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第2章
第26話 これからどうする?
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「おっと失礼、挨拶がまだでしたね。第5番憲兵隊小隊長リグリウスです。」
「狩猟者連合協同組合所属狩猟者リクトだ。で、こっちの少女がリル。この小さいのがリリーだ。二人とも狩猟者だ。」
リグリウスの敬礼は堂に入り、貫禄を思わせた。
その貫禄とは裏腹に、優男と言わんばかりの細身の体と青い瞳。
極めつけはキラキラと輝くその金髪。
どこぞの王子様かよ?って思えるほどだった。
だけどその後に見せた少し崩れた笑みは、どことなく問題が山積みになった職場の中間管理職のそれに見えてしまった。
おそらく俺が原因なんだろうけど。
「それにしても今回もまた人族ですか……ここ最近頻発しているようですね。」
「頻発?他の街でも似たようなことが?」
リグリウスからある程度事情を教えてもらう。
どうやら人族はこの国……というよりもこの領地の街に攻撃を仕掛けているようだった。
それが戦争の前準備なのかは不明で、対応が後手に回ってしまっているようだった。
「それを俺に教えて良いのか?俺も一応人族だぞ?」
「いえ、構いませんよ。あなた方の評判は私たちの耳にも届いていますから。下手な熟練狩猟者よりもあなた方の方が信頼がおけます。」
なんとも高評価を得ているらしい。
俺の隣でリルもなぜか胸を張っているが、まあいいか。
「で、彼らはどうするんです?」
「とりあえず詰め所に一度連行します。おそらく領主様と話し合いでしょう。その後は恐らく総領様へ話がいくでしょう。」
話が大きくなってきたな。
まあ、人族がまた攻めてくるかもってなったら大事だから仕方がないのか。
「またも人族か……どうも奴らは私の手には負えなくなってしまったみたい……それもこれもあいつが……」
「どうしたリリー怖い顔して。」
リリーからなぜか負のオーラがあふれ出していた。
さすが神様だけあって、そのオーラも威圧感たっぷりだった。
「あ、ごめん。何でもない……」
「ならいいんだけど……」
これ以上聞けない雰囲気だった。
そのうちリリーから話してくれるはずと思う。
リリーの負のオーラは少しだけ鳴りを潜め、俺の服の中にまた潜り込んだ。
今はそのままにしておくとしよう。
「ところで総領様とは?」
「ここの街の他に十数か所の領地を束ねるお方です。おそらく元四天王様と伝えれば分かり易いかもしれませんね。魔王国【ファンダルシア】東部を管轄していた【グルーセシア】様です。」
グルーセシアねぇ。
どんな人物なのかは気になるけど、とりあえず魔王復活阻止を邪魔しなければ問題ない。
だけどどう考えても邪魔されそうなんだよな。
こればかりはなるようにしかならないか。
「そうですか……分かりました。俺で手伝えることがあれば言ってください。」
「分かりました。では私はこれで。」
リグリウスさんはそう言うと、倒れた人族たちを強制的に立ち上がらせて詰め所へ戻っていた。
その時人族たちは俺に向かって罵声を浴びせていたが、そのたびに憲兵隊員に殴り飛ばされていた。
南無さん……
「ということでひと段落したのか?」
「そうね、さすがにくたびれたわ。」
そう言って肩と首をコキコキと鳴らしながらほぐしていくリリー。
そんなに動いてなくないか?
俺たちはなんとも言えない疲れを引きずって宿に戻っていくことになった。
「さて、人族とこの国の争いごとに巻き込まれたんだけど、どうしたものかな?」
「そこはノータッチで良いと思うわ。わざわざ陸人がかかわる必要なんてないんだもの。」
宿に着いた俺たちは部屋で今後について話し合いを始めた。
リリーの言う通り、この件に関して俺には関係ない話だな。
戦争に巻き込まれて動きづらくなるのは勘弁してほしいが、俺を巻き込まないんだったら特に問題はない。
だけどこうして巻き込まれてしまっている以上、このままで終わるとは到底思えない。
「あの人族たち、絶対に他に仲間いただろ?」
「どうかしら?いたんだろうけど、敵対意思がなかったからあの場ではどうにもね……」
リリーも困ったとばかりに腕組みをして考え込んでいた。
確かにあの場所で制圧していれば万事解決だったけど、それをしていれば俺たちが罪に問われかねない。
なんせ何もしていない一般人を襲ったことになるんだから。
「確実に俺も狙われるな……なんでめんどくさいことするかな……」
「仕方がないわ……彼らは自分たちが神に選ばれた種族だって本気で思っているんだもの。その神自体が架空の存在だったとしてもね。」
別に宗教国家を非難するつもりはない。
誰しも心のよりどころが必要な時はある。
それが友なのか神なの仏なのか人それぞれだ。
だけどそれを他人に押し付けるのは間違っている。
なんていったところで彼らは止まらないんだけどな。
「そうなると同じところにとどまるのは危険ってわけだ。」
「ん?主殿は危険にさらされているのか?だったら我が全てを蹴散らそう!!」
リルがいきなり全身に殺気を漲らせて立ち上がる。
さっきまで眠たそうにしていたじゃないか。
「リル……誰かが襲ってくるわけじゃないから大丈夫だ。今のところは。」
「そうか……残念だ……」
リルはやる気がそがれたのか、また机に突っ伏してあくびをかみ殺していた。
どんだけ戦闘狂なんだよ。
「狩猟者連合協同組合所属狩猟者リクトだ。で、こっちの少女がリル。この小さいのがリリーだ。二人とも狩猟者だ。」
リグリウスの敬礼は堂に入り、貫禄を思わせた。
その貫禄とは裏腹に、優男と言わんばかりの細身の体と青い瞳。
極めつけはキラキラと輝くその金髪。
どこぞの王子様かよ?って思えるほどだった。
だけどその後に見せた少し崩れた笑みは、どことなく問題が山積みになった職場の中間管理職のそれに見えてしまった。
おそらく俺が原因なんだろうけど。
「それにしても今回もまた人族ですか……ここ最近頻発しているようですね。」
「頻発?他の街でも似たようなことが?」
リグリウスからある程度事情を教えてもらう。
どうやら人族はこの国……というよりもこの領地の街に攻撃を仕掛けているようだった。
それが戦争の前準備なのかは不明で、対応が後手に回ってしまっているようだった。
「それを俺に教えて良いのか?俺も一応人族だぞ?」
「いえ、構いませんよ。あなた方の評判は私たちの耳にも届いていますから。下手な熟練狩猟者よりもあなた方の方が信頼がおけます。」
なんとも高評価を得ているらしい。
俺の隣でリルもなぜか胸を張っているが、まあいいか。
「で、彼らはどうするんです?」
「とりあえず詰め所に一度連行します。おそらく領主様と話し合いでしょう。その後は恐らく総領様へ話がいくでしょう。」
話が大きくなってきたな。
まあ、人族がまた攻めてくるかもってなったら大事だから仕方がないのか。
「またも人族か……どうも奴らは私の手には負えなくなってしまったみたい……それもこれもあいつが……」
「どうしたリリー怖い顔して。」
リリーからなぜか負のオーラがあふれ出していた。
さすが神様だけあって、そのオーラも威圧感たっぷりだった。
「あ、ごめん。何でもない……」
「ならいいんだけど……」
これ以上聞けない雰囲気だった。
そのうちリリーから話してくれるはずと思う。
リリーの負のオーラは少しだけ鳴りを潜め、俺の服の中にまた潜り込んだ。
今はそのままにしておくとしよう。
「ところで総領様とは?」
「ここの街の他に十数か所の領地を束ねるお方です。おそらく元四天王様と伝えれば分かり易いかもしれませんね。魔王国【ファンダルシア】東部を管轄していた【グルーセシア】様です。」
グルーセシアねぇ。
どんな人物なのかは気になるけど、とりあえず魔王復活阻止を邪魔しなければ問題ない。
だけどどう考えても邪魔されそうなんだよな。
こればかりはなるようにしかならないか。
「そうですか……分かりました。俺で手伝えることがあれば言ってください。」
「分かりました。では私はこれで。」
リグリウスさんはそう言うと、倒れた人族たちを強制的に立ち上がらせて詰め所へ戻っていた。
その時人族たちは俺に向かって罵声を浴びせていたが、そのたびに憲兵隊員に殴り飛ばされていた。
南無さん……
「ということでひと段落したのか?」
「そうね、さすがにくたびれたわ。」
そう言って肩と首をコキコキと鳴らしながらほぐしていくリリー。
そんなに動いてなくないか?
俺たちはなんとも言えない疲れを引きずって宿に戻っていくことになった。
「さて、人族とこの国の争いごとに巻き込まれたんだけど、どうしたものかな?」
「そこはノータッチで良いと思うわ。わざわざ陸人がかかわる必要なんてないんだもの。」
宿に着いた俺たちは部屋で今後について話し合いを始めた。
リリーの言う通り、この件に関して俺には関係ない話だな。
戦争に巻き込まれて動きづらくなるのは勘弁してほしいが、俺を巻き込まないんだったら特に問題はない。
だけどこうして巻き込まれてしまっている以上、このままで終わるとは到底思えない。
「あの人族たち、絶対に他に仲間いただろ?」
「どうかしら?いたんだろうけど、敵対意思がなかったからあの場ではどうにもね……」
リリーも困ったとばかりに腕組みをして考え込んでいた。
確かにあの場所で制圧していれば万事解決だったけど、それをしていれば俺たちが罪に問われかねない。
なんせ何もしていない一般人を襲ったことになるんだから。
「確実に俺も狙われるな……なんでめんどくさいことするかな……」
「仕方がないわ……彼らは自分たちが神に選ばれた種族だって本気で思っているんだもの。その神自体が架空の存在だったとしてもね。」
別に宗教国家を非難するつもりはない。
誰しも心のよりどころが必要な時はある。
それが友なのか神なの仏なのか人それぞれだ。
だけどそれを他人に押し付けるのは間違っている。
なんていったところで彼らは止まらないんだけどな。
「そうなると同じところにとどまるのは危険ってわけだ。」
「ん?主殿は危険にさらされているのか?だったら我が全てを蹴散らそう!!」
リルがいきなり全身に殺気を漲らせて立ち上がる。
さっきまで眠たそうにしていたじゃないか。
「リル……誰かが襲ってくるわけじゃないから大丈夫だ。今のところは。」
「そうか……残念だ……」
リルはやる気がそがれたのか、また机に突っ伏してあくびをかみ殺していた。
どんだけ戦闘狂なんだよ。
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