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第13章

第40話 王子の帰還

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 こいつ、今私をお前と言ったか?
 それに、こいつは私のパトリシアに!
 私のかわいい妹に!何と言う無礼な物言いだ!

 ヴァンスは怒りのオーラを、威力を上げて身に纏い口を開く。

「何を勘違いされてるのかは知らんが、婚約の件は親同士が決めた事だ、本人は拒否していた。あの王子とは、唯の偽の婚約だ。それに、無理やり婚約させられたからな。パトリシアからは、あの屑王子に寄り沿った事もなければ、一緒の空間に居たのも数える程だ。それだけで傷物だと?」
「そ、そんな物は言い訳だろう?傷物には違わない!」
「だから、そのような物の言い方をする者に、大事な妹は渡せないと、言っているのだが?聞こえ無かったか?」
「だ、だが傷の着いた女など、いくら家族だとは言え荷物だろ?」
「……誰が荷物なのだ?不思議な事を言う王子殿だ。なぁ?ダルトそうは思わんか?」
「ええ何とも失礼且つ、不思議な物言いですね。信じられません!パトリシア様はこの国にとって、重要な方!その方を、感謝をする事はありますが、邪魔者等と思う者は此の国に、ご家族にも誰一人として居ませんね」
「そうだろう?ダルト。私達家族の愛おしい、妹だ!王子殿にも、御兄妹がいると聞くが違うのかな?」
「………つ!」

 するとこれは無理だと判断した、執事のマルナスが王子に耳打ちする。

「(殿下…ここは一端お引きに為った方が……?)」
「(だ、だがマルナス!)」
「(殿下!ここは分が悪いです!引くのも手では?)」

「煩い!ヴァンス殿!それでは私の国との友好はの約束は保護にされるのか!そうなると父上が、貴殿にした約束も反古になるが?」

「約束も何も、なにもしてないが?一方的に此方に押し掛けて来られて、只で、真新しい物をねだり、持って帰ったのは記憶にありますが?それだけでは?」
「な、なら、飛竜はどうするのだ!」
「飛竜……おや?貴殿の方から、用意が出来ないと言ってこられたのを、お忘れかな?此方は期待もして居ないし、別段魅力もないがなにか?」

 それがとうした?パトリシアの従魔はフェンリルだぞ?
 神の使い眷属だぞ……飛竜ごとき要るものか。

「くっ!それなら、我が国と戦になるが宜しいか」
「それは、脅しと取っても良いのか」
「ああ、構わん!私が国に戻り父に伝えればこんな国等一捻りだ!忘れるな!糞がマルナス国に戻る支度せい」

 ククク、やっとお帰りか……精々道中気を付けるが良い。

「ああ、お帰りか……良かったよ。只飯食らいが、ようやく減る。此方へ滞在され、貴殿達に掛かった費用は後日追って、国に請求させて頂こう。それと…貴殿達の荷物だが、城門の外だ。早く行かれるがいいと思うぞ?いくら安全な国とはいえ、保証はしないし、する必要もないのでな。マルス!今度こそお客のお帰りだ」

「ふ、ふん!マルナス行くぞ!」

「フフフ、では、此方へ宜しければ、城門までお送り致しますが?」
「構わん!マルナス行くぞ!」
「は、はい」

 バタバタと慌ててジークフリードは、マルナスを連れて城を出た。

 そして、馬車に近付いて目にした光景は…。
「な、なんだあ…れは。マルナスなんだあれは!」
「さ、さあ?私にも何がなにやら…」

 三台の馬車が連結してあり、護衛の騎士この国に予め潜入させていた筈の間者達が、馬車と一緒に鎖で繋がれて居た。

 それも鍵が掛けられて居た。

(この鎖と鍵は、パトリシアが考案した物で、ドワーフ達が作った物だ。簡単には切れないし、鍵も外れない)

 あれをどうやって外すのか?慌てる姿が、見れないのが残念だと思うヴァンスだ。

「く、クソ!この私に対しての…この非礼…。覚えて居れ!必ず仕返しはするからな!ベルガモット目が!」

 城の城門の前で他国の王子がそう叫んだ。

「マルナス!このまま国を出るぞ!支度しろ、のろまめ!」
「は、も、申し訳……」

 そして、マルナスが義者台に乗り、王子が馬車に乗ったのを確認すると、慣れない手付きで馬達を操り馬車を動かし、国を出ていったのだった。

  
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