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第2章
第43話 グリッド・ライオネル
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「今見ていただいているものが提出された控えです。ここに記されている通り、雇用主であるライオネル商会のグリッド・ライオネル氏が所有権を主張しています。したがって、あなたは奴隷所有権を違法に奪取したとみなされているのです。」
騎士たちはさっきのリルの一睨みから復活したのか、俺が逃げないように周囲を囲み始めた。
なるほど、調べることなく逮捕するみたいな感じか?
そして説明はしましたという体を取ってると。
うん、これソニアの依頼中じゃなきゃひと暴れしたいって本気で思ってしまった。
「なるほど、雇用主がグリッド・ライオネルね……。労働者が……ルリ……と。なるほどなるほど。で、雇用契約日が今から一週間前にここの奴隷商で締結されたと……。」
だめだ、もうこれ笑えるレベルにずさん過ぎる。
騎士団ってこんなにざるな調べ方しかしないのか?
しかもかなり一方的な感じだしさ。
「何がおかしいのですか?この証拠に伴い、あなたを連行します。抵抗はせず、おとなしく従ってください。」
騎士様たちはあくまでも職務を遂行していますってことなんだろうな。
呆れてものが言えないって、おそらくこういったことか。
「リル、この人に狩猟免許証を見せてあげて。」
そう言うとリルは服に忍ばせていた狩猟免許証を騎士に提示する。
そこにはランクの他に登録地や登録日も一緒に記載されている。
しかもこの狩猟免許証は偽造不可のため、この世界でトップクラスに信用度の高い身分証だったりする。
リルの狩猟免許証を受け取った騎士は、その記載内容に目を点にする。
何度も奴隷契約書とリルの狩猟免許証を見比べて、目をぱちぱち瞬きさせる。
どれだけ目を凝らしてみても変わりはしないと思うんだが……
どうなんだ?
「失礼しました……どうやらこの奴隷契約書の方が偽物の様ですね。」
深いため息をつき、頭を振る騎士がちょっとだけ哀れに思えた。
おそらくだけど上からの命令で俺を拘束しようとしたんだろうな。
「重ねて謝罪いたします。私は総領都【ノーシア】防衛騎士団所属のマルクスと申します。今後何かあればお尋ねする事があると思いますので、その時はよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げたマルクス。
うん、きちんと頭を下げられる騎士ってだけで、俺の中では好感度うなぎ上りだ。
物語だとプライドが邪魔をして頭を下げられない阿呆が一定数いるから。
「分かりました。誤解が晴れてよかった。」
こうして面倒ごとが終わったってなれば問題なんだけど、面倒ごとのラッシュってよくあるよなって思ってしまった。
「おい、まだか!!私の奴隷を助け出したのか!!」
通りの先からなんだかよく分からない男性の声が聞こえてくる。
がやがやと野次馬が騒ぎだしているけど、逆にそのせいでその姿を見ることが出来ないでいた。
「どけ!!邪魔だ!!おい、ラグウェル!!ちゃんと対応したんだろうな!!」
「はい、もちろん滞りなく済ませてあります。我が隊でも優秀なマルクスを向かわせましたので、問題ないかと。」
何だあの油の塊見たい奴と、腰巾着レベルに腰の低い騎士は……
どかどかと歩く姿はまるでトドだ……いや、肉塊?ま、あの手狩り具合からしたら、まさに油だな。
まあ、燃料にしても臭そうだし使えないだろうな。
「おお、マルクス此処におったか。ん、その少女は……でかしたぞ!!」
「おお、間違いない、私の奴隷だ!!」
せっかく話が付いたのに……むしろ面倒ごとが倍加しやがった……
俺はマルクスに視線を送ると、その視線に気が付いたのかマルクスも天を仰いでいた。
そりゃまあ、不正をした人物とそれを誤魔化した上司が現れたんだから、頭の痛い話だよな。
「ラグウェル補佐官、この少女は違法奴隷ではありませんでした。どうやらこの奴隷契約書が偽物だったようです。」
仕方なしにマルクスは上司であるラグウェルにそう報告した。
むしろそう報告する以外に選択肢は無かったからだ。
だがその報告を良しとしなかったのが、ラグウェルだった。
「なんだと!!私を愚弄するのか⁈私が正式な書類だと認めたものをお前ごときが覆すというのか!!」
何処にでもいるんだな、こういうやつ。
自分が不利になると上下関係を盾にして、相手を黙らせる。
それがどれだけ間違っていようとも、下の人間からしたらそれを覆すのは至難の業になってしまう。
「まぁいいではないかラグウェル。誰にだって間違いはある。それにこうして私の奴隷が手元に戻ってくるんだ、私は怒ってなどおらんよ。」
ほくほく顔の油ギッシュ野郎は、その視線をリルに向けてニヤニヤしていた。
自分が勝つことを疑っていないって顔だな。
「ラグウェル、あの犯罪者を即刻捕らえて牢屋にでもぶち込んでしまいなさい。犯罪者がのさばっていては、せっかく素晴らしい総領都が台無しになってしまうからな。」
「もちろんですとも。マルクス、何ぼさっとしているんだ。さっさとあの犯罪者を拘束しろ!!ほら、お前たちもだ!!」
何だろうな……我慢って言葉が軽く感じてきた。
こういったあほは殴り飛ばしても問題ないよね?
騎士たちはさっきのリルの一睨みから復活したのか、俺が逃げないように周囲を囲み始めた。
なるほど、調べることなく逮捕するみたいな感じか?
そして説明はしましたという体を取ってると。
うん、これソニアの依頼中じゃなきゃひと暴れしたいって本気で思ってしまった。
「なるほど、雇用主がグリッド・ライオネルね……。労働者が……ルリ……と。なるほどなるほど。で、雇用契約日が今から一週間前にここの奴隷商で締結されたと……。」
だめだ、もうこれ笑えるレベルにずさん過ぎる。
騎士団ってこんなにざるな調べ方しかしないのか?
しかもかなり一方的な感じだしさ。
「何がおかしいのですか?この証拠に伴い、あなたを連行します。抵抗はせず、おとなしく従ってください。」
騎士様たちはあくまでも職務を遂行していますってことなんだろうな。
呆れてものが言えないって、おそらくこういったことか。
「リル、この人に狩猟免許証を見せてあげて。」
そう言うとリルは服に忍ばせていた狩猟免許証を騎士に提示する。
そこにはランクの他に登録地や登録日も一緒に記載されている。
しかもこの狩猟免許証は偽造不可のため、この世界でトップクラスに信用度の高い身分証だったりする。
リルの狩猟免許証を受け取った騎士は、その記載内容に目を点にする。
何度も奴隷契約書とリルの狩猟免許証を見比べて、目をぱちぱち瞬きさせる。
どれだけ目を凝らしてみても変わりはしないと思うんだが……
どうなんだ?
「失礼しました……どうやらこの奴隷契約書の方が偽物の様ですね。」
深いため息をつき、頭を振る騎士がちょっとだけ哀れに思えた。
おそらくだけど上からの命令で俺を拘束しようとしたんだろうな。
「重ねて謝罪いたします。私は総領都【ノーシア】防衛騎士団所属のマルクスと申します。今後何かあればお尋ねする事があると思いますので、その時はよろしくお願いします。」
そう言って頭を下げたマルクス。
うん、きちんと頭を下げられる騎士ってだけで、俺の中では好感度うなぎ上りだ。
物語だとプライドが邪魔をして頭を下げられない阿呆が一定数いるから。
「分かりました。誤解が晴れてよかった。」
こうして面倒ごとが終わったってなれば問題なんだけど、面倒ごとのラッシュってよくあるよなって思ってしまった。
「おい、まだか!!私の奴隷を助け出したのか!!」
通りの先からなんだかよく分からない男性の声が聞こえてくる。
がやがやと野次馬が騒ぎだしているけど、逆にそのせいでその姿を見ることが出来ないでいた。
「どけ!!邪魔だ!!おい、ラグウェル!!ちゃんと対応したんだろうな!!」
「はい、もちろん滞りなく済ませてあります。我が隊でも優秀なマルクスを向かわせましたので、問題ないかと。」
何だあの油の塊見たい奴と、腰巾着レベルに腰の低い騎士は……
どかどかと歩く姿はまるでトドだ……いや、肉塊?ま、あの手狩り具合からしたら、まさに油だな。
まあ、燃料にしても臭そうだし使えないだろうな。
「おお、マルクス此処におったか。ん、その少女は……でかしたぞ!!」
「おお、間違いない、私の奴隷だ!!」
せっかく話が付いたのに……むしろ面倒ごとが倍加しやがった……
俺はマルクスに視線を送ると、その視線に気が付いたのかマルクスも天を仰いでいた。
そりゃまあ、不正をした人物とそれを誤魔化した上司が現れたんだから、頭の痛い話だよな。
「ラグウェル補佐官、この少女は違法奴隷ではありませんでした。どうやらこの奴隷契約書が偽物だったようです。」
仕方なしにマルクスは上司であるラグウェルにそう報告した。
むしろそう報告する以外に選択肢は無かったからだ。
だがその報告を良しとしなかったのが、ラグウェルだった。
「なんだと!!私を愚弄するのか⁈私が正式な書類だと認めたものをお前ごときが覆すというのか!!」
何処にでもいるんだな、こういうやつ。
自分が不利になると上下関係を盾にして、相手を黙らせる。
それがどれだけ間違っていようとも、下の人間からしたらそれを覆すのは至難の業になってしまう。
「まぁいいではないかラグウェル。誰にだって間違いはある。それにこうして私の奴隷が手元に戻ってくるんだ、私は怒ってなどおらんよ。」
ほくほく顔の油ギッシュ野郎は、その視線をリルに向けてニヤニヤしていた。
自分が勝つことを疑っていないって顔だな。
「ラグウェル、あの犯罪者を即刻捕らえて牢屋にでもぶち込んでしまいなさい。犯罪者がのさばっていては、せっかく素晴らしい総領都が台無しになってしまうからな。」
「もちろんですとも。マルクス、何ぼさっとしているんだ。さっさとあの犯罪者を拘束しろ!!ほら、お前たちもだ!!」
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