上 下
132 / 574
第6章

第34話 領地へ 羽虫が居るわね?

しおりを挟む


 そう言って立ち上ると、小さな袋を摘まみケレスの目の前にぶら下げて見せる。

「しらんな、何だそれは」
「あら?そうですの?知らないのですか……」

 それだけ言って袋を持ったまま椅子に座り直す。

「はあ、お前も見た筈だが?馬車から出てきたのを、知らんとは言わせない!」
「で、殿下まで。おい、女!殿下に何をしたか!」

 何かするもなにも、何をすれば良いのかしら?

「全く、失礼な方ですわね!クレマンド殿下お伺いしても?」
「なんだい?パトリシア嬢」
「この方の爵位は?」

 するとまた、ケレスに会話を止められる。

「女!殿下に失礼だと言ってるのが分からんのか!」
「何か、煩い虫が居るようだね?気にしないでくれ。こいつは確か、伯爵家の末弟だったか?」

 気にしないで良いなら無視をしますわよ?

「そうでしたか。他国とはいえ全く伯爵ごときが、偉そうに仰いますわね?」
「な、何だと!」
「あら?羽虫が鳴いてますわね?」
「キサマ!!む、虫だと、私に対して無礼な!」
「貴方、先程から私達を下位の貴族だと思って、居りませんか?」
「それがどうした?下位の貴族ごときが、お前達など所詮子爵位もしくは、男爵位だろ!フン」

 とニヤリ笑うけれど……何を笑っているのかしら?

「あの殿下、大変失礼かと存じますが。殿下のお国ではあの様な方でも、王子付の側近になれますの?」

 ご免なさい、本当に怒らないで下さいませね?

「い、いや、そんなことはないのだがな。親類からどうしてもと言われて預かり、側近にしたのだが。まさかこれ程とは思って居なかったのだよ。元はあの三人だけだったのだがな」

全く頼まれても預かるのではなかったよ、と後悔の念を隠す事なく溢す。クレマンド殿下である。

「そうでしたか、これは大変失礼致しました。では、クレマンド殿下。殿下は、私達の家名は御存じでしたか?」
「あぁ、もちろんだよ、ベルガモット公爵家の方達だろ?君のお父上は国王陛下の片腕、やり手の宰相閣下だ、違うかい?」
「えぇ、正解ですわ。流石ですクレマンド殿下。それですのに……あれは……」

 と失礼男ケレスをチラリと見る。

「……私に聞かんでくれ、パトリシア嬢」

 と顳顬に人差し指を押しあてる。

 すると、今まで静観していたのか?食事に夢中で口を挟まなかったのかが、分からないが。ヴァンスお兄様がクレマンド殿下に詫びる。

「パトリシア、殿下に失礼だぞ。妹が失礼を言いまして、申し訳ありません」

 あ!そうでしたわね?でも、ムカついたのは事実だけれど……。

「クレマンド殿下、申し訳ございません。他国の事に出過ぎた事を……」
「いや、気にしないで欲しい。パトリシア嬢の言ってる事は、理解が出来る。私でもあれ程侮辱をされれば、良い気はしないからね。トリマン、こちらに来てくれ」

と言って側近1号を呼ぶ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で最強に・・・(旧:学園最強に・・・)

こたろう文庫
ファンタジー
カクヨムにて日間・週間共に総合ランキング1位! 死神が間違えたせいで俺は死んだらしい。俺にそう説明する神は何かと俺をイラつかせる。異世界に転生させるからスキルを選ぶように言われたので、神にイラついていた俺は1回しか使えない強奪スキルを神相手に使ってやった。 閑散とした村に子供として転生した為、強奪したスキルのチート度合いがわからず、学校に入学後も無自覚のまま周りを振り回す僕の話 2作目になります。 まだ読まれてない方はこちらもよろしくおねがいします。 「クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される」

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

学園首席の私は魔力を奪われて婚約破棄されたけど、借り物の魔力でいつまで調子に乗っているつもり?

今川幸乃
ファンタジー
下級貴族の生まれながら魔法の練習に励み、貴族の子女が集まるデルフィーラ学園に首席入学を果たしたレミリア。 しかし進級試験の際に彼女の実力を嫉妬したシルヴィアの呪いで魔力を奪われ、婚約者であったオルクには婚約破棄されてしまう。 が、そんな彼女を助けてくれたのはアルフというミステリアスなクラスメイトであった。 レミリアはアルフとともに呪いを解き、シルヴィアへの復讐を行うことを決意する。 レミリアの魔力を奪ったシルヴィアは調子に乗っていたが、全校生徒の前で魔法を披露する際に魔力を奪い返され、醜態を晒すことになってしまう。 ※3/6~ プチ改稿中

処理中です...