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第1章

第12話 初めての街、初めての人

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 俺たちは大街道から北に移動し、きれいに舗装された道を移動していた。
 大街道から分かれた道も整備が行き届き、レンガ?のようなものが敷き詰められていた。
 広さもおそらく普通自動車なら3台は走れるかもしれないサイズだった。
 なにぶんこの世界の移動手段を知らないので、このサイズ感が正しいのかは分からない。
 まあ歩きやすいことには変わりはなかった。

 それからしばらくしてさらに分岐している土の舗装路があった。
 そこには町?の名前が記載されていた。
 
「なぁ、リリー。この街道を歩いていくと街までどの位でつきそうなんだ?」
「街道沿いだとあと2日はかかるわよ?こっちに分岐している舗装路だったらあと2時間ってところかしら。」

 なるほどね。時間的に考えても分岐の方を進んだ方がよさそうだな。
 よし、それなら一旦寄り道をしよう。

 というわけで俺たちは進路を東に取り、土の舗装路を進むことにした。
 さっきよりも歩きにくくはあるものの、あの鬱蒼と生い茂った森の道なき道よりはましだ。
 それに、極力段差が出来ないようにきちんと平にならされていた。
 これを重機無しでやるんだから、大変だよな。

 もしかしたら土木系の魔法使いもいて、そう言った仕事に従事しているのかもしれないが。
 
 そんなことよりも、この世界の住人一号に初めて会うと思うと緊張してきた。
 一応〝手加減0.01%〟のおかげで大丈夫だとは思うけど、それだった万が一がないとは限らない。
 はじめましてのあいさつで握手したときに、トマトになることだって考えられる……それだけは避けなければならない!!
 などと考えていると、大分日が傾いてきていた。
 あたりは少しだけ薄暗くなってきた。
 リリーが気を利かせて魔法で明かりを浮かべてくれたので問題無かったけど、今後を考えて俺もできるようになった方が良いかもしれないな。
 いや待てよ、魔道具があるかもしれないし、そっちを買うのもありだな。
 とはいえお金がないんじゃ仕方がないし、今は我慢しよう。

 そう考えた時俺はふと思い出したことがあった。
 この世界の金がない……

「リリー、一つ聞いていいか……お前金持ってるか?」
「へ?持ってるわけないじゃない?私は神様だよ?神様がお金使う必要あると思うの?」

 そりゃそうだ。
 聞いた俺が間違いだったよ。
 となるとリルだが……持ってるわけがなかった。
 そもそもリルはお金が必要になる場面なんてこれまであるはずもないんだから。

「もしかして陸人……あなたお金持ってないの⁈」
「俺はここに落とされたの!!持ってるはずないだろ⁈」

 俺は八つ当たり気味にリリーに怒鳴ってしまった。
 リリーに怒鳴ったって何も変わらないんだが……

「ということは……もしかしてアイテムバックもないの?」
「え?何それ、そんなの持ってないぞ?」

 俺は準備が出来る前にあのくそ上司のせいで転移してしまったからな。
 もしかしたら転移する前に何かしらの補助アイテムをもらえたのかもしれない。
 ここにきてもあのくそ上司が足を引っ張るとか、マジで勘弁してほしいな。
 
 リリーなんて頭を抱えてしまった。
 むしろなんでここまで来る前にそれに気が付かなかったんだって話だよな。
 俺は〝丈夫な身体〟のおかげか、空腹もなく、睡眠欲もない。
 おかげさまで、24時間ノンストップで働くことが可能な身体になったんだぜ!!
 くそ、社畜可能な身体じゃねぇかよ!!
 24時間働けますか?いいえ、結構です!!

「そのアイテムバックってものすごく貴重なものなのか?」

 さすがに俺はそこまで知らないので、リリーに確認した。
 リリーは呆れを通り越して若干憐れみを含んだ目で俺を見つめていた。
 なんか負けた感があるのは気のせいだろうか……

「貴重なんてものじゃないわよ。一応教えておくけど、この世界でアイテムバックはものすごく高価なものなの。そうね、陸人の世界で例えると、2トントラックに入る荷物が、背負いカバンに入るとしたらすごいと思わない?」

 確かにそんなものがあったら便利だよな?
 重さも軽減されるんだったらなおのことだ。
 物流革命が起こったって不思議じゃないな。

「しかもよ、背負いカバンの容量が入る腰下げ袋ですら金貨50枚はくだらないわ……。そして転移者に与えられるアイテムバックは……容量無限・時間停止という破格の性能よ。」
「マジかよ……」
 
 こればっかりは仕方がないことだな。
 あのくそ上司を恨んだところで俺の手元にマジックバックが無いことには変わりないからな。

「そうだ、忘れてたんだけどこの世界の通貨について教えてくれないか?」
「そうだった。それも本当はマジックバックにガイドブックが入っていたはずだから……」

 なんと至れり尽くせりなんだよ!!
 俺マジでハードモード過ぎないか?
 
 俺は思いっきりため息をついてしまった。
 それを見たリルが心配そうにのぞき込んできたが、美少女にそれをやられたらときめいてしまうじゃないか。
 もしかしたら俺の顔は赤くなっていたかもしれないな。

「それで、貨幣について教えてくれないか。」
「そうね、まずはこの世界に共通通貨は有りません!!各国でそれぞれの通貨を発行しているわ。基本金相場がベースとなっているから、金の含有量で換金が可能よ。」

 金相場ベースか……それならそれ以外の硬貨もあるんだろうけど、それは使えないっぽいな。

「今いる元魔王国は一番下で銅貨。これが10枚で鉄貨。鉄貨10枚で銀貨。銀貨10枚で金貨。金貨10枚で大金貨よ。それ以上は証書と言って、各ギルドで発行してもらう、信用証書で代用している形ね。」
「感覚としては銅貨が1円くらいか?」

 リリーは首を横に振った。
 つまり日本円で考えるのはまずいってことだな。
 こっちの感覚がまだ分からないから、それについてはリリーに聞きながら覚えるしかないな。
 
 とりあえずこれで下準備は終わりかな?
 リリーからいろいろ教えてもらっているうちに、村の明かりが俺の目にも届いていたのだった。
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