勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第1章 ここから始まるDIY

十九日目④ 物流革命なんて起こしたくない……

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 エルダの提案で他のギルドとの繋ぎを作るため、冒険者ギルドへと舞い戻った。
 ギルドへ戻ると、すでにほとんどの冒険者は出払っており、残っているのは休息日にしている飲兵衛くらいだった。
 キャサリンさんにギルマスの予定を確認すると、ちょうど手が空いているそうで会ってくれるとのことだった。

 キャサリンさんに案内されるままギルマスの執務室へと移動した。

コンコンコン

「ギルマス。カイト君とエルダさんをお連れしました。」
「おう、空いてるから入ってくれ。」

 部屋の奥からギルマスのやる気のない声が聞こえる。
 とても疲れ切ってる様子だ。
 
 ドアを開けて中に入ると、ぐったりしているギルマスがいた。
 何か問題でも抱えているのだろうか?
 俺に手伝えることが有ると良いんだけど……
 まあ、手伝わないけどね。
 
 ツンツンツン。
 反応がない。
 ただの屍のようだ。

 な、わけはなく、完全にグロッキー状態になっていた。
 顔を上げたジト目のギルマスが怖い。

 

「で、今日はどういう要件だ?」

 不機嫌全開のギルマスは、ドカッとソファーに座るなり背もたれに深く寄り掛かった。
 ほんと、かなりのお疲れモードらしい。
 天井を見上げて今にも居眠りしてしまいそうな様に見えた。

「はい。エルダと相談したんだけど、俺のスキル・職業ともにあまりにも異質すぎる。で、これから金策とかで物を売るにしても、目ざとい商人に目を付けられると面倒だなって。だったら、最初から各ギルドに顔を出してしまえばいいんじゃないかなって。というわけで、ギルマスの力添えを願いたいです。」

 俺の話を聞いたギルマスは深いため息とともに、ソファーを座りなおした。

「俺が疲れている原因が、その解決策を携えてやってくるたぁ、なんの因果かねぇ。率直に言うと、渡りに船だ。ぶっちゃけ、貴族からの催促がかなりやばくなってきた。そろそろ冒険者ギルドだけでは抑えが効かないレベルまで来ている。つか、なんであのお方はお前さんにご執心なんだろうな?まさか、情報が洩れてるとかじゃないと良いがな。」

 ギルマス的にもこちらの提案が助かるらしく、話がスムーズに進んでいった。
 各ギルドに説明文を送り、明後日開催のギルド間定例会議での議案に盛り込まれることとなった。
 その際に、ある程度の情報開示が求められるけど、どこまで開示するかの議論となった。
 個人的には全部開示してもいい気がするが……
 ある一つの製品だけは開示しないことになった。
 エルダが懸念した収納箱(簡易)だ。
 実物をギルマスに見せたところ、まじめに目が泳いでいた。

「おい、これって簡単に作れるのか?これは絶対に商業ギルドのやつらに見つかっちゃならん代物だ。魔道具のアイテムバックだって超貴重品だっていうのに、それに類似するアイテムが簡単に作れるってなったら、あいつら何するかわからん。おそらくお前さんを拉致ってでも大量生産させるぞ。」

 それを聞いた俺はぞっとして、背中に変な汗が流れる思いだった。
 想像していたよりもヤバイ代物だったみたいだ。
 しかも、俺のスキル【アイテムボックス】との親和性を説明したらさらに驚かれた。
 
 その後、念のため実験を行った。

 ギルマスが持っている魔道具のアイテムバックに、収納箱(簡易)は収納可能なのか。
 また、俺のアイテムボックス同様に、一枠扱いになるのかどうか。

 ギルマスに適当な木材を準備してもらい、10個ほどの収納箱(簡易)を作成。
 それをギルマスがアイテムバックへ収納してみた。
 結果は俺と同じ現象が発生した。
 つまり、アイテムバック内の内容物の圧縮に成功したのだ。
 
 通常、アイテムバックにアイテムバックは入れられず、中に入れたアイテムバックから中身が出てしまうそうなのだ。
 それを、収納箱(簡易)は解消してしまった。
 結果、商人からしたら喉から手が出るほど欲しいアイテムに成り上がってしまった。
 これは騎士団や冒険者も同じで、物流の革命的アイテムになりそうだ。
 今までよりも楽に、かつ大量に運べる魔導具ですらない収納箱。
 それが簡単に手に入るんだから、誰だってほしいに決まっている。
 家に置いておいたって、不要なもので家が溢れかえることだってない。
 ただ救いだったのが、収納箱(簡易)に収納箱(簡易)が入らなかったことと、生物が入れられないってことだ。
 もしこれが可能だったら、大量の密輸品だったりさらった人間だったりを簡単に輸送できる。
 下手をすれば、モンスターを捕獲して収納箱(簡易)に入れて街中に運びこんで解放するなんてこともできてしまう。
 それが出来ないってことで少しは安心できた。
 それにアイテムバックと違い、箱に触れると中身が誰でも確認できるのは大きい。
 まあ、ロック機能も付いているみたいだから、もしヤバいもの入れててロックしてたら、検問で取り調べを受けることになるから、それはそれでいいのかもしれない。
 
 そんな俺の横でこの実験結果に大興奮のギルマス。
 はしゃぐのはいいけど、この後の対応をお願いします。
 それにしても俺……普通に生活したかっただけだったんだけど……
 ほんとどうしてこうなった?
 


 そして俺はこれからの人生が決定づけられる会議へと参加するのであった。
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