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第1章

第17話 陸人の試験

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「次、リクト前へ!!」

 そしてついの俺の名前が呼ばれた。
 試験場所にいたのは、ライザ教官だった。
 なぜに?

「えっと、相手はライザ教官ってことですか?」
「そうだ、貴様で最後だからな。それに私も少しは身体を動かしたいのでな。なに、臆することはない!!遅かれ早かれ強敵にはぶつかるものだ!!」

 ライザ教官は豪快な笑い声をあげた。
 どう見ては猫は猫でもライオンかトラじゃないのか?って思えるほど、獰猛な笑みを浮かべていた。
 しかも地面に刺したバスターソード……それ木剣だよね?どうやって地面に刺したのさ。
 いや、俺も出来るけどさすがにやらないぞ?
 どう考えても目立ちすぎるからさ。

「そう言うことなら、一手ご教授願います。」
「うむ!!胸を貸そう!!」

 ライザ教官の笑みが一層どう猛さを増していた。
 ちょっと早まったかな?

 ライザ教官は地面に刺さったバスターソードを足で一蹴りすると、バスターソードは空中でくるくると回転を始めた。
 そして柄をパしりと掴み、俺に向けてニヤリと笑って見せた。
 むしろ、バスターソードってくるくる回転するもんなのか?
 あんな重量物を軽々扱うんだから、相当の膂力の持ち主なんだろうな。

「では行きます!!」
「来い!!」

 俺は小細工をしようとは思わなかった。
 むしろ戦闘の素人である俺が小細工なんてしたところで意味がない。
 だからこその打ち下ろし。
 ただまっすく、実直に。
 俺はライザ教官に向かって一足飛びで距離を詰める。
 そして上段に構えたブロードソードをと振り下ろした。

 だがライザ教官は俺の剣を受けることはせず、焦った様子で半身をずらして躱して見せた。
 つまり俺の剣を受けるまでもないってことか。

 俺のブロードソードはライザ教官の脇をすり抜けて、地面に向かって振り下ろされた。
 この次の行動を考えていなかったから、そのまま転がりそうな勢いで、地面にぶつかった。

 ゴン!!

 ブロードソードが地面にぶつかると、変な音と共に地面が少しへこんでしまった。

 何だ、実はこの地面少し柔らかかったのか。
 だからライザ教官も地面にバスターソードを突き刺せていたのか。
 それなら納得だ。

「な、なんだそのふざけた威力は!!」
「え?」

 さっきまで獰猛な笑みを浮かべていたライザ教官だったが、俺が見た時には青ざめていた。
 むしろ怯えに近いのかもしれない。

「いや、この地面が少しもろかっただけですよね?」
「ふざけたことを言うな!!きちんと技を使っていたならまだしも、普通に振り下ろしただけでこうはならん!!訓練用に強化された地面だぞ⁈」

 え?待ってくれ……つまり俺はまた加減を間違えたのか?
 というよりも、〝手加減〟がうまく機能していない?

 俺は慌ててリリーに視線を向けたが、リリーは苦笑いを浮かべているだけだった。
 これは絶対にやっちまったぽいな……誤魔化せそうにないな。

「試験はこれで終了とする!!リクトお前は残れ!!少し話がある!!センター掲示板の前で待つように!!」

 ヤバいな、これ絶対に面倒ごとに巻き込まれた奴じゃないか。

 ライザ教官の終了の合図をもって試験は終わりを告げる。
 試験結果については2日後センター掲示板に張り出されるとのことだった。
 合格していれば晴れて狩猟者ハンターとして活動が許される。
 
 そしてここにきて一つ疑問が浮かんできた。
 狩猟者連合協同組合ハンターギルドってこの国だけのものなのだろうか?
 そう思ってリリーに確認してみたところ、狩猟者連合協同組合ハンターギルドは全世界に共通して存在する狩猟者ハンターの互助組織だそうだ。
 もともとこの組織は魔王国が立ち上げたもので、それを世界へと広めたのも魔王軍だったりしたそうだ。
 その名残が今でも残っており、この組織だけはすべての国において中立を保っているそうだ。
 中には腐りかけた果実もあるそうだけど、それは抜き打ちで調査が入り駆逐されていくように相互監視を行っているらしい。
 まあ、どこまでこれが機能しているのかは分からないけど。
 とりあえず、身分証としては何処でも通用する物になっているってことだけは確かだ。


「待たせたな。」

 リリーたちとセンター掲示板付近にテーブルに集まって情報確認を行っていると、受付カウンター奥からライザ教官が姿を現した。
 先ほどまでの訓練用の戦闘服ではなく、大分ラフな格好だった。
 それでも引き締まった身体はモデル並みにスタイルがよく、つい見惚れてしまいそうになった。

「ん?どうした?私に何かついているのか?」

 思わずじっと見てしまったのがいけなかったのか、自分の身体の隅々を確認し始めるライザ教官。
 なんともその動きが可愛らしく思えたのは内緒にしておこう。
 
「いえ、お気になさらずに。それで話とななんですか?わざわざ世間話をするために残らせたわけではないですよね?」
「そうだな。単刀直入に言おう。お前は何者だ?」

 だいぶストレートに来たな。
 俺が何者か……正直に答えることは出来るが、それが最善策だとは思えなかった。
 俺はリリーに助け船を求めると、リリーが軽く頷き話を変わってくれた。

「何者というのは、〝種族〟に対して?それとも〝国〟 に対して?」

 リリーが質問に質問で返すと、ライザ教官は少し嫌悪感をあらわにした。
 だがその質問の意図を理解したのか、少し考えるそぶりを見せていた。

 俺たちはその答えが返ってくるのをじっと待つことにした。
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