上 下
592 / 761
新たな町へ

535話 イリヤ 6 改稿

しおりを挟む


 がたごとと揺れる馬車の中は、しんと静まり誰も口を開かないから凄く気まずい雰囲気です。

 でも、子連れのおばさんが(失礼過ぎる)いてその子供が時々騒ぐけど…この度に申し訳無さそうに回りに謝ってるよ……。
 あたしも将来子供が出来たら、ああなるのかな?でも、なんか嫌だな……。そもそもあたしって子供が嫌いなんだよね。

 でも、次の町に行ったら仕事探して…それからフフフ好きな人とか出来るかな?
 そうだと良いなぁ……。

 飛び出して来たお屋敷の旦那様は、それはそれは凄い美人さんだったけど…あの人は規格外かな。
 過ごす過ぎるもん。

 そんなことを考え、馬車に乗り込揺れで眠く為ってうとうとしてると馬車が急に止まった。

「え?なに?」

「お客さん達、少し待ててくれや!この先に魔物が出てる。決してここから出ないでくれや」

「ま、魔物…ひぇ~!」

「魔物…ママ怖いよぉ~」

「大丈夫よ、ママがいるでしょ?ねっ」

「う、うん……」

 なんか……あの親子嫌だな……煩いし、静かにしてくれ無いかな。魔物が出てるんだよ!静かにしててよ!

 そしたら今度は、冒険者風のお兄さん達が騒ぎ出した。

「お、やっと俺らの出番だ!御者のおっちゃん!俺らが魔物なんかちょいちょいと狩って来るぜ!」

「だな!」

「そ、そんなお客さん座って待っててくれよ。別に護衛は雇ってるだよ!こっちは無駄金なんか出せないからな!」

「ちっ!けち癖ぇなぁ~」

「たがよ、金を貰わないなら、狩って来て良いのか?素材欲しいんだよ」

「それは外の護衛と話しを付けてくれよ。俺は知らん」

「そうか……まっ今回は引くか…」

「仕方ねぇ後で護衛の奴らと話すか…」

 ひぇ~魔物狩りなんて……こ、怖すぎるよ!
 あたしは黙って大人しくしてようっと…。

 それから暫く大人しくしてると、また馬車が動き出した。

「ほっ…」

 これで王都からまた離れられたよ……。
 でもあの旦那さんって、あたしなんかを追ってなんて来ないだろうなぁ~。

 優しいけど…冷たい人だったもんね。

 暁彦の優しさをまったく分かって居ないイリヤ。
 ちゃんと仕事をこなせてれば、なにも問題はなかったのだが、まったくその事に理解出来て居ないのだから…哀れではある。

 イリヤ以外の使用人達はちゃんと暁彦の優しさを理解しているからあの屋敷で働くと云うのに…。


 馬車が動き出して夕方に為る頃、一旦馬車は止まり今日はここで野営すると、御者のおじさんに言われてみんなで外に出てるんだけど…。
 馬車に乗ってたみんなは其々食事してる。

 でも…あたしは食べ物持ってないし……。
 仕方ない……馬車で大人しく寝てようかな。
 人と話すのも苦手だし。

 馬車の外では、みんなでなんか話しながら食事してるなぁ……いいなぁ~。

 あたしも混ざりたい…。

 お屋敷居た頃は、マイナちゃんとゲイル君がよく話し掛けてくれてたなぁ~。

 あたしって…お屋敷出て失敗だったのかな?
 ここでは、お水も飲めないし…ご飯も今は無いし。


 お屋敷にいたら、水もご飯も食べ放題だったよね?それに何故か昼3つに出るおやつもあった…あたし……恵まれてたのかな?

…屋敷を出てから半日程経って、やっと自分の置かれていた状況が分かったイリヤだが…今更遅い。

 朝の寝坊も自分が悪いし、罰金は…それは痛かったけどでも気にして起こしてくれるケイトが居たのに、それも邪険にしてしまった……。

 屋敷で仕事をしてても、自分のドジでよく物を壊してそれをうっかりドジしたからしょうがないと言い訳をしてたし……。

 けど…自分がちゃんと注意してドジをしない様な努力はしなかった。だって物凄く面倒だったし、物を壊しても「謝ったら許してくれるよね?」と甘い考えがあったからだ。

 アハハ今更ながら甘かったと実感するよぉ……。
 どうしょう、お屋敷に返りたくなっちゃったよぉ。

 お腹空いたし…喉元渇いたよぉ~。

 馬車の隅っこで膝を抱えて半泣きしながら誰にも声も掛けられる事もなく一人ポッンと居るイリヤ。

「なんか思い出して来ちゃったよ……」

 これって…貴族から売られて奴隷商人の処の檻に入れられた時と同じだよね。

 あぁ、あたしって馬鹿だなぁ~。
 と、空腹を抱えて眠るイリヤだった。

しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

目覚めた世界は異世界化? ~目が覚めたら十年後でした~

白い彗星
ファンタジー
十年という年月が、彼の中から奪われた。 目覚めた少年、達志が目にしたのは、自分が今までに見たことのない世界。見知らぬ景色、人ならざる者……まるで、ファンタジーの中の異世界のような世界が、あった。 今流行りの『異世界召喚』!? そう予想するが、衝撃の真実が明かされる! なんと達志は十年もの間眠り続け、その間に世界は魔法ありきのファンタジー世界になっていた!? 非日常が日常となった世界で、現実を生きていくことに。 大人になった幼なじみ、新しい仲間、そして…… 十年もの時間が流れた世界で、世界に取り残された達志。しかし彼は、それでも動き出した時間を手に、己の足を進めていく。 エブリスタで投稿していたものを、中身を手直しして投稿しなおしていきます! エブリスタ、小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも、投稿してます!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

どこかで見たような異世界物語

PIAS
ファンタジー
現代日本で暮らす特に共通点を持たない者達が、突如として異世界「ティルリンティ」へと飛ばされてしまう。 飛ばされた先はダンジョン内と思しき部屋の一室。 互いの思惑も分からぬまま協力体制を取ることになった彼らは、一先ずダンジョンからの脱出を目指す。 これは、右も左も分からない異世界に飛ばされ「異邦人」となってしまった彼らの織り成す物語。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。-俺は何度でも救うとそう決めた-

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
 【HOTランキング第1位獲得作品】 ---    『才能』が無ければ魔法が使えない世界で類まれなる回復魔法の『才能』を持って生まれた少年アスフィ。 喜んだのも束の間、彼は″回復魔法以外が全く使えない″。 冒険者を目指し、両親からも応援されていたアスフィ。 何事も無く平和な日々が続くかと思われていたが事態は一変する。母親であるアリアが生涯眠り続けるという『呪い』にかかってしまう。アスフィは『呪い』を解呪する為、剣術に自信のある幼馴染みの少女レイラと共に旅に出る。 そして、彼は世界の真実を知る――  --------- 最後まで読んで頂けたら嬉しいです。   ♥や感想、応援頂けると大変励みになります。 完結しておりますが、続編の声があれば執筆するかもしれません……。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

処理中です...