フェンリル娘と異世界無双!!~ダメ神の誤算で生まれたデミゴッド~

華音 楓

文字の大きさ
上 下
13 / 51
第1章

第13話 テンプレートは突然に

しおりを挟む
「そこの奴!!今すぐ武器を置いてとまれ!!この夕暮れ時、【ファスタ】に何用か!!」

 俺たちが町に近づくと、衛兵と思われる兵士に槍を向けられた。
 そりゃまあ、そうなるな。
 丸腰の男と美少女となんか浮いてる小さいのが徒歩で現れたんだから。
 普通だったら辻馬車とか利用するはずだからね。

「すみません、怪しい者じゃないんです。」

 自分で言っててなんだけど、自分を怪しい人物だって言う怪しい奴を見たことないな。
 怪しい奴ほど怪しくないって言うのが相場だろうから。

「なら身分証を見せろ!!」

 身分証って何ですか⁈
 むしろそれが欲しいから街に入れてほしいんですけど⁈
 さてどうしたものかな……証明する者なんて何にも持ってないんだけど……

「すみません……此処に来る途中でモンスターに襲われてしまって、その時にカバンを投げ捨てて逃げ出してきたんです。身分証はそのかばんの中で……」
「なら一人銀貨5枚だ。それで仮許可証を発行するから、3日以内に身分証の再発行をしてもらえ。準備できた場合は預かった銀貨は返金する。もし準備できなかったら……間者とみなして拘束させてもらう。」

 あれか、パスポートのビザみたいなことか。
 それの有効期限が3日と。
 それにしても準備できなかった時のペナルティが重すぎないか?
 まぁ、こういった世界だと仕方がないのかもしれないが。

「そうしますと、銀貨15枚でよろしいのですね。ただ、先ほども言いました通り、カバンに入っておりましたので、それも……」

 俺が申し訳なさそうにそう告げると、衛兵は困ったような表情で頭をガシガシかいていた。
 すると自分の胸元を少し漁ると、布袋を俺に投げてよこした。
 受け取った時ジャラリと音が聞こえたので、おそらく貨幣だろう。

「そいつでここの支払いをしろ。こいつは貸しだ。必ず返しに来いよ。俺のなけなしの酒代なんだからよ。」

 そう言うと衛兵はそっぽを向いた。
 最初は頭堅そうと思ったけど、実はめっちゃいい人だったようだ。
 人は見た目で判断したらだめだって話だな。

「分かった、必ず返しに来る。恩に着る。」
「おう。」

 俺たちは衛兵に頭を下げて門を通してもらった。
 そこでふと聞きそびれていたことに気が付いて、足を止めた。

「そうだ、忘れてたよ。俺はリクト。あんたの名前を教えてくれるか?返しに来るにしても、名前を知らなければ呼び出してもらえないからな。」
 「俺は、ガルドスだ。まあ、だいたい此処にいるから問題ないとは思うがな。」

 そう言うとガルドスはニヤリと笑って見せた。
 おっさんの笑顔も悪くはないかもしれないな。

 そうして俺たちは、街の中に入ることが出来た。
 必ずこの恩は返さないといけないな。
 それと、早く身分証を発行してもらわないとな。
 ド定番は冒険者ギルドとか、何かしらのギルドか。
 さっき聞いておけばよかったと少し後悔してしまった。

 それから俺たちは街の大通りを歩いている。
 まあ大体の施設は大通りにあるってのが相場だから、きっとすぐに見つかるはずだ。
 なんて話を二人としていたら、少し先に大きな堅牢そうな建物が目に留まった。
 看板や旗がぶら下がっていた。
 剣と盾が描かれており、中心には鷹?のような動物も描かれていた。

「あれは何だ?」
「あれがお目当ての狩猟者連合協同組合ハンターギルドよ。」

 そうだった、ここにナビゲーターがいたんじゃないか。
 最初から教えてくれと思うんだが……多分リリーは教えなかったと思う。
 これも旅の醍醐味だと言って……

狩猟者連合協同組合ハンターギルド?」
「そうよ?狩猟者ハンターあくまでもモンスター討伐がメインだけど、採取系や護衛も受け持っているわ。」

 この世界では冒険者ではなく、狩猟者ハンターって言われているのか。
 まあ、冒険者だといろいろなところに移動してってイメージだけど、狩猟者ハンターならそこに根付いてって感じになるんだろうな。
 まあ、どちらにしろ身分証が発行されればそれでいいんだけど。
 
 狩猟者連合協同組合ハンターギルドの前に着くと、その大きさと堅牢さを再認識させられた。
 大きな入り口は扉というより門だな。
 大きさ的には3mくらいか?木の扉に鉄で補強している感じだな。
 そもそもこんなにでかい扉っているんだろうか?
 普通に考えて2mもあれば事足りるんじゃないか?って思うんだけど……って俺が間違ってた。

 中をそっと覗くと、多種多様な生物?がそろっていた。
 室内も天井高になっていて、おそらく5mオーバーくらいはあるかもしれないな。
 へぇ~、中に酒場も併設されているのか。
 右側に酒場、中央に広場なのかベンチやらテーブルやらが並べれれているな。
 何か話し合ってるやつらもいるが、ここからは聞き取れない。
 そのど真ん中の柱には掲示板のようなものがかけられている。
 そこに紙が貼りつけられているから、おそらくあれがクエストボードとか言われる奴団だろうな。
 左手はカウンターが並んでいるから、あっちが受付とかの場所か。
 
 って、俺なんかこの世界の文字が読めるんだが、どうしてだ?

「陸人、もしかして文字が読めるの気になってた?」
「リリーは俺の心でも読めるのか?」

 俺の疑問をさも当然のようにしてニヤついているリリーをデコピンで黙らせる。
 
「いったいじゃないのよ!!私のプリティーフェイスに傷がつくじゃない!!」
「で、だいたいは察しがついたから問題ない。」

 おそらく転移特典って奴だろう?
 普通に考えてこいつらの言葉が分かる時点でおかしいんだし。
 文字が読めるのも納得できる。
 それにインベントリって言う収納スキルも持ってるんだから言わずもがな。

「そう言えば、インベントリって便利なものがあるのに、なんでアイテムバックなんてものを配ったんだ?」
「それはね、転移者のインベントリって本人しか開けないのよ。だからアイテムバックに詰めて配布したの。まあ、陸人は受け取る前に転移させられちゃったんだけどね。」

 やっぱりあのくそ上司腹立つわ!!
 まあ、いまさら言っても始まらないんだが……
 とりあえずさっさと登録を済ませて身分証を準備しないとな。

 俺たちはでかい入り口をくぐりギルド内に入っていく。
 床は石造りで、こちらも堅牢そうだ。
 ちょっとしたことではびくともしない……はずだ。


「あ、すいません。狩猟者ハンター登録したいんですが、どうしたらいいですか?」
 
 俺は総合案内とかかれたカウンターにいる職員と思しき女性に声をかけた。
 耳が少し出るくらいにカットされた金髪ボブヘアの女性で、知的なメガネが印象的だった。
 話すまでは……
 
「あらいらっしゃい!!」

 どう聞いてもだみ声だ……
 むしろよくよく見るとのどぼとけもある……
 女装男子かよ!!
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します

華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~ 「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」  国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。  ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。  その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。  だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。  城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。  この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

やっと買ったマイホームの半分だけ異世界に転移してしまった

ぽてゆき
ファンタジー
涼坂直樹は可愛い妻と2人の子供のため、頑張って働いた結果ついにマイホームを手に入れた。 しかし、まさかその半分が異世界に転移してしまうとは……。 リビングの窓を開けて外に飛び出せば、そこはもう魔法やダンジョンが存在するファンタジーな異世界。 現代のごくありふれた4人(+猫1匹)家族と、異世界の住人との交流を描いたハートフルアドベンチャー物語!

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...