勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓

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第1章 ここから始まるDIY

十七日目⑤ 先生……魔法が欲しいです!!

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 【ロックワーム】をエルダが討伐した後、新たな鉱脈を探して歩き回った。
 しばらく歩き回ったが、新しい鉱脈が見つけることが出来なかった。
 エルダ曰く、おそらくすでに回られた後かもしれないとの事だった。
 復活するには少し時間がかかるそうで、大体2日から3日くらいは必要だそうな。
 それなら仕方がないのか……
 まあ、第1層目だし、俺みたいな初心者冒険者が来ていると考えたらそうなるよね。
 

 
 しばらくすると、前方に【ロックワーム】が確認できた。
 数は1匹だけ。
 エルダと話して、俺が一人で倒すことにした。
 手に魔晶石(水)を握りしめ、音をたてないようにゆっくりと近づいていく。
 もう少しで射程圏内……
 ここだ!!
 そう思った瞬間だった。
 一瞬足元がぐらつき嫌な予感がした。

「ウォーターバレット!!」

 エルダの声とともに後方へ慌てて飛びのいた。
 間一髪!!俺がいた場所から【ロックワーム】が地面を削りながら顔を出してきた。
 タイミングを見計らったようにエルダの魔法が【ロックワーム】の頭に着弾。
 そのまま【ロックワーム】を貫通してしまった。

 あ、危なかった……
 後方からのエルダが援護射撃で事なきを得た。
 あと0.何秒反応が遅れていたら……
 俺はこの世を去っていただろう。

 なるほど、俺が倒すと言ったとき、エルダが何も言わなかったのはこれの事か。
 まるで警戒が足りなかった。

 さらに前方では戦闘の音と振動を感知した【ロックワーム】が動き始めた。
 すでに【ロックワーム】のテリトリーに入っているようで、地中に潜ろうとしていた。
 だが、そこは俺の投擲射程圏内でもある。
 全力で投げつけた魔晶石(水)は、【ロックワーム】の手前に着弾。
 爆発とともに大量の水をばらまいた。
 潜る最中にびしょ濡れになった【ロックワーム】は、体半分を地表に出してもがいていた。
 徐々に地中に進んではいるが、はっきり言って潜れていないも同然だった。
 俺は剣を構え周囲を警戒しながら近づいていく。
 今だ体半分を出して、ビタンビタン暴れていた。その体に剣を突き刺すと、あっけなくその動きを止めたのだった。

「それにしてもエルダ、さっきの地面の中の一匹……気が付いていたのか?」
「そうね、気配は感じていたわ。ずっと狙いをつけるように身を潜めている感じかな?」

 エルダは少し考えるようなそぶりを見せると、答え合わせとばかりに状況を教えてくれた。
 やはり戦闘開始の前に、【ロックワーム】が1匹隠れていることに気が付いていたようだ。
 俺は戦闘経験だけでなく、警戒をするという行為そのものの経験が足りないらしい。
 一気にDに上がったが、本来経験しているであろうEでの経験が全く足りていない。
 このダンジョンに来てから特に思い知らされた。

 【ロックワーム】2匹の討伐を完了し、ドロップアイテムを確認した。

・魔石(極小) 1
・岩蠕虫の歯 1

 岩蠕虫の歯があと3つでクエストクリアになる。
 うん、あと3匹最低戦わないといけないのか……
 正直心が折れそうだったけど、エルダが居る手前折れるわけにはいかなかった。

 さらに奥へと探索を進めると、念願の鉱脈を発見。
 周辺警戒をエルダにお願いし、一心不乱に採掘を始めた。

トンカンコン
トンカンコン

 正直戦闘するよりもこっちの方が性に合っているみたいだ。
 頭を空っぽにして掘っていられるのが幸せだ。
 ん?こっちのほうに掘り進めれば追加で……
 ってほらやっぱり。
 ここはどうやら当たりだったらしい、掘れば掘るほど鉱石が出てくる。
 何ていうか、匂い?みたいなのが分かってきたかも?
 って気のせいか?
 ん?なんだこの感覚……
 俺の感覚なのか?
 スキルのせいかもしれないな。
 気にしたら負けか。
 
トンカンコン
トンカンコン

 そろそろ出が悪くなってきた。

トンカンコン
トンカンコン

 うん、石しか出ないからここは打ち止めだと思う。
 鉱石を確認する。

・鉄鉱石 40個
・銅鉱石 10個
・石 20個

 石はそろそろ不要だから、このままここに捨てていくことにした。
 運がいいことに、近くにさらに鉱脈を発見できた。
 やっぱり気のせいじゃないな。
 なんとなく鉱脈の在処が分かる気がする。
 ここはおそらく……銅鉱脈っぽい感じがする。

・鉄鉱石 10個
・銅鉱石 30個
・石 20個

 やっぱり当たりだ。
 って、もうこれ以上出そうにないかな?
 念のため最後の一振りをしてみた。

ガラガラガラガラ

 突如目の前の壁が崩れ始めた。

「隠し部屋?」
「そうみたいね。私もなかなかお目にかかれないものよ。」
 
 中を覗き込むと、かなり大きな空間が広がっていた。
 エルダが異変に気が付き、警戒を解除して駆け寄ってきた。

「これはラッキーだね。こんな浅い層で隠し部屋見つかるなんて、ものすごく珍しいことよ?」
「少しのぞいてみたけど……。真ん中に宝箱っぽいのがある。でもその周りに【ロックワーム】がいる。目視できただけで5匹かな。」

 エルダも崩れた壁から中を覗き込む。
 
「5匹であってるわね。隠れている気配は感じないから。どうする?諦める?」

 エルダから宝箱放棄の提案がなされた。
 確かにそれが一番安全だと思う。
 だがしかし……
 諦められず決断が遅れてしまった。
 こちらの気配に気が付いた【ロックワーム】が、一斉に動き始めた。

「あらら、これは撤退できそうにないわね。カイト、今回は私が見本を見せるわね?」

「ウォーターボム!!」

 大きな爆発音とともに、大量の水が辺りを飲み込んでいった。
 先ほどまでより魔力を多く込めていたようで、詠唱時間が若干だけ長かった気がする。
 なるほど、魔法詠唱が長くなれば威力も増すのか。
 ちょっと勉強になった。
 それから水が引くと、そこには息絶えた【ロックワーム】が横たわっていた。
 うん、死因は溺死だろうね……
 2匹ほどまだ蠢いていたので、俺はそっと剣を突き刺し絶命させた。

 今回もまた魔法の偉大さを身に染みて実感したのであった。

 先生……魔法が欲しいです!!
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本日 5/2(木)より新作掲載開始しました!!もしよろしければそちらも立ち寄っていただければ幸いです!!手加減必須のチートハンター ~神様の計算を超えて、魔王の手から世界を護ります!! https://www.alphapolis.co.jp/novel/911619238/145877156
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