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第2章
第36話 帝国の事情
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「ちょっと整理させてもらうと、皇帝が倒れて継承争いが始まった。その理由が第1王子が人族至上主義を謳っているから。で、それを阻止しようとした勢力がソニアを担ぎ上げたと。これであってるか?」
「左様にございます。」
俺の言葉にラングスタが頭を下げ肯定する。
なかなかどうして面倒だなって言うのが俺の感想だ。
乗りかかった船だし、俺もターゲットになっているみたいだから火の粉は払うけど。
「それで、ソニア側の勢力はどうなっているんだ?」
「はい、獣人系・亜人系の名だたる貴族や豪商……狩猟者に至るまで我もと集まっております。」
いかに人族至上主義を掲げても、おそらく人族よりも姫様サイドの方が圧倒的に有利そうだな。
「陸人……少しだけいいかしら?」
「どうしたリリー?」
リリーから少しだけレクチャーがあったけど、商人も人族よりも獣人・亜人の比率が高いそうだ。
しかも、人族よりもやり手だとか。
狩猟者も然りで、その身体能力の差で高ランク者は獣人・亜人が多いみたいだ。
つまりそう言うことか……
人族の商人・狩猟者からすれば、獣人・亜人は疎ましい存在だってわけだ。
人族全員がそうではないだろうけど、強欲な者ほどそう考えても不思議じゃない。
だからこそ〝人族至上主義〟の旗頭が必要で、それが第1王子だったて訳だ。
そうなると第1王子の支持基盤の軍部には相当数の支持者がいるとみて間違いないな。
しかもすでに神聖国がだいぶ食い込んでいそうだ。
「ラングスタさん一ついいか?これは答えるかどうかは任せる。軍部の上層部に獣人・亜人はどれだけいるんだ?」
「……おおよそ7割かと……」
だいぶ比率が高いな。
これは人族至上主義の奴らからしたらたまったもんじゃないな。
おそらくこれ幸いにと便乗して昇格狙おうとしている人族が多そうだ。
「それならなんで軍部にいる獣人・亜人は抵抗しなかったんだ。それだけの勢力だったら人族の上層部をいくらでも止められただろうに。」
「それは元老院が後ろ盾に付いたからです。」
うわ、またここで権力者追加されたよ。
ということは、元老院はすでに人族至上主義を掲げているってわけか。
もしかすると時間をかけて神聖国に侵食されてきていたのかもしれないな。
なんだかどろどろの西洋時代劇でも見ている気分になってきたな。
「頼みの綱の皇帝陛下も床に臥せ……行為の権力者が侵食を受けていると……なかなかどうして先行きが怪しいな。」
「左様でございますな。」
ラングスタもどこか疲れた様子に見えた。
ただこの話がどこまで本当なのか俺には分からない。
だが今ここでこの地が戦争になってもらっちゃ困るのだけは間違いない。
そうしないと〝呪いの魔王〟復活阻止の活動が出来なくなってしまうからな。
だったら俺は全力でソニアを手助けするだけだ。
「よし分かった。俺はソニアを信じる。リリーとリルもいいよな?」
「我は主殿に付き従うだけ。そこにその他の思惑など介入するはずもない。」
「私は別に構わないわよ?」
「だそうです。どうしますか?」
俺の問いにソニアは深呼吸を行うと、俯かせていた顔を上げた。
その顔には覚悟と決意がにじんでいた。
「ご助力願えますでしょうか。」
「分かりました。」
なんだか遠回りになってきたけど、こればかりは致し方ないか。
俺の目的の為でもあるしな。
ただこうなると気になってくるのがもう一勢力……俺以外の転移者たちだ。
特に人族至上主義に加担している奴らだっているだろうしな。
神聖国を選ぶ奴らは恐らくそうだと認識しておかなくちゃならんだろうな。
この情報をソニアたちに伝えるべきか否か……
伝えるとなると、俺についても詳しく話す必要が出てくる。
それにこの世界での転移者の扱いが良いか悪いかすら分からないからな……
「陸人の懸念は正解よ。場所によっては保護という名目で奴隷化される場合もあるわ。特に神聖国では聖者として丁重に扱うと言ってはいるものの、与えられた装飾品類に奴隷化の魔法が施されているわ。」
こっそりと俺にリリーが教えてくれた。
それだけ面倒な奴らなんだろうな。
出来れば転移者たちとは関わりたくないんだが……そうも言ってられないだろうな。
敵対する事も視野に入れて行動が必要ってわけだ。
「それじゃあ今後の方針だけど、ソニアは元四天王の領地に行って融和を取り付けるってことで良いんだよな?俺たちはその間護衛をすると。」
「はい、それでお願いします。」
ソニアは再度頭を下げた。
皇族がそんなに簡単に頭開下げても良いのだろうか。
「まずは南の総領主、グロ―セシア様の下に向かいます。その後東の総領主、北の総領主、そして最後の西の総領主に謁見する予定です。」
まさに外交行脚ってわけだ。
そして第1王子としてはこれが成功されては困るわけだ。
成功して協定を結べば、これ以上ない〝人族至上主義〟への牽制になるから。
その為のここまでの妨害工作ってわけか。
それにしても大分お粗末と言えなくはないな。
軍部を完全掌握できているわけではないので、動きも緩慢だし。
さてさて、これからどうなる事やら……
「左様にございます。」
俺の言葉にラングスタが頭を下げ肯定する。
なかなかどうして面倒だなって言うのが俺の感想だ。
乗りかかった船だし、俺もターゲットになっているみたいだから火の粉は払うけど。
「それで、ソニア側の勢力はどうなっているんだ?」
「はい、獣人系・亜人系の名だたる貴族や豪商……狩猟者に至るまで我もと集まっております。」
いかに人族至上主義を掲げても、おそらく人族よりも姫様サイドの方が圧倒的に有利そうだな。
「陸人……少しだけいいかしら?」
「どうしたリリー?」
リリーから少しだけレクチャーがあったけど、商人も人族よりも獣人・亜人の比率が高いそうだ。
しかも、人族よりもやり手だとか。
狩猟者も然りで、その身体能力の差で高ランク者は獣人・亜人が多いみたいだ。
つまりそう言うことか……
人族の商人・狩猟者からすれば、獣人・亜人は疎ましい存在だってわけだ。
人族全員がそうではないだろうけど、強欲な者ほどそう考えても不思議じゃない。
だからこそ〝人族至上主義〟の旗頭が必要で、それが第1王子だったて訳だ。
そうなると第1王子の支持基盤の軍部には相当数の支持者がいるとみて間違いないな。
しかもすでに神聖国がだいぶ食い込んでいそうだ。
「ラングスタさん一ついいか?これは答えるかどうかは任せる。軍部の上層部に獣人・亜人はどれだけいるんだ?」
「……おおよそ7割かと……」
だいぶ比率が高いな。
これは人族至上主義の奴らからしたらたまったもんじゃないな。
おそらくこれ幸いにと便乗して昇格狙おうとしている人族が多そうだ。
「それならなんで軍部にいる獣人・亜人は抵抗しなかったんだ。それだけの勢力だったら人族の上層部をいくらでも止められただろうに。」
「それは元老院が後ろ盾に付いたからです。」
うわ、またここで権力者追加されたよ。
ということは、元老院はすでに人族至上主義を掲げているってわけか。
もしかすると時間をかけて神聖国に侵食されてきていたのかもしれないな。
なんだかどろどろの西洋時代劇でも見ている気分になってきたな。
「頼みの綱の皇帝陛下も床に臥せ……行為の権力者が侵食を受けていると……なかなかどうして先行きが怪しいな。」
「左様でございますな。」
ラングスタもどこか疲れた様子に見えた。
ただこの話がどこまで本当なのか俺には分からない。
だが今ここでこの地が戦争になってもらっちゃ困るのだけは間違いない。
そうしないと〝呪いの魔王〟復活阻止の活動が出来なくなってしまうからな。
だったら俺は全力でソニアを手助けするだけだ。
「よし分かった。俺はソニアを信じる。リリーとリルもいいよな?」
「我は主殿に付き従うだけ。そこにその他の思惑など介入するはずもない。」
「私は別に構わないわよ?」
「だそうです。どうしますか?」
俺の問いにソニアは深呼吸を行うと、俯かせていた顔を上げた。
その顔には覚悟と決意がにじんでいた。
「ご助力願えますでしょうか。」
「分かりました。」
なんだか遠回りになってきたけど、こればかりは致し方ないか。
俺の目的の為でもあるしな。
ただこうなると気になってくるのがもう一勢力……俺以外の転移者たちだ。
特に人族至上主義に加担している奴らだっているだろうしな。
神聖国を選ぶ奴らは恐らくそうだと認識しておかなくちゃならんだろうな。
この情報をソニアたちに伝えるべきか否か……
伝えるとなると、俺についても詳しく話す必要が出てくる。
それにこの世界での転移者の扱いが良いか悪いかすら分からないからな……
「陸人の懸念は正解よ。場所によっては保護という名目で奴隷化される場合もあるわ。特に神聖国では聖者として丁重に扱うと言ってはいるものの、与えられた装飾品類に奴隷化の魔法が施されているわ。」
こっそりと俺にリリーが教えてくれた。
それだけ面倒な奴らなんだろうな。
出来れば転移者たちとは関わりたくないんだが……そうも言ってられないだろうな。
敵対する事も視野に入れて行動が必要ってわけだ。
「それじゃあ今後の方針だけど、ソニアは元四天王の領地に行って融和を取り付けるってことで良いんだよな?俺たちはその間護衛をすると。」
「はい、それでお願いします。」
ソニアは再度頭を下げた。
皇族がそんなに簡単に頭開下げても良いのだろうか。
「まずは南の総領主、グロ―セシア様の下に向かいます。その後東の総領主、北の総領主、そして最後の西の総領主に謁見する予定です。」
まさに外交行脚ってわけだ。
そして第1王子としてはこれが成功されては困るわけだ。
成功して協定を結べば、これ以上ない〝人族至上主義〟への牽制になるから。
その為のここまでの妨害工作ってわけか。
それにしても大分お粗末と言えなくはないな。
軍部を完全掌握できているわけではないので、動きも緩慢だし。
さてさて、これからどうなる事やら……
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