フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~

華音 楓

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第2章

第22話 姫様との別れと人族ハンター

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 姫様と共に街を目指す途中、案の定と言えばいいのか襲撃が数度行われた。
 とはいえ俺たちが後れを取る事はなく、ことごとくリリーの防御魔法で弾かれ、リルの拳の餌食になっていく。
 俺も時折戦闘に参加はするものの、ほとんどはリルが殴り倒してしまった。
 なんでもあの腐った目の狩猟者ハンターたちを見ていると、無性に殴り飛ばしたくなったのだとか。
 うん、見た目が美少女だけに、護衛騎士たちも苦笑いを浮かべるほかなかったようだ。

 街に着くころには捕虜の数が10名を超えていた。
 途中俺もめんどくさくなり、3名くらいいれば事足りるのでは?と人狼族の護衛騎士に進言したが、報奨金が発生するので敢えて生かしているのだとか。
 だったら全員生きたまま捉えた方が良いのではって話になるんだけど、それだと今度こちらの命に係わる為、極力の範囲で生かしているのだとか。
 とりわけ今回はリルが手加減しているとはいえその膂力で殴るものだから、運悪い者は身体のどこかはきれいなミンチになってしまっていた。
 さすがにここまでくると俺もその光景に慣れてしまった。
 とりあえず民間人をミンチにしなければ問題ない……はず?

 
 なんて事を考えていると、目の前にいつもの見慣れた門が姿を現した。
 姫様も一様の安堵感を得たようで、ほっと胸をなでおろしていた。
 まあ、あれだけ悲惨な戦闘シーンを目の当りにしたらそりゃそうだろうなって思わなくもないけど。
 こちらの被害はリリーが回復と防御をしてくれているから、最初の被害者以外は0だった。

 俺たちは門をくぐり、一仕事を終えたのだった。


「それでは皆様。この度は護衛を引き受けてくださり感謝いたします。」

 姫様は一度馬車から降りると深く頭を下げた。
 他の護衛騎士や執事・メイドも同様だった。
 俺としては何かをしたわけではない。
 むしろリルが嬉々として参戦したって方が正しいかもしれない。

「我は主殿に付き従っただけ、我が礼を言われる筋合いはない。」

 リルは敢えて俺を立てることとしたみたいだけど、その見た目と口調のギャップがなんとも言えず可愛らしかったようで、姫様がこらえきれず笑い出してしまった。
 それがどうやらツボにはまったらしく、淑女らしからぬ笑い方で皆頭を抱えていた。
 どうやら姫様、こっちが素だったらしいね。

「コッホン。い、今見たことは忘れるように。」

 耳まで真っ赤にしつつ、自分の行動をどうにか誤魔化そうとしていた姫様だったが、その姿は街のみんなに見られていることに気が付いていない様子だった。
 なるほどね、ある意味ドジっ子なのかもしれないな。

 そっと執事が耳打ちをすると、姫様はますます顔を赤くして速攻で馬車に戻ってしまった。
 すると馬車がバタバタと揺れ出してので、馬車内で悶え死にかけているのが容易に想像がついた。

「すまない。姫様は……あれだ……忘れてくれ……」

 人狼族の護衛騎士が申し訳なさそうにそう言って頭を下げた。
 俺としてはこれ以上関わる必要性もないと考えていたので、了承の胸だけ伝え別れることにした。

 とりあえず彼女がどこの姫様で、名前が何なのかなんて俺には関係なかった。
 だからこそ名を名乗らなかったし、聞こうともしなかった。
 向こうもそれについて何も咎め中かったことを見ると、何か訳ありだったんだろう。
 特に魔人族を執事として雇用しているん事から、俺がこれ以上関わると碌なことがないのは明白だった。


 それから俺たちはいつものように狩猟者連合協同組合ハンターギルドに顔を出し、依頼達成の報告や買取の依頼、現在のダンジョン情報などを受付嬢に確認して今日の活動を終了させた。
 
 さてこれからは自由時間だ……って思ったのが間違いだった。
 絶対問題ごとは、こういったフラグを立てた瞬間に訪れるもんだな……

「ようにぃ~ちゃんら。大分景気が良いみたいだなぁ~。俺たちにもそれを分けてくれよ。」

 まさかこのタイミングでチンピラみたいなやつらに絡まれるとは思わなかった。
 しかも||《・》|《《・》
 これもまた例の繋がりなんだろうか?
 それとも俺の考えすぎか?
 人族の狩猟者ハンターは腰に下げた剣をカチャカチャと言わせ、いかにも言う通りにしないと怪我するぞと脅しをかけてくる。
 正氏の視線の先にはリルの姿が……あ、これはリル狙いか……露骨すぎるだろ。
 
「主殿……こやつらの首を搔き切ってもよろしいだろうか?」
「いや、よろしくないからな?」

 今にも飛びかかりそうなリルを何とか制して、つぶれたトマト事件はこうして回避された。
 が、この状況は解決したわけではないので今だ継続中。
 
「かっこいい騎士気取りとはよゆうだなぁ~」
「それともかっこつけるだけのイモ野郎か?」

 最初に因縁をつけてきた狩猟者ハンターはとは別の人族がニヤつきながら会話に入ってきた。
 これはどう見ても俺をあおっている状況なんだろうな。
 だが全く持って怖さを感じないのはなぜなんだ?
 むしろ俺のポケットからちょっとだけ顔を出しているリリーの殺気の方がやばい気がしてならない。
 頼むから暴走しないでくれよ。

「そんな酒を呑んで酔ってる暇があれば依頼をこなしたらいいんじゃないか?俺たちにかまってても銅貨一枚の価値もないぞ?」

 なんて俺が言ってしまったもんだから、その狩猟者ハンターたちは目を血走らせて俺たちに向かってきた。
 狩猟者連合協同組合ハンターギルド内で……
 こいつらあほなんだろうか?
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