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中三・七典ヤオキ

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~~~~とある現代世界~~~~


「七転八倒よ!ゲームをしましょう!!」

「おいっ!高校受験だつってんだろ!!」

 ここは現代世界のとある県とある街にある中級家庭宅。

 そんな家に一人の少年と一つ(?)のぬいぐるみが喧嘩をしていた。

 そう、カモノハシなぬいぐるみのアンコロとかつて記憶喪失(プラス改造人間)の少年『七典ヤオキ(あだ名は七転八倒)』でる。

 あの出会いから約一年が経過し、アンコロのいる日常にすっかり慣れてしまったヤオキだった。

 そして、季節は秋。七転八倒は中三でこれから高校受験をする季節である。

「良いじゃないですか。大学受験で頑張れば…………大して変わらないですよ」

「うるさいよ!!」

 そう、七転八倒は受験勉強の真っ最中。そして、空気をあえて読まないアンコロは………………。

「………………滑る」

「うぐっ!!」

「………………転ぶ」

「がはっ!!」

「………………七転八倒」

「ぐぁあぁぁぁ………………っていつものあだ名じゃないか」

 アンコロは受験を妨害しまくっていた。受験生の禁句フレーズを口にしまくって。ついでに前にも言ったが『七転八倒』は苦悩などで転げ回ると言う意味だ。

 そして、そんな時であった。

ーーーーさぁ!あなたの『秋』は何ですか?食欲?読書?いえいえ、スポーツの秋でしょう!!今、話題のスポーツやシーズンスポットをご紹介します!!

 テレビから、『秋(スポーツ)』に関する状態が聞こえて来たのだった。アンコロはそれを聞いて、とあることを思いついたのだった。

「…………ふむ、スポーツですか。なるほど、そう言う手もありましたね。七転八倒がスポーツ推薦を取れば受験勉強より解放されるのでは?」

 『スポーツ推薦』…………それは受験の道の一つ。

 中学からの推薦や高校からのスカウトによって受験勉強の簡略化などが可能になる。

 高校受験において、スポーツ推薦はよっぽどの有名校(強豪校)をおいて、学力による試験科目や高得点などは求められない。

 もちろん、学力の成績は良い方がよい。だが、基本的に品性や学校生活、欠席率や提出物などによって判断されるのだ。

「何を言ってんだよ。もう、秋だぜ?推薦何てもう終わってるだろ?」

「ふむふむ、今だったらギリギリで行ける見たいですよ。大会などで高校からの目に止まれば…………ですけどね」

 アンコロはスマホ(アンコロ特別仕様)からインターネット検索して、高校スポーツ推薦の一覧を閲覧していた。

「お前なら行けるでしょう。かなり汚いですけど、お前は僕の改造手術を受けて人並み以上の身体能力を持っている訳ですから」

 そう、七転八倒はアンコロとの出会いの際に改造手術を受けていたのだった。それにより、人並み以上の身体能力を手に入れていたのだ。

 それを利用しようと言うのだ。この一年、ぐうたらな(あらゆる意味で普通な)七転八倒は活用していなかったようだ。

「で、でも…………流石に汚たな過ぎるんじゃ………………」

 七転八倒は意外と引け目を感じるのか気が進まないようだ。改造人間がスポーツ推薦などと卑怯や汚い処の話ではない。

「お前…………幼なじみと同じ学校に行きたくないのですか?」

「うぐぅ!?」

 天然記念物なみに珍しい事であるが七転八倒には幼なじみの女の子がいた。

 そう、以前に出てきたあの娘である。

↓この娘





 彼女の名は彩色天香。眼鏡のクラスの委員長的な少女…………そんな彼女に片想い中の七転八倒なのであった。

 しかも、彼女は成績優秀の美少女。

 片や七転八倒はほぼ普通(異常性欲と改造人間は別として)の人間…………比べるにも烏滸がましい、月とすっぽんである。

「比べるにも烏滸がましい、月とすっぽんですね」

「うるさいよ!!」

 アンコロは口に出して言いきるのだった。

「そんなお前に教えてやります。天香は県内屈指の進学校を受験予定らしいですよ?」

「呼び捨てか!しかも、何で天香の志望校を知ってんだよ!!」

「本人に聞いたからですよ。僕のコミュニケーション能力により、天香とは良き友人としてよく会話しています」

 どうやら、天香と友人になっているアンコロ。そして、色々な事を話しているらしい。進学についても、その一つだったようだ。

「その学校はスポーツにも力を入れているらしいですね。今からでの大会…………中学だと。ん?よく考えたら推薦を取れればいいのですから高校生の大会でも問題ありませんか。どうせ、飛び入り参加ですし」

「もう、決定事項かよ!!」

 どうやら、アンコロはやる気満々なようだ。こうして、七典ヤオキのスポーツ大会荒らしが始まったのだった。


~~~~とあるサッカー大会(高校生の)にて~~~~


「くっ!奴を止めろぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

「何てキープ力だ!!奴は本当に人間かっ!?」

「はっはっはっ!!無駄無駄無駄ぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 とある高校生のサッカー大会に突然現れた怪物選手…………そう、七転八倒である。

 七転八倒はサッカー大会決勝にてフィールドに乱入し、サッカーボールをカットすると常人離れしたドリブル(まるでボールが生きて舞うようであったと見た者たちは語る)でボールをキープしてゴールへと向かって行った。

「超オーバーヘッドキック!!」

「「「「「ば、ばかなぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

 オーバーヘッドキック…………それは頭を下にして空中でボールを蹴る技である。

 ただし、『超』と付くように普通のオーバーヘッドでは無い。超跳躍力によって頭上数メートルからのオーバーヘッドキックであった。

 それらを見た者たちは後に語る、まるでキャ○つ…………のようであったと。

「キャ○テンつ…………懐かしいサッカー漫画を思いだしますね」

 観客席にてアンコロがボソリと言葉を洩らす。

 『キャ○テン○』…………それは今も懐かしい王道サッカー漫画である。

 あの漫画にはス○イ・ラブ・ハ○ケーンやタイ○ーシュートなどと言った現実では実現不可能(あるいは反則)な技が多数出てくる。

 キャ○テン○は大分古い為(世界編などはあるが)知らない人もいるかも知れないから説明する。

 『ス○イ・ラブ・ハ○ケーン』は双子が上下になって足の裏を合わせて超ジャンプして空中からシュート(またはヘディング)をする技であり、『タイ○ーシュート』は普通のシュートではあるが人間に当たれば人が吹き飛んでいく高威力のシュートである。
 
「よし!逃げろ!!」

 そして、ゴールネットが破れるほどの超シュートをしてフィールドを後にする七転八倒。

 まだ、乱入する大会が沢山残っているのである。


~~~~とあるテニス大会~~~~


「はぁあああぁぁぁぁぁぁっ!!」

「「「「「ば、ばかなぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

 とあるテニス大会では優勝者に強制試合を申し込み、球一発でコートに爆弾を落としたかのような破壊跡を残した。

 見ていた者たちは後に語る、あの某テニス漫画のようであったと…………。


~~~~とある剣道試合~~~~


「マ○ンガン突き!!」

「「「「「やめろぉおおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

 とある剣道試合では、喉突きに更に突きを加える最低追い討ち技が披露される。

 これもかなり古い剣道漫画の必殺技である。

~~~~とあるバスケット試合~~~~


「ふははははっ!!」

「「「「「ばかなぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!分身しただとぉおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

 とあるバスケ試合ではまるで分身をしたかのようなディフェンスを見せ………………。これ以上の明記は避けたいと思います。

 七転八倒は調子に乗りまくった。もはや、ただの馬鹿と言うほどに。

 そして、そんな試合乱入…………大会荒らしを繰り返した結果…………七転八倒はこう呼ばれるようになった『ゴミックマン』と………………。

 『ゴミ』と漫画のような存在『コミック』を掛けた名のようだ。


~~~~~~~~


「近寄らないで、クズ!!あんたなんか…………絶交よ!!」

 今や学校…………いや、町中に七転八倒の悪名が轟いていた。そして、幼なじみ…………彩色天香からは絶交のお言葉を頂いたのだった。
 
「ううぅ…………どうして、こうなったんだ」

「それが分からないから、お前は馬鹿なんですよ。調子に乗りすぎです」

 完全に幼なじみにフラれた七転八倒。そんな、七転八倒に『当たり前ですよ』と言うアンコロであった。

「お前が『ゴミックマン』か!!」

「どうか、俺たちを部下にしてくれや!!」

「ゴミの番長!!」

 更に不良たちからも狙われるようになった…………不良たちのトップとして。

 大会荒らしをしていて、何度か不良たちに襲われる事があったのだ。どうやら、裏で不良たちと繋がっていた似非スポーツマンがいたらしい。

 大会を潰された恨みか、ただの目障りだったのか…………両方だろうが、七転八倒は不良たちを撃退し続けた。それが今に繋がったようだ。

 不良たちに傅かれ…………乗りやすく(馬鹿なだけ)、フラれて傷心を負った(自業自得)七転八倒は不良へと染まって行ったのである。

 不良集団を手に入れた七転八倒は、やがて中学を制圧し、地区をも掌握していった。今や百人以上の不良を束ねるリーダーとなったのである。

 季節は『冬』。中学生活も終わり間近………………高校受験など、とうに忘れて適当な学校に行ければそれで良いと遊ぶ日々。

 髪を金髪に染め、リーゼントにさらに長学ランを羽織っている。





 ………………そんなある日の事であった。

「……………………君に話がある」

 校長と教頭と担任に呼び出された七転八倒。ついに退学か…………と思ったが違っていたようであった。

 なお、小中学校における停学退学などの懲罰は『出席停止措置』として行われる。

 退学は私立ならばあるが、公立は出来ないとされる(中学までは義務教育の為)。つまり、私立から公立に移される事はあるのだ(または少年院行きか)。

「………………君には、これに出て貰いたい」

「何だ、これ?『ヤンキーカップ20✕✕』?」

 校長からチラシのような紙ペラを渡される。

 それには、『ヤンキーカップ』などと書かれており、全国各地の不良(18歳以下限定)を集めて格闘大会を行うとされる趣旨が書かれていた。

「………………馬鹿げた事だが、とある大富豪がやりたいと言い出したらしい。もちろん、公での話では無いがな。

 優勝した不良には1000万の優勝賞金と好きな学校に行く権利。優勝者を輩出した学校にも、様々な恩恵が約束されているとの事だ。

 その大会への出場者に君が指名されたのだよ」

 どうやら、学校側としては秘密裏にやるならば学校のイメージダウンにはならず、恩恵だけを得られるとの思惑のようだ。

「へぇ………………面白そうじゃねぇか」

 チラシを見て笑う七転八倒。彼も乗り気のようだ。

 あの弱々しかった七転八倒はもう居ない。もはや、完全に一人の不良…………立派なクズへと成り果てていた。


~~~~


 そして、数日後…………ついにヤンキーカップの日が来たのである。ヤンキーカップの会場は巨大ビルの地下であるようだ。

 不良には合わないような豪華リムジンに黒服サングラスの男たちによって会場へと案内される。

 ビルの駐車場に入ると車ごと入れるエレベーターにて地下に降りる。

 地下には野球グラウンドのような広さの場所が広がっており、リムジンごとグラウンドに乗り上げて『降りろ』と促されたのだった。

 そして、次々と地下グラウンドにリムジンが現れて不良たちを降ろして走り去っていく。

「けけけ…………ここが舞台か」

「優勝するのは、この俺だ」

「はん、馬鹿言ってんじゃないよ。優勝するのはあたいさ」

 出場する不良はナイフをペロペロしそうなのや、2メートル越える巨体、さらにスケバンみたいな女不良もいた。

 もちろん、その中には七転八倒の姿もある。

(どいつもこいつも…………大したこと無さそうだな)

 七転八倒は集められた全国の不良たちを見ながらそんな事を思うのだった…………調子に乗りすぎである。

 そして、総勢12人の不良たちがこの場に集結したのであった。


ーーーー全国から集められた不良どもよ!戦いの時は来た!!


 会場の照明が落とされ闇が支配する。

 さらに、格闘(プロレス)番組のような煽り台詞が鳴り響き、スポットライトが選手たちを照らした。

ーーーー12人の不良たちよ!今宵、最強の不良が決まる!!報酬は現金1000万!さらに好きな学校への進学権!他にも希望があれば言うがいい、大抵の願いは叶えてやろう!!

 具体的な報酬を聞いて、不良たちに剣呑な眼差しが宿る。

ーーーーでは、バトルのルールを説明しよう。形式はバトル・ロワイアル!!武器の使用などは自由!優勝者は最後までこのグラウンドに立っていた者だ!!

 司会者よりルール説明が行われる。そして、ある意味分かりやすく野蛮で明確な勝利条件であった。

ーーーー武器は好きな物を選べ!!

 グラウンドの一角の壁が動き、武器の収納庫が開かれる。

 その中には釘バットや鉄パイプ、チェーンにメリケンサック、さらにはスクーターに馬力の高い大型バイク…………銃火器や日本刀などは無かったが、およそ不良が使いそうな(あくまで個人のイメージによる)凶器が大量に収められていた。

ーーーーバトルは15分後にスタートだ。それまで、武器を選ぶなり、瞑想をするなり、不良同士で親睦を深め作戦やチームを組むなり好きにすると良い。

 不良たちはバトル開始まで散り散りになり…………ある者は武器選びを、ある者は壁の隅で目を瞑りスカしたポーズで開始を待つ。

 そして、七転八倒はと言うと………………。

「君、どうだい?僕と組まないか?」

 出場者の一人に『組まないか』と誘われていた。

 誘って来た男は凡そ喧嘩とはイメージに合わないタイプの金髪ロン毛やさ男(若干イケメン)であった。
 
「………………失せろ」

 それに対して七転八倒はロン毛(仮名)に『失せろ』の一言で終わらせた。しかし………………。

「君の事は知ってるよ。七典ヤオキくんだろ?不良歴はまだたったの数週間、だけど不良に至るまでの経歴はとんでも無いってね。数多のスポーツ大会を規格外の身体能力で荒らして不良へ。その後は驚異の速さで学校を制圧して支配圏を拡大しているってね」

 それに対してロン毛はうざ絡みをする。どうやら、ロン毛は情報通だったようだ。七転八倒の経歴が丸裸。そして、ロン毛の本領はここからだった。

「君…………幼なじみがいるんだって?」

「……………………………………………………あ?」

 七転八倒において最大の禁句を口にしたロン毛であった。その一言で七転八倒は最大に不機嫌となる。

「幼なじみが大事なら僕に勝ちを譲ってよ…………ね?ついでに他の奴らもボコった上でね」

「……………………てめぇ」

「ははっ、悪く思わないでね?1000万だよ?少しくらい卑怯になるさ」

 ロン毛は卑怯者であった。七転八倒の幼なじみ身を盾に自分の言いなりになれと揺すったのである。

「じゃあ、お願いね」

 ………………などと言いながら、七転八倒から離れるロン毛。そして、他の参加者にも同様の事をしに行くのか、次々と声を掛けていく。

 そして、バトル開始まで一分を切った。

 3…………2…………1………………。

ーーーーバトル・スタート!!

 バトル・ロワイヤル開始の号令がグラウンドに響き渡る。

「ひゃっはぁああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「くたばれぇええぇぇぇぇぇぇっ!!」

 不良たち全員が一斉に動き出した。

 ある者は釘バットを手に殴りかかり、またある者はスクーターに乗りチェーンを振り回し、またまたある者はナイフをペロペロと舐めている。

 そんな中で七転八倒がまず始めにとった行動は……………………。

「死ねぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「え、えぇえええぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 ロン毛に殴りかかる事だった。他の不良たちを無視してロン毛へと突っ込んで行く。

「き、君っ!?幼なじみちゃんがどうなっても良いのかい!?」

「お前をここで再起不能の重症すれば問題ないだろ?

 それに優勝すれば1000万、治療費くらいは出してやるよ。さらに主催者も言ってただろ?大抵の希望も叶えてくれるって、ならばお前の個人情報を教えて貰って仕返しも出来るって事だろ?

 だから………………安心して死ねぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「ひ、ひぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

「おらぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 そう、優勝したらちっぽけな脅しなど意味の無いほどの金と願いを叶える権利が与えられるのだ。よっての七転八倒の選択は正解であった。

「ぎゃひぃいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 ロン毛はあっさりと七転八倒にボコボコにされるのだった。

「お、お願い…………だ。た、助けてくれ…………僕はどうしても優勝しなきゃ…………ならないんだ」

「…………………………あ?」

 泣きが入るロン毛…………そして、倒れ付しながら七転八倒の足を掴みながら語り始めるのだった。

「僕の妹は病弱で…………ほっとけば数年の命なんだ。だから…………どんな手を使っても優勝しなきゃって………………1000万あれば妹は救われるんだ!!」

「……………………………………………………」

 それは涙ながらに語るロン毛だった。それに対して七転八倒は………………。

「ふん、くたばれ馬鹿がっ!!」

「ぐはぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ロン毛にトドメを刺した七転八倒だった。

「ひ、酷い………………」

「ふん、とりあえずはぶっ飛ばす。それは決定事項だ。しかし、俺も鬼じゃないからな。調べさせて本当だったら1000万はくれてやるよ」

「え………………七典くん、君は…………」

 どうやら、七転八倒にも優しさは残っていたようだ。本当ならば、1000万はロン毛にやっても良いと思っているらしい。

 何はともあれ、まず一人…………ロン毛が脱落したのだった。

「ひゃはぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!死ねぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「ふん!お前が死ねっ!!」

「ぐはぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 釘バットを振り回していた不良が向かって来たので七転八倒はあっさりと撃退する。

 ………………釘バットくん脱落。

「ヘイヘイヘイヘイッ!!道を開けなぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」

 さらに、姉御なスケバンがスクーターに乗りながらチェーンを振り回してやってくる。

「おりゃあぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」

ーーーーパァン!!

「え?ひゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 七転八倒は釘バットを手にしてスクーターのタイヤに投げつけた。

 七転八倒の常人以上の投擲と釘バットによってタイヤが破裂したのだ(大変危険ですので絶対に真似しないで下さい)。

 スケバンはそのパンクによる衝撃で派手に転倒するのだった。

 こうして、スケバンも脱落したのだった。

 また一人、また一人と数を減らしていく不良たち。そして、とうとう………………。

「最後はお前か………………」

 残ったのは七転八倒と2メートル巨体の不良だった。

「ぐははは、どうだ?最後は正々堂々、拳だけで決着をつけないか?」

「それ、明らかにお前の得意分野だろうが…………だが、良いぜ」

 2メートルの筋肉質不良男と平均体格の七転八倒。殴り合いでどっちが不利かなど考えなくても分かる。ただし、七転八倒が普通の人間ならばだ。

 それを隠し、正々堂々を装って提案を受ける七転八倒だった。

「おらおらおらおらおらっ!!」

「あたたたたたたたたたっ!!」

 二人は北○百烈拳のようなラッシュを互いに撃ち込む。全弾が全弾、相手に当たる潰し合い…………それは漢と漢、気合いと耐久力の勝負だった。

「な、なんて奴らだ…………」

「ふっ、恐ろしい奴らと同年代に生まれてしまったものだ」

 いつの間にか、意識を取り戻した不良たちも二人の戦いを見て感嘆の声を上げる。

「終わりだ!七転八倒内臓破壊拳!!」

「勝つのは俺だぁっ!天辺重鉄板踵落とし!!」

 さらに、両者ともに必殺技を持っていたようだ。お互いに最後の一撃…………これで全てが決まる。

 七転八倒の必殺技は超強力なボディーブロー。

 片や、巨体不良から放たれるのは2メートル巨体の頭上から落とされる踵落とし。

 勝負は先に必殺技を当てた方に決まる。それは七転八倒にとって踵落としよりも速く懐に潜り込めるかどうかだ。

ーーーーブォオオオォォォォン!!

 巨体不良の踵落とし(振り上げ)音は普通の人間が出せる音ではなかった。

「おぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 七転八倒は吠えた…………踏み出す一歩と渾身の力を込めた一撃に勇気と根性、ついでにその他も詰めて。

「「おぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」

 今、二人は光となったのだった。果たして、最後まで立っていたのは………………。


~~~~数ヶ月後~~~~


「諸君、入学おめでとう。今日から君たちはこの銅鑼伍来夢ドラゴラム高校の生徒だ」

 教室に設置されているスピーカーから全生徒に入学祝いの言葉が送られていた。

 今日はとある高校の入学式。桜が舞う光景の校舎に巨大な体育館。そこに七転八倒はいた。

 『銅鑼伍来夢高校』…………とある大富豪の力により、日本のとある地方に新しく出来た複数の中学と高校が合併(無理矢理)した超広大な敷地を持つマンモス学校(敷地は東○ドームの500個分)だ。

 ちなみに北海道の広さを東○ドーム何個で例えると約179万個になるらしい。

 なお、強制合併された学校には七転八倒の幼なじみが通うはずであった高校も含まれていた。お学力が低い七転八倒も図らずであるが、一応は同じ学校に通っていると言うことである(ただし、校舎は端から端)。

「よお、七転八倒。久しぶりだな」

「お前はあの時の…………」

 そう、ヤンキーカップにて優勝を争った巨体不良がそこにいた。さらに………………。

「よう」

「久しぶりだね」

「ひっひっひ、今日から同級生だなぁ」

 さらにはヤンキーカップにて噛ませ役となった連中もいた。どうやら、こいつらも今日からクラスメートらしい。

「俺らは全員、『一年腐った林檎クラス』らしいな」

「何だ?そのクラス名は…………」

 そのクラス名は悪意が混じっていた。そして、その教室の担任がやってくる。

「よし!全員、揃ってますね。では、出席を取りますよ!!席に座った座ったです!!」

 担任…………それはアンコロであった。

「自己紹介をしましょうか。僕は担任のアンコロ。この学校の学園長でもあります。お前ら僕を敬い、神と仰ぐのですよ」

 アンコロは自らを『学園長』と名乗るのだった。

 そして、七転八倒は気が付く…………ヤンキーカップ、それにこの学校の支配者が誰であったのかを。

「アンコロ…………お前が裏で糸を引いてたのか」

「おや?今頃気が付きましたか?遅すぎますね。僕が大人しくなったヤンキーカップ辺りで気づけですよ」

 そう、全てはアンコロが黒幕であったのだ。今やアンコロは世界的な大富豪、そして、このマンモス学校の学園長と言うポジションにまでなっていた。

「くっくっくっ…………七転八倒よ。この地は僕の支配圏内となりました。よって学校イベントから生活まで、全てが僕の思うままです」

「なぁっ!?」

 もはや、この学校にアンコロを止められる者は誰もいない。果たして、七転八倒の高校生活はどうなってしまうのか?

 …………ここから先は、また別の話である。



~~~~中三・七典ヤオキ・完~~~~
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