28 / 51
第2章
第28話 出発
しおりを挟む
結局俺は、コーウェンさんの依頼を受けることにした。
ただいくつかの条件は出させてもらったが。
1つ、民間人に被害を出さないこと。
2つ、俺たちの事を詮索しないこと。
3つ、必ず狩猟者連合協同組合を通すこと。
いくら政争だと言っても他国の臣民に被害を出したら元も子もないことだから、これくらいは言ってもいいはずだ。
それにこれすら守れないなら、政争で勝目なんてありはしないから。
コーウェンさんは俺の申し入れに対し、即答は控えた。
まあそりゃそうだって話だしね。
そのまま俺たちの宿を後にして、確認に戻っていった。
それから数時間後、息を切らせながらコーウェンさんが戻ってきた。
ギルドからの直接依頼書を手にして。
「リクトさん、今日からよろしくお願いいたします。」
「頭を上げてください。これは護衛依頼ですから。仕事は全うしますよ。」
俺の言葉を聞いたソニア・ド・ガルテッツァ王女は若干の苦笑いを浮かべた。
慣れ慣らしくするつもりもないし、仲良くするつもりもない。
俺はあくまで依頼を受けただけだし、これから起こる火の粉を払うための餌だとしか思っていない。
どうも俺はガルテッツァから敵対視されているみたいだ。
それをクリアにしないことには今後の行動を邪魔されてしまいかねない。
ということで姫様にはぜひとも王位を取ってもらいたいものだ。
俺たちの他に護衛騎士が10名とおそらく隠れているのが暗部かな?その辺は俺には分からないけど。
コーウェンさんの他数名は前回の襲撃時にいた騎士たちだろうな。
残りは追加人員か。
その他にはきりっとした執事と、どう見てもそっちの家業が本職だろ?って思えるようなメイドが一人。
総勢16名の旅路だ。
「そう言えば聞いてなかったですが、なぜ俺たちに依頼を?コーウェンさんからは腕を見込んでって話でしたが、それだけではないですよね?こんな得体のしれない狩猟者を雇うんですから。」
「はい、この街の領主様よりお話があったんです。人族の狩猟者や諜報員と対峙している人族の狩猟者がいると。その人はこの街で精力的に活動をしていくれているから、人族だとしても信用のおけるものだと。」
なんとも高評価を受けてるな。
多分人族のもめごとの件で領主に話が言ってたんだろうな。
「ところで……リクトさんの後ろにいる方々を紹介していただきたいのですが……」
我関係ないとばかりに俺の後ろでリリーとリルが遊んでいた。
まあ、リルからすれば護衛だろうとなんだろうと戦えればそれでいいくらいの感覚なんだろうな。
「リリー、リル。こっち来て。」
俺の呼びかけでやっと重い腰を上げるかのようにこっちに向かってくる二人。
終始面倒だなって思いが伝わってくる。
「では、こっちの銀髪の少女がリル。前衛の格闘家です。で、こっちの妖精族がリリー。魔法職で、その腕は狩猟者の中ではトップクラスだと思います。」
「その節はお世話になりました。技術帝国【ガルテッツァ】第2王女ソニア・ド・ガルテッツァと申します。気軽にソニアとお呼びください。」
ソニアはそう言うと優雅にお辞儀をした。
庶民に頭を下げる王族ね……俺もちょっと考えを改める必要がありそうだ。
何せ俺の王族・貴族のイメージは物語上の者しかないから、どうしても威張り散らしたり、傲慢だったりに偏っていた。
だがソニアはきちんと頭を下げることが出来る人物。
駒の1つって考えるのは失礼だな。
「リリーよ。私が居れば問題なんて起こらないわ!!」
リリーはつつましやかな胸を大きく反ってドヤ顔全開だった。
ソニアも久しぶりに見たリリーに目を奪われていた。
ずっとかわいいって小さな声で連呼している姿に、コーウェンさんも少し頭を抱えていた。
どうやらソニアは可愛いに目がなかったらしいな。
チラリとリルを見た視線が、獲物を狙う狩猟者のように鋭かった。
「我をそのような目で見るな。全くこれだから小娘は嫌いなのだ。」
ものすごく嫌そうな表情のリルは、若干引き気味でだった。
さっきまでの余所行きの態度が一変し、両手をワキワキさせながら、リルに「モフモフしてもいい?ねぇ、良いわよね?」って言いながら、その距離を詰めている。
リルもあまりの怖さにじわりじわりと後退りを始めていた。
あのフェンリルを後退させるとは……ソニアは違う意味ですごい人材かもしれないな。
「では姫様、準備が整いましたので出発いたしましょう。これ以上遅くなればキャンプ予定地に到着できなくなります。」
「分かりました……仕方がありませんわ……。ではリリーさん、リルさんまた後で。」
ものすごく名残惜しそうに自分の馬車に搭乗するソニア。
嵐が去ったかのように安心するリリーとリル。
どうも互いの印象が違い過ぎるな。
「出発!!」
護衛隊長のコーウェンさんの合図を皮切りに馬車の列が動き始めた。
なぜ列かと言うと、本当は俺たちだけで行動を開始する予定だった。
だが商隊が2つほど相乗りする形になっていた。
もちろんコーウェンさんは断ったが、俺たちのあとを少し離れてついてきていた。
つかず離れず……なんともうっとおしい。
リリー曰くたまにこういった行動をとる商人がいるそうだ。
自前の護衛だけでは不安だったり、最悪護衛を雇う金を惜しんでこのようにコバンザメをする輩がいるそうだ。
とはいえこちらには彼らを護る義務も存在していないため、何かあったらそのままスルーする予定でいる。
これが面倒ごとにならないといいんだけどな。
ただいくつかの条件は出させてもらったが。
1つ、民間人に被害を出さないこと。
2つ、俺たちの事を詮索しないこと。
3つ、必ず狩猟者連合協同組合を通すこと。
いくら政争だと言っても他国の臣民に被害を出したら元も子もないことだから、これくらいは言ってもいいはずだ。
それにこれすら守れないなら、政争で勝目なんてありはしないから。
コーウェンさんは俺の申し入れに対し、即答は控えた。
まあそりゃそうだって話だしね。
そのまま俺たちの宿を後にして、確認に戻っていった。
それから数時間後、息を切らせながらコーウェンさんが戻ってきた。
ギルドからの直接依頼書を手にして。
「リクトさん、今日からよろしくお願いいたします。」
「頭を上げてください。これは護衛依頼ですから。仕事は全うしますよ。」
俺の言葉を聞いたソニア・ド・ガルテッツァ王女は若干の苦笑いを浮かべた。
慣れ慣らしくするつもりもないし、仲良くするつもりもない。
俺はあくまで依頼を受けただけだし、これから起こる火の粉を払うための餌だとしか思っていない。
どうも俺はガルテッツァから敵対視されているみたいだ。
それをクリアにしないことには今後の行動を邪魔されてしまいかねない。
ということで姫様にはぜひとも王位を取ってもらいたいものだ。
俺たちの他に護衛騎士が10名とおそらく隠れているのが暗部かな?その辺は俺には分からないけど。
コーウェンさんの他数名は前回の襲撃時にいた騎士たちだろうな。
残りは追加人員か。
その他にはきりっとした執事と、どう見てもそっちの家業が本職だろ?って思えるようなメイドが一人。
総勢16名の旅路だ。
「そう言えば聞いてなかったですが、なぜ俺たちに依頼を?コーウェンさんからは腕を見込んでって話でしたが、それだけではないですよね?こんな得体のしれない狩猟者を雇うんですから。」
「はい、この街の領主様よりお話があったんです。人族の狩猟者や諜報員と対峙している人族の狩猟者がいると。その人はこの街で精力的に活動をしていくれているから、人族だとしても信用のおけるものだと。」
なんとも高評価を受けてるな。
多分人族のもめごとの件で領主に話が言ってたんだろうな。
「ところで……リクトさんの後ろにいる方々を紹介していただきたいのですが……」
我関係ないとばかりに俺の後ろでリリーとリルが遊んでいた。
まあ、リルからすれば護衛だろうとなんだろうと戦えればそれでいいくらいの感覚なんだろうな。
「リリー、リル。こっち来て。」
俺の呼びかけでやっと重い腰を上げるかのようにこっちに向かってくる二人。
終始面倒だなって思いが伝わってくる。
「では、こっちの銀髪の少女がリル。前衛の格闘家です。で、こっちの妖精族がリリー。魔法職で、その腕は狩猟者の中ではトップクラスだと思います。」
「その節はお世話になりました。技術帝国【ガルテッツァ】第2王女ソニア・ド・ガルテッツァと申します。気軽にソニアとお呼びください。」
ソニアはそう言うと優雅にお辞儀をした。
庶民に頭を下げる王族ね……俺もちょっと考えを改める必要がありそうだ。
何せ俺の王族・貴族のイメージは物語上の者しかないから、どうしても威張り散らしたり、傲慢だったりに偏っていた。
だがソニアはきちんと頭を下げることが出来る人物。
駒の1つって考えるのは失礼だな。
「リリーよ。私が居れば問題なんて起こらないわ!!」
リリーはつつましやかな胸を大きく反ってドヤ顔全開だった。
ソニアも久しぶりに見たリリーに目を奪われていた。
ずっとかわいいって小さな声で連呼している姿に、コーウェンさんも少し頭を抱えていた。
どうやらソニアは可愛いに目がなかったらしいな。
チラリとリルを見た視線が、獲物を狙う狩猟者のように鋭かった。
「我をそのような目で見るな。全くこれだから小娘は嫌いなのだ。」
ものすごく嫌そうな表情のリルは、若干引き気味でだった。
さっきまでの余所行きの態度が一変し、両手をワキワキさせながら、リルに「モフモフしてもいい?ねぇ、良いわよね?」って言いながら、その距離を詰めている。
リルもあまりの怖さにじわりじわりと後退りを始めていた。
あのフェンリルを後退させるとは……ソニアは違う意味ですごい人材かもしれないな。
「では姫様、準備が整いましたので出発いたしましょう。これ以上遅くなればキャンプ予定地に到着できなくなります。」
「分かりました……仕方がありませんわ……。ではリリーさん、リルさんまた後で。」
ものすごく名残惜しそうに自分の馬車に搭乗するソニア。
嵐が去ったかのように安心するリリーとリル。
どうも互いの印象が違い過ぎるな。
「出発!!」
護衛隊長のコーウェンさんの合図を皮切りに馬車の列が動き始めた。
なぜ列かと言うと、本当は俺たちだけで行動を開始する予定だった。
だが商隊が2つほど相乗りする形になっていた。
もちろんコーウェンさんは断ったが、俺たちのあとを少し離れてついてきていた。
つかず離れず……なんともうっとおしい。
リリー曰くたまにこういった行動をとる商人がいるそうだ。
自前の護衛だけでは不安だったり、最悪護衛を雇う金を惜しんでこのようにコバンザメをする輩がいるそうだ。
とはいえこちらには彼らを護る義務も存在していないため、何かあったらそのままスルーする予定でいる。
これが面倒ごとにならないといいんだけどな。
140
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる