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新たな町へ
閑話 ニングスside 1
しおりを挟む旦那様と会ったのは、あの忌々しい奴隷商のあの檻の中でだ。
最初は子どもが奴隷を買いに?と疑った。
だが、自分はあの子どもにすら買われる事は無いだろうと思い諦めた。
そう、自分にはなんの才能もない。
今回もこの檻からは出れないだろう諦めていた。
人権など無いこの檻中で、いつ死んでも良いとさえ思い私は終わったのだと悲観していた。
それに、この檻から出るには自分の親族が買い戻しをしてくれるか、誰かが私を買わない限りは二度とここからは出れないと思っている。
だがそれも無理な事だと思って諦めていた。
そんな時に、子どもが自分を買うと言ってくれたのだから驚いた。
そして、屋敷に着くと元商人だった私に執事をしろ等と言って来た時には、無理だと一旦は断ったのは今では言い思い出だ。
「執事なんて無理です!私は、元は商人だったのですよ?」
「ハハハ大丈夫だよ?読み書きと算術が出来れば、無理にお茶入れろとか、言わないしな」
と笑って言われたのを覚えてる。
それから半年が経ちそろそろ一年が経つ頃。
私は今家族に、否…元家族に会いに屋敷を出て(勝手には出てませんよ!ちゃんと許可は得てます!)馬車で移動している。
それにしても、流石旦那様のお作りに為った馬車です。
宿などに泊まらなくても、何の問題もなく旅を続けてられるのですから。
路銀も、毎月の給料と旦那様から預かった金でなんとか為りそうですしね。
宿に泊まらない、食事も飯屋に行かなくて済む。これ程楽な旅はない。
そして、ドイア国の国境に差し掛かり国境を出ると次の国に入る。
次の国は小さな国で、アルバラ王国と謂う。
そのアルバラを通り次の国はグレルグリン王国。
そこを通り抜け向かうのはルーブル帝国。
私の目的地です。
ギルドから地図を頂き、馬車を走らせてますが遠いですね。帝国に入ってもまだ、元妻たちが暮らす町までは距離が有ります。
「これは3ヶ月以上掛かりそうですねぇ……天候にも寄りますし。はぁ~」
と、ため息を漏らし馬を走らせる。
そして、アルバラに入り一つ目の村を目視で確認出来る距離迄くると、なにやら慌ただしく人が動いてるのが見えます。
「…なにか厄介な事が有りそうですね?ですが私にはなにも出来ませんから…。ここはこのまま素通りですね。すみません…」
旦那様が居れば、関わる事もあるのでしょうが…私にはその力は有りません。
そうして村を通り過ぎた。
それからも天候には恵まれ、夜営をし続けて順調に旅が進むそんな頃に、アルバラの王都が見えて来ました。
ですが、ここでも王都を通り抜けるだけで、一切泊まることはしません。
そうして、アルバラの国境を超え次のグレルグリン国内に入りました。
この国は大きな国で、移動は大変そうなので馬には無理をさせずにゆっくり進むことにします。
出来れば、素通りしたい国の一つですから。
そんな時……。
グレルグリンの国境を超えて、二つ目の村を通り過ぎ馬車道を外れ夜営する場所に着き、夜営の準備を始めた頃に、一組の冒険者らしき男達が同じ夜営場所に入ってきます。
私は少し警戒をして、(馬車の結界は解かず)夜営の準備を続けていた。
すると冒険者の一人が此方に近寄ってきます……。
私はその場で気付かぬ振りをし、火を起こした上に鍋を乗せ夕食の準備をし、近寄って来る人物が声を掛けてくるのを待ちます。
「よう、おっさん」
おっさん……まぁ、そうですが…ここは無視ですかね?
「……」
「おっさん、なんか食いもん持ってねぇか?」
「……(やはり集りの類いでしたか……)」
「なあ、おっさん!聞こえてるよな?」
「はぁ~聞こえてますが?なにか?」
「聞こえてんじゃんかよ!無視すんなよ!」
「……(面倒な、人の様ですね……)」
そう、思い少し嫌な顔をした。すると男の後ろからまた違う男が、私に声を掛けて来ました。
「す、すみません!こいつが失礼な事をおい!ブッカ!初対面の人に失礼だろ」
おや?この方はちゃんとしてますね。
ですが……無理ですね。
食糧にも余裕は有りません。
店で材料を買っても…料理が出来ない私には買っても意味はありませんし。
「ええ!だってよぉー俺ら、なんも食うもんねぇもんよ!このおっさん飯持ってそうだろ?」
「だとしても!失礼なんだよ!お前は。すみません、俺らは戻りますので」
「……ええ、お気になさらず」
ここは我慢です、情を掛けては駄目です。
貴重な食料品を分けるにしろ、なににしろ物事にはちゃんと筋があるのですからね。
そうして私は、冒険者たちには目もくれずに馬の世話と自分の食事を終わらせ馬車の中に引っ込んだ。こんなことなら馬車の中で済ませば良かったですね。それにしても…厄介な。
これは、結界は解かない方が良さそうです!大事な馬にもね。
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