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第10章
第35話 フレーバーティー
しおりを挟む「いえ、たいした事ではありませんわ。御客様と少し、お話をしていただけですから」
「そう……お客ですか」
「ええ、それより王子様は。どうして此方へ?」
「あぁ、少しアレク殿と話しがあってね。サロンに居たのだが、君がここに居たのが見えたのでね。どうしたのかと思ってね?」
「そう……でしたか」
何処まで見てたのかしら、お兄様……少しは配慮しましょうよ!
「それにしても、この東屋から見る中庭の景色は、見事ですね?庭師がこれを?」
「ええ、私も少し手伝いましたわ。フフフ」
「貴女がここを、手伝う……?」
「ええ貴族の娘がと、お思いでしょう?」
「ハハハ。少し驚きました」
すると、グレンが声を掛けてくる。
「お嬢様、失礼致します。お茶をお持ち致しました」
ワゴンでティセットを持ち込んで来ると、王子の前と私の前に、ティーカップとお菓子を置き後ろに下がる。
「グレンありがとう。さあ、王子様宜しければ召し上がって下さいませ。我が家自慢の、お茶とお菓子ですわ」
出されたお茶は、先程とは違うフレーバティーですわね。良かったわ。
先に私がティーカップに口を付けて、一口お茶を飲む。
「グレン……、これはブルーベリーね?美味しいわ」
「ありがとうございます」
それを聞いて安心したのかしら?
「なら私も、頂こう………。これは旨いですね。果物の香りがする」
「そうですのよ。ですが、このジャムをお入れになると、尚香りが立ちますわ」
「そうですか?なら、私も真似をして……。なんと……これは甘くて美味しいですね?パトリシア様。貴女の家が羨ましいですね?」
「……何が、でしょうか」
「我らの国に、この様な豊さは無いのでね。恥ずかしながら、これ程暮らしぶりが違うと嫉妬もしますよ」
「そうでしょうか?私は王都で13年暮らして居りましたが……不便はなかったですわ」
まあ、家だけが他と違ったのかもしれませんが。
そんなことは言わなくでも良いことですし。
「そうですか?ま、それ程ベルガモットの領地が、豊なのでしょうね」
「さぁ?私には領地の政は、分かりませんわね」
「フフフ。そうですね?」
「其で、私に何かお話しがありますの?」
「いえ、そう大したことは無いのですがね。遠目に見えた貴女が、少しお疲れの様でしたので。気晴らしにお話しでも?と思い、お声を掛けただけですよ?」
「まぁ、そうでしたの。ですが……共も連れずに?少し無用心なのでは」
「ハハハ。貴女が私に何かをするのですか?」
「フフフ。お戯れを、私にはなにも出来ませんわ」
「でしょ?なら安心ですよ……。あ!一つお願いが在るのですが宜しいですか?」
「なんですの?」
「この様な見事な庭を、是非案内してくれませんか?貴女が、手入れをしてる庭なのでしょう?」
「………今から、でしょうか?」
「ええ、出来れば」
「グレン?大丈夫かしら?」
グレンに顔を向けて確認する。お願い、誰が付いてきてねの想いを込めて。
「………ええ、構いませんよ?護衛は付けますが」
「そう。……でしたら、参りましょうか?王子様」
「あ!それと」
「なんですの」
「その「王子様」は止めないかい?」
「はぁ、ですが……?」
「是非君には、ジークと、呼ばれたいね」
「そ、そのような……不敬な事は……」
こ、困るのでやめて下さい。
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