フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~

華音 楓

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第2章

第51話 襲撃のあとで……

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「ソニア、ケガはないか?」
「はい、ご心配には及びません。」

 形式上とは言え一応ソニアの状況を確認した。
 きちんとリルが構えていて、すぐに対応できるようにリリーも準備万端の状況だった。
 ほんとお前たちは過保護過ぎないか?

 会場から兵士に外に連れ出されていく貴族たち。
 中にはグルーセシアに尊敬するなんて調子の良いことを言って取り入ろうとしていたやつもいた。
 どうやら内側から侵略を受けている形になっていたようだ。

「ソニア嬢にも迷惑をかけてしまった。申し訳ない。」
「いえ、こちらには被害がありませんでしたのでお気になさらないでください。ところで……外の襲撃については問題はないのでしょうか?」

 オグニス曰く、城門の野党襲撃についてはすでに鎮圧が終わっているそうだ。
 もともとおこる襲撃を知って入れば事前警戒だって可能だろう。
 そうなれば鎮圧も容易に出来るというものだ。

「この売国奴共め!!祖国の誇りを忘れたか!!」
「そうだ!!私たちは帝国・神聖国なぞに負けはしない!!」

 連行されていく貴族たちが口々にいう、戦争肯定の声。
 それを聞いたグルーセシアは頭を抱えていた。
 どうやら彼らは戦争に乗じて自身の地位を上げることを魂胆としてそうだ。

 今回連行されていった貴族を搾り上げて、この計画を練った首謀者たちを一網打尽にするそうだ。
 平和とは次の戦争への準備期間とはよく言ったものだな。
 元魔王国の貴族連中もそう言った考えのモノが少なからずいるってことを知れて、今回はいい勉強になったよ。

「さて、会場は乱れてしまったね。すまない皆、今夜かこれでお開きとさせてもらいたい。後日改めて席を設けようと思う。」

 

「改めて謝罪する。」

 夜会もお開きになり、俺たちも帰ろうとした時に、グルーセシアに付き合ってほしいと告げられる。
 そのまま別室へ案内された後に出てきた言葉がこれだった。
 さっきも謝罪を受けたんだが、今回はまた改めてって感じだろうか。

「先ほども言いましたが、謝罪を受け入れています。頭を上げてください。」

 グルーセシアは頭を上げると、一つ咳払いをして、リルに視線を向けた。

「フェンリルよ。こうしてまた会えるとは思っていなかったぞ。」
「我とて会いたくて来たわけではない。」

 憮然とした態度を崩さないリルに、グルーセシアは苦笑いを浮かべていた。
 対面する形で俺たちとソファーに腰かけていたグルーセシアとオグニス。
 その目には真剣さが見て取れた。

「部下の報告からフェンリルが守護していたダンジョンが攻略されたと聞いて驚いたぞ。魔王様から絶大な信頼を受けていたお前なら、あのダンジョンが攻略されることは無いと思っていた。」
「何をいう、管理を放棄したくせに……」

 そう、リルの居たダンジョンは管理を放棄され、ほぼ自動化された状態だった。
 おそらくそのせいもあって、俺は難なく攻略出来たんだと思う。
 だが、グルーセシアの態度は違った。
 驚きを隠せない様子だった。
 これはオグニスも同じで、二人で顔を見合いながら困惑の表情を浮かべていた。

「すまないフェンリル。その話を詳しく聞かせてくれないか。」
「何を白々しい!!我が守護せしダンジョンは、魔王様が自ら手掛けたダンジョン。あの森の最深部に位置し、難攻不落と恐れられた……そのダンジョンの管理を放棄しておいて、今更何を我に語れというのだ!!」

 リルの怒気がさらに増していく。
 それはすでに視覚的に理解できるほど濃密で、濃厚な殺気に変わっていく。
 俺はそっとリルの頭をなでながら、落ち着くように話しかけた。
 少し落ち着きをとりもどしたのか、怒気は形を潜めていく。
 いまだ睨みつける視線は変わらないものの、グルーセシアたちも一息付けたようだった。

「それにしてもグルーセシア。おかしなことが起こっているな。」
「そうだな、あそこにはいまだ多大な資金が投入されているはずだ。」

 おっと、なんだか雲行きが怪しい気配がしてきたな。
 リルは今だ不機嫌全開だけど、グルーセシアたちはそれどころではない感じがする。
 何やらいろいろ小声で話しているけど、さっきの話からして横貫……というよりも完全に横領している輩がいるってわけっだ。
 それをグルーセシアたちは知らない、もしくは知ってても黙っていた。
 まぁ、十中八九知らなかったんだろうな。
 そうじゃなきゃあんなに驚かないだろうし。

「すまない。取り急ぎその件についてはこちらで調査する。ソニア嬢……申し訳ないが、数日出発を延期してもらえないだろうか。調査終わり次第報告させていただきたい。」
「私としては構いませんが……リクトさんもよろしいですか?」

 よろしいも何も、むしろこっちの要件だしな。
 断る理由はないだろうな。

「こちらとしてもお願いしたいです。ソニア様、ご面倒をおかけします。」

 一応は対外的にソニアの護衛って役割だから、こうして外行きの話し方をしたのに、全員で俺の顔を見つつ驚くのはやめてくれないか?
 若干へこみそうになるんだが……

「俺の顔になんか?」
「いや、すまない。ソニア嬢から聞いていた人物とかけ離れていたもので……」

 よしソニア、この件についてじっくりと話を聞かせてもらう必要がありそうだな。
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