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第2章
第35話 帝位継承争い
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「それで、お話しいただけるのですよね?」
パチパチと焚火が爆ぜる中、俺とソニアは焚火を挟み向かうように簡易椅子に座る。
すでに夜は更け、あたりが静寂の闇に包まれていた。
「ここからは帝国の秘部に関わる問題ですので、他言無用願います。」
護衛としてついていたコーウェンさんからの忠告。
それはそれに無言でうなずき、了承の意を伝える。
それを答えと受け取り、ソニアが事のあらましを教えてくれた。
それについてはリリーもおおむね把握している内容に差異は無かったようだ。
「まず第一に父が……皇帝が病に侵されています。これは今だ好評されていない内容です。」
ソニアは真剣なまなざしの中に不安と憤りを綯交ぜにしている。
俺がコーウェンさんに視線を送ると頷き返してくれたので、どうやら本当の事らしい。
リリーもそれは把握しているけど、少しだけその表情は曇っている。
何か他にもありそうだけど、それはリリーが話さないだろうな。
「皇帝陛下も時期皇帝を明言されぬまま床に臥せられましたので……」
コーウェンさんもどこか暗い顔を見せている。
それほど城内は混乱しているってことなんだろうな。
そうなってくると帝位争いが本格化してくると。
この辺は依頼を受ける際に説明してもらったが……
「一つ質問なんだけど、こういう時って普通第一王子が後継者になるんじゃないのか?」
「そうですね、それが慣例です。ですが今回は事情が違うのです。」
そう言うとソニアは手を強く握りしめ、唇を強く噛み締めていた。
おそらくソニア自身に関係している事なのだろうな。
「事情とは?」
「はい、お兄様……第一王子ウォルフ・ド・ガルテッツァが神聖国とつながりを持ちました。もともとお兄様は差別主義者ではありませんでした。しかしお兄様もご友人がたまたま街で襲撃を受け、下半身不随の重傷を負ってしまったのです。現在の魔法医学ではどうする事もできませんでした。」
たまたま……ね。
「そしてあろうことが捕まった襲撃者は獣人だったのです。しかもその方もまた学園のご学友……でした。」
事実は小説より奇なりってことか?
どこぞの小説でもあるまいし、あまりにも出来過ぎじゃないのかこれ?
「もちろんきちんと調べたうえでの捕縛だったんですよね?」
「分かりません……私にはそこまで調べる権限がありませんでしたから。ですが軍部の調査隊が調べた結果でしたので、そのまま罪が確定してしまいました。」
これまたおかしい話だな。
ガルテッツァの憲兵隊はないがしろにされたってわけか。
普通だったらこれを調べるのって憲兵隊の役割だろ?
これが襲撃を受けたのが王族ならまだしも、あくまでも王子の友人。
そこに軍部が出張るのがあまりにもナンセンスだ。
「もちろんそのご学友はもちろん罪を否定したんだろ?」
「分かりません。私が知ったころにはすべての処理が終わっていましたので。」
おいおい罪人にクチナシってか……
確実に何か絡んでるのは間違いないな。
おそらく神聖国がらみだろうけど。
ソニアは悔しそうに震えていた。
自分も獣人だけに、無実の罪を着せられている可能性も考えてしまったんだろうな。
「それからお兄様の人族至上主義が加速していきました。それからというもの私を見る目も何か蔑むものに変わっていました。事ある毎に罵声を浴びせるようにもなって……」
涙ぐむソニアにかける言葉が無かった。
自分に非の無い罵声程、心に来るものはない。
俺はソニアが話し始めるのを待つことにした。
「それからお兄様の周辺はがらりと変わりました。そば仕えの者はすべて人族とし、お兄様に関わること全てから獣人は排除されました。」
「徹底しているな。そこまで獣人を憎んでいるのか……」
ソニアはこの話をし始めると身体を震わせていた。
おそらく見るに堪えない場面に出くわしてしまったのだろうな。
ソニアの顔はみるみる青ざめていた。
「ここからは私がお話いたします。」
ソニアに変わり、執事のラングスタが引き継いでくれるようだ。
話してくれるなら誰でもいいんだけどね。
とりあえず俺はラングスタさんの言葉を待つことにした。
「ソニア様は第3王女ですが、現皇后様の子ではありません。皇帝陛下が愛された平民の庶子なのです。もともと皇后様はこういっては何ですが、政略結婚であり、しかも人族至上主義の神聖国【ルミナリア】の第2王女だったのです。」
「なるほど、バリバリの差別主義者だな。」
現皇后の話になったとたん、ソニアは身体をビクリと跳ねさせた。
何やら根が深そうだな。
「ちなみに第2皇子であります、セオール様は帝位継承権を破棄され、魔道具発展に尽力されております。あと第1・第2王女様はすでに嫁ぎ先が決まっており、セオール様同様継承権破棄を行っております。つまり現在第1王子に対抗できるのは第3王女であるソニア様なのです。」
「そりゃ妨害工作がエスカレートするわけだ。こう言っちゃなんだが、姫様はセオール殿下にとって目の上のたん瘤ってわけだ。」
ラングスタが黙ってうなずいているから、そう言うことなんだろうな。
とりあえず分かったことは、俺は完全に巻き込まれたってことだな。
パチパチと焚火が爆ぜる中、俺とソニアは焚火を挟み向かうように簡易椅子に座る。
すでに夜は更け、あたりが静寂の闇に包まれていた。
「ここからは帝国の秘部に関わる問題ですので、他言無用願います。」
護衛としてついていたコーウェンさんからの忠告。
それはそれに無言でうなずき、了承の意を伝える。
それを答えと受け取り、ソニアが事のあらましを教えてくれた。
それについてはリリーもおおむね把握している内容に差異は無かったようだ。
「まず第一に父が……皇帝が病に侵されています。これは今だ好評されていない内容です。」
ソニアは真剣なまなざしの中に不安と憤りを綯交ぜにしている。
俺がコーウェンさんに視線を送ると頷き返してくれたので、どうやら本当の事らしい。
リリーもそれは把握しているけど、少しだけその表情は曇っている。
何か他にもありそうだけど、それはリリーが話さないだろうな。
「皇帝陛下も時期皇帝を明言されぬまま床に臥せられましたので……」
コーウェンさんもどこか暗い顔を見せている。
それほど城内は混乱しているってことなんだろうな。
そうなってくると帝位争いが本格化してくると。
この辺は依頼を受ける際に説明してもらったが……
「一つ質問なんだけど、こういう時って普通第一王子が後継者になるんじゃないのか?」
「そうですね、それが慣例です。ですが今回は事情が違うのです。」
そう言うとソニアは手を強く握りしめ、唇を強く噛み締めていた。
おそらくソニア自身に関係している事なのだろうな。
「事情とは?」
「はい、お兄様……第一王子ウォルフ・ド・ガルテッツァが神聖国とつながりを持ちました。もともとお兄様は差別主義者ではありませんでした。しかしお兄様もご友人がたまたま街で襲撃を受け、下半身不随の重傷を負ってしまったのです。現在の魔法医学ではどうする事もできませんでした。」
たまたま……ね。
「そしてあろうことが捕まった襲撃者は獣人だったのです。しかもその方もまた学園のご学友……でした。」
事実は小説より奇なりってことか?
どこぞの小説でもあるまいし、あまりにも出来過ぎじゃないのかこれ?
「もちろんきちんと調べたうえでの捕縛だったんですよね?」
「分かりません……私にはそこまで調べる権限がありませんでしたから。ですが軍部の調査隊が調べた結果でしたので、そのまま罪が確定してしまいました。」
これまたおかしい話だな。
ガルテッツァの憲兵隊はないがしろにされたってわけか。
普通だったらこれを調べるのって憲兵隊の役割だろ?
これが襲撃を受けたのが王族ならまだしも、あくまでも王子の友人。
そこに軍部が出張るのがあまりにもナンセンスだ。
「もちろんそのご学友はもちろん罪を否定したんだろ?」
「分かりません。私が知ったころにはすべての処理が終わっていましたので。」
おいおい罪人にクチナシってか……
確実に何か絡んでるのは間違いないな。
おそらく神聖国がらみだろうけど。
ソニアは悔しそうに震えていた。
自分も獣人だけに、無実の罪を着せられている可能性も考えてしまったんだろうな。
「それからお兄様の人族至上主義が加速していきました。それからというもの私を見る目も何か蔑むものに変わっていました。事ある毎に罵声を浴びせるようにもなって……」
涙ぐむソニアにかける言葉が無かった。
自分に非の無い罵声程、心に来るものはない。
俺はソニアが話し始めるのを待つことにした。
「それからお兄様の周辺はがらりと変わりました。そば仕えの者はすべて人族とし、お兄様に関わること全てから獣人は排除されました。」
「徹底しているな。そこまで獣人を憎んでいるのか……」
ソニアはこの話をし始めると身体を震わせていた。
おそらく見るに堪えない場面に出くわしてしまったのだろうな。
ソニアの顔はみるみる青ざめていた。
「ここからは私がお話いたします。」
ソニアに変わり、執事のラングスタが引き継いでくれるようだ。
話してくれるなら誰でもいいんだけどね。
とりあえず俺はラングスタさんの言葉を待つことにした。
「ソニア様は第3王女ですが、現皇后様の子ではありません。皇帝陛下が愛された平民の庶子なのです。もともと皇后様はこういっては何ですが、政略結婚であり、しかも人族至上主義の神聖国【ルミナリア】の第2王女だったのです。」
「なるほど、バリバリの差別主義者だな。」
現皇后の話になったとたん、ソニアは身体をビクリと跳ねさせた。
何やら根が深そうだな。
「ちなみに第2皇子であります、セオール様は帝位継承権を破棄され、魔道具発展に尽力されております。あと第1・第2王女様はすでに嫁ぎ先が決まっており、セオール様同様継承権破棄を行っております。つまり現在第1王子に対抗できるのは第3王女であるソニア様なのです。」
「そりゃ妨害工作がエスカレートするわけだ。こう言っちゃなんだが、姫様はセオール殿下にとって目の上のたん瘤ってわけだ。」
ラングスタが黙ってうなずいているから、そう言うことなんだろうな。
とりあえず分かったことは、俺は完全に巻き込まれたってことだな。
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