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第2章

第39話  大衆食堂【がっつり】

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「いらっしゃいませ!!どのようなご用件でしょうか。」
「拠点移動願を出したいのだが。」

 ソニアと別れた翌日、俺たちは狩猟者連合協同組合ハンターギルドに来ていた。
 理由は拠点移動願の提出だ。
 これは大きな街の狩猟者連合協同組合ハンターギルドには必ず届け出なくてはならないという規則があるからだ。
 何か緊急案件が出来た時に、緊急指名依頼をかけるためだとか。
 と言いつつも、俺たちは現在依頼遂行中だから受けることが出来ないんだけどな。
 
「ではこちらに記入をお願いしますね。それと探索許可証ライセンスカードの提出をお願いします。」

 受付嬢から促されるように、俺たちは探索許可証ライセンスカードを渡して、書類を受け取った。

「そう言えば……えっと……」
「あぁ、すみません。名乗り忘れていました。狩猟者連合協同組合ハンターギルド【ノーシア】支店の受付担当のエリナと言います。」

 年齢的にもまだ10代後半っぽいな。
 それでもこれだけしっかりしているんだから、教育が行き届いているってことだろうな。

「エリナさん、この書類ってパーティーで提出ってことで良いんですか?一応両方の欄があるんですが。」
「はい、パーティー単位で大丈夫ですよ。ただ、リクトさんたちはパーティー登録されていませんので、各自での提出でお願いしますね。」

 そういえば狩猟免許証ハンターランクをもらった時に必要なら登録しろと言われてたっけ。
 すっかり忘れていたな。
 でもまあなくても問題無いから別に構わないな。

「というわけで、リリーとリルもこの用紙に記入してくれ。」

 俺は二人に記入用紙を手渡した。
 記入台は受付窓口のすぐそばに設置されており、台も数台設置されていた。
 そこには筆記用具も備え付けてあり、ここだけ見れば現代に見える。
 これは絶対召喚者によるものだな。
 ただ一つだけ違うのは、数人の若い女性がその台のそばに座って待っている事だろうか。

「記入ですか?代筆は必要ですか?」

 なるほどね、この世界の識字率はだいぶ低いのかな?
 こうやって代筆屋が成り立つくらいには。

「いや大丈夫だ。」

 俺が断りを入れると、残念そうに引き下がる女性たち。
 彼女たちの収入源ってわけだ。
 世界が変われば常識も変わるってわけだな。

 俺たちが記入する間にも数名の狩猟者ハンターたちが代書屋の女性を利用していた。
 その密着度合いは……どっかの風俗店ですか?ってくらいだった。
 男性狩猟者ハンターもまんざらでもない感じで、手数料以上にチップとして支払っていた。
 女性は強かって言うけど、これはこれでどうなんだ?
 まあ、鼻の下伸ばした狩猟者ハンターも悪いだけどな。

 
「エリナさん、これお願いします。」
「はい、確かに承りました。何かあれば連絡いたしますので、その時はご助力願いますね。」

 これにて狩猟者連合協同組合ハンターギルドでの用事は終わったんだけど、さっきからの視線が気になって仕方がない。
 遠くからこちらを品定めするような視線は、正直気分が良い物ではないな。
 それもその視線は俺ではなくてリリーとリルに向けられている。
 リリーたちも気が付いてはいるだろうけど、あえて無視をしている。
 まあ、何かあれば対処すればいいだけだしね。


「それじゃあ、昼も近いし飯にしようか。エリナさん、おすすめのランチってありますか?」
「でしたら大通りの大衆食堂【がっつり】なんてどうです?味量ともに申し分ないですよ?」

 そのネーミングセンスってどうなんだ?
 とりあえず大盛りでうまい店って感じなんだろうな。
 エリナさんの紹介だしそれにしてみるか。

「二人もそれでいいか?」

 二人も問題無いと首肯しているので大丈夫そうだな。

「エリナさん、ありがとうございます。また来ますね。」

 そうして俺たちは大通りに向かって移動を開始した。
 まぁ、大方の予想通りその視線の主も俺たちの移動に伴って、付いてきている。
 またソニアがらみ……ってわけでもなさそうだな。
 あいつらもお粗末だったけど、今回はそれよりもお粗末すぎる。
 隠れてついてくるわけでもない。
 目的は……まあ、予想は付くが。

「主殿……目障りなので処分してきて良いだろうか?」
「だめだって。一応街中だしな。それに何か危害を加えられたわけでもないし。知らぬ存ぜぬで逃げられるのがおちだって。」

 そんなわけで俺たちは無視することに決めた。
 一応は気配を確認したりしてるんだが、どうにもその距離を詰めてくる気はないようだ。
 何がしたいのだろうな。

「っと、ここがその目的地か……なんとも言えず、飯屋って感じがビシビシ伝わって来るな。」

 そうこうしていると、目的地である 大衆食堂【がっつり】に到着した。
 店構えもその名の通りで、暖簾にショーケース、しかもその中には食品サンプルっぽいのまである。
 これ絶対そうだろうよ!!
 メニューは……さすがに日本式とはいかなかったらしいけど、なんとかそれに近づけようと努力した形跡が見られた。
 魔骨麺とかオークカツ、親子丼もあるのか。
 そもそも鶏がいないこの世界で何の親子なんだ……聞かない方がよさげだな。
 何はともあれ食べてみればわかるはずだ。

「へいらっしゃい!!」
「「「「らっしゃ~~~~~~~い!!」」」」

 店の奥から大声の挨拶が爆音でここまで届く。
 もう何でもありだなこれ……
 店の中も日本式で、カウンターに座敷にテーブル。
 しかも子供用の椅子まで準備されてるし。
 もうここに来た奴日本人確定じゃないか⁈

 なんかもう突っ込むのを辞めよう……
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