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新たな町へ

332話 有って困るものではない

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「ええっと……、そんなに驚く事かい」

「た、だって。お給金が……出るなんて……」

「奴隷の私達に給金……」

「あのさ……、働いてくれてるんだから渡すだろ。俺が忘れてたから、遅くなっちゃったけどさぁ~」

 すまんと、言って頭を下げる。

「い、嫌、やめてくださいよ!奴隷の俺達になんかに……。それに、俺達は働いても金が貰えるなんて、思ってなかったですし……」

「あのね?君達はもう奴隷じゃないよ。雇い入れた使用人だからね」

「…………旦那様……。俺頑張る!」

「お、おお。ゲイル頑張ってくれ」

「それでも、旦那様……。給金の額が多すぎます」

「え、そうなの?一月分だよ?これでも……少ないかなと思ってるんだけど……」

「私達には額が多いですよ。旦那様が仰った額を半分にすれば、同額であと数人雇えますよ」

「え!だってそんなに少ないと、君達生活出来ないだろ?」

「まさか!お屋敷に住まわせて貰って、三食出て、比較的楽な仕事ですよ?多いに決まってます」

「だけど……、皆其々に欲しい物があるだろ」

「欲しいもの……ですか」

「無いですね。ここには欲しいものが揃ってますよ?」

「い、嫌、何にも無いでしょ。言い過ぎだよ」

「なに、言ってるんだい!旦那……うちらは仕事して三食食べて寝るだけだよ。平民の生活なんてそんなものさ!」

「遊ぶのは?やっぱり誰もいないの」

「冒険者と商人なら、酒場で飲んで色町で遊ぶでしょうが……」

「貴族の暮らしはもっと派手で。私がいた貴族は……酷い。でした………」

 と、イリヤが悲しそうに……俺に言う……。

「そうなのかい?ま、でもほら、仕事増えるよ。商売したいからね。カシューとゲイル、カナルは、門番意外にも冒険者の依頼をこなして欲しいし。ニングスには店を構えたいから、その手助けもお願いしたいし。ケイトとマイナも畑と馬の世話頑張って欲しいしね。もう少ししたら屋敷の出入りが、自由に出来そうだしね?」

「そうですが……」

「まあほら、お金使わなくても貯めてさ、何かあった時に使えるだろ?」

 ……金は有っても困らないぞ。

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