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第2章
第45話 師団長リグリット
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「ではマルクス隊長。あのバカを隊舎まで連行してください。それからそこの商人。あなたにはいろいろ問題がありそうですね。その脂がなくなるまで搾り上げてみましょうか。」
「了解しました!!」
女性の蔑むような視線にがくがくと震える油塊。
それほど恐ろしい女性には見えないが……きっとあいつにとっては魔物よりも怖い存在なんだろうな。
マルクス隊長はラグウェルと油塊を引き連れて詰め所へと向かっていった。
油塊が何か騒いでいるけど、あまり気にしても仕方がないだろうな。
「リクト殿、私の部下と、こちらの領民がご迷惑をおかけしました。平にご容赦ください。」
女性は馬車から降りると深々と頭を下げてくれた。
彼女からの謝罪は必要ないけど、謝罪を受け入れないとだめだろうな。
「その謝罪を受け入れます。しかしなぜあのようなことに?」
「それについてはこれからの取り調べで明らかになると思います。」
深いため息とともに、女性から面倒だと言わんばかりの空気があふれ出した。
軽くうなだれた姿は、さっきまでの凛々しい姿とは違い、若干やつれた感がにじみ出ていた。
「分かりました。これ以上こちらに被害が無ければ問題はありませんから。」
「承知しました。私は総領都【ノーシア】防衛騎士団第4師団師団長のリグリットと申します。何かあれば私を訪ねてきてください。お力になれるかと存じます。」
そうして再度頭を下げると、リグリットさんは改めてソニアの馬車に搭乗した。
ソニアもとりあえず事が解決したことに安堵したようで、朗らかな笑みを湛えていた。
周囲にいた野次馬たちも徐々にその数を減らしていて、ここも通常通りになるのはそう時間がかからないだろう。
「リクトさん……あまり無茶をなさらないでくださいね。気が気ではありませんから。」
「俺は無茶なんてしていないんですが……。どちらかと言えば巻き込まれているだけですしね。」
ソニアはとても心配をしているという雰囲気だったが、俺は肩を竦め少しおどけて見せた。
「もう」と少し納得がいっていないようだったが、ソニアはリルとリリーに挨拶をして、この場を去っていった。
残された俺たちはとても疲れてしまったのか、乾いた笑いしか浮かんでこなかった。
「さて、これからどうする。大分時間を使ってしまったから、宿に戻って明日に備えるってことで良いか?」
「主殿、夕食はどうするつもりだ?」
リルの考えていることはなんとなくわかる。
おそらく大衆食堂【がっつり】に行きたいんだろうな。
だって、視線がそっちの方角に向いてそわそわしてるんだもの。
尻尾もかなりの勢いでぶんぶんいってる。
どう見ても待てと命じられた子犬のように見えてしまう。
「リルはやっぱり大衆食堂【がっつり 】を希望するの?」
「主殿、わかっておるではないか!!あそこの肉は格別だ!!」
今にもよだれを垂らしそうなほど興奮するリルを見て、これはいかないといけないよなと思ってしまう。
リリーも反対意見を出すつもりがないようで、俺たちはまたも大衆食堂【がっつり】に足を運ぶことにした。
しかし2食続けて大衆食堂【がっつり】ってのもどうなんだとは思わなくもないけど、俺も嬉々として向かっているから問題ないだろうな。
「へいらっしゃい!!」
「「「らっしゃ~~~~~~~~~い!!」」」
またも威勢の良い店員の声が聞こえてくる。
店に入る前から聞こえてくるあたり、昼よりも気合の入り方が違うのがうかがい知れる。
昼と少し違うのは、店先の脇に窓が解放されており、そこから焼き物の良い匂いが漂っていた。
そこにはお品書きが書かれており、串焼きなどが提供されていた。
どうやらそこではお持ち帰り用の商品を販売しているようだった。
その香ばしい良い匂いにつられ、客足は途絶えることは無かった。
「さて、夜は何を食べようかな。」
「「肉!!」」
二人は迷うことなく、肉を選択。
しかもメニュー表に書かれていた、目の前で焼いて食べるスタイルだとか。
まんま焼き肉屋だな。
鳥肉、オーク肉、ワイルドバッファロー、ドラゴンミート。
それぞれが部位ごとに値段設定されていた。
まあ、どれを頼んでいいのかわからないので、店員さんを捉まえておすすめを教えてもらった。
もちろん一番のおすすめはドラゴンミートだそうで、その中でも貴重部位……テールのスープが一押しなんだとか。
確かに俺のイメージするドラゴンと同じならば、あのしっぽの動きから見て大分引き締まったものなんだろうな。
何種類かの肉を店員さんにチョイスしてもらい、まずそれを食べてみることにした。
リルとリリーもこのスタイルでの食べ方は初めてだったようで、どうやって食べるのか気になって仕方がないといった様子だった。
それからこれも昼間と同じで、違うテーブルに運ばれてくる料理を見ては、二人とも大興奮。
次はあれを頼もうだとか、あれがおいしそうだとか。
まあおいしそうだという点では俺もそれを支持する。
何度か運ばれていった、おそらく厚さ5cmを超えるドラゴンミートの鉄板焼きは、本当に気になって仕方がなかった。
今回は網焼きを頼んだので、今度はあの鉄板焼きを頼んでみようと思う。
うん、俺たちはどうやら大衆食堂【がっつり】に胃袋をガッチリつかまれてしまったらしい。
「了解しました!!」
女性の蔑むような視線にがくがくと震える油塊。
それほど恐ろしい女性には見えないが……きっとあいつにとっては魔物よりも怖い存在なんだろうな。
マルクス隊長はラグウェルと油塊を引き連れて詰め所へと向かっていった。
油塊が何か騒いでいるけど、あまり気にしても仕方がないだろうな。
「リクト殿、私の部下と、こちらの領民がご迷惑をおかけしました。平にご容赦ください。」
女性は馬車から降りると深々と頭を下げてくれた。
彼女からの謝罪は必要ないけど、謝罪を受け入れないとだめだろうな。
「その謝罪を受け入れます。しかしなぜあのようなことに?」
「それについてはこれからの取り調べで明らかになると思います。」
深いため息とともに、女性から面倒だと言わんばかりの空気があふれ出した。
軽くうなだれた姿は、さっきまでの凛々しい姿とは違い、若干やつれた感がにじみ出ていた。
「分かりました。これ以上こちらに被害が無ければ問題はありませんから。」
「承知しました。私は総領都【ノーシア】防衛騎士団第4師団師団長のリグリットと申します。何かあれば私を訪ねてきてください。お力になれるかと存じます。」
そうして再度頭を下げると、リグリットさんは改めてソニアの馬車に搭乗した。
ソニアもとりあえず事が解決したことに安堵したようで、朗らかな笑みを湛えていた。
周囲にいた野次馬たちも徐々にその数を減らしていて、ここも通常通りになるのはそう時間がかからないだろう。
「リクトさん……あまり無茶をなさらないでくださいね。気が気ではありませんから。」
「俺は無茶なんてしていないんですが……。どちらかと言えば巻き込まれているだけですしね。」
ソニアはとても心配をしているという雰囲気だったが、俺は肩を竦め少しおどけて見せた。
「もう」と少し納得がいっていないようだったが、ソニアはリルとリリーに挨拶をして、この場を去っていった。
残された俺たちはとても疲れてしまったのか、乾いた笑いしか浮かんでこなかった。
「さて、これからどうする。大分時間を使ってしまったから、宿に戻って明日に備えるってことで良いか?」
「主殿、夕食はどうするつもりだ?」
リルの考えていることはなんとなくわかる。
おそらく大衆食堂【がっつり】に行きたいんだろうな。
だって、視線がそっちの方角に向いてそわそわしてるんだもの。
尻尾もかなりの勢いでぶんぶんいってる。
どう見ても待てと命じられた子犬のように見えてしまう。
「リルはやっぱり大衆食堂【がっつり 】を希望するの?」
「主殿、わかっておるではないか!!あそこの肉は格別だ!!」
今にもよだれを垂らしそうなほど興奮するリルを見て、これはいかないといけないよなと思ってしまう。
リリーも反対意見を出すつもりがないようで、俺たちはまたも大衆食堂【がっつり】に足を運ぶことにした。
しかし2食続けて大衆食堂【がっつり】ってのもどうなんだとは思わなくもないけど、俺も嬉々として向かっているから問題ないだろうな。
「へいらっしゃい!!」
「「「らっしゃ~~~~~~~~~い!!」」」
またも威勢の良い店員の声が聞こえてくる。
店に入る前から聞こえてくるあたり、昼よりも気合の入り方が違うのがうかがい知れる。
昼と少し違うのは、店先の脇に窓が解放されており、そこから焼き物の良い匂いが漂っていた。
そこにはお品書きが書かれており、串焼きなどが提供されていた。
どうやらそこではお持ち帰り用の商品を販売しているようだった。
その香ばしい良い匂いにつられ、客足は途絶えることは無かった。
「さて、夜は何を食べようかな。」
「「肉!!」」
二人は迷うことなく、肉を選択。
しかもメニュー表に書かれていた、目の前で焼いて食べるスタイルだとか。
まんま焼き肉屋だな。
鳥肉、オーク肉、ワイルドバッファロー、ドラゴンミート。
それぞれが部位ごとに値段設定されていた。
まあ、どれを頼んでいいのかわからないので、店員さんを捉まえておすすめを教えてもらった。
もちろん一番のおすすめはドラゴンミートだそうで、その中でも貴重部位……テールのスープが一押しなんだとか。
確かに俺のイメージするドラゴンと同じならば、あのしっぽの動きから見て大分引き締まったものなんだろうな。
何種類かの肉を店員さんにチョイスしてもらい、まずそれを食べてみることにした。
リルとリリーもこのスタイルでの食べ方は初めてだったようで、どうやって食べるのか気になって仕方がないといった様子だった。
それからこれも昼間と同じで、違うテーブルに運ばれてくる料理を見ては、二人とも大興奮。
次はあれを頼もうだとか、あれがおいしそうだとか。
まあおいしそうだという点では俺もそれを支持する。
何度か運ばれていった、おそらく厚さ5cmを超えるドラゴンミートの鉄板焼きは、本当に気になって仕方がなかった。
今回は網焼きを頼んだので、今度はあの鉄板焼きを頼んでみようと思う。
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