フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~

華音 楓

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第2章

第34話 戦い終えてもう一難

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「これはどういうことか!!」

 俺たちが戦後処理をしていると、何か車列の後ろからドスドスと足音を慣らし声を上げている人物が近づいてくる。
 どう見てもさっき命乞いをしたコバンザメな商人だった。
 何をどう見て怒りをあらわにしているのかいまいちわからないな。

「どうされましたかな?」

 コーウェンさんが先んじて商人に接触を図る。
 姫様まで行かれると面倒だからというのもあるだろうが、それ以外にも何かありそうだ。

「どうもこうもあるか!!これはいったいどういうことだと言っているんだ!!どうして私が野盗に襲われて、さらにアンデッドにも襲われなくちゃならないんだ!!」

 この小太りのおっさんはいったい何を言っているんだ?
 護衛を付けずに命が助かっただけ儲けもんだろうに。

「そう言われましても、我々の一団では無い方々ですので……我々にはどうする事も……」

 これにはコーウェンさんも困惑していた。
 確かに姫様たちに巻き込まれた形だが、特段こちらと共に行動しているわけでもない。
 あくまでも自己判断かつ自己責任がこの世界の旅だ。
 それをコバンザメのようについてきて、守れというほうがどうかしている。
 それでもなおその商人はずっと吠え続けていた。

「ええぇい、埒が明かん!!そちらの代表に話を付ける!!案内しろ!!」

 さすがにそれは無理な話だよな。
 一国の姫君にアポなしで合わせろって言う話なんだから。
 それにしてもこの商人、なんかおかしいな……
 一応狐族の獣人の様だけど、さっきから尻尾が全く動いてない。
 それどころか耳も動いていない。
 まさか……な。

 俺はそっと気配を消して、その商人の後ろに立つ。
 それに気が付いたコーウェンさんが一瞬驚くも、何か察したようですぐに取り繕った。
 そして俺はそっとその商人の尻尾をつかむ。
 普通だったらここで気が付くはずだが、その様子はなく、いまだコーウェンさんに食って掛かっていた。

 確定だな……

 俺は商人の頭をがっしりと掴んで、地面に押し付けた。
 商人は一瞬何があったのか分からないという表情を浮かべていたが、自分が地面に押し付けられていることに気が付き、悪態を垂れ始める。
 だが俺はそんなの関係ないとばかりに、その尻尾を引っ張り抜き取った。

「なにしやがる⁈」
「それはこっちのセリフだろ?どう見てもこれは偽物の尻尾だ。それにその耳も同じだろ?」

 俺はそう言うと、そのまま耳を鷲掴みにして力いっぱい引っぺがした。
 見事その耳も偽物で、どっからどう見ても人族のおっさんだった。
 まさか3つ4つの罠を仕掛けてくるとはな。
 相手も相当頭が切れるのか、焦っているのか。

「は、離せ!!同じ人族だろう!!どうしてこんな薄汚い連中に与しやがるんだ!!」

 本性を現した商人はギラリと俺を睨む。

 さすがに最後尾にいたもんだから、そこまで気にかけていなかった。
 これは確認しなかった俺の失策だな。
 出発前にこの可能性も視野に入れておかなければならなかったが……
 
「それはお前に関係のない話だろ?それにお前の思想を俺に押し付けるな。」

 俺自身の心の温度が下がっていくのが分かる。
 こいつらと同列に語られるのがたまらなく嫌悪感を覚える。
 何が人族最高だ……俺から言わせれば、お前らの行動が一番最悪だ。
 同じ世界、同じ場所で生きているのになぜそこまで……
 って、思うのは俺が日本人だからだろうか。
 よそ様の国に攻め込んでまで自分の理想を押し付ける輩……
 俺には理解に苦しむ。

「わ、我だが神……【ルミナリア】様こそ世界を救うお方!!貴様にそれがなぜわからん!!」
 
 もうこいつら隠す気ないだろ?
 完全に人族至上主義の神聖国【ルミナリア】が主導権を握ってるんじゃないか?
 それだけ神聖国の影響が技術帝国【ガルテッツァ】に伸びてるってことだろうな。
 おそらく第1王子は信徒又は影響を受けている人物で確定だろう。
 そうなると犬人族の血をひいているであろうソニアは許される存在じゃないってなるわけだ。

 これは答え合わせが必要だろうな。

 取り合えず商人を生きたまま捉えられたのは大きいな。
 こいつをしっかり尋問して、前にとらえたやつらも尋問すればある程度の情報はそろうだろうな。

 
「というわけで、そろそろ話してくれませんか姫様。」

 俺は姫様の馬車に戻ると、話を急かすように問いかけた。
 ソニアも少し言い淀んでいたが、執事のラングスタが代わりに説明を始めた。

「申し訳ありませんリクト殿。これは王族の信頼に関わる問題故、大事には出来なかったのです。」
「それは別に構わないよ。それはそっちの問題だし。ただ、相手がだれで狙いは何かも誤魔化されていたのでは対応しようにも難しい場合がある。俺は今回相手がだれかまだはっきりしないと聞いていた。なんとなくそうではないかと思ってはいたが、それだって確証はない。だけどあなた方は確証があったのではないのですか?」

 さすがに今回ばかりは甘い顔は出来ない。
 コバンザメしているとは言え、あの商人以外にも護衛のついた商隊が巻き込まれていた。
 万が一そっちに被害が出たらどうするんだって話だ。
 それに契約した内容に違反する事にもつながる。

「分かりました……すべてをお話いたします。ただここではなんですので、次のキャンプ地まで移動しましょう。姫様もよろしいですな?」

 ソニアは観念したように頭を縦に振ったのだった。
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