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第10章

第9話 狸か、お前は!

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 後だしじゃんけんってなんだよ。
 ったく、時間取らせやがって。
 不満を爆発させたいが、ここで少し冷静に。いつもこれで上手くいかないからな。が、

「処で、おいカイト、ベルゼス。いつまで寝てるしふりしてる!狸寝入りするな起きろ。狸かよお前は」

 横で寝たふりをしているカイトの頭を軽く叩く。

「いって、兄ちゃん痛いよ。僕、狸じゃないし。でもバレてた?」
「ジュリ殿、我はその…」
「ああ、ベルゼスは、仕方ないから良いよ。でも、カイトはお前は許さん!」
「ええ、俺だって口出しせずに大人しくしてたじゃん」
「してたじゃん!じゃねぇ(寝たふりしやがって)」
「ええ、それならどうすれば良かったのさ」
「起きて、俺をフォローしろよ」
「そんなの無理に決まってるじゃん」
「なんで」
「俺が、難しい事は兄ちゃん任せ。金の管理も兄ちゃん任せなのに?」

 お前はいつから、そんなお馬鹿馬鹿に成ったんだ?
 兄ちゃん悲しいぞ。

「はぁ~お前は。兎に角、具合が良くなったんなら、このまま起きてろ。なんだか話がややこしく為って来てるしな」
「ええ、また拗れてるの?」
「カイト、お前起きてたなら訊いてたろ」
「アハハ、知ってる。冗談だよ。でも、どうすんの? 物件あと三件も出てきて」
「それなぁ~」
「取り敢えず、話だけでも訊いたら?」
「訊くのは良いけど。なんかギルマスの態度が気に喰わん」
「あ、また始まった」
「なんだよ、またって」
「兄ちゃんの悪い癖」
「癖って、警戒するのは悪くないだろ?」
「そうだけど、それがややこしく為って、トラブル発展するじゃん」

 そうかな?そうでも……ないと信じたい。

「でも、警戒は必要。初めて人と対するときは、絶対信じては成らん!お前も痛い目に遭ってるだろ。人を見る目が無くて」
「う、それを言うな」
「ハハ!ほら、言い返せないだろ?」
「はい……」
「ファァァ~ジュリ殿、我は眠い」
「ん、なら、鞄に入るか?」
「そうさせてくれ」
「なら、カイト鞄を………」
「それ以上言わなくても分かってますよ。そら、ベルゼス中に入ってなよ。で、ついでにレオ達のご飯もあげといて」
「ん、任された」

 カイトが鞄の口をカパリと開くと、ベルゼスが鞄の中にスルっと入って行った。

 うん楽だけど…ベルゼスにはもう少し忍耐力を付けて欲しいかな。
 獣とはいえ従者なんだからさぁ。

「で、兄ちゃん」
「なんだ?」
「未だここに居るのかよ。で、喉乾いた」
「居なきゃだろ?ホラよコーヒーでも飲んでろ」

 ネット経由で鞄からコーヒーを出す。
微糖のペットだ。

「サンキュー……うう、これ少し苦くない?」
「そうか?微糖だぜ?」
「微糖って、苦いよ。で、なんで?」
「少し苦い方が上手いだろ? 俺の冒険者カードが、未だ戻って来ないからだよ」
「にがくないのが、良かったよ。カードを持って行かれたままか、でもそれって」
「ああ、面倒だけどな」
「はぁ~やっぱり、トラブルじゃんかよ」
「そうみたいだな。それに、俺のカードを確認しに行って戻って来たら、何故か物件は未だ有るとか言い出したしな」
「……なに、しれっとしてんのさっ!それ兄ちゃん、なめられてるじゃんか?」
「なめられて…まあそうなんだろうなぁ~」

「「………ハァァァァ~」」

 俺とカイトの二人で、頭を抱えて溜め息を吐いたのは間違いない。

 てか、早く戻って来いよで、カード返せよ!




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