだ、お前さんの話を聞いてからの俺の感想だ。」

 ギルマスはさらに一息つくと、俺の目をまっすぐと見つめ話始めた。


「おそらくだが、お前さんは間違いなく巻き込まれて召喚されたんだ。そして、本命はお前さんの後輩だって奴だろうな。おそらくこっちに召喚されていれば、職業『勇者』と称号【光の使徒】が付いているはずだ。しかしだ、国からはまだそんな情報が入ってきていない。そのことから、まだ国も掴んじゃいない情報だろうさ。でだ、この情報については完全に秘匿とする。明日の報告会での最終議題に上げる。そこでなら何か情報が入るかもしれん。あ、ただし期待はするなよ?俺んとこまで情報が来ていないって言うことは、まだ発見されていないか、どこかが秘匿している可能性が高い。一番厄介なのが教会に確保されることだ。教会は一昔前みたいに権力を持ち合わせていない。もし教会の手に渡れば、完全に道具扱いされてしまうだろうな。」

 ここまで一気に説明すると、ギルマスは話を中断した。
 一応この執務室には防犯上遮音結界の魔道具が使用されてはいるが、念には念を入れての中断だ。
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