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第2章
第24話 一難去ってまた一難
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「やっと行ったか……」
それにしても面倒なことになったもんだな。
こうして人族が傍若無人を繰り返していたら、俺の立場も悪くなってしまう。
せっかくこの街で信用を得たのに、それが全てご破算になったのなら目も当てられないな。
「主殿、これからどうするのだ?」
「そうよ、こんな空気だと居ずらいわ……」
二人が言うように、さっきまで人族の狩猟者に憤っていた人たちが、今度は俺たちを畏怖の目で見ていた。
ほとんどのモノたちが前かがみなのは気にしてはいけないんだろうな。
俺は今だ少し固まっている受付嬢に挨拶し、ギルド会館を出ようとした時だった。
「あらん?行っちゃうの?まだお礼も言ってないわ。」
声をかけてきたのはアマリエさんだ。
ギルド職員代表ってわけではないだろうが、無視して帰るのは気が引けた。
「アマリエさん、騒がしくして申し訳ない。」
「別にそれは良いのよ?ここじゃ諍いなんて日常茶飯事だし。でもね、それだけじゃないのよ、まずはお礼を言うわ、ありがとう。」
そう言うとアマリエさんは深々と頭を下げた。
別に俺としてはお礼を言われるようなことはしていない。
あくまでも俺自身がイラついたから、制裁を加えたにしか過ぎない。
「お礼を言われるようなことは何も……」
「いいえ、あなたは私たちに変わって怒りをあらわにしてくれたわ。しかも同じ人族に対して。」
あくまでも動きづらくなるからって思いだったけど、こうして感謝されるのは悪くないものだ。
「俺は同じ人族として恥ずかしいことはしたくなかっただけです。それにこの国の人たちが人族に手を挙げたとなると問題になるかもしれませんし。」
「そう言ってもらえて助かるわ。あなたが制裁を加えていなかったら、この子たちも暴走していたかもしれないもの。」
アマリエさんはそう言うと、後ろで縮こまっている狩猟者たちに視線を送る。
その視線で我に返った狩猟者たちは一斉に感謝の声を上げる。
なんとも言えないこそばゆさが俺を襲ってくる。
こんなに感謝されるのはいつぶりくらいだろうな。
こっちに来るまでは罵倒されてばかりだったからな。
「でしたら先輩方。俺に狩猟者のイロハを今後とも教えてください。」
俺の言葉に気をよくしたのか、狩猟者たちは満面の笑みで答えてくれた。
俺たちは改めてアマリエさんに別れを告げて、ギルド会館を後にしたのだった。
——————
「あの狩猟者を調査する必要がありそうだな。」
「ですが隊長……あの狩猟者の実力は相当のモノです。慎重に事を進めませんと。」
陸人たちが狩猟者連合協同組合を後にしたころ、陸人たちを陰で監視していた者たちがいた。
皆一様に同じ紋章を付けていて、同じ組織に属していることがうかがえる。
その服装はこの街に溶け込むように一般人や行商人を装ってはいたが、漏れ出る気配が一般人ではないことを物語っていた。
「分かっている……別動隊に連絡。奴らが王女との接触を図るかを見張らせろ。場合によっては再度刺客を放て。」
「はっ!!」
隊長と呼ばれた男はフードを目深にかぶり、その素顔がうかがい知れなかった。
だがその頬に付いた傷が特徴的だった。
部下を見送った隊長は再度陸人たちの尾行を開始した。
その他にも数名すでに陸人たちを尾行しているようで、次々につなぎの者が隊長と接触を果たしていた。
その姿は街並みに溶け込み、一般人の立ち話のような感じに見えていた。
「必ず尻尾をつかんでみせるぞ……」
男のギラリとした視線が陸人へ向けられたのだった。
——————
「ん?今のは……なるほどな。」
「主殿、どうするのだ?」
物陰から感じる何かを察したリルは、鋭い視線をそちらに向ける。
好戦的なのは良いのだ、街中ではさすがに勘弁してもらいたい。
リリーもやはり気が付いていたようで、不快そうに顔を顰めていた。
それもこれも姫様に会ってからその気配がくっついてきている気がした。
これまではなかったから、やはりあの姫様……何か問題を抱えていたってことか。
で、接触があった俺に疑いがかかったと。
面倒この上ないな。
政治や権力争いはそっちで適当にやっててもらいたいものだな。
だがこうやって巻き込まれている以上、このままってわけにはいかないか。
「リリー、一応確認だけど、あいつらは敵なの?」
「え?それ聞いちゃう?うぅ~ん。敵か否かで言ったら、敵じゃない。けど、邪魔は邪魔。そんな感じかな?」
なんとも中途半端だな。
完全敵対しているんだったら攻撃を仕掛けても良いんだけど、そうじゃないないからやりずらいな。
とりあえず、忠告だけはしておいた方がよさげだな。
俺は〝手加減〟を0.1%にして物陰に潜む人物に近づく。
一瞬地面が軽く爆ぜたけど、まあいい目晦ましになってくれたようだ。
それに気を取られて俺の気配を見失うんだから、だめだろって思わなくはないが。
「で、俺に何の用?」
「な⁈」
突然後ろに監視対象の俺が現れたもんだから、そりゃ驚くわけだ。
とっさに振り向きながら飛びのくあたりきちんと訓練されているってところかな、戦闘員としては。
諜報員としてはそれをしたらだめだと思うけど。
一般人じゃないって自白しているようなものだろうに。
「で?」
それにしても面倒なことになったもんだな。
こうして人族が傍若無人を繰り返していたら、俺の立場も悪くなってしまう。
せっかくこの街で信用を得たのに、それが全てご破算になったのなら目も当てられないな。
「主殿、これからどうするのだ?」
「そうよ、こんな空気だと居ずらいわ……」
二人が言うように、さっきまで人族の狩猟者に憤っていた人たちが、今度は俺たちを畏怖の目で見ていた。
ほとんどのモノたちが前かがみなのは気にしてはいけないんだろうな。
俺は今だ少し固まっている受付嬢に挨拶し、ギルド会館を出ようとした時だった。
「あらん?行っちゃうの?まだお礼も言ってないわ。」
声をかけてきたのはアマリエさんだ。
ギルド職員代表ってわけではないだろうが、無視して帰るのは気が引けた。
「アマリエさん、騒がしくして申し訳ない。」
「別にそれは良いのよ?ここじゃ諍いなんて日常茶飯事だし。でもね、それだけじゃないのよ、まずはお礼を言うわ、ありがとう。」
そう言うとアマリエさんは深々と頭を下げた。
別に俺としてはお礼を言われるようなことはしていない。
あくまでも俺自身がイラついたから、制裁を加えたにしか過ぎない。
「お礼を言われるようなことは何も……」
「いいえ、あなたは私たちに変わって怒りをあらわにしてくれたわ。しかも同じ人族に対して。」
あくまでも動きづらくなるからって思いだったけど、こうして感謝されるのは悪くないものだ。
「俺は同じ人族として恥ずかしいことはしたくなかっただけです。それにこの国の人たちが人族に手を挙げたとなると問題になるかもしれませんし。」
「そう言ってもらえて助かるわ。あなたが制裁を加えていなかったら、この子たちも暴走していたかもしれないもの。」
アマリエさんはそう言うと、後ろで縮こまっている狩猟者たちに視線を送る。
その視線で我に返った狩猟者たちは一斉に感謝の声を上げる。
なんとも言えないこそばゆさが俺を襲ってくる。
こんなに感謝されるのはいつぶりくらいだろうな。
こっちに来るまでは罵倒されてばかりだったからな。
「でしたら先輩方。俺に狩猟者のイロハを今後とも教えてください。」
俺の言葉に気をよくしたのか、狩猟者たちは満面の笑みで答えてくれた。
俺たちは改めてアマリエさんに別れを告げて、ギルド会館を後にしたのだった。
——————
「あの狩猟者を調査する必要がありそうだな。」
「ですが隊長……あの狩猟者の実力は相当のモノです。慎重に事を進めませんと。」
陸人たちが狩猟者連合協同組合を後にしたころ、陸人たちを陰で監視していた者たちがいた。
皆一様に同じ紋章を付けていて、同じ組織に属していることがうかがえる。
その服装はこの街に溶け込むように一般人や行商人を装ってはいたが、漏れ出る気配が一般人ではないことを物語っていた。
「分かっている……別動隊に連絡。奴らが王女との接触を図るかを見張らせろ。場合によっては再度刺客を放て。」
「はっ!!」
隊長と呼ばれた男はフードを目深にかぶり、その素顔がうかがい知れなかった。
だがその頬に付いた傷が特徴的だった。
部下を見送った隊長は再度陸人たちの尾行を開始した。
その他にも数名すでに陸人たちを尾行しているようで、次々につなぎの者が隊長と接触を果たしていた。
その姿は街並みに溶け込み、一般人の立ち話のような感じに見えていた。
「必ず尻尾をつかんでみせるぞ……」
男のギラリとした視線が陸人へ向けられたのだった。
——————
「ん?今のは……なるほどな。」
「主殿、どうするのだ?」
物陰から感じる何かを察したリルは、鋭い視線をそちらに向ける。
好戦的なのは良いのだ、街中ではさすがに勘弁してもらいたい。
リリーもやはり気が付いていたようで、不快そうに顔を顰めていた。
それもこれも姫様に会ってからその気配がくっついてきている気がした。
これまではなかったから、やはりあの姫様……何か問題を抱えていたってことか。
で、接触があった俺に疑いがかかったと。
面倒この上ないな。
政治や権力争いはそっちで適当にやっててもらいたいものだな。
だがこうやって巻き込まれている以上、このままってわけにはいかないか。
「リリー、一応確認だけど、あいつらは敵なの?」
「え?それ聞いちゃう?うぅ~ん。敵か否かで言ったら、敵じゃない。けど、邪魔は邪魔。そんな感じかな?」
なんとも中途半端だな。
完全敵対しているんだったら攻撃を仕掛けても良いんだけど、そうじゃないないからやりずらいな。
とりあえず、忠告だけはしておいた方がよさげだな。
俺は〝手加減〟を0.1%にして物陰に潜む人物に近づく。
一瞬地面が軽く爆ぜたけど、まあいい目晦ましになってくれたようだ。
それに気を取られて俺の気配を見失うんだから、だめだろって思わなくはないが。
「で、俺に何の用?」
「な⁈」
突然後ろに監視対象の俺が現れたもんだから、そりゃ驚くわけだ。
とっさに振り向きながら飛びのくあたりきちんと訓練されているってところかな、戦闘員としては。
諜報員としてはそれをしたらだめだと思うけど。
一般人じゃないって自白しているようなものだろうに。
「で?」
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