49 / 51
第2章
第50話 強襲
しおりを挟む
「そして私はここに宣言をする。私はソニア嬢の提案を受け入れ、同盟を結ぼうと思う!!」
グルーセシアの演説と共に巻き起こる割れんばかりの拍手。
誰しも平和が一番だと思っているんだろうな。
俺だって平和な国に生まれ育ったから、出来る事なら戦いたくはない。
でもこの世界は命が軽い。
その為に戦わなくてはならないなら、それは仕方のない事なんだろうな。
そう言い聞かせてきた。
だからこそこうして戦争をしないという決断をすることは簡単ではないと思った。
「ありがとうございます、グルーセシア様。我が国はこの総領地を同盟領とし、これからの平和的発展を願います。」
グルーセシアの宣言に答えるように、ソニアが礼を述べた。
ただ前提条件としてソニアが即位したらって話なんだけど、二人の間ではそうなることで一致したようだった。
「今宵はめでたい席。皆楽しんでいってほしい!!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
会場中から歓喜の声が上がる。
こうやって他の領地も周り、一つ一つ頭を下げて回る。
ソニアのやろうとしていることは、簡単ではないんだろうな。
俺にはそれが分からないが、出来る事ならソニアの力になりたいと新ためて思った。
「グルーセシア様!!」
「何事だ!!パーティーの最中であるぞ!!」
突然会場の入り口ドアが開け放たれる。
そこに会わられたのは息を切らせている騎士だった。
あまりにも緊迫した声と様子で、ただ事ではないことが伝わってきた。
近くで話を聞いていた人から動揺が漏れ伝わり、会場を動揺が包むまでそれほど時間は必要としなかった。
「火急の知らせ故、無作法をお許しください。只今総領都東側に賊軍が襲撃。現在交戦中であります!!」
「なんだと⁈その賊とはどこの勢力だ!!」
グルーセシアはその騎士を問い詰めようと、近づく。
あまりにも無警戒に近づくもんだから護衛騎士が一瞬対応が遅れてしまった。
「目の前の俺だ!!」
グルーセシアと騎士の身体が交差する。
騎士の剣はグルーセシアに向けられていた。
護衛が機能せず、無防備な状態のグルーセシアにその狂剣が振るわれる。
「グルーセシア様!!」
護衛騎士の声が会場に木霊するが、俺たちはさして問題だと思っていなかった。
その狂剣がグルーセシアに届くことは無かった。
光の板に阻まれ、びくともしなかったからだ。
「さすがリリー。展開が早いな。」
「そりゃね、あれだけ殺気を出していれば攻撃しますって言っているようなものじゃない?」
リリーが発動した防壁魔法は問題なく機能していた。
しかもその魔法も料理を食べながらの片手間作業クラス。
そのミスマッチな光景に襲撃者も唖然としていた。
これががんばって魔法を発動させていますって感じだったらまだ違っていたんだろうが……
まぁ、リリーだしな。
「くそ!!どうなってやがる!!話が違うじゃないか!!」
狼狽える襲撃者をよそに、続々と兵士が会場に集まってきた。
これが味方なのか敵なのかは今の段階で確証が持てない。
さて、どうしたものかな。
「これはこれは……閣下、ご機嫌……よろしくはなさそうですね。」
「今更現れて何の用だ、オグニス。」
なだれ込んできた兵士と共に一人の男が姿を現す。
180cmくらいの身長で、大柄だが……いかんせん体格が。
昨日見た油塊もそうだったけど、運動嫌いが多いのかこの国は。
気道を圧迫されているからか、呼吸するたびにブヒーブヒ聞こえてくるのが、緊迫感を損なわせてくれる。
「何用とは……言わなくてもわかるでしょう?売国奴を始末しに来たのですよ。」
にたりと笑うオグニス。
その笑みはあの油塊を連想させる。
オグニスが片手をあげると、なだれ込んできた兵士たちが一斉に武器を構える。
一触即発の状況……なのに俺たちの態度はいたって変わらなかった。
リリーに至っては今だ食事中だった。
「かかれ!!」
オグニスが手を下ろすと、一斉に動き出す兵士たち。
そして次々に拘束されていく貴族連中。
その中に……グルーセシアは含まれていなかった。
うん、そんな気がしてた。
だって、兵士たちに敵愾心はなく、むしろ来賓の中に数名焦りの色を浮かべていた人物が含まれていたから。
「全く、君を囮にして敵を炙り出すとか、正気の沙汰じゃないからね?」
「すまないなオグニス。だが、到着が予定より遅かったのは事実だろうに。」
二人の会話からすると、この襲撃はある程度予測されていたものだったようだ。
むしろそうなるように仕組まれていた、とさえ思える。
「それは仕方がないよ。私は動くのが苦手なんだから。」
「少しは痩せたらどうだ?」
そう言ってオグニスはグルーセシアの手を取り、床に膝を着いていたグルーセシアを引っ張り上げる。
グルーセシアは自身に付いたホコリを手で払い、崩れた衣装を軽く整える。
なんだかまた巻き込まれた感が半端ないな。
ただこの夜会に俺たちを招待する必要はあったのか?
「巻き込んでしまってすまない。ソニア嬢に万が一のことが起こらぬように、貴殿たちを招待させてもらった。」
グルーセシアとオグニスは二人そろって俺たちに頭を下げた。
どうやら身内の膿み出しが目的だったようだな。
それも一応は成功したとみていいのかもしれないな。
グルーセシアの演説と共に巻き起こる割れんばかりの拍手。
誰しも平和が一番だと思っているんだろうな。
俺だって平和な国に生まれ育ったから、出来る事なら戦いたくはない。
でもこの世界は命が軽い。
その為に戦わなくてはならないなら、それは仕方のない事なんだろうな。
そう言い聞かせてきた。
だからこそこうして戦争をしないという決断をすることは簡単ではないと思った。
「ありがとうございます、グルーセシア様。我が国はこの総領地を同盟領とし、これからの平和的発展を願います。」
グルーセシアの宣言に答えるように、ソニアが礼を述べた。
ただ前提条件としてソニアが即位したらって話なんだけど、二人の間ではそうなることで一致したようだった。
「今宵はめでたい席。皆楽しんでいってほしい!!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
会場中から歓喜の声が上がる。
こうやって他の領地も周り、一つ一つ頭を下げて回る。
ソニアのやろうとしていることは、簡単ではないんだろうな。
俺にはそれが分からないが、出来る事ならソニアの力になりたいと新ためて思った。
「グルーセシア様!!」
「何事だ!!パーティーの最中であるぞ!!」
突然会場の入り口ドアが開け放たれる。
そこに会わられたのは息を切らせている騎士だった。
あまりにも緊迫した声と様子で、ただ事ではないことが伝わってきた。
近くで話を聞いていた人から動揺が漏れ伝わり、会場を動揺が包むまでそれほど時間は必要としなかった。
「火急の知らせ故、無作法をお許しください。只今総領都東側に賊軍が襲撃。現在交戦中であります!!」
「なんだと⁈その賊とはどこの勢力だ!!」
グルーセシアはその騎士を問い詰めようと、近づく。
あまりにも無警戒に近づくもんだから護衛騎士が一瞬対応が遅れてしまった。
「目の前の俺だ!!」
グルーセシアと騎士の身体が交差する。
騎士の剣はグルーセシアに向けられていた。
護衛が機能せず、無防備な状態のグルーセシアにその狂剣が振るわれる。
「グルーセシア様!!」
護衛騎士の声が会場に木霊するが、俺たちはさして問題だと思っていなかった。
その狂剣がグルーセシアに届くことは無かった。
光の板に阻まれ、びくともしなかったからだ。
「さすがリリー。展開が早いな。」
「そりゃね、あれだけ殺気を出していれば攻撃しますって言っているようなものじゃない?」
リリーが発動した防壁魔法は問題なく機能していた。
しかもその魔法も料理を食べながらの片手間作業クラス。
そのミスマッチな光景に襲撃者も唖然としていた。
これががんばって魔法を発動させていますって感じだったらまだ違っていたんだろうが……
まぁ、リリーだしな。
「くそ!!どうなってやがる!!話が違うじゃないか!!」
狼狽える襲撃者をよそに、続々と兵士が会場に集まってきた。
これが味方なのか敵なのかは今の段階で確証が持てない。
さて、どうしたものかな。
「これはこれは……閣下、ご機嫌……よろしくはなさそうですね。」
「今更現れて何の用だ、オグニス。」
なだれ込んできた兵士と共に一人の男が姿を現す。
180cmくらいの身長で、大柄だが……いかんせん体格が。
昨日見た油塊もそうだったけど、運動嫌いが多いのかこの国は。
気道を圧迫されているからか、呼吸するたびにブヒーブヒ聞こえてくるのが、緊迫感を損なわせてくれる。
「何用とは……言わなくてもわかるでしょう?売国奴を始末しに来たのですよ。」
にたりと笑うオグニス。
その笑みはあの油塊を連想させる。
オグニスが片手をあげると、なだれ込んできた兵士たちが一斉に武器を構える。
一触即発の状況……なのに俺たちの態度はいたって変わらなかった。
リリーに至っては今だ食事中だった。
「かかれ!!」
オグニスが手を下ろすと、一斉に動き出す兵士たち。
そして次々に拘束されていく貴族連中。
その中に……グルーセシアは含まれていなかった。
うん、そんな気がしてた。
だって、兵士たちに敵愾心はなく、むしろ来賓の中に数名焦りの色を浮かべていた人物が含まれていたから。
「全く、君を囮にして敵を炙り出すとか、正気の沙汰じゃないからね?」
「すまないなオグニス。だが、到着が予定より遅かったのは事実だろうに。」
二人の会話からすると、この襲撃はある程度予測されていたものだったようだ。
むしろそうなるように仕組まれていた、とさえ思える。
「それは仕方がないよ。私は動くのが苦手なんだから。」
「少しは痩せたらどうだ?」
そう言ってオグニスはグルーセシアの手を取り、床に膝を着いていたグルーセシアを引っ張り上げる。
グルーセシアは自身に付いたホコリを手で払い、崩れた衣装を軽く整える。
なんだかまた巻き込まれた感が半端ないな。
ただこの夜会に俺たちを招待する必要はあったのか?
「巻き込んでしまってすまない。ソニア嬢に万が一のことが起こらぬように、貴殿たちを招待させてもらった。」
グルーセシアとオグニスは二人そろって俺たちに頭を下げた。
どうやら身内の膿み出しが目的だったようだな。
それも一応は成功したとみていいのかもしれないな。
84
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる