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第6章 冒険者ルーク2
第58話 ざまぁ………。1
しおりを挟む父上と兄上、それに俺と伯父上の達の4人で謁見の間の扉の前に立つ。
既に謁見の間では家臣達数人が待機している。
謁見の間の中から父上を呼ぶ兵士の声で、扉が開くとまず先に父上が中に入る。その後に続いて伯父が入り兄上と俺が中に入る。
謁見の間の中に入り、壇上に据えられている椅子に父が座ると俺達は父の後ろに控えて立つ。
俺は真正面を見下ろして床を見ると、ズタボロで小汚く小さくなっているオースが手枷をされて這いつくばっていた。(笑)
部屋の中は、しばらく沈黙が続いていた。
そして、父上がオースに声を掛けたことで沈黙が破られる。
「お前がオースと言う者か?」
「……………」
父上がオースに問うが、オースは黙ったままで固まっていて返事をしない。すると近衛騎士がオースに怒鳴る。
「貴様!領主様がお前に問うてるのだ!なぜ答えない。返事をしろ!」
「す、すみ……」
「良い!もう一度問う。お前がオースか?」
「は、はひぃー」
オースの裏返った返事を聞き、俺は可笑しくなり。そっと後ろを向いて笑いをこらえると、隣に立つエル兄上にチラリと見られた。
(メッセージ。兄上)
(……なんだ、少しは静かにしろよ?)
(すみません……。ですがあれが、可笑しくて)
(気持ちは分かるが……大人しくしてろよ?)
(ククク。はい、すみません。一応堪えますね)
父上が、汚いものをみる目でオースを見下ろしてから次に声を掛けたのは、ギルドマスターのダグだった。
「冒険者ギルドの、ギルドマスター。ダグよ」
「はい、領主様なんでしょうか?」
「こやつが、私の息子に無体をした男なのか?」
「ええ、そうで御座います。領主様」
「そうか……」
父上が、そうかと言い這いつくばるオースを睨み付けた。
「領主様この男は、ご子息のルーク様と同じパーティーメンバーであるにも関わらず。ルーク様へ殴る蹴るの暴力を、日常茶飯事で振るっていた様です」
「なんと!それは本当か?ルーク」
大袈裟に驚き、父上がわざとらしく聞いてくる。
「ええ、そうなのです。私が大人しくしているのを、良いことに。殴る蹴るですよ?本当に毎回痛くて、仕方なかったんですよ」
「ほぅ……それは……許せんなぁ~」
するとオースは、がばりと顔を上げて父上の顔を見て、領主の息子など知らないと叫ぶ。
「し、知らない。領主の息子なんて、俺らのパーティーにはそんな奴はいない筈だ!そんな奴は知らねぇ!」
すると、近衛兵がオースにまた近付き、オースの腹を蹴り上げる。
「貴様!領主様になんて口をきくのだ。生意気だ!この罪人が大人しくしろ」
「うがっ!くっ」
「それに、その男はどうやら相当な屑の様です。日頃からルーク様に金の無心や、暴力、クエスト中の色々な仕事も全て、ルーク様に押し付けて居たと、報告を受けて居りました」
「それはまた……、好き放題されたな?ルークよ」
「ええ、父上。クエストの報酬もピンはねされましたよ」
「そ、そんな事は、出鱈目だ!それにその男は、誰だ」
「貴様!まだ、そんな口を利きやがって!この罪人めが」
また、近衛兵がオースの腹を蹴り上げる。
「ぐっが!い………てぇ」
近衛兵に腹を蹴られたオースは、蹴られた腹を押さえて痛がり床を転がる。
お前……転がるなよ、汚ねぇなぁ~。
綺麗な部屋が穢れるだろ!
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