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第2章

第37話 ついに南部総領地へ

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 ソニアとの話し合いから一夜明け、俺たちは街道を北上していた。
 大街道というだけあって、未知もきちんと整備されており、馬車の移動もスムーズに進む。
 まだまだ罠とか張られていそうだったが、その気配は全くと言って良いほど見受けられなかった。
 これで諦めてくれたら助かるんだけど……それだったら最初からちょっかいをかけてはこないだろうな。

「暇……」
「暇ねぇ~」

 馬車の中でリリーとリルがごろごろと寝ころんでは足をバタバタさせていた。
 魔物の気配もなく、第1王子派の襲撃もないため順調すぎるほど順調に進んでいる。

「暇なことは良いことだろうに。」

 俺は呆れながらも、このだらだらを楽しんでいた。
 二人はそれが苦痛だったようで、俺の言葉に顔をしかめている。

 
「リクト殿、見えてきましたよ。」

 それからしばらくして御者のおじさんから声がかかった。
 馬車から外へ顔を出すと、そこには大きな城壁がそびえたっていた。
 コンクリートではないが、それに近い質感の壁が遠くまで続いていた。

「こいつは壮観だな。」
「主殿……これは壊し甲斐がありますね。」

 いやいやリルさんや、すでに壊す前提で話をするのはやめてくれないか。
 すでにガントレット装備してるし、なんでそんなにうきうきなんだよ。

「とりあえずおとなしくしてくれ。ここで問題を起こしたらそれこそソニアの足を引っ張ることになるんだからさ。」
「うぬぅ~、分かったのだ……」

 渋々という体で装備を外すリル。
 わかってくれて助かった。

 そこからさらにしばらく移動すると、街に入るための車列に並ぶことになった。
 だいぶ厳重に調査しているのか、その車列はなかなか進まない。
 となれば動くのが商人たち。
 車列に対しての露天商が立ち並び、一種の縁日のような様相を見せていた。

「主殿、提案があるのだが。」

 リルが目を輝かせて、俺の前に正座している。
 その尻尾はぶんぶんと左右に揺れていた。

「どうしたんだリル。何かしたい事があったのか?」
「どうにもこの匂いが我慢できないのだ。」

 匂い?……あぁ、露天商の食い物やか。
 確かに良い匂いがここまで漂ってきているな。
 ただ俺たちは護衛としてここにいるわけだから、その任務を離れるわけにはいかない。
 というわけで、リルにはステイを命じた。
 リルは今にも泣きだしそうなほど、目を潤ませていたが、ここはリーダーとしてビシッとしておかなければ。

「とりあえず静かにしてような?」
「仕方ないのである……」

 耳が良い気に垂れて、尻尾が元気なく床をテシテシと叩いているのがまた妙に可愛いな。

 さて、そろそろ動き出してくれてもいいんだが……前の方が騒がしいな。
 また何かトラブルが発生してなきゃいいんだけど。
 
 俺はそのまま様子を注視していたら、並んでた馬車が移動を開始した。
 それも衛兵に周りを囲まれるようにして。
 何やら御者が騒いでいるようだけど、全く意に介していなかった。
 いったい何があったのやら。


「止まれ!!馬車を検分する!!」

 衛兵の一人が俺たちの車列の停止を指示した。
 ソニアたちが乗る馬車も同じく停車し、通行証などを提出していた。
 俺たちの馬車にも衛兵がやってきて、御者が衛兵に通行証を手渡した時事件が起こったのだった。

「これをどこで手に入れたのだ?」
「はい、前の馬車の御者と私は同じ組合の者です。出発前にこの通行証を担当から渡されたのですが……何か不備でもあったのでしょうか?」

 御者もなぜそう聞かれたのか分からない様子だった。
 確かこの御者の担当者は……人族か……嫌な予感しかしないな。

「この通行証は偽物だ!!どういうことだこれは!!」
「えぇ!?私に聞かれても分かりませんよ……こまったなぁ~。」

 なるほどそう来たか……
 あの担当者も手の者だったて訳か。
 ここにきてこれはまずいな。
 ソニアたちは問題なく中に入ることが出来る。
 だが俺たちはこの後検閲を受けてからでないと入ることが出来ない。
 その間ソニアたちは先に行くか、俺たちを待つかの選択をしなくてはならない。
 だがソニアたちには予定がある為あまり足止めを喰らうわけにはいかない。
 そうなれば先に行くという選択肢を取らざるを得なくなるな。

 くそ、やられた。
 完全に俺たちを引き離す作戦ってわけだ。
 地味だけどなかなか効果的な作戦じゃないか。
 しかも俺たちは書類偽造の嫌疑もかけられるだろうから、少し遅れるってレベルじゃないはずだ。

「この馬車は俺たちについてくるように!!」

 だめだこれは詰んだな。

「待たれよ!!この者たちは我らの護衛である!!」

 コーウェンさんが慌ててこっちに来てくれた。
 さすがに護衛騎士が出張れば回避できそうだな。

「護衛……ですか。そうは見えないのですが?」

 おっと、ここでそれを言うか……
 確かに見た目若い男と、見た目見少女と、見た目若い妖精族……
 信用しろって方がおかしいな。

「では護衛という証拠を出してもらえますか?」
狩猟免許証ハンターランクくらいしか身元証明は無いが……それでいいか?」

 俺は自分の狩猟免許証ハンターランクを提示した。
 リルとリリーも俺に倣って狩猟免許証ハンターランクを提示する。
 それを受け取った衛兵はなぜか一瞬ニヤリと笑ったように見えた。
 そしてこいつも人族……まさか……な。

「確かに狩猟者ハンターであることは間違いないな。だが、第4階級ねぇ。王族を護衛するにしてはいささかランクが低すぎるのではないですか?」
「な!?護衛を依頼している我等が保証すると言っているのだから、間違いないではないか!!」

 コーウェンさんが声を荒げるも、その衛兵は聞く耳を持つ気は無かったようだ。
 俺に狩猟免許証ハンターランクを提示を放り投げると、その笑みを浮かべた顔は変わることが無かった。
 
「やはり一度取り調べが必要そうだな。身分を証明できたからと言って書類の偽造には変わりがないからな。」

 あ、ヤバイ……コーウェンさんがキレそうだ。
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