16 / 51
第1章
第16話 なんだかんだで強い二人でした
しおりを挟む
講義が終わりぞろぞろと訓練場へやってきた俺たち。
ギルド会館の裏手に回ると、広いスペースがあった。
奥にはスタンド席のようなものもあり、観戦も可能だということだろうか。
広さもなかなかで、おそらく500m四方は有りそうに思えた。
「受験生は中央に集まるように!!」
ライザの声が訓練場全体に響く。
どれだけの声量を持ってるんだろうな。
なんてどうでもいいことを考えつつ、ライザのもとに急いで移動した。
「それでは実技試験を開始する!!こちらが準備した武器を手にして、模擬戦を行ってもらう!!戦闘職と魔法職で別れて行う!!自分の得意武器を取って直ちに準備するように!!」
模擬戦か……とりあえず俺は剣で良いとして、リルは……ってどれを使うか迷っているのか。
「すみません、徒手空拳の奴はどうしたらいいんですか?」
「それなら小手を装備するといいでしょう。まあ、あまり人気が無いのでお勧めはしませんが。」
ライザの他に補助の教官もつくようで、一人の教官がリル用の武器を選んでくれた。
だがその目はどこか品定め……というよりは視姦でもしているように、視線を上下に動かしていた。
それに気が付いたのか、リルから殺気が徐々に漏れ出してきた。
おそらく気持ちが悪いって思っているんだろうな。
見た目は美少女だが、フェンリルだしな。
殺気にあてられた補助教官はバツが悪そうに退散していった。
リリーについては特に難しくはなく、選びようがなかった。
何せサイズが無いんだから。
というわけでリリーは武器無しで参加となった。
リリー的には不要だったようで、特に気にしてはいなかった。
一通り準備が終わったようで、試験が開始された。
武器職は補助教官と模擬戦を行い、いろいろアドバイスをもらっているようだった。
魔法職については的に向かって魔法を放つ。
なんともシンプルな試験方法だな。
「次、リル!!前に出ろ!!」
俺たちのトップバッターはリルだった。
手にした小手……をガキンガキン打ち鳴らす姿は、その容姿と相まって違和感しかなかった。
しかも可愛らしい見た目とは正反対の、獰猛な笑みを浮かべている。
対峙した教官も若干引き気味だけど、すまんが我慢してほしい。
「リル!!気を付けるんだぞ!!ケガには注意だからな!!」
俺の声に笑顔で手を振るリルだったけど、本当に理解しているんだろうか。
相手に対して手加減しろという意味を……
俺の応援がリルに対する気遣いだと思ったのか、教官も少し落ち着きを取り戻していた。
ってより、若干気を抜きすぎな気もするが……けがは自己責任で頼む。
「初め!!」
審判役の教官の合図で、相手の教官は槍を前方に構える。
その切っ先はきちんとリルの眉間を狙っており、手加減はするものの、本気で行くとの意思表示に思えた。
リルはそれに対し、ニヤリと口角を上げ牙を剥く。
リルとしても楽しみにしていたのかもしれない。
リルは教官にタックルでもするかのように姿勢を低く構えた。
それに教官は何かを感じ取ったのか、構える槍に力が入ったのが見て取れて。
「若いな……」
リルはそう言うとその場から姿が消えた……ように見えた。
まあ、実際は目にもとまらぬ速さって言えばいいのか、人の動体視力を超える動きを下に過ぎない。
うん、手加減って言葉を知っているんだろうか……
教官はリルの姿を探しているようだけど、リルはその場にとどまることはない。
つまり、見つけることは無理だってことだ。
受験者のほとんどはリルの姿を見失ったみたいだけど、ライザ教官とその他数名の受験者はその姿を追っていた。
「もう一度修行をやり直せ!!」
翻弄する事を辞めたリルが姿を現した。
それと同時に決着がついていた。
いつの間にか教官は組み伏せられ、その上に乗るリルの拳が教官目掛けて振り下ろされる。
激しい衝突音と共に砂ぼこりが舞い上がる。
教官の顔の脇の地面には、リルがつけたであろう拳のあとがくっきりとついていた。
「や、やめ!!」
慌てた審判が模擬戦の終了を告げる。
一瞬の沈黙の後、一気に歓声が上がる。
リルの容姿も相まってか、惚れただのなんだのとのたまう輩も出てきてしまった。
まぁ、リルが魔獣だと知ったらドン引きするんだろうけど。
「リルお疲れ様。それと、もう少し加減をした方が良いだろうな。あれだと死人が出かねない。」
「すまぬ主殿。まさかあれほどの実力だとは思いもせんなんだ。次からはもっとうまく手加減をすることにしよう。」
現状に若干気まずそうな表情を浮かべるリルだったが、これで合格はおそらく間違いないとは思う。
リルを不合格にしたら、今回の合格者はほとんどいないと思いうからね。
それとは別区で試験を受けていたリリーもゆっくりと戻ってきた。
もちろんドヤ顔で。
結果は聞くまでもないだろうな、なんせ見た目は妖精、中身は神様なんだから。
「リリーもお疲れ。結果はどうだった?」
「エッヘン!!」
これまたドヤ顔決めるリリー。
ふと、魔法試験の方を見てみると、教官たちが慌てて作業を行っていた。
おおよそ試験用の的を爆散させたんだじゃないのか?
「あ、私が的を爆発四散させたって思ってるでしょ⁈あのね、私だって手加減くらいできるんですからね⁈ちゃんと的全てを撃ち抜いてやったわよ!!」
右手人差し指を立ててふっと何かを吹き消すしぐさをするリリー。
いったいそんなのどこで覚えたんだ?って聞きたくなったけど、まあ、神様だし、聞くだけ無駄なんだろうな。
ギルド会館の裏手に回ると、広いスペースがあった。
奥にはスタンド席のようなものもあり、観戦も可能だということだろうか。
広さもなかなかで、おそらく500m四方は有りそうに思えた。
「受験生は中央に集まるように!!」
ライザの声が訓練場全体に響く。
どれだけの声量を持ってるんだろうな。
なんてどうでもいいことを考えつつ、ライザのもとに急いで移動した。
「それでは実技試験を開始する!!こちらが準備した武器を手にして、模擬戦を行ってもらう!!戦闘職と魔法職で別れて行う!!自分の得意武器を取って直ちに準備するように!!」
模擬戦か……とりあえず俺は剣で良いとして、リルは……ってどれを使うか迷っているのか。
「すみません、徒手空拳の奴はどうしたらいいんですか?」
「それなら小手を装備するといいでしょう。まあ、あまり人気が無いのでお勧めはしませんが。」
ライザの他に補助の教官もつくようで、一人の教官がリル用の武器を選んでくれた。
だがその目はどこか品定め……というよりは視姦でもしているように、視線を上下に動かしていた。
それに気が付いたのか、リルから殺気が徐々に漏れ出してきた。
おそらく気持ちが悪いって思っているんだろうな。
見た目は美少女だが、フェンリルだしな。
殺気にあてられた補助教官はバツが悪そうに退散していった。
リリーについては特に難しくはなく、選びようがなかった。
何せサイズが無いんだから。
というわけでリリーは武器無しで参加となった。
リリー的には不要だったようで、特に気にしてはいなかった。
一通り準備が終わったようで、試験が開始された。
武器職は補助教官と模擬戦を行い、いろいろアドバイスをもらっているようだった。
魔法職については的に向かって魔法を放つ。
なんともシンプルな試験方法だな。
「次、リル!!前に出ろ!!」
俺たちのトップバッターはリルだった。
手にした小手……をガキンガキン打ち鳴らす姿は、その容姿と相まって違和感しかなかった。
しかも可愛らしい見た目とは正反対の、獰猛な笑みを浮かべている。
対峙した教官も若干引き気味だけど、すまんが我慢してほしい。
「リル!!気を付けるんだぞ!!ケガには注意だからな!!」
俺の声に笑顔で手を振るリルだったけど、本当に理解しているんだろうか。
相手に対して手加減しろという意味を……
俺の応援がリルに対する気遣いだと思ったのか、教官も少し落ち着きを取り戻していた。
ってより、若干気を抜きすぎな気もするが……けがは自己責任で頼む。
「初め!!」
審判役の教官の合図で、相手の教官は槍を前方に構える。
その切っ先はきちんとリルの眉間を狙っており、手加減はするものの、本気で行くとの意思表示に思えた。
リルはそれに対し、ニヤリと口角を上げ牙を剥く。
リルとしても楽しみにしていたのかもしれない。
リルは教官にタックルでもするかのように姿勢を低く構えた。
それに教官は何かを感じ取ったのか、構える槍に力が入ったのが見て取れて。
「若いな……」
リルはそう言うとその場から姿が消えた……ように見えた。
まあ、実際は目にもとまらぬ速さって言えばいいのか、人の動体視力を超える動きを下に過ぎない。
うん、手加減って言葉を知っているんだろうか……
教官はリルの姿を探しているようだけど、リルはその場にとどまることはない。
つまり、見つけることは無理だってことだ。
受験者のほとんどはリルの姿を見失ったみたいだけど、ライザ教官とその他数名の受験者はその姿を追っていた。
「もう一度修行をやり直せ!!」
翻弄する事を辞めたリルが姿を現した。
それと同時に決着がついていた。
いつの間にか教官は組み伏せられ、その上に乗るリルの拳が教官目掛けて振り下ろされる。
激しい衝突音と共に砂ぼこりが舞い上がる。
教官の顔の脇の地面には、リルがつけたであろう拳のあとがくっきりとついていた。
「や、やめ!!」
慌てた審判が模擬戦の終了を告げる。
一瞬の沈黙の後、一気に歓声が上がる。
リルの容姿も相まってか、惚れただのなんだのとのたまう輩も出てきてしまった。
まぁ、リルが魔獣だと知ったらドン引きするんだろうけど。
「リルお疲れ様。それと、もう少し加減をした方が良いだろうな。あれだと死人が出かねない。」
「すまぬ主殿。まさかあれほどの実力だとは思いもせんなんだ。次からはもっとうまく手加減をすることにしよう。」
現状に若干気まずそうな表情を浮かべるリルだったが、これで合格はおそらく間違いないとは思う。
リルを不合格にしたら、今回の合格者はほとんどいないと思いうからね。
それとは別区で試験を受けていたリリーもゆっくりと戻ってきた。
もちろんドヤ顔で。
結果は聞くまでもないだろうな、なんせ見た目は妖精、中身は神様なんだから。
「リリーもお疲れ。結果はどうだった?」
「エッヘン!!」
これまたドヤ顔決めるリリー。
ふと、魔法試験の方を見てみると、教官たちが慌てて作業を行っていた。
おおよそ試験用の的を爆散させたんだじゃないのか?
「あ、私が的を爆発四散させたって思ってるでしょ⁈あのね、私だって手加減くらいできるんですからね⁈ちゃんと的全てを撃ち抜いてやったわよ!!」
右手人差し指を立ててふっと何かを吹き消すしぐさをするリリー。
いったいそんなのどこで覚えたんだ?って聞きたくなったけど、まあ、神様だし、聞くだけ無駄なんだろうな。
170
お気に入りに追加
543
あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。
やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった
ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。
しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。
リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。
現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる