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第2章
第38話 城門でもひと悶着
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「何たる侮辱!!」
コーウェンさんが腰の剣に手をかけようとしていた。
それを見た衛兵はやはりニヤリとした笑みを崩さなかった。
抜けるものなら抜いてみろと言わんばかりに。
「コーウェンさん、だめだって。国際問題になりますよ。それにここには融和のために出来たのでしょ?猶更やめましょう。」
俺の言葉に我を取り戻したのか、すぐに剣から手を放す。
それにしてもこの衛兵、絶対わざと挑発しているよな。
それともう一つ気になる点があるんだ。
「そう言えば、俺たちが王族の護衛にふさわしくないって言ってましたよね?」
「それはそうだろ?王族と言えば国賓級待遇をするのが一般的だ。ならば第2階級クラスを連れてくるのが当然だろう?」
やっぱりそうだ……
こいつもあの御者の担当者とグルだな。
「コーウェンさん、そっちの馬車に乗っている人は誰ですか?」
俺の質問の意図に気が付いたのか、コーウェンさんは一瞬驚いた表情を見せるも、俺の話に乗ってくれるようだ。
「この方は技術帝国【ガルテッツァ】のレウリス商会の令嬢、ソニア・レウリス嬢だ。」
そう、通行証もレウリス商会で発行している。
それに俺たちの通行証も同じくレウリス商会の護衛として発行している。
つまり、ここにいるのは王族ではなく、庶民だ。
だから俺たち第4階級の狩猟者が護衛に付いたとしても何ら差支えは無い。
「だそうですが、なぜこちらの馬車に王族がいると思ったんですか?」
「そ、それはだな……」
先ほどまでの笑みは消え、衛兵はしどろもどろになり言葉が紡げない様子。
こいつ絶対頭悪いだろ?
通行書見て普通は気が付くはずだし、罠に嵌めようと思ったら皇族がいるなんて言うはずが無い。
「どうしたのだ?」
「あ、ザック隊長……この者たちが偽の通行証を持っていたので取り調べているところです。」
さらに問い詰めようと思ったところで、さらに登場人物が増えたな。
隊長ってことはこの衛兵の上司ってところか。
「偽物な……確かにこれは偽の通行証だ。そしてもう一つは本物の通行証だな。すまない、この偽物の通行証は何処で手に入れたものなんだ?」
「これはこちらの御者の担当者から渡された物らしいです。私たちは護衛としてこの馬車に搭乗していたので、これについては分かりません。」
ザックは視線を俺たちの御者に向ける。
御者もこれを肯定するように首を縦に振っている。
「そうか、ではこの通行証はその担当者が準備したものだというのだな?」
「そうです。」
「なるほど」といいながら、2つの通行証を見比べる隊長。
その横で少し挙動不審な衛兵がいた。
「どうやら手違いがあったようで、我々の護衛であることには間違いありません。これについては我々が保証します。」
「そうですか、ならば問題無いでしょう。この通行証の偽造についてはこちらで調べます。お引止めして申し訳ない。」
コーウェンさんの身元保証を受け、俺たちは晴れて無罪放免となったようだ。
だがまだ納得いかない人物がいた。
「ザック隊長、なぜです!!なぜ、あの者たちを信用するというのですか⁈」
血相を変えて訴え続けるこの衛兵、かなり必死だな。
コーウェンさんたちもその必死さに疑念を抱いているみたいだ。
「どうしたガルガルド。いつものようにめんどくさがるかと思っていたが……」
ほう、あの衛兵ガルガルドって言う名前なのか。
「ち、違います!!あまりにも不審だと言っているんです!!王族を乗せた馬車を第4階級が護衛するなどありえません!!」
いやだからなんでお前がそれを知っているんだって話だろうに。
墓穴を掘るとはこのことなんだろうな。
ザックも同じように思ったらしく、鋭い視線でガルガルドを睨みつけた。
「ガルガルド、もう一度聞く。なぜそこまでこだわる。そもそもそちらの馬車にいるのは一般人なんだろ?だったら第4階級であろうが問題ないだろうに。」
「騙されてはいけません!!中にいるのはガルテッツァの姫です!!」
あ、いっちゃったよこいつ……
誰もその情報流してないのに。
おそらくザックですら知らないはずだ。
「ガルガルド、その話は何処で聞いた?」
「え?あの……その……」
此処でやっと自分の失言に気が付いたガルガルド。
逃げ場を探すように視線が宙を舞っていた。
表情からも生気が抜け落ち、今にも地面にへたり込みそうになっていた。
「ガルガルド、話はあとで聞くことにする。いいな?」
なんか有無も言わさぬ威圧感が、強者であることを物語っているな。
肩書からではなく、その人の生きざまそのものって感じだ。
俺たちはザックに礼を述べ、ついに城下町へと入ることが出来た。
城下町は活気にあふれ、敗戦国とは思えない程栄えている。
住民たちに笑顔が溢れていて、なんだかこっちまで気分が高揚してくる気がする。
それから俺たちはそのまま領主館まで馬車を移動させる。
さすがに俺たち狩猟者の護衛は領主館に入るわけにはいかなかったので、入り口の門でソニアたちとは別れることにした。
ソニアからは一緒にって声をかけられたが、さすがに貴族相手に気をもむのは勘弁してほしい。
というわけで、俺たちは領主館職員おすすめの宿に泊まることにした。
ソニアたちの日程は今日から一週間の滞在。
その間に親睦を深め、今後の発展的協力関係を作りそうだ。
あとは……あのバカたちが問題を起こさないことだけを祈ろう……
コーウェンさんが腰の剣に手をかけようとしていた。
それを見た衛兵はやはりニヤリとした笑みを崩さなかった。
抜けるものなら抜いてみろと言わんばかりに。
「コーウェンさん、だめだって。国際問題になりますよ。それにここには融和のために出来たのでしょ?猶更やめましょう。」
俺の言葉に我を取り戻したのか、すぐに剣から手を放す。
それにしてもこの衛兵、絶対わざと挑発しているよな。
それともう一つ気になる点があるんだ。
「そう言えば、俺たちが王族の護衛にふさわしくないって言ってましたよね?」
「それはそうだろ?王族と言えば国賓級待遇をするのが一般的だ。ならば第2階級クラスを連れてくるのが当然だろう?」
やっぱりそうだ……
こいつもあの御者の担当者とグルだな。
「コーウェンさん、そっちの馬車に乗っている人は誰ですか?」
俺の質問の意図に気が付いたのか、コーウェンさんは一瞬驚いた表情を見せるも、俺の話に乗ってくれるようだ。
「この方は技術帝国【ガルテッツァ】のレウリス商会の令嬢、ソニア・レウリス嬢だ。」
そう、通行証もレウリス商会で発行している。
それに俺たちの通行証も同じくレウリス商会の護衛として発行している。
つまり、ここにいるのは王族ではなく、庶民だ。
だから俺たち第4階級の狩猟者が護衛に付いたとしても何ら差支えは無い。
「だそうですが、なぜこちらの馬車に王族がいると思ったんですか?」
「そ、それはだな……」
先ほどまでの笑みは消え、衛兵はしどろもどろになり言葉が紡げない様子。
こいつ絶対頭悪いだろ?
通行書見て普通は気が付くはずだし、罠に嵌めようと思ったら皇族がいるなんて言うはずが無い。
「どうしたのだ?」
「あ、ザック隊長……この者たちが偽の通行証を持っていたので取り調べているところです。」
さらに問い詰めようと思ったところで、さらに登場人物が増えたな。
隊長ってことはこの衛兵の上司ってところか。
「偽物な……確かにこれは偽の通行証だ。そしてもう一つは本物の通行証だな。すまない、この偽物の通行証は何処で手に入れたものなんだ?」
「これはこちらの御者の担当者から渡された物らしいです。私たちは護衛としてこの馬車に搭乗していたので、これについては分かりません。」
ザックは視線を俺たちの御者に向ける。
御者もこれを肯定するように首を縦に振っている。
「そうか、ではこの通行証はその担当者が準備したものだというのだな?」
「そうです。」
「なるほど」といいながら、2つの通行証を見比べる隊長。
その横で少し挙動不審な衛兵がいた。
「どうやら手違いがあったようで、我々の護衛であることには間違いありません。これについては我々が保証します。」
「そうですか、ならば問題無いでしょう。この通行証の偽造についてはこちらで調べます。お引止めして申し訳ない。」
コーウェンさんの身元保証を受け、俺たちは晴れて無罪放免となったようだ。
だがまだ納得いかない人物がいた。
「ザック隊長、なぜです!!なぜ、あの者たちを信用するというのですか⁈」
血相を変えて訴え続けるこの衛兵、かなり必死だな。
コーウェンさんたちもその必死さに疑念を抱いているみたいだ。
「どうしたガルガルド。いつものようにめんどくさがるかと思っていたが……」
ほう、あの衛兵ガルガルドって言う名前なのか。
「ち、違います!!あまりにも不審だと言っているんです!!王族を乗せた馬車を第4階級が護衛するなどありえません!!」
いやだからなんでお前がそれを知っているんだって話だろうに。
墓穴を掘るとはこのことなんだろうな。
ザックも同じように思ったらしく、鋭い視線でガルガルドを睨みつけた。
「ガルガルド、もう一度聞く。なぜそこまでこだわる。そもそもそちらの馬車にいるのは一般人なんだろ?だったら第4階級であろうが問題ないだろうに。」
「騙されてはいけません!!中にいるのはガルテッツァの姫です!!」
あ、いっちゃったよこいつ……
誰もその情報流してないのに。
おそらくザックですら知らないはずだ。
「ガルガルド、その話は何処で聞いた?」
「え?あの……その……」
此処でやっと自分の失言に気が付いたガルガルド。
逃げ場を探すように視線が宙を舞っていた。
表情からも生気が抜け落ち、今にも地面にへたり込みそうになっていた。
「ガルガルド、話はあとで聞くことにする。いいな?」
なんか有無も言わさぬ威圧感が、強者であることを物語っているな。
肩書からではなく、その人の生きざまそのものって感じだ。
俺たちはザックに礼を述べ、ついに城下町へと入ることが出来た。
城下町は活気にあふれ、敗戦国とは思えない程栄えている。
住民たちに笑顔が溢れていて、なんだかこっちまで気分が高揚してくる気がする。
それから俺たちはそのまま領主館まで馬車を移動させる。
さすがに俺たち狩猟者の護衛は領主館に入るわけにはいかなかったので、入り口の門でソニアたちとは別れることにした。
ソニアからは一緒にって声をかけられたが、さすがに貴族相手に気をもむのは勘弁してほしい。
というわけで、俺たちは領主館職員おすすめの宿に泊まることにした。
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