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第1章
第18話 ライザとの会談
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少し考えこんだライザ教官は、じっと俺の目を見つけてきた。
俺としては特にやましいことはないんだが、さすがに〝半神〟と言うのはまずい気がしていた。
「そうだな、その両方だ。先ほどの試験で使用した訓練場の床は、さっきも言った通りちょっとやそっとじゃびくともしないように作られている。当たり前の話、簡単に壊れてしまえばその都度補修をしなっくてはならないからな、頑丈に作るのは当然だ。」
確かにライザ教官の言う通りだ。
毎度毎度壊れては、補修費がいくらあっても足りない。
だが現にライザ教官は木剣を地面に突き刺し、俺はその地面をへこませた。
俺の〝手加減〟が上手くいかなかったのが原因だが、それでもこうやって直接話をすることにはつながらない。
合格発表後に少し顔を合わせる程度なら話が分かるが、俺はまだ狩猟免許証をもらっていない。
「強いていうなれば、狩猟免許証第5階級ならまだわかる。だがお前たちは今日試験を受けたばかりの仮階級だ。そんなお前が地面をへこませたというだけで一大事だということは理解してほしい。」
やっちまった感が拭えないな。
それならもっと手加減をしないといけないってことか。
でも今でさえ〝手加減〟の0.01%なんだから、これ以上下げるってなるともっと繊細なコントロールが必要になるってことだろうな。
「ただ、それでもさっきの質問の答えになってないと思うけど?」
リリーの声が少しだけ冷たいように感じた。
どことなくひんやりとした、ライザ教官を遠ざけようとしている声色だった。
「そうだな。リクト、お前は今回の試験で第4階級からのスタートとなることになった。まあ、あの結果を見れば一目瞭然だが、そこには但し書きが付く。まずは基礎の戦闘を身に付けることだ。こういっては何だが、あまりにも戦い方が稚拙過ぎる。だからこそ私も回避する事が出来たのだが、それによって一つの疑問が産まれた。お前がどこかの国のスパイで、わざと力を隠している。そう私は考えた。」
なるほどね、今はこの国としてあまり好ましい時期ではないということか。
まあ、当然と言えば当然なんだろうけど、この国は今最高権力者が不在になっている。
そんな中戦争なんて起こされた日には目も当てられなくなる。
と言ってもこの国を取ったところで旨味が少ないのも事実らしく、戦争を起こそうとする国は今のところないみたいだ。
「そう、それなら答えはどちらも答えない。」
「なんだと?」
ライザ教官の視線が一気に鋭くなった。
リリーもそれにこたえるかのように、ゾワリとするような空気を纏い始める。
こういった時神様なんだなと実感してしまう。
リルはそんな二人のやり取りを素知らぬ顔で机に突っ伏していた。
むしろすでに飽きたんじゃなかろうか。
半分眠そうな顔をしていた。
よくこんな状況でそうしていられるなと感心してしまう。
「普通に考えてよ?狩猟者連合協同組合はどの国に対しても中立を貫くのが信念のだったはずよ?なのにあなたの発言は完全にこの国に対して中立ではないもの。それにこたえる必要はあると思う?」
リリーの言葉に少しだけ言葉を飲み込んだライザ教官。
次の言葉に詰まってしまったようだった。
確かに中立って立場なら、俺の出自を考える必要なんてないわけで、俺がこのギルドに何を持ってくるかが大事になるはず。
それなのに俺の事を聞き出そうとしてる。
そこに矛盾が発生しているってリリーは言いたいわけだ。
「すまない。気を悪くしたなら謝ろう。だが、この国は私の生まれ故郷だ。そこが戦争に巻き込まれるとしたら、黙っているわけにもいかない。それが人というものだろ?」
そう言われたら俺も文句が言えないな。
いくら中立だと言っても、それは組織の話。
中の人間が全てが中立を貫くなんて無理な話だしな。
俺はリリーに視線をむけて、一つ頷いた。
おそらくリリーはこれでわかってくれるはずだろう。
特に俺としては召喚されたものだということを隠すつもりはなかったから。
「分かりました。俺はこの世界の住人ではないです。異世界転移してきた人間ですよ。」
これにウソはない。
転移させられた時は間違いなく人間だったから。
俺の言葉に眉を潜めて、何かを伺うように俺を見つめてくるライザ教官。
一つため息をつくと、前のめりだった身体を少し後ろにそらし、何か考えを巡らせるように目を閉じた。
しばらくしてもう一度深いため息をつくと、ゆっくりとその目を開いた。
「分かった、君の言葉を信じよう。だがその膂力の異常性はどうにも説明がつかない。私も異世界転移については知識を持ち合わせていないから判断がつかないのが現状だ。だが、君がこの国に危害を加えるつもりがないことは信じてみよと思う。」
「ありがとうございます。」
俺は軽く頭を下げると、ライザ教官も少し納得したのか席を立ちあがった。
「では二日後に探索許可証を受け取りに来たまえ。」
「はい。」
そうして俺とライザ教官の話し合いは終わりを迎えた。
正直大分疲れたけど、まぁ、深く考えても意味がない。
今は早く探索許可証を受け取って身分証をゲットする事を考えよう。
「リル……終わったぞ。」
「ん?ん~あぁ~。主殿、やっと終わったようだな。」
いまだ寝ぼけ眼のリルを引っ張り起こし、俺たちも宿に戻ることにした。
俺としては特にやましいことはないんだが、さすがに〝半神〟と言うのはまずい気がしていた。
「そうだな、その両方だ。先ほどの試験で使用した訓練場の床は、さっきも言った通りちょっとやそっとじゃびくともしないように作られている。当たり前の話、簡単に壊れてしまえばその都度補修をしなっくてはならないからな、頑丈に作るのは当然だ。」
確かにライザ教官の言う通りだ。
毎度毎度壊れては、補修費がいくらあっても足りない。
だが現にライザ教官は木剣を地面に突き刺し、俺はその地面をへこませた。
俺の〝手加減〟が上手くいかなかったのが原因だが、それでもこうやって直接話をすることにはつながらない。
合格発表後に少し顔を合わせる程度なら話が分かるが、俺はまだ狩猟免許証をもらっていない。
「強いていうなれば、狩猟免許証第5階級ならまだわかる。だがお前たちは今日試験を受けたばかりの仮階級だ。そんなお前が地面をへこませたというだけで一大事だということは理解してほしい。」
やっちまった感が拭えないな。
それならもっと手加減をしないといけないってことか。
でも今でさえ〝手加減〟の0.01%なんだから、これ以上下げるってなるともっと繊細なコントロールが必要になるってことだろうな。
「ただ、それでもさっきの質問の答えになってないと思うけど?」
リリーの声が少しだけ冷たいように感じた。
どことなくひんやりとした、ライザ教官を遠ざけようとしている声色だった。
「そうだな。リクト、お前は今回の試験で第4階級からのスタートとなることになった。まあ、あの結果を見れば一目瞭然だが、そこには但し書きが付く。まずは基礎の戦闘を身に付けることだ。こういっては何だが、あまりにも戦い方が稚拙過ぎる。だからこそ私も回避する事が出来たのだが、それによって一つの疑問が産まれた。お前がどこかの国のスパイで、わざと力を隠している。そう私は考えた。」
なるほどね、今はこの国としてあまり好ましい時期ではないということか。
まあ、当然と言えば当然なんだろうけど、この国は今最高権力者が不在になっている。
そんな中戦争なんて起こされた日には目も当てられなくなる。
と言ってもこの国を取ったところで旨味が少ないのも事実らしく、戦争を起こそうとする国は今のところないみたいだ。
「そう、それなら答えはどちらも答えない。」
「なんだと?」
ライザ教官の視線が一気に鋭くなった。
リリーもそれにこたえるかのように、ゾワリとするような空気を纏い始める。
こういった時神様なんだなと実感してしまう。
リルはそんな二人のやり取りを素知らぬ顔で机に突っ伏していた。
むしろすでに飽きたんじゃなかろうか。
半分眠そうな顔をしていた。
よくこんな状況でそうしていられるなと感心してしまう。
「普通に考えてよ?狩猟者連合協同組合はどの国に対しても中立を貫くのが信念のだったはずよ?なのにあなたの発言は完全にこの国に対して中立ではないもの。それにこたえる必要はあると思う?」
リリーの言葉に少しだけ言葉を飲み込んだライザ教官。
次の言葉に詰まってしまったようだった。
確かに中立って立場なら、俺の出自を考える必要なんてないわけで、俺がこのギルドに何を持ってくるかが大事になるはず。
それなのに俺の事を聞き出そうとしてる。
そこに矛盾が発生しているってリリーは言いたいわけだ。
「すまない。気を悪くしたなら謝ろう。だが、この国は私の生まれ故郷だ。そこが戦争に巻き込まれるとしたら、黙っているわけにもいかない。それが人というものだろ?」
そう言われたら俺も文句が言えないな。
いくら中立だと言っても、それは組織の話。
中の人間が全てが中立を貫くなんて無理な話だしな。
俺はリリーに視線をむけて、一つ頷いた。
おそらくリリーはこれでわかってくれるはずだろう。
特に俺としては召喚されたものだということを隠すつもりはなかったから。
「分かりました。俺はこの世界の住人ではないです。異世界転移してきた人間ですよ。」
これにウソはない。
転移させられた時は間違いなく人間だったから。
俺の言葉に眉を潜めて、何かを伺うように俺を見つめてくるライザ教官。
一つため息をつくと、前のめりだった身体を少し後ろにそらし、何か考えを巡らせるように目を閉じた。
しばらくしてもう一度深いため息をつくと、ゆっくりとその目を開いた。
「分かった、君の言葉を信じよう。だがその膂力の異常性はどうにも説明がつかない。私も異世界転移については知識を持ち合わせていないから判断がつかないのが現状だ。だが、君がこの国に危害を加えるつもりがないことは信じてみよと思う。」
「ありがとうございます。」
俺は軽く頭を下げると、ライザ教官も少し納得したのか席を立ちあがった。
「では二日後に探索許可証を受け取りに来たまえ。」
「はい。」
そうして俺とライザ教官の話し合いは終わりを迎えた。
正直大分疲れたけど、まぁ、深く考えても意味がない。
今は早く探索許可証を受け取って身分証をゲットする事を考えよう。
「リル……終わったぞ。」
「ん?ん~あぁ~。主殿、やっと終わったようだな。」
いまだ寝ぼけ眼のリルを引っ張り起こし、俺たちも宿に戻ることにした。
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