611 / 761
新たな町へ
554話 獣人の子供。
しおりを挟むクッキーを一つ摘まんで、子供の目の前に差し出したが……これは無理かな?
…手を出さないよね…無理か。
「食べない? 美味しいよ?」
……根比べは出来ないので、俺は摘まんだクッキーを自分の口に放り込みモグモグ食べる。
『困ったぞ…ナビ』
《当たり前ですよ!何処の世界に奴隷を買うのに、菓子で子供を釣るなんて、考えが浮かぶんですか!買うなら強引に買うんですよ!》
『ええ!そんな無体な事をすんの?俺には出来ねぇ~!恐いじゃんか』
《………甘い》
誉め言葉ですよぉ~!
喉乾いた……アイテム鞄から飲み物を出す。
勿論子供の分も…飲まなくてもだす!
だしたのはオレンジジュース氷入り。
出したジュースを子供の前に置いて、飲んで良いよと声を掛けてから自分も飲む。
ズズズッ…はぁ~美味しい。
モグモグ、パクパク、ズズズッと子供の目の前で飲み食いする。
時折飲まないの?食べないの?と、時折子供に声を掛ける。
その光景を付き添って来た男の職員が、羨ましそうにガン見してるけどお前には遣らん!
っても、子供は未だ動いてくれないがな!
以外にしぶといなぁ~これは釣れねぇ……と思っていたら、とうとう我慢出来なくなったのかな? 目の前に座る子供が、おずおずとクッキーの皿に手を出したのが目に入った。
やった!釣れたどぉぉーー!
でも、ここでは俺は見ない振りだ。
下手に声を出したら食べ無さそうだ。
おずおずと子供がクッキーに手を伸ばしてクッキーを一つ取ると、自分の口に持って行って「パク」と、クッキーに齧り付いてカジカジ食べてる。
おっ、食べたな…フフフ可愛いじゃんか!子栗鼠の様な食い方してるぞ。
「フフフ、それ美味しいだろ?ジュースも飲みな」
両手でクッキーを持ちかじかじしてる子供が何とも可愛い。
そして俺の言葉にうんと頷いた。
「食べなから聞いてな?」
「……」
さっきも今も、こくッと頷いたから耳は聞こえてるな。
よし!
「君、私の屋敷に来るかい?屋敷には君より大きなお兄ちゃんがいるんだ。その子たちの友達に為ってくれないかな?それに屋敷に来ればお菓子食べれるよ? どうかな?」
「………?」
「お菓子だけじゃないよ?ちゃんとご飯も食べれるよ?どうかな?」
飯で釣ってるのは分かってるんだけど…それ以外で今のところ意思の疎通が難しいんだよなぁ…。
「あ……これ……」
おお、声が聞けたよ!小さい声で精一杯な声だな。
「そう、これも食べれるよ?どうかな?私の家に来ないかい?仕事も出来るし、勉強も出来るよ」
「?」
こてんと首を傾げてるけど……意味は分かって無いのかな。
引き取ったら厄介なのか…いまいち迷うけど…。
でもなぁ~ここに居て、檻の中で膝を抱えてるよりはましだと思うんだけど…。
それって…俺の独りよがりの傲慢な考えなのかな?
良く分からん。
「もう一度聞くよ? 私の家に来るかい?」
「………………………」
おっ!クッキーと俺を交互に見てるけど……。
俺はニッコリとスマイルだ。
顔引き釣って無いかな。
すると子供が、座っていたソファーからトンと降りて俺の側に来ると、俺の袖口を摘まんで引っ張って来たぞ…えっとこれは……?
「君…私と来るかい?」
「……」
コクリと頷いた。
ほほぅ……通じたし…。
「そこの人、この子も連れて行くからオーナーのメンバルンさんに伝えて来てよ」
「少々お待ち下さい」
側に来た子供を俺の隣に座らせる。
抱っこしてあげたいけど…ここではクリーンを使わない方が良さそうなので、膝ではなく隣に座らせて話し掛けた。
「君…お菓子まだ食べるかい?それともジュースが良い?」
クッキーを右手に持ち、ジュースを左手に持って聞く。
「………」
キョロキョロ見比べて困った顔をする。
「どっちも欲しいのかな?」
「…」
ぱっと笑顔になり【うん】と頷いた。
ハハハこれは懐かれたかな?
懐いてくれると良いなぁ~。
36
お気に入りに追加
1,306
あなたにおすすめの小説
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる