6 / 9
クラス召還者・明跡嗚呼
しおりを挟む
~~~~はじめに~~~~
突然ですが、皆さまはこいつを覚えていますでしょうか?
↓こいつ
そう、プロローグにて登場してアンコロと出会ったあの高校生です。
今回のお話はあの高校生がアンコロ(本体)にボコられて、契約させられた、すぐ後のお話から始めたいと思います(クラス召還物の始まりは大事です)。
それでは『クラス召還・明跡嗚呼』お楽しみ下さい。
『胸わくわくな冒険に出発しますか?』
→いいえ
はい
『胸わくわくな冒険に出発しますか?』
いいえ
→はい
………………すいません、ちょっとしたネタでした。では、今度こそ…………お話のはじまりです。
~~~~とある異世界(中世文化)~~~~
「こ、ここは一体、何処なんだ?僕は学校で授業を受けてた筈なのに......」
学生服を着たあどけない顔立ちの少年が困惑と不安の表情で辺りを見渡していた。
それもそのはず、少年の目に写るのは現実とは思えないような風景であったからだ。
そこは広い大きな部屋の中だった。窓のない大部屋(石で出来た頑丈そうな)で少年…………いや、少年たちは床で寝ていたようだ。
見渡せば目を瞬かせているクラスメートたちの姿もそこにあった。
そう、石畳の上で寝ていたら風邪を引くかもしれ…………いや、問題はそこではない。とにかく、その大部屋は異様であった。
床には魔方陣(?)が描かれており、ムキムキ筋肉質に鎧を着た騎士的な男たちに囲まれてるのだ。
そのセンター(意:中心)にはキラキラなドレスを着た美少女お姫様、同じくキラキラな貴族服を着た王子様っぽい奴が。おまけに一際立派な鎧をしたおっさんと白髭とローブを着た魔術師っぽい奴が立っていた。
「「勇者様!どうか…………どうか、この世界をお救い下さい!!」」
そして、異世界召還物でお決まりなこの台詞………………そう、彼らは異世界召還(クラスごとの召還)をされてしまったのである。
「一体……何だよ、これ」
「異世界召還?ハーレムが俺を待っている」
「私、家に帰りたいよぉ…………」
…………などとざわめくクラスメートたち。
異世界召還を知らない者からオタクな者、帰りたいと泣く者まで様々であった。
「皆!落ち着くんだ!!」
そんな中で、リーダーシップを醸し出すイケメンの声が響き渡る。
それはクラスの中心にしてスポーツマン、学力も上位なヒーロー的な存在であった。
「皆!光君の言う通りよ!!」
そして、そんなイケメン………………光君(と言う名前らしい)の隣には彼の幼なじみ的な美少女の姿が…………そう、学園アイドルと言うべき容姿。ヒーローとヒロイン的な二人が揃っていたのだった。
なお、少年のクラスは21名。それと担任教師もクラス召還に巻き込まれていたのだった。
「……………………すいません。ご説明をお願い出来ますか」
そのイケメン生徒に株を奪われそうになった担任女性教師(28)が大人な対応にて王子様とお姫様に話しかけるのだった。
「「はい、もちろんです。勇者様方」」
王子様とお姫様は爽やかな笑顔を頷いたのだった。
ちなみにテンプレな説明例だ。
まず一口に『クラス召還』と言っても様々な例が存在するだろう。
基本的には…………。
①魔王が現れた…………世界の危機だ。
↓
②女神様の神託にて勇者様を召還しよう。
↓
③勇者様の召還、魔王討伐の旅の始まり。
↓
④長い旅の結果、魔王をやっつけたぜ!!
↓
⑤よし!ついでにこの国が世界の頂点だ。
↓
⑥大陸及び異種族全戦争に発展。
…………大体そんな感じだ。
ちなみに⑤以降からはどうなるかは話によって変わるので定かではない。③の召還時に一人(もしくはヒロインと)で別行動する場合もある。
そして、召還した奴らに戦争目的かなどと聞いたら教えて当然貰えず最悪は消されるだろう。
そして、④で勇者が地球に帰るを選択すれば………………などと色んな想像が出来るテンプレだった。
魔王を倒した後などに究極ダンジョンや神と闘うなどもあるが。
………………それはともかく。
彼らの説明は予想通り、魔王が現れ世界が大変、よって勇者を召還した…………との事である。
「「どうか…………勇者様方!この世界をお救い下さい!!」」
こうして、世界の危機と悲壮感を出して断り難くするのが奴らの手だ。人は正義の味方に憧れるもの…………特にまだ未熟な学生ならば尚更である。
ーーーーキラキラキラ(美形が出す謎のオーラ)。
そして、美形の王子と王女などでハニートラップも定番である。
「なるほど…………でも、僕たちは普通の高校生です。そんな魔王なんて倒せる訳が…………」
「皆様には女神様より勇者様としての『個別能力』が備わっている筈です。皆様、【ステータスオープン】と仰って下さい。思うだけでも結構です」
「「「「「ステータスオープン」」」」」
クラスメートたちは次々とステータスを開く。そして、ゲームみたいだと一喜一憂するのだった。
そして、少年も………………。
「す、ステータスオーブン…………間違えた。ステータスオープン!!」
====ステータス====
名前:明跡嗚呼
性別:男
年齢:16
適正職:兵士+特殊補正小
レベル:1
総合戦闘力:20
固有能力:【鑑定】【通訳】【危険感知】
========
………………これが少年。いや、明跡嗚呼のステータスであった。
ちなみにイケメンの光君はと言うと…………。
====ステータス====
名前:宮王寺光
性別:男
年齢:16
適正職:勇者
レベル:1
総合戦闘力:500+特殊補正大
固有能力:【鑑定】【通訳】【ライトニング】
========
光君と嗚呼君…………二人には差がありすぎた。同じレベルなのに総合戦闘力で25倍もの差があった。
そんな勇者(光君)を筆頭に聖女(ヒロイン)や剣聖(剣道部出身)に賢者(女教師)、大魔導師(オタク)などの最高職五人。
他のクラスメートたちは優サポート職や中級職だった。
すなわち、下級職は嗚呼君だけであった。危険察知の能力と特殊補正小があるだけ、ましと言える程度だろう。
…………だが、これで態勢は決したと言えるだろう。
職業、戦闘力、固有能力等による地位の序列。優秀(強い)奴がより強い発言権と決定権を持つのだ。
そして、そんな地位を利用して…………。
「皆、どうする?僕としては困っている人たちを放って置けない。元の世界に帰る為にも……「お前の意見など聞いていません」……ぐはぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ひ、光くぅううぅぅぅぅぅぅん!?(ヒロインの声)」
…………などと皆の意見を聞いているようでいて、勝手に承諾しようとしたイケメン高校生な光君はとある人物(?)に蹴り飛ばされたのだった。
「な、何をするんですか!?…………え?えっと……………………?」
聖女なヒロインは蹴り飛ばされた幼なじみを見て怒り目を向けた。
その目の先…………幼なじみを蹴り飛ばしたであろう存在。カモノハシなぬいぐるみ…………アンコロを見て困惑な声を出すのだった。
「ふん!勇者?聖女?お前らなどお呼びではない!!全ての決定権を持つのは、この僕…………『反逆の神』を持つ僕なのですよ!!」
「「「「「は、反逆の神ぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」」」」」
アンコロは『神』にまで昇神していた。ついでに『反逆の神』の称号までが付いていた。
ちなみにそのステータスは………………。
===$=ー+ス====
名/:アンコロ(分@)
@別:♂
年&:測÷/=
><職:反逆の神
レ=ル:_定不>
+*戦/力:無%^^大
固-%力:???
========
アンコロのステータスは文字化けしていた。
そのステータスはまるで読めず、意図されているように『アンコロ』の名と『反逆の神』とだけが読めるようになっている。
「あ、ああぁっ!?お、お前は………………」
アンコロの姿を見て嗚呼は思い出した。あの不思議な異次元の狭間での出来事を………………。
そして、一目を憚らず大声を上げるのだった。
「明跡!お前…………あいつを知っているのか!?」
その声でクラスメートたちは嗚呼に注目する。そして、光君は尋ねたのだった。
「あ、ああ!こいつはここに召還される前、異次元の狭間ってところで………………」
「ええ、僕たちはそこで出会いました。僕も覚えていますよ。お前がいきなり殴り掛かってきた事も…………クラスメートたちを見捨てて一人で元の世界に帰ろうとしたこともね」
「「「「「…………………………なんだって(ですって)?」」」」」
アンコロと嗚呼の異次元の狭間での出来事…………その暴露にクラスメートたちはに冷たい目を向けたのだった。
それは明跡嗚呼の隠された暴力性。そして、『見捨てた』と言う事実に怒ったのである。
なお、アンコロの認識変換機能はある程度上位の生物には効かないようになっている。それは通じないのではなく、その方が面白そうだとの理由からだ。よってやろうと思えば認識変換は出来る。
そして、わざとであるが認識変換が効いてない者たちがこの場には何人かいた。
まず異世界召還組は契約者の明跡嗚呼は当然として、ほかには勇者(光君)、聖女(ヒロインちゃん)、剣聖(剣道部)、賢者(女教師)、大魔導師(オタク)の6名。
後はこの世界の上位者…………王子様に王女様、立派な鎧の……騎士団長と白髭ローブの魔術師長の4名だ。
なお、その他のクラスメートたちや騎士たちはアンコロを逆らってはいけない者と認識している。
「ふむ、僕を知らぬ者たちが大半なので自己紹介してやりますか。僕の名はアンコロ。異次元の狭間にて数億年を生きるカモノハシ…………その分体なのですよ」
「「「「「す、数億年っ!?」」」」」
アンコロの年齢を聞いて驚愕の声を出す9名。
「そして、その暇潰しに異次元の狭間に落ちてきた奴と契約し、このぬいぐるみボディの僕を渡して遊んでいるのですよ。そんな訳で…………僕が魔王とやらをちょちょいと倒してやりましょう!!そして、この世界の神の座も僕のものなのですよ!!」
「「「「っ!!」」」」
そして、勇者宣言からの世界の支配者宣言であった。
「「ふ、ふざけるなぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
『神の座を奪う』…………それはお調子者のアンコロにとってはただの軽口。しかし、この世界に生きてきた者たちにとっては聞き捨てならない言葉であった。
騎士団長と魔術師長は怒り…………アンコロへと向かって行ったのだ。
「良いでしょう…………来なさい、遊んでやります」
「「舐めるな!この化け物めっ!!」」
騎士団長は剣を抜き、魔術師長は杖を構えてアンコロに攻撃した。
「はぁあぁぁぁぁぁっ…………「硬質化」な、何ぃいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ーーーーバキンッ!!
騎士団長の渾身の一撃は異様なほど硬質化したアンコロの体には通じずあっさりと剣を折られる。
「騎士団長っ!?くそっ!紅蓮の炎よ!我が魔力を捧げる!我の敵を燃やし尽くしたまえ!!【ファイヤーストーム】!!「反射」な、何だとぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
ーーーードォオオォォォォォンッ!!
魔術師長も火の上位魔法をアンコロに放つ…………しかし、これまたあっさりと跳ね返されてしまったのだった。
「「「きゃあああぁぁぁぁぁぁっ!!」」」
その火の魔法は大部屋の天井を破壊した。
天井の破壊によって、瓦礫がガラガラと崩れ落ちてくる。それを見て女子たちが悲鳴を上げる。
…………しかし、王子と王女のいる前で上位魔法を放つとは魔術師長。頭が良さそうな響きのようだが馬鹿なのか。
「これはサービスです。はい、【リバース】」
アンコロは【リバース】と呼ばれるスキルを発動させる。その効果は『戻す』…………数分以内ならば人(死んでなければ)でも物でも元通りに戻す能力である。
ガラガラガラ…………と落ちてきていた瓦礫が逆再生をするように元通りに戻ったのだった。
「な、何と………………」
「す、すごい…………」
そのあり得ない光景に驚く王子と王女、その他の面々であった。
「…………アンコロ様。あなたの目的は何なのでしょうか?」
王女が冷静さを取り戻して、アンコロに尋ねる。
「ですから、ただの『暇潰し』ですよ。僕はただ面白い結末が見れるならそれで良いのです」
「………………………………」
アンコロの目的を聞いて、思案をする王女様。その結論は………………。
「……………………ならば、魔王を討伐したならば速やかに帰って頂けますか?その契約(?)をした…………その者と共に」
王女様はアンコロを魔王退治のみに利用して、その後は早く帰れとしたのだった。ちなみに嗚呼はいらないらしい(弱いから)。
「こいつらは?」
アンコロはその他の召還者たちを指す。
「………………個人の意思を尊重します」
『個人の意思を尊重する』…………それは都合の良い言葉であった。それは欲深い者…………それらを利用すると言う意思も思える言葉だ。
「そうですか………………では、帰りたい者は挙手!僕の力で元の世界に帰らせてやるです!!」
「「「「「っ!?」」」」」
アンコロの『帰らせてやる』の台詞を聞いて驚く召還者たち(この世界の連中も驚いている)。
どうやら、アンコロの力は異世界をも超越するようだ。
そして、ほとんどの生徒たちが手を上げた。
「……………………お前らはいいんですか?魔王退治など死ぬ可能性が高いですよ?」
アンコロは手を上げなかった奴らに尋ねた。
「はん!そんなの怖くねぇや!!それにこの力を使えば贅沢出来るんだろ?」
「ハーレム、奴隷ハーレムを…………」
………………それは欲の皮が突っ張った連中であった。
不良な生徒と弱オタクな生徒…………チートを得たならば元の世界よりいい生活に女が得られるとの考えらしい。
「うりぁあぁぁぁぁっ!!」
ーーーーバキッ!ドカッ!!
「ぐはぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あいたぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
アンコロは不良と弱オタクを殴り飛ばした。
「「な、何をするんだよ!!」」
「黙らしゃい!この親不孝者どもめ!!お前らは自分の事ばかりで親の気持ちが分かってないのです!!」
「「っ!?」」
アンコロは親の気持ち…………すなわち『愛』を訴えた。その上で殴ったのである。良いぞ、アンコロ!もっと言ってやれ!!
「良いですか!お前らは親の期待を背負っているのですよ!!良いですか!お前らは愛されて産まれてきたのですよ!!」
「「ぐぅうううぅぅぅぅぅ…………」」
「付け加えるならば、現代日本の平均養育費(出産から大学まで)は2,000万から3,000万なんですよ!!高校生なお前らはすでに1,000万は消費しているのです!!ついでに親には老後もあるのです!お前らが居てやらねばどうするのですか!!どうしても残ると言うのならば、その分の金を返して言うのです!!」
ちょっと話が生臭くなった。まぁ、アンコロの言っている分は分からなくもないので良しとしておこう。
「「す、すいませんでしたぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
アンコロの叱咤によって、泣きながら謝る不良と弱オタク。どうやら、アンコロの話…………いや、心は通じたようだ。
そして、今は綺麗に纏めたが現実は汚い。
それは親からによる育児放棄、虐待などと言った問題ある家庭。酷ければ、コインロッカー置き去りや殺して埋めてしまう最低な親もいる。
それらは社会の闇であり、一個人などではどうすることも出来ないだろう。
それでも、人として親を……愛を信じたい。そんな世界になって欲しいものだ。もっともクズな人間に愛などと正義顔して語って、ほしくはないが………………。
まぁ、それはともかく………………。
こうして、穏便(?)に主要メンバーを除いて地球への帰還が決定し、あっさりとクラスメートたちは還って行った。
勇者君たち…………物語には必要な存在であると選択権(最初から乗り気だった為、帰りたいかも聞いていない)は与えなかったアンコロ。
ついでにこいつもだ……………………。
「何でだよ!俺も帰らせろよ!!」
「『アアアア』は駄目!!」
それはアンコロの契約者こと、明跡嗚呼だ。
アンコロは明跡嗚呼(嗚呼は『ああ』とも読める)名前に『あ』が四つある事から『アアアア』とあだ名を付けたのであった。
ちなみにアアアアは、最初に『手を上げろ』の時から手を上げて帰るつもりだった。
しかし、アンコロは、アアアアの意思を完全拒否。それではつまらない…………との理由から、アンコロの一存により居残り決定が決まった。
「安心するですよ。某青い猫ロボットの劇場版(旧い方)なみのスピードで魔王のもとに到着してやりますから」
「魔王退治って、そっちかよ…………」
「ついでに死んでも生き返らしてやりますよ。魔王も倒したら、元の世界…………時間経過なしのおまけも付けてやります。それで何の不満がありますか?」
「わかったよ!ちくしょう!!」
こうして、魔王退治への強制出撃が決まったアアアアであった。
~~~~王様への挨拶~~~~
「…………………………では、勇者たちよ。旅立つがよい」
「「「「「「「はい(です)!!」」」」」」」
あの後、物語の定番としてアンコロたちは王様の待つ玉座へ挨拶に通されたのだ。
王様は王子や王女からアンコロや勇者たちの事を聞いた。
どうやら、本当に魔王討伐後は戦争をしようとか考えていたのか。あてが外れて内心は穏やかではなかった。
しかし、アンコロと言う神に匹敵する存在を前にして。大人(王様)の器を持って対応をしていた。
「この拉致キング!ほら、笑顔で見送りなさい!!僕のおかげで世界は救われて、召還被害者たちも還らせたのですよ!不完全な召還術を使うからこうなるのです!!」
「ぐぅっ……………………」
さらに、アンコロは召還を実行した加害者たちに嫌みを言うのも忘れていなかった。
王様を拉致王と嘲笑し、チクチクと世界の事情…………不完全な召還術、他の世界に頼る姿勢、人間たちの欲などを責めたのだ。
そして、召還の慰謝料として多額の金銭を国から踏んだ喰ったのだ。
~~~~街での準備~~~~
「僕は断然に旧作派ですね。新作は涙が入りましたが、旧作の方がわくわくしました。個人的には魔○星の生物たちが微妙な気持ち悪さで良い感じでした」
勇者たちにアンコロは意外と馴染んでいた。
「僕は新作」
「う~ん、私は新作の方が好きだな」
「俺は旧作派だな」
「僕も旧作」
「私は旧作しか見てないけど…………そんなに面白いの?」
臨時パーティー7人は街中を歩いていて、暇潰しに始まった某猫ロボット劇場版魔○大冒険の雑談。
「…………なんかRPGの方じゃなくて、そっち的な話になってるな」
話の輪から外れているアアアアが独り語ちる。
戦闘ゲーム系なRPGは男がやる事が多いだろう。だが、某猫ロボットの話ならば女性でも知っている人間が多いのだ(何せ国民的ですから)。
知っている話題で共感を得て安心させる。これもアンコロの巧みな話術の一つである。
そんな雑談をしながら、武器屋の前にたどり着いた。
「よし、城で貰ったアイテムを売りましょうか」
「え?全部売っちゃうの?」
「ええ…………僕の特殊鑑定の結果、このアイテムには若干悪意のあるような魔法が込められていますね。
例えば、長く使っていると殺人に罪悪感がなくなっていくようなのがね。こんな物は売る、もしくは解体して僕が改造してやりますよ。王様からの慰謝料を使って工房を貸りましょう」
どうやら、この異世界召還はガチでヤバかったようだ。城の連中は使い捨てにする気満々だった。
そして、そんな危ない品を売り捌いて処分したアンコロは何処から取り出したのか、金槌とドリルを手に使えそうなアイテムだけを使い改造を始めようとしていた。
「ところで…………ハンドガン、ガトリング、バズーカ、ロケットランチャーとかどうですか?ちなみに頑張ればライト○イバーとかも作れますよ」
「「「「まじでっ!?」」」」
アンコロは大抵(?)の物は創れるようであった。そして、調子に乗って近代武器やSF武器を創ろうとしている。ついでに、男の子は武器に憧れる。
「勇者ライト君はライト○イバーで行きましょうか」
「ライトじゃないよ!光だよ!!」
「良いじゃないですか。勇者にはありふれてそうな名前ですよ」
「……………………止めてくれ、気にしてるんだ」
…………どうやら、光君は気にしていたらしい。今後はこの話題に触れない方が無難だろう。
「朱利ちゃんはどうします?回復杖にはハンドガンとかおすすめですけど」
聖女…………朱利(と言う名前らしい)にハンドガンをすすめるアンコロ。回復杖を持たせて、自衛用ハンドガンを持たせようとしている。
「私は別に銃には詳しくないし、簡単に使えそうならそれでいいよ」
「うむ、次は………………」
その後、剣聖、賢者、大魔導師と装備を決めて渡していくアンコロ。そして、最後はアアアアだ。
「アアアアよ。お前には取って置きの…………【キン○マン変身セット】をくれてやりましょう」
アンコロが取り出したのは、まさかの【キン○マン変身セット】。あの文字が額に輝く時…………力が………………。
「そんなの嫌だ!!」
「何ぃ!?では、バッ○ァローマンですか!?まさか、ラー○ンマンで………………」
「何で際ものばっかり…………いや違う、そうじゃない!キン○マンから離れろよ!?」
ちょっと乗りかけたアアアア。しかし、ジャンルの違いを思い出して拒否するのだった。
「…………ちっ!仕方ないですね。では、これでどうですか?」
「っ!?こ、これは………………」
そして、最後にアンコロが取り出した物………………結果、アアアアの装備はそれに決まったのだった。
ちなみにアンコロの武器作製の腕を見た武器屋の親父がアンコロに弟子入りしようとして邪魔だと蹴り飛ばされたのは余談である。
~~~~第一ステージ・惑わしの森~~~~
ここは王都から少し離れた森の中。アンコロ一行は森で魔物を狩りながら、レベルを上げていた。
「はぁあああぁぁぁぁぁっ!!光よぉおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
勇者のライト○イバーが敵を焼き切り………………。
「お願い!治って!!【スーパーヒール】!!」
聖女の回復魔法がケガを癒し………………。
「くらえ!!【断罪斬り】!!」
剣聖が神業で敵を裂き………………。
「炎よ!【ファイア・ランス】!!」
賢者の魔法が敵を燃やし………………。
「………………バズーカ!!」
大魔導師がバズーカで破壊をする………………バズーカは卑怯過ぎる気がするが。
そして、最後に………………。
「さぁ!行くですよ、アアアア!ガッツです!!」
そして、アアアア。彼がアンコロによって与えられた力は………………。
「……………………………………」
がちゃがちゃと鋼の鎧に身を包んだアアアア。そして………………。
ーーーーザッ、ザッ、ザッ!!
ランスを敵に向かって投げまくる。どうやら、投てきするランスには制限はないようだ。スピードは遅め、しかも真っ直ぐしか飛ばない。
ーーーーヒョイ!!
さらに重い鎧を着てのジャンプ。しかも一度ジャンプしたら方向転換の出来ないジャンプだ。
ーーーーガシャン!!
敵に触れただけで鎧が弾け飛んでしまった。しかし、安……してください。履いてますよ。ガラパンを…………。
つまり、これは……………………。
「………………魔○村かっ!!」
これで何度目かのカ○コンネタ。
そう、あの魔物に囚われたお姫様を取り返しにいく超大作だ(髭帽子の方ではない)。
「普通に鎧を渡されたから着てみたけど…………騙しやがったな!!」
「騙されるお前が馬鹿なのです。でも、世界観的には合ってますよ?上級な鎧になれば魔法も使えるしね」
「やかましいわ!!普通にRPGでいいじゃねぇか!!何で俺だけアクションなんだよ!!」
「良いじゃないですか!お前にぴったりですよ!!無駄に頭を使っていません!!」
「どういう意味だ、こら!!」
普通にお前は馬鹿だ…………とアンコロは言っていた。
「さらに、その鎧は僕の特別製です。鎧を着ている間は【ステータス】の影響を受けなくなるのですよ」
「……………………おい!何だよ、それは!!」
「………………そう、良くも悪くもですね」
憤慨するアアアアであったが、アンコロは珍しく真面目な顔であった。そして、空を見ている…………まるで何かに見られているのに気が付いているかのようだ。
「……………………ふん、気に入りませんね。この世界に『神』は僕一人で良いのです」
アンコロは空を見ながら呟いた。
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、何でもありませんよ。それよりも、確かにネタとしてはもう充分ですね。これ以上引っ張ると………………引っ掛かりますから。では、それなりの鎧と交換してやります。『ステータス削除機能』は確定ですが」
「おい!ちゃんとした装備にしろよ!!」
「はん!忘れてませんか?本来はptを貯めてアイテムを貰うのですよ。お前に貸すのはあくまでレンタル品です!!まったく……図々しい男ですね、お前は」
「だったら、ネタとか言わずに最初から渡せよ!!」
いつも通りのアンコロであった。そして、アアアアの鎧をアンコロの特製鎧へと変更する。
その後も戦闘を繰り返して森の奥へと進む一行。
やがて、木が拓けた花が咲き乱れる場所に出るのだった。
「僕のゲーム脳が告げています。この森を抜けるには特定の花が目印になっています」
そう、この森は『惑わしの森』と呼ばれ入って来た人間を森から出られなくしてしまうのだ。さらに魔王の力によって森の魔物たちは凶暴化している。
そんな森で、ゲーム脳(ゲームあるある?)を口にするアンコロ。それっぽい花を見つけて目印に進んでいく。
「この道…………さっきも通らなかった?」
聖女朱利が気付いた…………同じ道を何度も行ったり来たりしていることに。
「やはり、現実はゲームではないと言う事ですね。つまり………………」
「「「「「「つまり?」」」」」」
「迷いました!はっはっはっ!!困りましたね!!はっはっはっ!!」
「「「「「「ははは…………じゃねぇよっ!!」」」」」」
どうやら、ベタもベタ。アンコロ一行は道に迷ったようだ…………つまりは遭難です。
「そうなんです。一度は言ってみたいギャグですよね」
「「「「「「やかましいわっ!!」」」」」」
「空は開けてますし、飛べば出られるでしょう。まぁ、たまに結界とか張られて………………おや?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
アンコロが緊張感なく話していると、キラキラと森の暗闇で何かが飛び回っているのが見えたのだった。
目を凝らして見ると、それは………………。
ーーーークスクス。また人間が来たよ~。惑わしちゃえ~。
ーーーークスクス。来たね来たね人間が~。殺しちゃえ~。
それは手のひらサイズに虫のような翅が生えた存在…………ファンタジーの定番『妖精』である。
しかし、妖精たちは『殺しちゃえ』などと言っており殺伐としていた。どうやら、魔王の影響か、はたまた元からか。現状では危険生物のようだ。
「そぉ~~………………捕った!!」
「「ひゃあぁああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
いつの間にか妖精の近くに寄っていたアンコロ(瞬間移動を使ったのかも知れないが)。
アンコロの手には虫とり網が握られており、頭に麦わら帽子、腰(?)には虫かごも装備している。所謂、夏休みの虫とり少年スタイルだ。
そんなアンコロに妖精二匹はあっさりと捕まってしまったのだ。
「くそ、こんなもの~」
「あれ?すり抜けられないよ~」
「ふふん、この網とかごは僕の特別製です。魔力を反発させる術が掛けられてましてね。妖精は魔力体ですから出られないのですよ」
流石はアンコロ。妖精対策は万全の装備だったようだ。妖精たちは虫かごへと囚われの身になってしまった。
「「くそ~!何だよ、お前~放せよ~~!!」」
虫かごの中で出せ出せと暴れる妖精たち。妖精たちは中から魔法で壊そうとした。しかし、かごは不思議な力によって守られている。
「僕は分かりました…………こいつら妖精たちこそがこの森を抜ける方法を知っている存在だと言う事を。さぁ!虫たちよ!!森から出る方法を教えるのです!さもなくば…………振りますよ!こんな風に!!」
ーーーーぶんぶんぶんっ!!
「「うわぁあぁぁぁぁぁぁっ!!もう、振ってるじゃないかぁああぁぁぁぁぁっ!!」」
妖精入りのかごをぶんぶんと上下左右に振り回して妖精虐めをするアンコロだった。
「「わ、分かった!森を出る方法を教えるよぉ~~~!!」」
どうやら本当に妖精が森を出る鍵であったようだ。
「「ちゃんと森から出たら、俺たちを解放しろよ~」」
「分かってますよ。約束は守ります」
アンコロ一行は妖精たちの案内で森を歩く。そして、森の出口へとたどり着いた…………ように見えた。
ーーーーぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!
突如、地震が起きて地面が盛り上がる。そこから、巨大な昆虫型の魔物が飛び出した。
「ぎゃぎゃ!我は魔王様直属の四天王『大地のクワトロル』なり!魔王様に逆らう愚か者…………勇者とは貴様らか!!」
その昆虫は言葉を話して名乗りを上げる。どうやら、四天王とかいるらしい。実にベタなことだ。
その四天王クワトロルはクワガタムシのような外見であった。そう男の子の憧れ的な魔物である。ちなみに女性陣は嫌そうな顔をしている。特に…………。
「………………紅蓮の炎よ!我が魔力を捧げる!我の敵を燃やし尽くしたまえ!!【ファイヤーストーム】!!」
それは魔術師長がアンコロに向けた魔法であった。それを賢者こと女教師は昆虫魔物に放ったのだ。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
女教師は虫が大の嫌いだった。
そんな彼女の前に超巨大サイズの虫が現れたなら、この反応は当然であった。
火に包まれるクワトロル。しかし、あっさりと………………。
「ぎゃぎゃぁっ!!き、効かぁあん!!ふん、虫には火?お前ら人間はワンパターンだぎゃ!冥土の土産に教えてやるぎゃ!我は戦いの中で耐性を得る力を持っているのだぎゃ!」
クワトロルは脱皮する事で火から逃れた。そして、ペラペラと自分の能力を誇示し始めた。確かに体は一回り大きくなり…………火への耐性も得ているようだ。
「くそ!やぁあああぁぁぁぁっ!!」
側にいた剣聖が斬ろうとするが…………。
ーーーーガキンッ!!
「ぎゃぎゃぎゃ!無駄だぎゃ!我の身体はダイヤモンドのように硬いのだぎゃ!!」
流石は昆虫、その甲殻は硬かった。剣はこれまたあっさりと弾かれてしまったのだった。
「それなりの剣なんですけどね、あれ。僕が打ちましたから。まぁ、あれはあいつの腕と素材が貧弱な所為ですね」
アンコロの評価は辛辣だった。そして、人の所為にした。完全に鑑賞モードになっている。
「やぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
勇者くんがライト○イバーで昆虫を斬ろうとするが、これも相性が悪かった。ライト○イバーは熱の剣…………耐性を得てしまったクワトロルにはあまり効果がないのだ。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!!馬鹿めっ!!」
クワトロルは勇者を嘲笑し。そして、今度はアンコロの方を向いた。
「おや?今度は僕狙いですか?身の程知らずな………………む、視線が少し下を向いてますね。これですか?」
始めはアンコロ狙いかと思ったが、クワトロルはアンコロではなく、虫かごに入れている妖精たちに目が行っているようだ。
「おお!妖精かだぎゃ!我の大好物でぎゃ!!」
「「ひ、ひぃいいぃぃぃぃぃぃっ!!」」
どうやら、四天王クワトロル…………妖精を食べる性質を持っているようだ。
「こいつはやりますから、この道を通してくれませんかね?」
アンコロはあっさりと妖精たちを売った。
「馬鹿めだぎゃ。お前らを殺して、奪って食えば良いだけだぎゃ」
「それはそうですね。僕でもそうしますか」
アンコロも本気で交渉が通じるとは思っていなかったようだ。これまたあっさりと引き下がる。
「よし!アアアア!!あの鎧でこいつを倒すのです!!」
「俺が戦うのかよ!?」
「当たり前です!これはお前らの戦いでしょう!!さぁ、行くのです!!その鎧ならば大丈夫、僕が保証します!!」
「わ、分かったよ!くそっ!!」
アンコロはアアアアに戦うよう指示を出して引き下がる。そして、四天王クワトロルの前にアアアアが立つのだった。
「一番弱そうな奴が出てきただぎゃ。お前など瞬殺して喰ってやるだぎゃ」
「四天王クワトロルよ。こいつを舐めるなよです。どうですか?試しに好きなだけ殴ってみませんか?お前程度の攻撃などこいつには通じないと言うことを分からせてやります」
「お、おいっ!!」
アンコロはアアアアの意思に関係なく好きなだけ攻撃してみろと言い放った。
「な、何だとだぎゃ?良かろう、ならば試してやるだぎゃ!!ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」
アンコロの挑発に乗ったクワトロル。そして、嵐のような鉤爪連打攻撃がアアアアを襲った。同時に大量の土煙も宙を舞う。
ーーーーガガガガガガガガガッ!!
「「「「「アアアアッ!!」」」」」
その無惨な光景を見て叫ぶ勇者たち。ついでに既に彼らの中でも明跡嗚呼の呼び名は『アアアア』で定着されていたのだった。
嵐のような連打が止むと、土煙の中に残されたのは切り裂かれたアアアアの無惨な死体のみ…………その筈だった。
「「「「「アアアアッ!!」」」」」
勇者たちの名前を呼ぶ声…………しかし、アアアアの名が完全に叫ぶ声のそれだ。
それはともかく、土煙が晴れるとそこに残されていたのは………………。
「ははは………………ハーハッハッハッ!!」
笑い転げているアアアアの姿であった。爆笑も爆笑、大爆笑である。まるで調子に乗って笑っているように見える。
「な、何だぎゃ、こいつは………………」
笑い転げているアアアアに、全力攻撃をしたクワトロルも困惑……いや、正確には気持ち悪がっているようだ。
「お、おい……あ、アンコ…………ロ。な、なん、何なんだよ、これは…………ははは!わ、笑いが……止まらない!苦しいよぉ…………ハーハッハッハッ!!」
アアアアは笑っているが苦しんでいるように見えた。アアアアの問いにアンコロは…………。
「うむ、その鎧の名は【ド○フ】。『ステータス削除機能』に加えて『破壊及び着脱不可』と『爆笑変換機能』が付いた一品です。すなわち、その鎧を着て受けたダメージは着ている者の笑いへと強制変換させるのです。つまり、怪我とかしない究極の鎧と言えるでしょう」
「「「「「「「は(だぎゃ)?」」」」」」」
アンコロの説明にポカンと口を開けるその場にいた全員だった。
「さらに貯めた爆笑力を魔法攻撃に変換させる機能付き!さぁ、アアアアよ!!クワトロスに向かって一発ギャグを放つのです!!そのギャグは最強の一撃となるでしょう!!」
「い、一発ギャグ!?そ、そんな……事
……突然言われても…………ハッハッハッ!!うう、この苦しみから解放されるなら…………ぶっははは!!」
意を決してクワトロルに向けてアアアアは渾身の一発ギャグを放つ。
なお、一発ギャグに詳しくない人もいるかも知れないので、その定義について教えよう。
基本的な『一発ギャグ』とはわずかな短い動作や台詞で笑いを誘う事を指すのだ。
付け加えるのならば、一発ギャグを披露せねばならない時と言うのは突然に訪れる。
特に飲み会の席、合コン等でだ。
酔っ払った上司や先輩から突然ふられるので迷惑極まりないが、逆にチャンスと考える者もいる受ければ面白い奴と覚えて貰える。受けなければ悲惨の一言であるが。そして、すべては自己責任だ。
「よし…………行くぞ!!」
ーーーーゴクン…………。
四天王クワトロルにアアアアが全力で挑む一発ギャグ…………全員が生唾を飲む。
「はぁあああぁぁぁぁっ!!
アンコロの…………しっぽ!!」
ーーーーピキィイィィィィン。
………………その場の空気が凍りついた。
そう、アアアアの放った一発ギャグ。それは股に剣の鞘を挟み尻を向けて『クイッ』と腰を折る。それをアンコロのしっぽに見立てているのだ………………説明するのが悲しくなってきた。
「……………………………………」
ーーーーバキッ!!
「ぐはぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
アンコロが無言でアアアアを殴った。
「今日ほど…………今日ほど、お前を危険人物だと認識した日はありません!あろうことか…………僕をネタにするなど!不敬です…………不敬過ぎて万死に値します!!」
「じゃ、じゃあ、突然一発ギャグとか言うんじゃねぇよ!!」
「シャラップ!うるさいです!!」
ーーーードカッ!バキッ!グシャ!!
アンコロは怒り狂いアアアアを殴るわ蹴るわで痛め付ける。
そして、他の面々はと言うと………………。
ーーーーカチィイィィィィィン。
ガチガチに凍りついていた。勇者たち5人に四天王クワトロルもだ(ついでに妖精たちも)。あまりのつまらなさにアンコロ以外の全員が瞬間凍結をしてしまったのだ。
…………………………こうして、何とか森を抜けたアンコロ一行であった。
~~~~第2ステージ・亡霊の港~~~~
「ふ……………………ふんっ!!」
ーーーーガラガラガラ………………。
苦難の末に森を抜けたアンコロ一行(ただし、アンコロとアアアア以外全滅)は次のステージ…………魔王によって滅ぼされた港街に向かっていた。
港街から海を少し渡った無人島に魔王の城があると言うのだ。
ちなみに『ガラガラ』と言う音は全滅をしてしまった勇者たちの棺桶である。残ったものが棺桶を引っ張るのはお約束だ。
アアアアは仲間たちが入った棺桶を引き摺っているのだ。
アンコロは復活は安全な場所でと頑なに断りアアアアが棺桶を引き摺るはめになったのだ…………ただアンコロが棺桶を引き摺るアアアアを見たかっただけかも知れないが。
そして、時刻は日が沈みかけた夕方。アンコロとアアアアは壊れた門を抜けて港街の中に入っていった。
港街はボロボロに破壊されており、静けさだけが支配している。街を歩いていると崩れた教会を発見して中で休もうとする二人だった。
「おい、アンコロ。早くこいつらを蘇生してくれよ」
「良いですよ。ただし、勇者は一万、聖女三万、剣聖一万、賢者二万、妖精は一匹につき五千、オタクは百円の復活料になります」
「何だ、そりゃあ!?暴利じゃねぇか…………オタク以外」
オタク以外の復活料は高かった。ちなみに復活料はアンコロの独断で決めた物らしい。さらに妖精二匹も仲間に入っているようだ。
アアアアはしばらく考えて、オタクの百円ならいいかと思った時であった。
ーーーーオオォオォォォォォッ…………。
突如、教会の庭…………土の中から大量のゾンビたちが出現したのだった。
「な、なんだよ!?こいつら…………ゾンビだって!?」
スプラッタなゾンビたちを見て及び腰になるアアアアであった。
ーーーーホーホッホッホッ!!見つけたわよ、魔王様に刃向かう愚か者どもよ!私は四天王の一人『氷結のレイン』なり!身も心も凍てつく恐怖を与えてあげる!!
声の聞こえた方角を見れば、日が完全に沈んだ教会の屋根の上に半透明の女性が浮いていたのだった。
「クワトロルを倒したくらいで調子に乗らないでね!あいつは四天王の中でも最弱!勇者よ!屍に変えて、操ってあげる!!」
………………何と言うお約束な台詞。
そして、再び魔王の手先が現れたのだ。今度の四天王はレイスと言う幽霊型アンデッドのようだ。
「あー、すいません。レイスのお姉さん。既に…………勇者たちはお亡くなりになってますよ」
「…………………………………………は?」
そして、アンコロはアアアアに殺害された勇者たちの棺桶を指差したのだった。『もう勇者たちは死んでいる』…………その事態に四天王レインは困惑するのだった。
「………………一体、何故?」
「…………この男が勇者たちを殺害しました。仲間、しかもクラスメートを。しかも、一発ギャグで笑わなかったと言う理由でです。信じられませんよね」
「…………………………恐ろしい男ね、お前。私たちだって、そんな下らない理由で5人も仲間を殺さないわ」
………………間違ってはいない。しかし、アアアアを悪逆非道の最低男に誘導しているアンコロだった。
「しかし、死んでいるならば好都合!私の死霊術で勇者たちを傀儡に変えてやるわ!!はぁああぁぁぁぁっ!!」
ーーーーガタガタガタ…………ギィイィィィ………………。
レインが勇者たちの棺桶に念を送るような仕草をすると。棺桶の蓋がガタガタと動き出して、一人でに開いていく。そして、出てきたのは………………。
「ふ、復活しました!勇者たちがっ!!」
「あれ、どう見てもゾンビ化してんだろっ!?」
棺桶から出てにじり寄るゾンビ勇者たち。そして、アンコロのボケに突っ込みを入れるアアアア。
ーーーーアァアアアァァァァァ…………。
「お前の名前を呼んでますよ。そんなに殺されたのが憎いのでしょうか?」
「あれはただの唸り声(ゾンビ特有の)だろ!!」
またもや、アンコロのボケに突っ込みを入れるアアアアだった。
「あんたたち…………こんな事態でも漫才するなんて良い度胸しているじゃない。さぁ!勇者たちよ!!殺された怨みを晴らしなさい!!」
アンコロとアアアアの漫才に怒り顔のレイン。そして、ゾンビ勇者たちをアンコロとアアアアに焚き付けたのだった。
ーーーーアァァアアァァァァッ!!
二人に襲いかかるゾンビ勇者たち。
「く、くそっ!アンコロ!!どうするんだよ!?」
「はぁ…………仕方ありませんね。まぁ、適当な所で蘇生する予定でしたし。あと、どうせなら派手にやりますか。それとアアアア、これはツケですよ」
アンコロはトコトコとゾンビ勇者たちの目の前に立つ。
「せっかくなので、この街の連中ごと蘇生させてやりましょうか。すぅうぅぅぅぅ、はぁあぁぁぁぁ………………【エマージェンシー・コール】発動です!!数多の世界に散らばる僕よ!手を貸して下さいです!!」
「「とうっ!呼ばれて参上です!!」」
「「なぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
アンコロが『エマージェンシー』と叫ぶ。すると、空間に亀裂が入り割れて2体のアンコロが飛び出てきたのだ。
「指定エリアはこの街!この街でアンデッド化している人間を全て蘇生させるです!!」
「「了解ですよ!!」」
そして、合計3体のアンコロたちは陣形を組んで輝き出したのだった。
「「「【ゴッド・アンちゃんズ・サークルヒール】」」」
「「っ!?」」
その輝きはどんどん溢れ……教会を、街を包みこむ。それは夜の闇を搔き消すが如くの光であった。
「ぐわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ば、馬鹿なぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして、四天王レインの断末魔が響き渡ったのだった。
~~~~第3ステージ・魔獣の島~~~~
「「「「「アンコロ様!ありがとうございました!!」」」」」
「うむ、さらばです皆のもの!!」
海の男たちがアンコロ一行に向かって船の上から手を振っていた。
「あの港街の皆さん、僕の巨大銅像を建ててくれるらしいですよ。感謝の心を忘れない。中々に良い心がけです」
アンコロは自分の銅像が建つとご機嫌である。
それは街を救ってくれたアンコロへのお礼…………あの光でアンコロ(たち)は、勇者たちと港街の人間全てを蘇生させた。
ちなみに他の異世界から呼び寄せた2体のアンコロは用が済むとさっさと帰ったのだ………………そして、もう3人(?)。
「こちらです、アンコロ様」
「「道案内は僕らがするよぉ~」」
そう、元四天王のレインに妖精二匹だ。彼らはアンコロの従順な僕になっていた。
「アンコロ様には何とお礼を言って良いか。まさか、生き返れるとは思いませんでした」
元四天王レインは復活した。もちろん人間として生き返ったと言う意味で。レインは恩に着る人間だったようだ。しかも、生きている時は死霊術士だったとか。
さらに、アンコロの力を見てこちらに付くべきだと思ったのか妖精二匹も心よくアンコロの仲間になったのだ。
「よし!行くですよ、皆の者!!魔王城まであと少しです!!」
ぞろぞろと道を歩くアンコロ一行。
ちなみにここまでの人数はアンコロ、アアアア、勇者くん、聖女ちゃん、剣聖、賢者、大魔導師、レイン、妖精二匹の9人(?)だ、それなりの大所帯である。
城を出ての戦闘可能メンバーが揃っている………………四天王のクワトロル?まだ、森で凍っているだろう。
そして、アンコロたちは進んでいく。魔王の元へ。
「ここは僕たちに任せてくれ!」
「ええ!私たちだって戦えるわ!!」
ここは魔王城のすぐ側、かなり強めの魔物が出現する。しかし、そこは勇者様。何とか倒してレベルに変換して進んでいく。
そして…………ついに魔王城まで辿り着いたのだった。
「趣味の悪い門ですね、これ」
一同の目の前には魔王城の門…………髑髏と悪魔の集合体みたいな城門が鎮座されていた。
「門にはノックが必要。大魔導師!バズーカを用意するです!!」
「了解です!アンコロ様!!」
アンコロの指示にてバズーカを構える大魔導師。調子に乗り過ぎである。そんな時だ。
ーーーー止めよ!この不遜なる者共め!!
ーーーーここを何処と心得る!やがてはこの世界の支配者…………魔王様の居城であるぞ!!
空から大きな声が聞こえ、何かが降ってきたのだった。
「我が名は魔王様直属の四天王『炎雷のゴズルガ』」
「同じく、我が名は『風殺のヒンバイト』」
それは魔王城の門を守護する最後の四天王。火と雷を纏う牛面筋肉な太身の男と竜巻を纏う馬面筋肉な長身の男の二人組だった。
「「勇者たちよ!ここが貴様らの墓場だ!!」」
…………などと門の前で仁王立ちポーズと台詞を決める牛と馬人間たちだった。
「…………………………あいつら無視して撃ちなさい」
「了解です!アンコロ様!発射!!」
「「なぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
アンコロは四天王二人を完全無視し、大魔導師にバズーカ発射を指示したのだった。
ーーーーチュドーーーーン!!
バズーカからミサイルが発射され、門が破壊されたのだった。
「もう一発…………今度は魔王城に撃ち込んでやるです」
「了解です!アンコロ様!発射!!」
さらに、調子に乗ってアンコロは魔王城にまでバズーカを撃ち込んだ。
ーーーーチュドーーーーーーンッ!!
二発目のミサイルは魔王城の中腹辺りの場所に飛んでいき爆発を起こした。
「ちっ、下手くそですね。玉座の間がありそうな辺りから外れましたよ」
アンコロは魔王が居そうな城の頂上部辺りにミサイルが当たらなかった事に舌打ちをした。
「「き、貴様らぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
それは火に油どころではない…………ガソリンスタンドにダイナマイトを投げるレベルで敵を怒らせたアンコロであった。
「「ぶち殺ぉおぉぉぉぉぉぉぉす!!合体っ!!」」
さらに牛面のゴズルガと馬面のヒンバイトが合体した。
身体は別々だった時の数倍に巨大化され、手は4つに頭は2つの牛馬な異形阿修羅のような姿であった。
「ブルルルルッ!!どうだ、畏れ入ったか!!お前は絶対殺す!!」
「おお!荒々しいですね。しかし、名前はどうなるのでしょう?『牛馬鹿』とでも呼びますかね」
合体した四天王の二人…………『牛馬鹿』とあんまりな名前を付けられた。アンコロは完全に舐めていた。
「おい、牛馬鹿!ほらほら、さっさとかかってくるです、牛馬鹿!!この臆病者め、牛馬鹿!!この馬鹿牛馬鹿!!」
「グギャアアアアアアアアアアアッ!!この野郎がぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」
ーーーードドドドドドドドッ!!
その上で『牛馬鹿』を連呼するアンコロ。キレた牛馬鹿はアンコロに向かって突進するのだった。
………………そんな時であった。
ーーーーキラン!!
空の彼方から何かがやって来る。
ーーーーギャギャギャッ!!アンコロよ!来てやったぜ!!
「おお!我が友、クワトロルよ!!感謝するです!!」
それは惑わしの森で凍りついているはずの四天王のクワトロルであった。
どうやら、クワトロルもアンコロ側に付いていたようだ。一体、何があったのだろうか?
「あ、あいつ…………何で…………」
「ああ、これはクワトロルには内緒ですけど凍っている間に少し改造したのですよ。僕たちの味方になる方向にね。あの青い玉みたいな感じで」
それはまたもや某ネコロボットの劇場版(旧)のネタであった。
「ギャギャギャ!アンコロによって更なるパワーアップを果たした俺の力を見せてやるぜ!!もう、四天王最弱とか言わせねぇぜ!!ジェットダッシュ!音波振動ブレード!!」
「グラァアアァァァッ!?な、何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
クワトロルの背中甲殻(翅が収納されている部位)が開かれてジェット噴射で超ダッシュをする。
さらに大顎が超振動されてあらゆる物を切り裂く刃となり、両腕からはミサイルとレーザーが飛び出す…………そう、クワトロルはアンコロの手によってサイボーグ化されていたのだ。
「アンコロよ!こいつは俺がやる!!先に…………魔王の元に行けぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」
そして、熱っ血な事に『ここは任せて先に行け』的な台詞が飛び出した。カッコいいぞ、クワトロル!!
「おお!ありがとうですよ!クワトロル!!おい!牛馬鹿!!お前ごときがこの新クワトロルに勝てる訳がありません。早く土下座でもして許しを乞うのですね!!では、さらばです!!」
「ブルルッ!ま、待ちやがれ!!この野郎!!」
「嫌でぇええぇぇぇす!馬ぁぁぁ鹿っ!!」
アンコロは相手を煽ることも忘れてはいない。牛馬鹿を馬鹿にしまくって先へと進んで行くのだった。
~~~~ラストステージ・魔王の間~~~~
ーーーードカッ!バキッ!ガガガッ!!
アンコロたちは魔王城内を進む。わき出て来るエリート兵的な魔物を蹴散らして。
「よし!お前らは先に行きなさい!!僕は宝物庫に行きます!!」
「「「「「「「おい!!」」」」」」」
アンコロの強盗のような台詞に全員から突っ込みが入った。
「こんな時に強盗みたいな事、してる暇なんてないだろ!!」
「そうです!!」
「そうだ、そうだ!!」
全員からの大ブーイング。それに対してアンコロは………………。
「全く、お前らは無知ですね…………魔王なんですよ!きっと魔王の心臓的な物か、止めを刺すのに絶対に必要な武器とかあるかも知れないではないですか!!それを探して来ると言っているのですよ!!」
「「「「「「「はっ!?」」」」」」」
ここで飛び出たゲーム脳。確かに相手は『魔王』、それくらいの可能性はあった。
「お前らは魔王の所に行ってよいですよ?魔王を押さえる役目も必要ですからね。僕も財宝を手に入れたら追いますから」
「なるほど…………わかった。僕たちは先に行く。魔王の心臓(仮)を探して来てくれ」
「もちろんです。ああ、アアアアも連れていくと良いです。良い盾になるでしょう」
「「「「「ありがとう」」」」」
「ありがとうじゃねぇよ!?」
どうやらアアアアが盾になるのは確定らしい。
「それとアアアア………………くれぐれも一発ギャグは慎むですよ。一撃で全滅してしまいますからね」
「そうだ、そうだ」
「あんな超下らないギャグで死にたくないわ」
「二度としないでね」
「死ぬかと思ったよ~」
「死んだんだよ~、僕たちは~」
アアアアの一発ギャグを思い出して、仲間たちが冷たい目と台詞をアアアアにぶつける。
「ぐ、ぐぅうぅぅぅぅ…………そんなに面白くなかったかな」
どうやら、一発ギャグを言った本人は面白いと思っていたらしい。内心はショックを受けていた。
それはともかく………………アンコロは一人で財宝(ついでに魔王の弱点)を探しに魔王城の探索を始めるのだった。
「行くぞ、みんな!!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
勇者くんはリーダーシップを発揮して皆を率いて魔王の元に前進する勇者たち。
ーーーーバタン!!
魔王城の頂上部、魔王の間の扉を蹴破る勇者くん。
「魔王!覚悟しろ!!」
ーーーーくくくっ!勇者よ!よくぞ、ここまで来た!!
魔王の間…………玉座に座る魔王が勇者を歓迎する。
魔王は頭に悪魔角を生やしたダンディーな偉丈夫だ。しかし、顔はイケメンだが目が冷たい感じだ。
「しかし、その力…………ただ消し去るには惜しいな。どうだ?私の部下にならないか?世界の十分の一をくれてやろう」
それは一度は聞いてみたいお約束な台詞。しかし、たった世界の十分の一…………魔王は意外とせこかった。
「断る!!」
「「「光くん、ステキ!!」」」
魔王の提案に勇者くんは即断した。欲に流されない…………実に男前だった。女性陣(いつの間にかレインも入っている)もメロメロだ。
「………………サキュバスの美女も付けてやろう」
「………………………………………………断る!!」
…………少し空いた間は何であったのか。それでも勇者くんは拒絶した。
「ちっ………………ならば死ねい!!」
そうして始まる勇者たちと魔王の最終バトル。
~~~~
ちなみにその頃…………アンコロはと言うと。
「うひゃひゃひゃ!見つけましたよ、金銀財宝に魔法アイテムも!!」
魔王城の宝物庫で金銀財宝を見つけていた。そして、それらを不思議な鞄に詰め込んで回収していく。
「しかし、魔王の弱点っぽい物はなかったですね。あてが外れましたか?」
アンコロが宝物庫内を探したが魔王の弱点はなかったようだ。そもそも、本当にあるかもどうかも確定されてはいない物であるが………………。
「それでも…………僕は信じる。いや、信じたい!!皆が僕を待っているのですから!!次は厨房あたりで食料を手に入れるです!!」
…………などと希望を僅かな胸に魔王の弱点探しを再開する。今度は厨房の食料に狙いを定めているようだ。やられると地味に痛い嫌がらせだ。
そんな訳で、トコトコと食料略奪に向かうアンコロだった。
~~~~
そして、一方で魔王の間では………………。
「ぐぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「弱い!弱いぞ、勇者!!その程度の力でよくここまで辿り着けたものだな!!」
勇者くんたちは劣勢であった。
そもそも魔王の所…………ここに至るまで、ほぼアンコロ頼みだった為にレベルが伴っていないのだ。低レベルで挑むには自殺行為だった。
「まだよ!死霊よ!!」
「ふん!レイン…………この裏切り者めが!!」
元四天王…………死霊術士レインも死霊術を使って戦うが人間として復活した際に魔力を大分落としていた。
青い火の玉…………人魂が魔王に飛んでいく。
「ふん、弱いな。元四天王の癖に情けない」
「きゃあぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!?」
人魂が魔王の放った黒い炎に消し飛ばされる。黒い炎は威力を落とすことなくレインに………………。
「させるか~!」
「バリア~~~!!」
「え?や、やめろよ、おい!?ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
炎がレインに当たる事はなかった。妖精たちが咄嗟の判断で念動力を使い、アアアアをレインの前に押し出したのだ。
「な、何ぃ!?無傷だと!!」
アアアアの鎧の効果は健在だった。魔王の攻撃を受けてもノーダメージだった。それには魔王も驚いたようだ。しかし…………。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!や、やめてくれ~~~っ!!」
鎧の効果でダメージが笑いへと変換される効果も健在であった。魔王を前に笑い転げるアアアア。
「貴様、我を愚弄しているのか?良かろう!ならば、死ぬまで攻撃してくれる!!」
「ち、違うって…………ぎゃははははははははははははっ!!」
おちょくられていると勘違いした魔王がアアアアに魔法攻撃を何度も仕掛ける。そして、ダメージが笑いに変換、変換、変換される。
「ぶっぎゃはははははははははははははっ!?ひぎゃ、し、死ぬ、死んじまうって!だひゃばばばばっ!!く、くそっ!!こうなったら……………………」
「!?み、皆!耳を塞げっ!!目も瞑るんだ!!あれが来るぞっ!!」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
笑いに耐えられずにアアアアは再び一発ギャグをやろうとする。
それを予想した勇者くんが全員に『見るな聞くな』の指示をだす。
「これで汚名挽回してやる…………くらえ!!
『クワトロル』!!」
………………再び、極寒の風が吹いた。
そして、言葉が間違っているのもお約束である。正しくは『名誉挽回』か『汚名返上』である。
アアアアのリベンジ一発ギャグは説明をすると剣と鞘を頭の両隣に交差させるように見せるだけ…………普通にクワガタで良いだろう。
「ぐ、ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
それはともかく…………アアアアの極寒一発ギャグを受けて魔王は凍りついた。
「ふぅ…………や、やったか?」
アアアアよ、それは死亡フラグである。それを言った場合は大抵………………。
ーーーーバキンッ!!
「ぐぉおおおぉぉぉぉぉぉっ!!ま、まだだ!まだ、死なんぞぉおぉぉぉぉぉぉっ!!」
流石は魔王、自ら凍り漬けから帰還した。魔王がこんな技で死んだら、それこそお笑いである。
「あ、危なかった。貴様、道化かと思ったが恐ろしい人間だな。だが…………見切ったぞ!!貴様はダメージを魔力に変換していたのだな!笑って道化を演じていたのも我に攻撃させて魔力を貯める為であったのか!!一杯喰わされたぞ!!」
「ええっ!?」
魔王様、またもや勘違い。彼は人として小さい人間です。そして、基本的に馬鹿です。お笑い芸人(正式では無いが)なんです。
そんな魔王様も一周回って馬鹿なのだろうか?
「しかし、種が判ればそれまでよ。ダメージを与えずに殺す…………そんな魔法を使えばよい。毒か麻痺か眠りか呪いか?」
「ひ、ひぃいいいぃぃぃぃぃぃっ!?」
どうやら魔王は馬鹿ではなかったらしい。数秒でアアアアの弱点に気が付いたようだ。
そして、今度こそはとアアアアに詰め寄る。
「「「「「アアアア!!」」」」」
勇者くんたちがアアアアを助けようと魔王に向かって行く。しかし………………。
「邪魔をするな!!」
「「「「「「ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」
魔王の攻撃によって弾き飛ばされる勇者くんたち。もはや、アアアアは死んだも同然…………そんな時であった。
ーーーービィイイィィィィィッ!!
「っ!?」
一筋の光線が魔王の間を走り抜けた。その一線は魔王に向かって行く。
間一髪で光線を躱した魔王。そして、その攻撃を行った者の姿を捉える。
「おやおや、躱されましたか。どうやら、逃げ足だけは速いようですね」
「………………何者だ」
「あ、アンコロォオオォォォォォッ!!」
そう…………その攻撃を行った者。それこそ我らがヒーロー、カモノハシのぬいぐるみ…………その名もアンコロである。
「魔王…………お前は僕を裏切った!!」
「……………………何の事だ?裏切るも何も初対面であろう?」
アンコロの第一声に困惑する魔王。
「僕は探したのです。宝物庫、厨房、トイレの中までも…………お前の心臓的な物があるかと思って」
「「「「「いや、トイレは無いだろ」」」」」
自分の心臓をトイレに隠す馬鹿はいない、意外性はあるだろうがなにより汚いだろう。
「誰がそんな所に弱点など置いておくか!!謎の生物よ!貴様も、また道化か…………死ねぃ!!」
侮辱されたとアンコロへ魔法攻撃をする魔王様。ちなみに魔王にもアンコロの認識変換は効いていない。
「僕をアアアアのようなお笑い芸人と一緒にするなど万死に値いします」
「俺はお笑い芸人じゃねぇよ!!」
「貴様は僕との実力の差も図れないないようですね………………【反射】!!」
「何ぃっ!?」
魔法攻撃にはアンコロの【反射】スキルだ。魔王の放った魔法はあっさりと魔王の元に戻っていく。
「次は僕の番ですね。弱点が無いなら正攻法でボコりますか。弱点を探していたのはただの遊び…………勇者くんたちに華を持たせる為だったのですよ。僕が戦うならそんなものは必要ありません」
アンコロが拳をポキポキと鳴らし、柔軟体操をしながら構えを取る。そして………………。
「あたたたたたたたたっ!!」
「っ!?」
カンフーのような掛け声と共にアンコロが宙を駆ける。まるで瞬間移動をしたかのような速度で魔王に肉薄し、拳の雨を降らせたのだった。
「ぐっ!な、何と言う…………速さだ!!」
かろうじて、アンコロに着いていく魔王。アンコロの拳を致命傷をギリギリで躱す。
「フェイントです」
「ぐぁああぁぁぁっ!?」
アンコロの拳にはフェイントが混ぜられていたようだ。魔王はフェイントに引っ掛かり僅かな隙を作る。魔王の脇に出来た小さな隙にアンコロの蹴りが入ったのだった。
「がはっ!!」
アンコロの一撃により膝を付く魔王。
「ほれほれ…………お前の力はその程度ですか?僕はまだまだ本気のほの字も出していないのですよ?」
「くっくっくっ…………はっはっはっはっ!!」
「おや?頭は殴っていない筈ですが…………壊れてしまいましたかね?」
床に倒れた魔王は突然に笑い出した。そんな魔王にアンコロは壊れてしまった発言をする。
「本気を出していないのは…………我も同じだ!しかし、我は嬉しいぞ!!久方ぶりに真の姿を出せるのだからな!!」
「し、真の姿ですって!?」
どうやら、魔王の頭は無事であったようだ。そして、魔王は変身するようだ。
それを聞いて驚ろくアンコロ…………ただし、アンコロが驚いたのは恐怖とかではなく。『ついにお約束が来たぜ』的な驚きである。
「見せてやろう。我の本気を………………はぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『はぁああぁぁぁぁっ!!』等と芳ばしい発声と共に闇を纏う魔王。
身体は筋肉がムキムキに膨れ上がり、毛もゴワゴワになる。背中からは蝙蝠の羽が生え、頭には角、美形だった顔は獣へと変わっていく…………その姿は所謂『悪魔』のようであった。
ーーーーさぁ!行くぞ!!容易く死んでくれるなよ!!
「はん!返り討ちにしてやりますよ!!さぁ!ラストバトルです!!」
ーーーーカァアアアァァァァァァッ!!
ついに始まったアンコロと魔王とのラストバトル。
その戦いは魔王が先手を取った。魔王の口から闇の息吹きが放なたれる。
「ふん、ワンパターンな。また魔法攻撃ですか?反し…………むぅ!?」
【反射】を発動させようとしたアンコロ。しかし、発動させる前にあることに気が付き、反射を止めて息吹きを躱したのだった。
「これは…………魔法では無いですね。これは物理…………正確には『病原菌』ですか」
アンコロの【反射】は魔法防御術。生物の攻撃には効果は無い。そのことに気が付きアンコロは避けたのだ。
「この身体は生き物ではありませんから、病気などにはなりませんが…………お前の汚い息など浴びたくありません」
………………少し違った。ただ単に汚いから避けただけのようだ。
「メイン技はウイルスですか…………お前はなんか汚い。それにウイルス散布などもされたくないのでさっさと倒してしまいますか…………行くですよ!魔王!!これが僕の全力です!!」
アンコロが再び宙を駆ける…………先程よりもはるかに速く。そして、持っている機能やスキルを多用して。
「【タイムリー・ブリザード】!【神速】!【未来予知】!【柔軟】!【重量百倍(攻撃時限定)】!【部分巨大化】!アンちゃんパンチ!!アンちゃんキック!!アンちゃんビーム!!」
「ば、ばか…………な………………」
魔王は本気を出したアンコロの敵ではなかった。
アンコロは時を止め、何百体にも分身する動きをし、未来を読み、時折に柔軟体操をし、重量を変えて、腕を巨大化させてぶん殴る。蹴り飛ばす。ビームで焼く。
コンボ攻撃を繋いで、魔王の体力を一瞬の内にガリガリと削っていく。
そして、ついに………………魔王は変身を維持出来なくなり、人の姿へと戻っていく。
「まさか、これ程とは…………我の負けだ」
魔王はどさりと音を立てて床に倒れ伏したのだった。
「殺せ」
「お断りします」
「………………殺せ!!」
「嫌です」
「殺せと言っているだろうが!!」
「や・で・す!!」
そして、魔王は自分を殺せと言うが、アンコロはそれを頑なに拒否した………………それは何故?
「僕は何より殺人をしないのを信条としています。たまに自殺まで追い込みますが、基本的(強制的)に生き返します。僕にとって人間は大切な家ち…………いえ、玩具です」
「今、『家畜』って言い掛けなかったか!?しかも、言い直して玩具かよ!?」
アアアアがアンコロに突っ込みを入れる。いつの間にか、アアアアや勇者くん、その他のメンバーも集まっていた。
「我は人間ではない『魔王』…………そして、『悪魔』だ。貴様は我を倒す為にここに来たのでは無いのか?世界の平和は?」
「いえいえ…………僕がここに来たのはただの遊びです。冒険RPG的な話を体感したかっただけです。
世界の平和?そんなものはそもそもありませんよ。基本的にある程度の知能を持った生物は戦う運命にある生き物なんですよ。
人は異物を拒絶します。その結果、今は魔王や魔族、魔物が差別の標的になるのであって、放って置いても人間同士…………肌の色とかを言い訳にして戦争をはじめるのですよ。
よって、真の意味で平和になる事など永遠に来ないと言えます。
最後に魔王?人間?関係ありませんね。繰り返しになりますが、どいつもこいつも僕の玩具です」
アンコロは非情に現実主義者だった。
そして、最低だった。自分以外は全てが玩具と言い切ったのであった。
「お前………………最低だな」
アアアアの言った台詞に全員が頷いた。
「ふん、最低?最低で結構です。笑顔で嘘を吐き、偽善者顔をして甘い汁だけを吸おうとする虫よりも、きっとマシですよ。そう…………お前と違ってね、女神よ」
そう言って、アンコロはとある人物を見るのだった。
~~~~アルティメットバトル・女神~~~~
「……………………え?私?」
アンコロが見た人物…………それは聖女『朱利』であった。
「もう一度言います。お前がこの世界の『女神』ですね。召還の時に本物とすり変わったのでしょう。その時に生じた歪みがアアアアを異次元の狭間に落としたのでしょう」
「……………………………………へぇ」
「すり変わった動機は、ただの遊びでしょう?僕とお前はある意味で同類です『神』に近い力を持った………………ね」
「………………………………………………」
アンコロが睨むと無言になった聖女朱利。そして……………………。
「ふ、ふふふふふふふふふっ!!ねぇ…………アンコロちゃん。いつ気がついたの?私が本物じゃないって」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
朱利の肯定に衝撃が走った。
「あの港街ですね。僕(たち)がお前らを復活させた際に違和感を感じました。そう、僕の力がただ一人に及んでいないようなね。この中に女神がいると気が付いたなら後は簡単。僕の観察力でお前であると特定したのです」
「なるほどねぇ~。それで?私が女神だとして…………それでどうするの?」
朱利…………いや、女神はケラケラと笑いながら聞いた『それが何か』と軽い感じで。
「それはお前次第ですかね。一つ聞きますが、正体を知った僕たち…………正確にはこいつら召還者たちを帰してくれるんですか?」
「………………………………やだ。帰さない。せっかく見つけた玩具だもん。この世界の人間や他種族、魔物と戦わせて、もっと遊ぶんだ!!」
女神は告げる『帰さない』と。そして、お前らは玩具であると…………アンコロと同じであった。
しかし、女神は大分狂気が…………いや、それはアンコロもか。『神』の力を持つ者にまともな者はいないのだろうか。
そして、女神は敵意を顕にするのだった。いつ戦いが始まってもおかしくない。しかし………………。
「馬鹿め………………お前はすでに終わっているのですよ」
「………………………………え?な、何っ!?ち、力が出ない!!何で!?」
戦おうとした女神が自分の力がまるで出ないことに慌てるのだった。
「お前と僕は近い存在ではありますが、一つだけお前にない強みがあります。それは僕たちは数多の異世界に存在していると言う事です。僕はこの世界の外の力を会得しており、この世界の隣り合う世界にいる僕たちが干渉してお前の力を封じたのですよ」
「なっ!?そ、そんな馬鹿な事…………出来る訳が…………」
「出来たから、こうしてお前の力を封じているのです。どうです?お前…………僕と戦いますか?その封じられた力で」
「ぐ、ぐぅうぅぅぅぅぅっ!!く、悔しいぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
こうして、女神との戦いは始まりもせずに終わった。アンコロの作戦(?)によって。
そして、アンコロの遊びが終わり…………この世界から帰る時がきた。
アンコロたちは知り合った連中(レイン、妖精たち、魔王、クワトロル)に挨拶をしていた。
ちなみに女神の今後であるが、もとの世界に連れていく事になった。
「そういえば、アアアアよ」
「何だよ、アンコロ。」
「この世界で…………今までの戦いで生じたptは全てお前の借金となります。その鎧に蘇生、さらには世界干渉による神の力の封印…………借金はとんでもない事になっていますよ」
「………………………………は?」
突如、落とされた爆弾発言。アンコロの一言に固まるアアアアであった。
「僕へのpt借金。それを放置すれば、どんな災難が身にかかるか…………具体的には他の異世界にお助けキャラとして強制出張となりますね」
「おいっ!何だよ、それは!?」
「しかし、僕も鬼ではありません。よってお前にチャンスを与えてやるのです」
「ちゃ、チャンス?」
「うむ。実は僕の本体が主催している大会があるのですよ。その名も…………『ポイント・ウォーズ』!!数多の契約者たちが参加するptを大幅ゲットの大チャンスです」
それはアンコロ(本体)主催の催しの挑戦権であった。何でも、アンコロと契約をしている者たちがランダム(特例はある)に集められてptをかけて争うのだとか。さらに、アンコロからの特別贈呈もあるのだと。
………………今回は特別に次回予告をさせて頂きます。
次回『第1回ポイント・ウォーズ』!!時空も時間も越えて数多の契約者(未登場のキャラもでるよ)たちがptを奪い合うバトル・ロワイアル!お楽しみに!!
「そんな馬鹿なぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」
異世界の空にアアアアの叫び声が響くのだった。
~~~~クラス召還者・明跡嗚呼・完~~~~
突然ですが、皆さまはこいつを覚えていますでしょうか?
↓こいつ
そう、プロローグにて登場してアンコロと出会ったあの高校生です。
今回のお話はあの高校生がアンコロ(本体)にボコられて、契約させられた、すぐ後のお話から始めたいと思います(クラス召還物の始まりは大事です)。
それでは『クラス召還・明跡嗚呼』お楽しみ下さい。
『胸わくわくな冒険に出発しますか?』
→いいえ
はい
『胸わくわくな冒険に出発しますか?』
いいえ
→はい
………………すいません、ちょっとしたネタでした。では、今度こそ…………お話のはじまりです。
~~~~とある異世界(中世文化)~~~~
「こ、ここは一体、何処なんだ?僕は学校で授業を受けてた筈なのに......」
学生服を着たあどけない顔立ちの少年が困惑と不安の表情で辺りを見渡していた。
それもそのはず、少年の目に写るのは現実とは思えないような風景であったからだ。
そこは広い大きな部屋の中だった。窓のない大部屋(石で出来た頑丈そうな)で少年…………いや、少年たちは床で寝ていたようだ。
見渡せば目を瞬かせているクラスメートたちの姿もそこにあった。
そう、石畳の上で寝ていたら風邪を引くかもしれ…………いや、問題はそこではない。とにかく、その大部屋は異様であった。
床には魔方陣(?)が描かれており、ムキムキ筋肉質に鎧を着た騎士的な男たちに囲まれてるのだ。
そのセンター(意:中心)にはキラキラなドレスを着た美少女お姫様、同じくキラキラな貴族服を着た王子様っぽい奴が。おまけに一際立派な鎧をしたおっさんと白髭とローブを着た魔術師っぽい奴が立っていた。
「「勇者様!どうか…………どうか、この世界をお救い下さい!!」」
そして、異世界召還物でお決まりなこの台詞………………そう、彼らは異世界召還(クラスごとの召還)をされてしまったのである。
「一体……何だよ、これ」
「異世界召還?ハーレムが俺を待っている」
「私、家に帰りたいよぉ…………」
…………などとざわめくクラスメートたち。
異世界召還を知らない者からオタクな者、帰りたいと泣く者まで様々であった。
「皆!落ち着くんだ!!」
そんな中で、リーダーシップを醸し出すイケメンの声が響き渡る。
それはクラスの中心にしてスポーツマン、学力も上位なヒーロー的な存在であった。
「皆!光君の言う通りよ!!」
そして、そんなイケメン………………光君(と言う名前らしい)の隣には彼の幼なじみ的な美少女の姿が…………そう、学園アイドルと言うべき容姿。ヒーローとヒロイン的な二人が揃っていたのだった。
なお、少年のクラスは21名。それと担任教師もクラス召還に巻き込まれていたのだった。
「……………………すいません。ご説明をお願い出来ますか」
そのイケメン生徒に株を奪われそうになった担任女性教師(28)が大人な対応にて王子様とお姫様に話しかけるのだった。
「「はい、もちろんです。勇者様方」」
王子様とお姫様は爽やかな笑顔を頷いたのだった。
ちなみにテンプレな説明例だ。
まず一口に『クラス召還』と言っても様々な例が存在するだろう。
基本的には…………。
①魔王が現れた…………世界の危機だ。
↓
②女神様の神託にて勇者様を召還しよう。
↓
③勇者様の召還、魔王討伐の旅の始まり。
↓
④長い旅の結果、魔王をやっつけたぜ!!
↓
⑤よし!ついでにこの国が世界の頂点だ。
↓
⑥大陸及び異種族全戦争に発展。
…………大体そんな感じだ。
ちなみに⑤以降からはどうなるかは話によって変わるので定かではない。③の召還時に一人(もしくはヒロインと)で別行動する場合もある。
そして、召還した奴らに戦争目的かなどと聞いたら教えて当然貰えず最悪は消されるだろう。
そして、④で勇者が地球に帰るを選択すれば………………などと色んな想像が出来るテンプレだった。
魔王を倒した後などに究極ダンジョンや神と闘うなどもあるが。
………………それはともかく。
彼らの説明は予想通り、魔王が現れ世界が大変、よって勇者を召還した…………との事である。
「「どうか…………勇者様方!この世界をお救い下さい!!」」
こうして、世界の危機と悲壮感を出して断り難くするのが奴らの手だ。人は正義の味方に憧れるもの…………特にまだ未熟な学生ならば尚更である。
ーーーーキラキラキラ(美形が出す謎のオーラ)。
そして、美形の王子と王女などでハニートラップも定番である。
「なるほど…………でも、僕たちは普通の高校生です。そんな魔王なんて倒せる訳が…………」
「皆様には女神様より勇者様としての『個別能力』が備わっている筈です。皆様、【ステータスオープン】と仰って下さい。思うだけでも結構です」
「「「「「ステータスオープン」」」」」
クラスメートたちは次々とステータスを開く。そして、ゲームみたいだと一喜一憂するのだった。
そして、少年も………………。
「す、ステータスオーブン…………間違えた。ステータスオープン!!」
====ステータス====
名前:明跡嗚呼
性別:男
年齢:16
適正職:兵士+特殊補正小
レベル:1
総合戦闘力:20
固有能力:【鑑定】【通訳】【危険感知】
========
………………これが少年。いや、明跡嗚呼のステータスであった。
ちなみにイケメンの光君はと言うと…………。
====ステータス====
名前:宮王寺光
性別:男
年齢:16
適正職:勇者
レベル:1
総合戦闘力:500+特殊補正大
固有能力:【鑑定】【通訳】【ライトニング】
========
光君と嗚呼君…………二人には差がありすぎた。同じレベルなのに総合戦闘力で25倍もの差があった。
そんな勇者(光君)を筆頭に聖女(ヒロイン)や剣聖(剣道部出身)に賢者(女教師)、大魔導師(オタク)などの最高職五人。
他のクラスメートたちは優サポート職や中級職だった。
すなわち、下級職は嗚呼君だけであった。危険察知の能力と特殊補正小があるだけ、ましと言える程度だろう。
…………だが、これで態勢は決したと言えるだろう。
職業、戦闘力、固有能力等による地位の序列。優秀(強い)奴がより強い発言権と決定権を持つのだ。
そして、そんな地位を利用して…………。
「皆、どうする?僕としては困っている人たちを放って置けない。元の世界に帰る為にも……「お前の意見など聞いていません」……ぐはぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ひ、光くぅううぅぅぅぅぅぅん!?(ヒロインの声)」
…………などと皆の意見を聞いているようでいて、勝手に承諾しようとしたイケメン高校生な光君はとある人物(?)に蹴り飛ばされたのだった。
「な、何をするんですか!?…………え?えっと……………………?」
聖女なヒロインは蹴り飛ばされた幼なじみを見て怒り目を向けた。
その目の先…………幼なじみを蹴り飛ばしたであろう存在。カモノハシなぬいぐるみ…………アンコロを見て困惑な声を出すのだった。
「ふん!勇者?聖女?お前らなどお呼びではない!!全ての決定権を持つのは、この僕…………『反逆の神』を持つ僕なのですよ!!」
「「「「「は、反逆の神ぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」」」」」
アンコロは『神』にまで昇神していた。ついでに『反逆の神』の称号までが付いていた。
ちなみにそのステータスは………………。
===$=ー+ス====
名/:アンコロ(分@)
@別:♂
年&:測÷/=
><職:反逆の神
レ=ル:_定不>
+*戦/力:無%^^大
固-%力:???
========
アンコロのステータスは文字化けしていた。
そのステータスはまるで読めず、意図されているように『アンコロ』の名と『反逆の神』とだけが読めるようになっている。
「あ、ああぁっ!?お、お前は………………」
アンコロの姿を見て嗚呼は思い出した。あの不思議な異次元の狭間での出来事を………………。
そして、一目を憚らず大声を上げるのだった。
「明跡!お前…………あいつを知っているのか!?」
その声でクラスメートたちは嗚呼に注目する。そして、光君は尋ねたのだった。
「あ、ああ!こいつはここに召還される前、異次元の狭間ってところで………………」
「ええ、僕たちはそこで出会いました。僕も覚えていますよ。お前がいきなり殴り掛かってきた事も…………クラスメートたちを見捨てて一人で元の世界に帰ろうとしたこともね」
「「「「「…………………………なんだって(ですって)?」」」」」
アンコロと嗚呼の異次元の狭間での出来事…………その暴露にクラスメートたちはに冷たい目を向けたのだった。
それは明跡嗚呼の隠された暴力性。そして、『見捨てた』と言う事実に怒ったのである。
なお、アンコロの認識変換機能はある程度上位の生物には効かないようになっている。それは通じないのではなく、その方が面白そうだとの理由からだ。よってやろうと思えば認識変換は出来る。
そして、わざとであるが認識変換が効いてない者たちがこの場には何人かいた。
まず異世界召還組は契約者の明跡嗚呼は当然として、ほかには勇者(光君)、聖女(ヒロインちゃん)、剣聖(剣道部)、賢者(女教師)、大魔導師(オタク)の6名。
後はこの世界の上位者…………王子様に王女様、立派な鎧の……騎士団長と白髭ローブの魔術師長の4名だ。
なお、その他のクラスメートたちや騎士たちはアンコロを逆らってはいけない者と認識している。
「ふむ、僕を知らぬ者たちが大半なので自己紹介してやりますか。僕の名はアンコロ。異次元の狭間にて数億年を生きるカモノハシ…………その分体なのですよ」
「「「「「す、数億年っ!?」」」」」
アンコロの年齢を聞いて驚愕の声を出す9名。
「そして、その暇潰しに異次元の狭間に落ちてきた奴と契約し、このぬいぐるみボディの僕を渡して遊んでいるのですよ。そんな訳で…………僕が魔王とやらをちょちょいと倒してやりましょう!!そして、この世界の神の座も僕のものなのですよ!!」
「「「「っ!!」」」」
そして、勇者宣言からの世界の支配者宣言であった。
「「ふ、ふざけるなぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
『神の座を奪う』…………それはお調子者のアンコロにとってはただの軽口。しかし、この世界に生きてきた者たちにとっては聞き捨てならない言葉であった。
騎士団長と魔術師長は怒り…………アンコロへと向かって行ったのだ。
「良いでしょう…………来なさい、遊んでやります」
「「舐めるな!この化け物めっ!!」」
騎士団長は剣を抜き、魔術師長は杖を構えてアンコロに攻撃した。
「はぁあぁぁぁぁぁっ…………「硬質化」な、何ぃいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
ーーーーバキンッ!!
騎士団長の渾身の一撃は異様なほど硬質化したアンコロの体には通じずあっさりと剣を折られる。
「騎士団長っ!?くそっ!紅蓮の炎よ!我が魔力を捧げる!我の敵を燃やし尽くしたまえ!!【ファイヤーストーム】!!「反射」な、何だとぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
ーーーードォオオォォォォォンッ!!
魔術師長も火の上位魔法をアンコロに放つ…………しかし、これまたあっさりと跳ね返されてしまったのだった。
「「「きゃあああぁぁぁぁぁぁっ!!」」」
その火の魔法は大部屋の天井を破壊した。
天井の破壊によって、瓦礫がガラガラと崩れ落ちてくる。それを見て女子たちが悲鳴を上げる。
…………しかし、王子と王女のいる前で上位魔法を放つとは魔術師長。頭が良さそうな響きのようだが馬鹿なのか。
「これはサービスです。はい、【リバース】」
アンコロは【リバース】と呼ばれるスキルを発動させる。その効果は『戻す』…………数分以内ならば人(死んでなければ)でも物でも元通りに戻す能力である。
ガラガラガラ…………と落ちてきていた瓦礫が逆再生をするように元通りに戻ったのだった。
「な、何と………………」
「す、すごい…………」
そのあり得ない光景に驚く王子と王女、その他の面々であった。
「…………アンコロ様。あなたの目的は何なのでしょうか?」
王女が冷静さを取り戻して、アンコロに尋ねる。
「ですから、ただの『暇潰し』ですよ。僕はただ面白い結末が見れるならそれで良いのです」
「………………………………」
アンコロの目的を聞いて、思案をする王女様。その結論は………………。
「……………………ならば、魔王を討伐したならば速やかに帰って頂けますか?その契約(?)をした…………その者と共に」
王女様はアンコロを魔王退治のみに利用して、その後は早く帰れとしたのだった。ちなみに嗚呼はいらないらしい(弱いから)。
「こいつらは?」
アンコロはその他の召還者たちを指す。
「………………個人の意思を尊重します」
『個人の意思を尊重する』…………それは都合の良い言葉であった。それは欲深い者…………それらを利用すると言う意思も思える言葉だ。
「そうですか………………では、帰りたい者は挙手!僕の力で元の世界に帰らせてやるです!!」
「「「「「っ!?」」」」」
アンコロの『帰らせてやる』の台詞を聞いて驚く召還者たち(この世界の連中も驚いている)。
どうやら、アンコロの力は異世界をも超越するようだ。
そして、ほとんどの生徒たちが手を上げた。
「……………………お前らはいいんですか?魔王退治など死ぬ可能性が高いですよ?」
アンコロは手を上げなかった奴らに尋ねた。
「はん!そんなの怖くねぇや!!それにこの力を使えば贅沢出来るんだろ?」
「ハーレム、奴隷ハーレムを…………」
………………それは欲の皮が突っ張った連中であった。
不良な生徒と弱オタクな生徒…………チートを得たならば元の世界よりいい生活に女が得られるとの考えらしい。
「うりぁあぁぁぁぁっ!!」
ーーーーバキッ!ドカッ!!
「ぐはぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「あいたぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
アンコロは不良と弱オタクを殴り飛ばした。
「「な、何をするんだよ!!」」
「黙らしゃい!この親不孝者どもめ!!お前らは自分の事ばかりで親の気持ちが分かってないのです!!」
「「っ!?」」
アンコロは親の気持ち…………すなわち『愛』を訴えた。その上で殴ったのである。良いぞ、アンコロ!もっと言ってやれ!!
「良いですか!お前らは親の期待を背負っているのですよ!!良いですか!お前らは愛されて産まれてきたのですよ!!」
「「ぐぅうううぅぅぅぅぅ…………」」
「付け加えるならば、現代日本の平均養育費(出産から大学まで)は2,000万から3,000万なんですよ!!高校生なお前らはすでに1,000万は消費しているのです!!ついでに親には老後もあるのです!お前らが居てやらねばどうするのですか!!どうしても残ると言うのならば、その分の金を返して言うのです!!」
ちょっと話が生臭くなった。まぁ、アンコロの言っている分は分からなくもないので良しとしておこう。
「「す、すいませんでしたぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
アンコロの叱咤によって、泣きながら謝る不良と弱オタク。どうやら、アンコロの話…………いや、心は通じたようだ。
そして、今は綺麗に纏めたが現実は汚い。
それは親からによる育児放棄、虐待などと言った問題ある家庭。酷ければ、コインロッカー置き去りや殺して埋めてしまう最低な親もいる。
それらは社会の闇であり、一個人などではどうすることも出来ないだろう。
それでも、人として親を……愛を信じたい。そんな世界になって欲しいものだ。もっともクズな人間に愛などと正義顔して語って、ほしくはないが………………。
まぁ、それはともかく………………。
こうして、穏便(?)に主要メンバーを除いて地球への帰還が決定し、あっさりとクラスメートたちは還って行った。
勇者君たち…………物語には必要な存在であると選択権(最初から乗り気だった為、帰りたいかも聞いていない)は与えなかったアンコロ。
ついでにこいつもだ……………………。
「何でだよ!俺も帰らせろよ!!」
「『アアアア』は駄目!!」
それはアンコロの契約者こと、明跡嗚呼だ。
アンコロは明跡嗚呼(嗚呼は『ああ』とも読める)名前に『あ』が四つある事から『アアアア』とあだ名を付けたのであった。
ちなみにアアアアは、最初に『手を上げろ』の時から手を上げて帰るつもりだった。
しかし、アンコロは、アアアアの意思を完全拒否。それではつまらない…………との理由から、アンコロの一存により居残り決定が決まった。
「安心するですよ。某青い猫ロボットの劇場版(旧い方)なみのスピードで魔王のもとに到着してやりますから」
「魔王退治って、そっちかよ…………」
「ついでに死んでも生き返らしてやりますよ。魔王も倒したら、元の世界…………時間経過なしのおまけも付けてやります。それで何の不満がありますか?」
「わかったよ!ちくしょう!!」
こうして、魔王退治への強制出撃が決まったアアアアであった。
~~~~王様への挨拶~~~~
「…………………………では、勇者たちよ。旅立つがよい」
「「「「「「「はい(です)!!」」」」」」」
あの後、物語の定番としてアンコロたちは王様の待つ玉座へ挨拶に通されたのだ。
王様は王子や王女からアンコロや勇者たちの事を聞いた。
どうやら、本当に魔王討伐後は戦争をしようとか考えていたのか。あてが外れて内心は穏やかではなかった。
しかし、アンコロと言う神に匹敵する存在を前にして。大人(王様)の器を持って対応をしていた。
「この拉致キング!ほら、笑顔で見送りなさい!!僕のおかげで世界は救われて、召還被害者たちも還らせたのですよ!不完全な召還術を使うからこうなるのです!!」
「ぐぅっ……………………」
さらに、アンコロは召還を実行した加害者たちに嫌みを言うのも忘れていなかった。
王様を拉致王と嘲笑し、チクチクと世界の事情…………不完全な召還術、他の世界に頼る姿勢、人間たちの欲などを責めたのだ。
そして、召還の慰謝料として多額の金銭を国から踏んだ喰ったのだ。
~~~~街での準備~~~~
「僕は断然に旧作派ですね。新作は涙が入りましたが、旧作の方がわくわくしました。個人的には魔○星の生物たちが微妙な気持ち悪さで良い感じでした」
勇者たちにアンコロは意外と馴染んでいた。
「僕は新作」
「う~ん、私は新作の方が好きだな」
「俺は旧作派だな」
「僕も旧作」
「私は旧作しか見てないけど…………そんなに面白いの?」
臨時パーティー7人は街中を歩いていて、暇潰しに始まった某猫ロボット劇場版魔○大冒険の雑談。
「…………なんかRPGの方じゃなくて、そっち的な話になってるな」
話の輪から外れているアアアアが独り語ちる。
戦闘ゲーム系なRPGは男がやる事が多いだろう。だが、某猫ロボットの話ならば女性でも知っている人間が多いのだ(何せ国民的ですから)。
知っている話題で共感を得て安心させる。これもアンコロの巧みな話術の一つである。
そんな雑談をしながら、武器屋の前にたどり着いた。
「よし、城で貰ったアイテムを売りましょうか」
「え?全部売っちゃうの?」
「ええ…………僕の特殊鑑定の結果、このアイテムには若干悪意のあるような魔法が込められていますね。
例えば、長く使っていると殺人に罪悪感がなくなっていくようなのがね。こんな物は売る、もしくは解体して僕が改造してやりますよ。王様からの慰謝料を使って工房を貸りましょう」
どうやら、この異世界召還はガチでヤバかったようだ。城の連中は使い捨てにする気満々だった。
そして、そんな危ない品を売り捌いて処分したアンコロは何処から取り出したのか、金槌とドリルを手に使えそうなアイテムだけを使い改造を始めようとしていた。
「ところで…………ハンドガン、ガトリング、バズーカ、ロケットランチャーとかどうですか?ちなみに頑張ればライト○イバーとかも作れますよ」
「「「「まじでっ!?」」」」
アンコロは大抵(?)の物は創れるようであった。そして、調子に乗って近代武器やSF武器を創ろうとしている。ついでに、男の子は武器に憧れる。
「勇者ライト君はライト○イバーで行きましょうか」
「ライトじゃないよ!光だよ!!」
「良いじゃないですか。勇者にはありふれてそうな名前ですよ」
「……………………止めてくれ、気にしてるんだ」
…………どうやら、光君は気にしていたらしい。今後はこの話題に触れない方が無難だろう。
「朱利ちゃんはどうします?回復杖にはハンドガンとかおすすめですけど」
聖女…………朱利(と言う名前らしい)にハンドガンをすすめるアンコロ。回復杖を持たせて、自衛用ハンドガンを持たせようとしている。
「私は別に銃には詳しくないし、簡単に使えそうならそれでいいよ」
「うむ、次は………………」
その後、剣聖、賢者、大魔導師と装備を決めて渡していくアンコロ。そして、最後はアアアアだ。
「アアアアよ。お前には取って置きの…………【キン○マン変身セット】をくれてやりましょう」
アンコロが取り出したのは、まさかの【キン○マン変身セット】。あの文字が額に輝く時…………力が………………。
「そんなの嫌だ!!」
「何ぃ!?では、バッ○ァローマンですか!?まさか、ラー○ンマンで………………」
「何で際ものばっかり…………いや違う、そうじゃない!キン○マンから離れろよ!?」
ちょっと乗りかけたアアアア。しかし、ジャンルの違いを思い出して拒否するのだった。
「…………ちっ!仕方ないですね。では、これでどうですか?」
「っ!?こ、これは………………」
そして、最後にアンコロが取り出した物………………結果、アアアアの装備はそれに決まったのだった。
ちなみにアンコロの武器作製の腕を見た武器屋の親父がアンコロに弟子入りしようとして邪魔だと蹴り飛ばされたのは余談である。
~~~~第一ステージ・惑わしの森~~~~
ここは王都から少し離れた森の中。アンコロ一行は森で魔物を狩りながら、レベルを上げていた。
「はぁあああぁぁぁぁぁっ!!光よぉおおおぉぉぉぉぉぉっ!!」
勇者のライト○イバーが敵を焼き切り………………。
「お願い!治って!!【スーパーヒール】!!」
聖女の回復魔法がケガを癒し………………。
「くらえ!!【断罪斬り】!!」
剣聖が神業で敵を裂き………………。
「炎よ!【ファイア・ランス】!!」
賢者の魔法が敵を燃やし………………。
「………………バズーカ!!」
大魔導師がバズーカで破壊をする………………バズーカは卑怯過ぎる気がするが。
そして、最後に………………。
「さぁ!行くですよ、アアアア!ガッツです!!」
そして、アアアア。彼がアンコロによって与えられた力は………………。
「……………………………………」
がちゃがちゃと鋼の鎧に身を包んだアアアア。そして………………。
ーーーーザッ、ザッ、ザッ!!
ランスを敵に向かって投げまくる。どうやら、投てきするランスには制限はないようだ。スピードは遅め、しかも真っ直ぐしか飛ばない。
ーーーーヒョイ!!
さらに重い鎧を着てのジャンプ。しかも一度ジャンプしたら方向転換の出来ないジャンプだ。
ーーーーガシャン!!
敵に触れただけで鎧が弾け飛んでしまった。しかし、安……してください。履いてますよ。ガラパンを…………。
つまり、これは……………………。
「………………魔○村かっ!!」
これで何度目かのカ○コンネタ。
そう、あの魔物に囚われたお姫様を取り返しにいく超大作だ(髭帽子の方ではない)。
「普通に鎧を渡されたから着てみたけど…………騙しやがったな!!」
「騙されるお前が馬鹿なのです。でも、世界観的には合ってますよ?上級な鎧になれば魔法も使えるしね」
「やかましいわ!!普通にRPGでいいじゃねぇか!!何で俺だけアクションなんだよ!!」
「良いじゃないですか!お前にぴったりですよ!!無駄に頭を使っていません!!」
「どういう意味だ、こら!!」
普通にお前は馬鹿だ…………とアンコロは言っていた。
「さらに、その鎧は僕の特別製です。鎧を着ている間は【ステータス】の影響を受けなくなるのですよ」
「……………………おい!何だよ、それは!!」
「………………そう、良くも悪くもですね」
憤慨するアアアアであったが、アンコロは珍しく真面目な顔であった。そして、空を見ている…………まるで何かに見られているのに気が付いているかのようだ。
「……………………ふん、気に入りませんね。この世界に『神』は僕一人で良いのです」
アンコロは空を見ながら呟いた。
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、何でもありませんよ。それよりも、確かにネタとしてはもう充分ですね。これ以上引っ張ると………………引っ掛かりますから。では、それなりの鎧と交換してやります。『ステータス削除機能』は確定ですが」
「おい!ちゃんとした装備にしろよ!!」
「はん!忘れてませんか?本来はptを貯めてアイテムを貰うのですよ。お前に貸すのはあくまでレンタル品です!!まったく……図々しい男ですね、お前は」
「だったら、ネタとか言わずに最初から渡せよ!!」
いつも通りのアンコロであった。そして、アアアアの鎧をアンコロの特製鎧へと変更する。
その後も戦闘を繰り返して森の奥へと進む一行。
やがて、木が拓けた花が咲き乱れる場所に出るのだった。
「僕のゲーム脳が告げています。この森を抜けるには特定の花が目印になっています」
そう、この森は『惑わしの森』と呼ばれ入って来た人間を森から出られなくしてしまうのだ。さらに魔王の力によって森の魔物たちは凶暴化している。
そんな森で、ゲーム脳(ゲームあるある?)を口にするアンコロ。それっぽい花を見つけて目印に進んでいく。
「この道…………さっきも通らなかった?」
聖女朱利が気付いた…………同じ道を何度も行ったり来たりしていることに。
「やはり、現実はゲームではないと言う事ですね。つまり………………」
「「「「「「つまり?」」」」」」
「迷いました!はっはっはっ!!困りましたね!!はっはっはっ!!」
「「「「「「ははは…………じゃねぇよっ!!」」」」」」
どうやら、ベタもベタ。アンコロ一行は道に迷ったようだ…………つまりは遭難です。
「そうなんです。一度は言ってみたいギャグですよね」
「「「「「「やかましいわっ!!」」」」」」
「空は開けてますし、飛べば出られるでしょう。まぁ、たまに結界とか張られて………………おや?」
「「「「「「っ!?」」」」」」
アンコロが緊張感なく話していると、キラキラと森の暗闇で何かが飛び回っているのが見えたのだった。
目を凝らして見ると、それは………………。
ーーーークスクス。また人間が来たよ~。惑わしちゃえ~。
ーーーークスクス。来たね来たね人間が~。殺しちゃえ~。
それは手のひらサイズに虫のような翅が生えた存在…………ファンタジーの定番『妖精』である。
しかし、妖精たちは『殺しちゃえ』などと言っており殺伐としていた。どうやら、魔王の影響か、はたまた元からか。現状では危険生物のようだ。
「そぉ~~………………捕った!!」
「「ひゃあぁああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
いつの間にか妖精の近くに寄っていたアンコロ(瞬間移動を使ったのかも知れないが)。
アンコロの手には虫とり網が握られており、頭に麦わら帽子、腰(?)には虫かごも装備している。所謂、夏休みの虫とり少年スタイルだ。
そんなアンコロに妖精二匹はあっさりと捕まってしまったのだ。
「くそ、こんなもの~」
「あれ?すり抜けられないよ~」
「ふふん、この網とかごは僕の特別製です。魔力を反発させる術が掛けられてましてね。妖精は魔力体ですから出られないのですよ」
流石はアンコロ。妖精対策は万全の装備だったようだ。妖精たちは虫かごへと囚われの身になってしまった。
「「くそ~!何だよ、お前~放せよ~~!!」」
虫かごの中で出せ出せと暴れる妖精たち。妖精たちは中から魔法で壊そうとした。しかし、かごは不思議な力によって守られている。
「僕は分かりました…………こいつら妖精たちこそがこの森を抜ける方法を知っている存在だと言う事を。さぁ!虫たちよ!!森から出る方法を教えるのです!さもなくば…………振りますよ!こんな風に!!」
ーーーーぶんぶんぶんっ!!
「「うわぁあぁぁぁぁぁぁっ!!もう、振ってるじゃないかぁああぁぁぁぁぁっ!!」」
妖精入りのかごをぶんぶんと上下左右に振り回して妖精虐めをするアンコロだった。
「「わ、分かった!森を出る方法を教えるよぉ~~~!!」」
どうやら本当に妖精が森を出る鍵であったようだ。
「「ちゃんと森から出たら、俺たちを解放しろよ~」」
「分かってますよ。約束は守ります」
アンコロ一行は妖精たちの案内で森を歩く。そして、森の出口へとたどり着いた…………ように見えた。
ーーーーぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!
突如、地震が起きて地面が盛り上がる。そこから、巨大な昆虫型の魔物が飛び出した。
「ぎゃぎゃ!我は魔王様直属の四天王『大地のクワトロル』なり!魔王様に逆らう愚か者…………勇者とは貴様らか!!」
その昆虫は言葉を話して名乗りを上げる。どうやら、四天王とかいるらしい。実にベタなことだ。
その四天王クワトロルはクワガタムシのような外見であった。そう男の子の憧れ的な魔物である。ちなみに女性陣は嫌そうな顔をしている。特に…………。
「………………紅蓮の炎よ!我が魔力を捧げる!我の敵を燃やし尽くしたまえ!!【ファイヤーストーム】!!」
それは魔術師長がアンコロに向けた魔法であった。それを賢者こと女教師は昆虫魔物に放ったのだ。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
女教師は虫が大の嫌いだった。
そんな彼女の前に超巨大サイズの虫が現れたなら、この反応は当然であった。
火に包まれるクワトロル。しかし、あっさりと………………。
「ぎゃぎゃぁっ!!き、効かぁあん!!ふん、虫には火?お前ら人間はワンパターンだぎゃ!冥土の土産に教えてやるぎゃ!我は戦いの中で耐性を得る力を持っているのだぎゃ!」
クワトロルは脱皮する事で火から逃れた。そして、ペラペラと自分の能力を誇示し始めた。確かに体は一回り大きくなり…………火への耐性も得ているようだ。
「くそ!やぁあああぁぁぁぁっ!!」
側にいた剣聖が斬ろうとするが…………。
ーーーーガキンッ!!
「ぎゃぎゃぎゃ!無駄だぎゃ!我の身体はダイヤモンドのように硬いのだぎゃ!!」
流石は昆虫、その甲殻は硬かった。剣はこれまたあっさりと弾かれてしまったのだった。
「それなりの剣なんですけどね、あれ。僕が打ちましたから。まぁ、あれはあいつの腕と素材が貧弱な所為ですね」
アンコロの評価は辛辣だった。そして、人の所為にした。完全に鑑賞モードになっている。
「やぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
勇者くんがライト○イバーで昆虫を斬ろうとするが、これも相性が悪かった。ライト○イバーは熱の剣…………耐性を得てしまったクワトロルにはあまり効果がないのだ。
「ぎゃぎゃぎゃぎゃ!!馬鹿めっ!!」
クワトロルは勇者を嘲笑し。そして、今度はアンコロの方を向いた。
「おや?今度は僕狙いですか?身の程知らずな………………む、視線が少し下を向いてますね。これですか?」
始めはアンコロ狙いかと思ったが、クワトロルはアンコロではなく、虫かごに入れている妖精たちに目が行っているようだ。
「おお!妖精かだぎゃ!我の大好物でぎゃ!!」
「「ひ、ひぃいいぃぃぃぃぃぃっ!!」」
どうやら、四天王クワトロル…………妖精を食べる性質を持っているようだ。
「こいつはやりますから、この道を通してくれませんかね?」
アンコロはあっさりと妖精たちを売った。
「馬鹿めだぎゃ。お前らを殺して、奪って食えば良いだけだぎゃ」
「それはそうですね。僕でもそうしますか」
アンコロも本気で交渉が通じるとは思っていなかったようだ。これまたあっさりと引き下がる。
「よし!アアアア!!あの鎧でこいつを倒すのです!!」
「俺が戦うのかよ!?」
「当たり前です!これはお前らの戦いでしょう!!さぁ、行くのです!!その鎧ならば大丈夫、僕が保証します!!」
「わ、分かったよ!くそっ!!」
アンコロはアアアアに戦うよう指示を出して引き下がる。そして、四天王クワトロルの前にアアアアが立つのだった。
「一番弱そうな奴が出てきただぎゃ。お前など瞬殺して喰ってやるだぎゃ」
「四天王クワトロルよ。こいつを舐めるなよです。どうですか?試しに好きなだけ殴ってみませんか?お前程度の攻撃などこいつには通じないと言うことを分からせてやります」
「お、おいっ!!」
アンコロはアアアアの意思に関係なく好きなだけ攻撃してみろと言い放った。
「な、何だとだぎゃ?良かろう、ならば試してやるだぎゃ!!ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃっ!!」
アンコロの挑発に乗ったクワトロル。そして、嵐のような鉤爪連打攻撃がアアアアを襲った。同時に大量の土煙も宙を舞う。
ーーーーガガガガガガガガガッ!!
「「「「「アアアアッ!!」」」」」
その無惨な光景を見て叫ぶ勇者たち。ついでに既に彼らの中でも明跡嗚呼の呼び名は『アアアア』で定着されていたのだった。
嵐のような連打が止むと、土煙の中に残されたのは切り裂かれたアアアアの無惨な死体のみ…………その筈だった。
「「「「「アアアアッ!!」」」」」
勇者たちの名前を呼ぶ声…………しかし、アアアアの名が完全に叫ぶ声のそれだ。
それはともかく、土煙が晴れるとそこに残されていたのは………………。
「ははは………………ハーハッハッハッ!!」
笑い転げているアアアアの姿であった。爆笑も爆笑、大爆笑である。まるで調子に乗って笑っているように見える。
「な、何だぎゃ、こいつは………………」
笑い転げているアアアアに、全力攻撃をしたクワトロルも困惑……いや、正確には気持ち悪がっているようだ。
「お、おい……あ、アンコ…………ロ。な、なん、何なんだよ、これは…………ははは!わ、笑いが……止まらない!苦しいよぉ…………ハーハッハッハッ!!」
アアアアは笑っているが苦しんでいるように見えた。アアアアの問いにアンコロは…………。
「うむ、その鎧の名は【ド○フ】。『ステータス削除機能』に加えて『破壊及び着脱不可』と『爆笑変換機能』が付いた一品です。すなわち、その鎧を着て受けたダメージは着ている者の笑いへと強制変換させるのです。つまり、怪我とかしない究極の鎧と言えるでしょう」
「「「「「「「は(だぎゃ)?」」」」」」」
アンコロの説明にポカンと口を開けるその場にいた全員だった。
「さらに貯めた爆笑力を魔法攻撃に変換させる機能付き!さぁ、アアアアよ!!クワトロスに向かって一発ギャグを放つのです!!そのギャグは最強の一撃となるでしょう!!」
「い、一発ギャグ!?そ、そんな……事
……突然言われても…………ハッハッハッ!!うう、この苦しみから解放されるなら…………ぶっははは!!」
意を決してクワトロルに向けてアアアアは渾身の一発ギャグを放つ。
なお、一発ギャグに詳しくない人もいるかも知れないので、その定義について教えよう。
基本的な『一発ギャグ』とはわずかな短い動作や台詞で笑いを誘う事を指すのだ。
付け加えるのならば、一発ギャグを披露せねばならない時と言うのは突然に訪れる。
特に飲み会の席、合コン等でだ。
酔っ払った上司や先輩から突然ふられるので迷惑極まりないが、逆にチャンスと考える者もいる受ければ面白い奴と覚えて貰える。受けなければ悲惨の一言であるが。そして、すべては自己責任だ。
「よし…………行くぞ!!」
ーーーーゴクン…………。
四天王クワトロルにアアアアが全力で挑む一発ギャグ…………全員が生唾を飲む。
「はぁあああぁぁぁぁっ!!
アンコロの…………しっぽ!!」
ーーーーピキィイィィィィン。
………………その場の空気が凍りついた。
そう、アアアアの放った一発ギャグ。それは股に剣の鞘を挟み尻を向けて『クイッ』と腰を折る。それをアンコロのしっぽに見立てているのだ………………説明するのが悲しくなってきた。
「……………………………………」
ーーーーバキッ!!
「ぐはぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
アンコロが無言でアアアアを殴った。
「今日ほど…………今日ほど、お前を危険人物だと認識した日はありません!あろうことか…………僕をネタにするなど!不敬です…………不敬過ぎて万死に値します!!」
「じゃ、じゃあ、突然一発ギャグとか言うんじゃねぇよ!!」
「シャラップ!うるさいです!!」
ーーーードカッ!バキッ!グシャ!!
アンコロは怒り狂いアアアアを殴るわ蹴るわで痛め付ける。
そして、他の面々はと言うと………………。
ーーーーカチィイィィィィィン。
ガチガチに凍りついていた。勇者たち5人に四天王クワトロルもだ(ついでに妖精たちも)。あまりのつまらなさにアンコロ以外の全員が瞬間凍結をしてしまったのだ。
…………………………こうして、何とか森を抜けたアンコロ一行であった。
~~~~第2ステージ・亡霊の港~~~~
「ふ……………………ふんっ!!」
ーーーーガラガラガラ………………。
苦難の末に森を抜けたアンコロ一行(ただし、アンコロとアアアア以外全滅)は次のステージ…………魔王によって滅ぼされた港街に向かっていた。
港街から海を少し渡った無人島に魔王の城があると言うのだ。
ちなみに『ガラガラ』と言う音は全滅をしてしまった勇者たちの棺桶である。残ったものが棺桶を引っ張るのはお約束だ。
アアアアは仲間たちが入った棺桶を引き摺っているのだ。
アンコロは復活は安全な場所でと頑なに断りアアアアが棺桶を引き摺るはめになったのだ…………ただアンコロが棺桶を引き摺るアアアアを見たかっただけかも知れないが。
そして、時刻は日が沈みかけた夕方。アンコロとアアアアは壊れた門を抜けて港街の中に入っていった。
港街はボロボロに破壊されており、静けさだけが支配している。街を歩いていると崩れた教会を発見して中で休もうとする二人だった。
「おい、アンコロ。早くこいつらを蘇生してくれよ」
「良いですよ。ただし、勇者は一万、聖女三万、剣聖一万、賢者二万、妖精は一匹につき五千、オタクは百円の復活料になります」
「何だ、そりゃあ!?暴利じゃねぇか…………オタク以外」
オタク以外の復活料は高かった。ちなみに復活料はアンコロの独断で決めた物らしい。さらに妖精二匹も仲間に入っているようだ。
アアアアはしばらく考えて、オタクの百円ならいいかと思った時であった。
ーーーーオオォオォォォォォッ…………。
突如、教会の庭…………土の中から大量のゾンビたちが出現したのだった。
「な、なんだよ!?こいつら…………ゾンビだって!?」
スプラッタなゾンビたちを見て及び腰になるアアアアであった。
ーーーーホーホッホッホッ!!見つけたわよ、魔王様に刃向かう愚か者どもよ!私は四天王の一人『氷結のレイン』なり!身も心も凍てつく恐怖を与えてあげる!!
声の聞こえた方角を見れば、日が完全に沈んだ教会の屋根の上に半透明の女性が浮いていたのだった。
「クワトロルを倒したくらいで調子に乗らないでね!あいつは四天王の中でも最弱!勇者よ!屍に変えて、操ってあげる!!」
………………何と言うお約束な台詞。
そして、再び魔王の手先が現れたのだ。今度の四天王はレイスと言う幽霊型アンデッドのようだ。
「あー、すいません。レイスのお姉さん。既に…………勇者たちはお亡くなりになってますよ」
「…………………………………………は?」
そして、アンコロはアアアアに殺害された勇者たちの棺桶を指差したのだった。『もう勇者たちは死んでいる』…………その事態に四天王レインは困惑するのだった。
「………………一体、何故?」
「…………この男が勇者たちを殺害しました。仲間、しかもクラスメートを。しかも、一発ギャグで笑わなかったと言う理由でです。信じられませんよね」
「…………………………恐ろしい男ね、お前。私たちだって、そんな下らない理由で5人も仲間を殺さないわ」
………………間違ってはいない。しかし、アアアアを悪逆非道の最低男に誘導しているアンコロだった。
「しかし、死んでいるならば好都合!私の死霊術で勇者たちを傀儡に変えてやるわ!!はぁああぁぁぁぁっ!!」
ーーーーガタガタガタ…………ギィイィィィ………………。
レインが勇者たちの棺桶に念を送るような仕草をすると。棺桶の蓋がガタガタと動き出して、一人でに開いていく。そして、出てきたのは………………。
「ふ、復活しました!勇者たちがっ!!」
「あれ、どう見てもゾンビ化してんだろっ!?」
棺桶から出てにじり寄るゾンビ勇者たち。そして、アンコロのボケに突っ込みを入れるアアアア。
ーーーーアァアアアァァァァァ…………。
「お前の名前を呼んでますよ。そんなに殺されたのが憎いのでしょうか?」
「あれはただの唸り声(ゾンビ特有の)だろ!!」
またもや、アンコロのボケに突っ込みを入れるアアアアだった。
「あんたたち…………こんな事態でも漫才するなんて良い度胸しているじゃない。さぁ!勇者たちよ!!殺された怨みを晴らしなさい!!」
アンコロとアアアアの漫才に怒り顔のレイン。そして、ゾンビ勇者たちをアンコロとアアアアに焚き付けたのだった。
ーーーーアァァアアァァァァッ!!
二人に襲いかかるゾンビ勇者たち。
「く、くそっ!アンコロ!!どうするんだよ!?」
「はぁ…………仕方ありませんね。まぁ、適当な所で蘇生する予定でしたし。あと、どうせなら派手にやりますか。それとアアアア、これはツケですよ」
アンコロはトコトコとゾンビ勇者たちの目の前に立つ。
「せっかくなので、この街の連中ごと蘇生させてやりましょうか。すぅうぅぅぅぅ、はぁあぁぁぁぁ………………【エマージェンシー・コール】発動です!!数多の世界に散らばる僕よ!手を貸して下さいです!!」
「「とうっ!呼ばれて参上です!!」」
「「なぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
アンコロが『エマージェンシー』と叫ぶ。すると、空間に亀裂が入り割れて2体のアンコロが飛び出てきたのだ。
「指定エリアはこの街!この街でアンデッド化している人間を全て蘇生させるです!!」
「「了解ですよ!!」」
そして、合計3体のアンコロたちは陣形を組んで輝き出したのだった。
「「「【ゴッド・アンちゃんズ・サークルヒール】」」」
「「っ!?」」
その輝きはどんどん溢れ……教会を、街を包みこむ。それは夜の闇を搔き消すが如くの光であった。
「ぐわぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?ば、馬鹿なぁあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして、四天王レインの断末魔が響き渡ったのだった。
~~~~第3ステージ・魔獣の島~~~~
「「「「「アンコロ様!ありがとうございました!!」」」」」
「うむ、さらばです皆のもの!!」
海の男たちがアンコロ一行に向かって船の上から手を振っていた。
「あの港街の皆さん、僕の巨大銅像を建ててくれるらしいですよ。感謝の心を忘れない。中々に良い心がけです」
アンコロは自分の銅像が建つとご機嫌である。
それは街を救ってくれたアンコロへのお礼…………あの光でアンコロ(たち)は、勇者たちと港街の人間全てを蘇生させた。
ちなみに他の異世界から呼び寄せた2体のアンコロは用が済むとさっさと帰ったのだ………………そして、もう3人(?)。
「こちらです、アンコロ様」
「「道案内は僕らがするよぉ~」」
そう、元四天王のレインに妖精二匹だ。彼らはアンコロの従順な僕になっていた。
「アンコロ様には何とお礼を言って良いか。まさか、生き返れるとは思いませんでした」
元四天王レインは復活した。もちろん人間として生き返ったと言う意味で。レインは恩に着る人間だったようだ。しかも、生きている時は死霊術士だったとか。
さらに、アンコロの力を見てこちらに付くべきだと思ったのか妖精二匹も心よくアンコロの仲間になったのだ。
「よし!行くですよ、皆の者!!魔王城まであと少しです!!」
ぞろぞろと道を歩くアンコロ一行。
ちなみにここまでの人数はアンコロ、アアアア、勇者くん、聖女ちゃん、剣聖、賢者、大魔導師、レイン、妖精二匹の9人(?)だ、それなりの大所帯である。
城を出ての戦闘可能メンバーが揃っている………………四天王のクワトロル?まだ、森で凍っているだろう。
そして、アンコロたちは進んでいく。魔王の元へ。
「ここは僕たちに任せてくれ!」
「ええ!私たちだって戦えるわ!!」
ここは魔王城のすぐ側、かなり強めの魔物が出現する。しかし、そこは勇者様。何とか倒してレベルに変換して進んでいく。
そして…………ついに魔王城まで辿り着いたのだった。
「趣味の悪い門ですね、これ」
一同の目の前には魔王城の門…………髑髏と悪魔の集合体みたいな城門が鎮座されていた。
「門にはノックが必要。大魔導師!バズーカを用意するです!!」
「了解です!アンコロ様!!」
アンコロの指示にてバズーカを構える大魔導師。調子に乗り過ぎである。そんな時だ。
ーーーー止めよ!この不遜なる者共め!!
ーーーーここを何処と心得る!やがてはこの世界の支配者…………魔王様の居城であるぞ!!
空から大きな声が聞こえ、何かが降ってきたのだった。
「我が名は魔王様直属の四天王『炎雷のゴズルガ』」
「同じく、我が名は『風殺のヒンバイト』」
それは魔王城の門を守護する最後の四天王。火と雷を纏う牛面筋肉な太身の男と竜巻を纏う馬面筋肉な長身の男の二人組だった。
「「勇者たちよ!ここが貴様らの墓場だ!!」」
…………などと門の前で仁王立ちポーズと台詞を決める牛と馬人間たちだった。
「…………………………あいつら無視して撃ちなさい」
「了解です!アンコロ様!発射!!」
「「なぁあああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」
アンコロは四天王二人を完全無視し、大魔導師にバズーカ発射を指示したのだった。
ーーーーチュドーーーーン!!
バズーカからミサイルが発射され、門が破壊されたのだった。
「もう一発…………今度は魔王城に撃ち込んでやるです」
「了解です!アンコロ様!発射!!」
さらに、調子に乗ってアンコロは魔王城にまでバズーカを撃ち込んだ。
ーーーーチュドーーーーーーンッ!!
二発目のミサイルは魔王城の中腹辺りの場所に飛んでいき爆発を起こした。
「ちっ、下手くそですね。玉座の間がありそうな辺りから外れましたよ」
アンコロは魔王が居そうな城の頂上部辺りにミサイルが当たらなかった事に舌打ちをした。
「「き、貴様らぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」
それは火に油どころではない…………ガソリンスタンドにダイナマイトを投げるレベルで敵を怒らせたアンコロであった。
「「ぶち殺ぉおぉぉぉぉぉぉぉす!!合体っ!!」」
さらに牛面のゴズルガと馬面のヒンバイトが合体した。
身体は別々だった時の数倍に巨大化され、手は4つに頭は2つの牛馬な異形阿修羅のような姿であった。
「ブルルルルッ!!どうだ、畏れ入ったか!!お前は絶対殺す!!」
「おお!荒々しいですね。しかし、名前はどうなるのでしょう?『牛馬鹿』とでも呼びますかね」
合体した四天王の二人…………『牛馬鹿』とあんまりな名前を付けられた。アンコロは完全に舐めていた。
「おい、牛馬鹿!ほらほら、さっさとかかってくるです、牛馬鹿!!この臆病者め、牛馬鹿!!この馬鹿牛馬鹿!!」
「グギャアアアアアアアアアアアッ!!この野郎がぁああぁぁぁぁぁぁっ!!」
ーーーードドドドドドドドッ!!
その上で『牛馬鹿』を連呼するアンコロ。キレた牛馬鹿はアンコロに向かって突進するのだった。
………………そんな時であった。
ーーーーキラン!!
空の彼方から何かがやって来る。
ーーーーギャギャギャッ!!アンコロよ!来てやったぜ!!
「おお!我が友、クワトロルよ!!感謝するです!!」
それは惑わしの森で凍りついているはずの四天王のクワトロルであった。
どうやら、クワトロルもアンコロ側に付いていたようだ。一体、何があったのだろうか?
「あ、あいつ…………何で…………」
「ああ、これはクワトロルには内緒ですけど凍っている間に少し改造したのですよ。僕たちの味方になる方向にね。あの青い玉みたいな感じで」
それはまたもや某ネコロボットの劇場版(旧)のネタであった。
「ギャギャギャ!アンコロによって更なるパワーアップを果たした俺の力を見せてやるぜ!!もう、四天王最弱とか言わせねぇぜ!!ジェットダッシュ!音波振動ブレード!!」
「グラァアアァァァッ!?な、何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」
クワトロルの背中甲殻(翅が収納されている部位)が開かれてジェット噴射で超ダッシュをする。
さらに大顎が超振動されてあらゆる物を切り裂く刃となり、両腕からはミサイルとレーザーが飛び出す…………そう、クワトロルはアンコロの手によってサイボーグ化されていたのだ。
「アンコロよ!こいつは俺がやる!!先に…………魔王の元に行けぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!」
そして、熱っ血な事に『ここは任せて先に行け』的な台詞が飛び出した。カッコいいぞ、クワトロル!!
「おお!ありがとうですよ!クワトロル!!おい!牛馬鹿!!お前ごときがこの新クワトロルに勝てる訳がありません。早く土下座でもして許しを乞うのですね!!では、さらばです!!」
「ブルルッ!ま、待ちやがれ!!この野郎!!」
「嫌でぇええぇぇぇす!馬ぁぁぁ鹿っ!!」
アンコロは相手を煽ることも忘れてはいない。牛馬鹿を馬鹿にしまくって先へと進んで行くのだった。
~~~~ラストステージ・魔王の間~~~~
ーーーードカッ!バキッ!ガガガッ!!
アンコロたちは魔王城内を進む。わき出て来るエリート兵的な魔物を蹴散らして。
「よし!お前らは先に行きなさい!!僕は宝物庫に行きます!!」
「「「「「「「おい!!」」」」」」」
アンコロの強盗のような台詞に全員から突っ込みが入った。
「こんな時に強盗みたいな事、してる暇なんてないだろ!!」
「そうです!!」
「そうだ、そうだ!!」
全員からの大ブーイング。それに対してアンコロは………………。
「全く、お前らは無知ですね…………魔王なんですよ!きっと魔王の心臓的な物か、止めを刺すのに絶対に必要な武器とかあるかも知れないではないですか!!それを探して来ると言っているのですよ!!」
「「「「「「「はっ!?」」」」」」」
ここで飛び出たゲーム脳。確かに相手は『魔王』、それくらいの可能性はあった。
「お前らは魔王の所に行ってよいですよ?魔王を押さえる役目も必要ですからね。僕も財宝を手に入れたら追いますから」
「なるほど…………わかった。僕たちは先に行く。魔王の心臓(仮)を探して来てくれ」
「もちろんです。ああ、アアアアも連れていくと良いです。良い盾になるでしょう」
「「「「「ありがとう」」」」」
「ありがとうじゃねぇよ!?」
どうやらアアアアが盾になるのは確定らしい。
「それとアアアア………………くれぐれも一発ギャグは慎むですよ。一撃で全滅してしまいますからね」
「そうだ、そうだ」
「あんな超下らないギャグで死にたくないわ」
「二度としないでね」
「死ぬかと思ったよ~」
「死んだんだよ~、僕たちは~」
アアアアの一発ギャグを思い出して、仲間たちが冷たい目と台詞をアアアアにぶつける。
「ぐ、ぐぅうぅぅぅぅ…………そんなに面白くなかったかな」
どうやら、一発ギャグを言った本人は面白いと思っていたらしい。内心はショックを受けていた。
それはともかく………………アンコロは一人で財宝(ついでに魔王の弱点)を探しに魔王城の探索を始めるのだった。
「行くぞ、みんな!!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
勇者くんはリーダーシップを発揮して皆を率いて魔王の元に前進する勇者たち。
ーーーーバタン!!
魔王城の頂上部、魔王の間の扉を蹴破る勇者くん。
「魔王!覚悟しろ!!」
ーーーーくくくっ!勇者よ!よくぞ、ここまで来た!!
魔王の間…………玉座に座る魔王が勇者を歓迎する。
魔王は頭に悪魔角を生やしたダンディーな偉丈夫だ。しかし、顔はイケメンだが目が冷たい感じだ。
「しかし、その力…………ただ消し去るには惜しいな。どうだ?私の部下にならないか?世界の十分の一をくれてやろう」
それは一度は聞いてみたいお約束な台詞。しかし、たった世界の十分の一…………魔王は意外とせこかった。
「断る!!」
「「「光くん、ステキ!!」」」
魔王の提案に勇者くんは即断した。欲に流されない…………実に男前だった。女性陣(いつの間にかレインも入っている)もメロメロだ。
「………………サキュバスの美女も付けてやろう」
「………………………………………………断る!!」
…………少し空いた間は何であったのか。それでも勇者くんは拒絶した。
「ちっ………………ならば死ねい!!」
そうして始まる勇者たちと魔王の最終バトル。
~~~~
ちなみにその頃…………アンコロはと言うと。
「うひゃひゃひゃ!見つけましたよ、金銀財宝に魔法アイテムも!!」
魔王城の宝物庫で金銀財宝を見つけていた。そして、それらを不思議な鞄に詰め込んで回収していく。
「しかし、魔王の弱点っぽい物はなかったですね。あてが外れましたか?」
アンコロが宝物庫内を探したが魔王の弱点はなかったようだ。そもそも、本当にあるかもどうかも確定されてはいない物であるが………………。
「それでも…………僕は信じる。いや、信じたい!!皆が僕を待っているのですから!!次は厨房あたりで食料を手に入れるです!!」
…………などと希望を僅かな胸に魔王の弱点探しを再開する。今度は厨房の食料に狙いを定めているようだ。やられると地味に痛い嫌がらせだ。
そんな訳で、トコトコと食料略奪に向かうアンコロだった。
~~~~
そして、一方で魔王の間では………………。
「ぐぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「弱い!弱いぞ、勇者!!その程度の力でよくここまで辿り着けたものだな!!」
勇者くんたちは劣勢であった。
そもそも魔王の所…………ここに至るまで、ほぼアンコロ頼みだった為にレベルが伴っていないのだ。低レベルで挑むには自殺行為だった。
「まだよ!死霊よ!!」
「ふん!レイン…………この裏切り者めが!!」
元四天王…………死霊術士レインも死霊術を使って戦うが人間として復活した際に魔力を大分落としていた。
青い火の玉…………人魂が魔王に飛んでいく。
「ふん、弱いな。元四天王の癖に情けない」
「きゃあぁぁあああぁぁぁぁぁぁっ!?」
人魂が魔王の放った黒い炎に消し飛ばされる。黒い炎は威力を落とすことなくレインに………………。
「させるか~!」
「バリア~~~!!」
「え?や、やめろよ、おい!?ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
炎がレインに当たる事はなかった。妖精たちが咄嗟の判断で念動力を使い、アアアアをレインの前に押し出したのだ。
「な、何ぃ!?無傷だと!!」
アアアアの鎧の効果は健在だった。魔王の攻撃を受けてもノーダメージだった。それには魔王も驚いたようだ。しかし…………。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!や、やめてくれ~~~っ!!」
鎧の効果でダメージが笑いへと変換される効果も健在であった。魔王を前に笑い転げるアアアア。
「貴様、我を愚弄しているのか?良かろう!ならば、死ぬまで攻撃してくれる!!」
「ち、違うって…………ぎゃははははははははははははっ!!」
おちょくられていると勘違いした魔王がアアアアに魔法攻撃を何度も仕掛ける。そして、ダメージが笑いに変換、変換、変換される。
「ぶっぎゃはははははははははははははっ!?ひぎゃ、し、死ぬ、死んじまうって!だひゃばばばばっ!!く、くそっ!!こうなったら……………………」
「!?み、皆!耳を塞げっ!!目も瞑るんだ!!あれが来るぞっ!!」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
笑いに耐えられずにアアアアは再び一発ギャグをやろうとする。
それを予想した勇者くんが全員に『見るな聞くな』の指示をだす。
「これで汚名挽回してやる…………くらえ!!
『クワトロル』!!」
………………再び、極寒の風が吹いた。
そして、言葉が間違っているのもお約束である。正しくは『名誉挽回』か『汚名返上』である。
アアアアのリベンジ一発ギャグは説明をすると剣と鞘を頭の両隣に交差させるように見せるだけ…………普通にクワガタで良いだろう。
「ぐ、ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
それはともかく…………アアアアの極寒一発ギャグを受けて魔王は凍りついた。
「ふぅ…………や、やったか?」
アアアアよ、それは死亡フラグである。それを言った場合は大抵………………。
ーーーーバキンッ!!
「ぐぉおおおぉぉぉぉぉぉっ!!ま、まだだ!まだ、死なんぞぉおぉぉぉぉぉぉっ!!」
流石は魔王、自ら凍り漬けから帰還した。魔王がこんな技で死んだら、それこそお笑いである。
「あ、危なかった。貴様、道化かと思ったが恐ろしい人間だな。だが…………見切ったぞ!!貴様はダメージを魔力に変換していたのだな!笑って道化を演じていたのも我に攻撃させて魔力を貯める為であったのか!!一杯喰わされたぞ!!」
「ええっ!?」
魔王様、またもや勘違い。彼は人として小さい人間です。そして、基本的に馬鹿です。お笑い芸人(正式では無いが)なんです。
そんな魔王様も一周回って馬鹿なのだろうか?
「しかし、種が判ればそれまでよ。ダメージを与えずに殺す…………そんな魔法を使えばよい。毒か麻痺か眠りか呪いか?」
「ひ、ひぃいいいぃぃぃぃぃぃっ!?」
どうやら魔王は馬鹿ではなかったらしい。数秒でアアアアの弱点に気が付いたようだ。
そして、今度こそはとアアアアに詰め寄る。
「「「「「アアアア!!」」」」」
勇者くんたちがアアアアを助けようと魔王に向かって行く。しかし………………。
「邪魔をするな!!」
「「「「「「ぐわぁああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」
魔王の攻撃によって弾き飛ばされる勇者くんたち。もはや、アアアアは死んだも同然…………そんな時であった。
ーーーービィイイィィィィィッ!!
「っ!?」
一筋の光線が魔王の間を走り抜けた。その一線は魔王に向かって行く。
間一髪で光線を躱した魔王。そして、その攻撃を行った者の姿を捉える。
「おやおや、躱されましたか。どうやら、逃げ足だけは速いようですね」
「………………何者だ」
「あ、アンコロォオオォォォォォッ!!」
そう…………その攻撃を行った者。それこそ我らがヒーロー、カモノハシのぬいぐるみ…………その名もアンコロである。
「魔王…………お前は僕を裏切った!!」
「……………………何の事だ?裏切るも何も初対面であろう?」
アンコロの第一声に困惑する魔王。
「僕は探したのです。宝物庫、厨房、トイレの中までも…………お前の心臓的な物があるかと思って」
「「「「「いや、トイレは無いだろ」」」」」
自分の心臓をトイレに隠す馬鹿はいない、意外性はあるだろうがなにより汚いだろう。
「誰がそんな所に弱点など置いておくか!!謎の生物よ!貴様も、また道化か…………死ねぃ!!」
侮辱されたとアンコロへ魔法攻撃をする魔王様。ちなみに魔王にもアンコロの認識変換は効いていない。
「僕をアアアアのようなお笑い芸人と一緒にするなど万死に値いします」
「俺はお笑い芸人じゃねぇよ!!」
「貴様は僕との実力の差も図れないないようですね………………【反射】!!」
「何ぃっ!?」
魔法攻撃にはアンコロの【反射】スキルだ。魔王の放った魔法はあっさりと魔王の元に戻っていく。
「次は僕の番ですね。弱点が無いなら正攻法でボコりますか。弱点を探していたのはただの遊び…………勇者くんたちに華を持たせる為だったのですよ。僕が戦うならそんなものは必要ありません」
アンコロが拳をポキポキと鳴らし、柔軟体操をしながら構えを取る。そして………………。
「あたたたたたたたたっ!!」
「っ!?」
カンフーのような掛け声と共にアンコロが宙を駆ける。まるで瞬間移動をしたかのような速度で魔王に肉薄し、拳の雨を降らせたのだった。
「ぐっ!な、何と言う…………速さだ!!」
かろうじて、アンコロに着いていく魔王。アンコロの拳を致命傷をギリギリで躱す。
「フェイントです」
「ぐぁああぁぁぁっ!?」
アンコロの拳にはフェイントが混ぜられていたようだ。魔王はフェイントに引っ掛かり僅かな隙を作る。魔王の脇に出来た小さな隙にアンコロの蹴りが入ったのだった。
「がはっ!!」
アンコロの一撃により膝を付く魔王。
「ほれほれ…………お前の力はその程度ですか?僕はまだまだ本気のほの字も出していないのですよ?」
「くっくっくっ…………はっはっはっはっ!!」
「おや?頭は殴っていない筈ですが…………壊れてしまいましたかね?」
床に倒れた魔王は突然に笑い出した。そんな魔王にアンコロは壊れてしまった発言をする。
「本気を出していないのは…………我も同じだ!しかし、我は嬉しいぞ!!久方ぶりに真の姿を出せるのだからな!!」
「し、真の姿ですって!?」
どうやら、魔王の頭は無事であったようだ。そして、魔王は変身するようだ。
それを聞いて驚ろくアンコロ…………ただし、アンコロが驚いたのは恐怖とかではなく。『ついにお約束が来たぜ』的な驚きである。
「見せてやろう。我の本気を………………はぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『はぁああぁぁぁぁっ!!』等と芳ばしい発声と共に闇を纏う魔王。
身体は筋肉がムキムキに膨れ上がり、毛もゴワゴワになる。背中からは蝙蝠の羽が生え、頭には角、美形だった顔は獣へと変わっていく…………その姿は所謂『悪魔』のようであった。
ーーーーさぁ!行くぞ!!容易く死んでくれるなよ!!
「はん!返り討ちにしてやりますよ!!さぁ!ラストバトルです!!」
ーーーーカァアアアァァァァァァッ!!
ついに始まったアンコロと魔王とのラストバトル。
その戦いは魔王が先手を取った。魔王の口から闇の息吹きが放なたれる。
「ふん、ワンパターンな。また魔法攻撃ですか?反し…………むぅ!?」
【反射】を発動させようとしたアンコロ。しかし、発動させる前にあることに気が付き、反射を止めて息吹きを躱したのだった。
「これは…………魔法では無いですね。これは物理…………正確には『病原菌』ですか」
アンコロの【反射】は魔法防御術。生物の攻撃には効果は無い。そのことに気が付きアンコロは避けたのだ。
「この身体は生き物ではありませんから、病気などにはなりませんが…………お前の汚い息など浴びたくありません」
………………少し違った。ただ単に汚いから避けただけのようだ。
「メイン技はウイルスですか…………お前はなんか汚い。それにウイルス散布などもされたくないのでさっさと倒してしまいますか…………行くですよ!魔王!!これが僕の全力です!!」
アンコロが再び宙を駆ける…………先程よりもはるかに速く。そして、持っている機能やスキルを多用して。
「【タイムリー・ブリザード】!【神速】!【未来予知】!【柔軟】!【重量百倍(攻撃時限定)】!【部分巨大化】!アンちゃんパンチ!!アンちゃんキック!!アンちゃんビーム!!」
「ば、ばか…………な………………」
魔王は本気を出したアンコロの敵ではなかった。
アンコロは時を止め、何百体にも分身する動きをし、未来を読み、時折に柔軟体操をし、重量を変えて、腕を巨大化させてぶん殴る。蹴り飛ばす。ビームで焼く。
コンボ攻撃を繋いで、魔王の体力を一瞬の内にガリガリと削っていく。
そして、ついに………………魔王は変身を維持出来なくなり、人の姿へと戻っていく。
「まさか、これ程とは…………我の負けだ」
魔王はどさりと音を立てて床に倒れ伏したのだった。
「殺せ」
「お断りします」
「………………殺せ!!」
「嫌です」
「殺せと言っているだろうが!!」
「や・で・す!!」
そして、魔王は自分を殺せと言うが、アンコロはそれを頑なに拒否した………………それは何故?
「僕は何より殺人をしないのを信条としています。たまに自殺まで追い込みますが、基本的(強制的)に生き返します。僕にとって人間は大切な家ち…………いえ、玩具です」
「今、『家畜』って言い掛けなかったか!?しかも、言い直して玩具かよ!?」
アアアアがアンコロに突っ込みを入れる。いつの間にか、アアアアや勇者くん、その他のメンバーも集まっていた。
「我は人間ではない『魔王』…………そして、『悪魔』だ。貴様は我を倒す為にここに来たのでは無いのか?世界の平和は?」
「いえいえ…………僕がここに来たのはただの遊びです。冒険RPG的な話を体感したかっただけです。
世界の平和?そんなものはそもそもありませんよ。基本的にある程度の知能を持った生物は戦う運命にある生き物なんですよ。
人は異物を拒絶します。その結果、今は魔王や魔族、魔物が差別の標的になるのであって、放って置いても人間同士…………肌の色とかを言い訳にして戦争をはじめるのですよ。
よって、真の意味で平和になる事など永遠に来ないと言えます。
最後に魔王?人間?関係ありませんね。繰り返しになりますが、どいつもこいつも僕の玩具です」
アンコロは非情に現実主義者だった。
そして、最低だった。自分以外は全てが玩具と言い切ったのであった。
「お前………………最低だな」
アアアアの言った台詞に全員が頷いた。
「ふん、最低?最低で結構です。笑顔で嘘を吐き、偽善者顔をして甘い汁だけを吸おうとする虫よりも、きっとマシですよ。そう…………お前と違ってね、女神よ」
そう言って、アンコロはとある人物を見るのだった。
~~~~アルティメットバトル・女神~~~~
「……………………え?私?」
アンコロが見た人物…………それは聖女『朱利』であった。
「もう一度言います。お前がこの世界の『女神』ですね。召還の時に本物とすり変わったのでしょう。その時に生じた歪みがアアアアを異次元の狭間に落としたのでしょう」
「……………………………………へぇ」
「すり変わった動機は、ただの遊びでしょう?僕とお前はある意味で同類です『神』に近い力を持った………………ね」
「………………………………………………」
アンコロが睨むと無言になった聖女朱利。そして……………………。
「ふ、ふふふふふふふふふっ!!ねぇ…………アンコロちゃん。いつ気がついたの?私が本物じゃないって」
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
朱利の肯定に衝撃が走った。
「あの港街ですね。僕(たち)がお前らを復活させた際に違和感を感じました。そう、僕の力がただ一人に及んでいないようなね。この中に女神がいると気が付いたなら後は簡単。僕の観察力でお前であると特定したのです」
「なるほどねぇ~。それで?私が女神だとして…………それでどうするの?」
朱利…………いや、女神はケラケラと笑いながら聞いた『それが何か』と軽い感じで。
「それはお前次第ですかね。一つ聞きますが、正体を知った僕たち…………正確にはこいつら召還者たちを帰してくれるんですか?」
「………………………………やだ。帰さない。せっかく見つけた玩具だもん。この世界の人間や他種族、魔物と戦わせて、もっと遊ぶんだ!!」
女神は告げる『帰さない』と。そして、お前らは玩具であると…………アンコロと同じであった。
しかし、女神は大分狂気が…………いや、それはアンコロもか。『神』の力を持つ者にまともな者はいないのだろうか。
そして、女神は敵意を顕にするのだった。いつ戦いが始まってもおかしくない。しかし………………。
「馬鹿め………………お前はすでに終わっているのですよ」
「………………………………え?な、何っ!?ち、力が出ない!!何で!?」
戦おうとした女神が自分の力がまるで出ないことに慌てるのだった。
「お前と僕は近い存在ではありますが、一つだけお前にない強みがあります。それは僕たちは数多の異世界に存在していると言う事です。僕はこの世界の外の力を会得しており、この世界の隣り合う世界にいる僕たちが干渉してお前の力を封じたのですよ」
「なっ!?そ、そんな馬鹿な事…………出来る訳が…………」
「出来たから、こうしてお前の力を封じているのです。どうです?お前…………僕と戦いますか?その封じられた力で」
「ぐ、ぐぅうぅぅぅぅぅっ!!く、悔しいぃいいぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
こうして、女神との戦いは始まりもせずに終わった。アンコロの作戦(?)によって。
そして、アンコロの遊びが終わり…………この世界から帰る時がきた。
アンコロたちは知り合った連中(レイン、妖精たち、魔王、クワトロル)に挨拶をしていた。
ちなみに女神の今後であるが、もとの世界に連れていく事になった。
「そういえば、アアアアよ」
「何だよ、アンコロ。」
「この世界で…………今までの戦いで生じたptは全てお前の借金となります。その鎧に蘇生、さらには世界干渉による神の力の封印…………借金はとんでもない事になっていますよ」
「………………………………は?」
突如、落とされた爆弾発言。アンコロの一言に固まるアアアアであった。
「僕へのpt借金。それを放置すれば、どんな災難が身にかかるか…………具体的には他の異世界にお助けキャラとして強制出張となりますね」
「おいっ!何だよ、それは!?」
「しかし、僕も鬼ではありません。よってお前にチャンスを与えてやるのです」
「ちゃ、チャンス?」
「うむ。実は僕の本体が主催している大会があるのですよ。その名も…………『ポイント・ウォーズ』!!数多の契約者たちが参加するptを大幅ゲットの大チャンスです」
それはアンコロ(本体)主催の催しの挑戦権であった。何でも、アンコロと契約をしている者たちがランダム(特例はある)に集められてptをかけて争うのだとか。さらに、アンコロからの特別贈呈もあるのだと。
………………今回は特別に次回予告をさせて頂きます。
次回『第1回ポイント・ウォーズ』!!時空も時間も越えて数多の契約者(未登場のキャラもでるよ)たちがptを奪い合うバトル・ロワイアル!お楽しみに!!
「そんな馬鹿なぁあぁぁぁぁぁぁっ!!」
異世界の空にアアアアの叫び声が響くのだった。
~~~~クラス召還者・明跡嗚呼・完~~~~
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ガーデン【加筆修正版】
いとくめ
ファンタジー
幼い頃母を亡くした杏には、庭での不思議な記憶がある。
鳥や虫、植物たちの言葉を理解し自在に操ることができた母。
あれは夢だったのだと思っていた杏だが、自分にもその能力があることに気づいてしまう。
再び生き物たちのささやく声が聞こえてきたとき、悪しきものたちと彼女の戦いが始まった。
この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには一切関係ありません。
※旧作を加筆修正しながら投稿していく予定です。
赤獣の女王
しろくじちゅう
ファンタジー
その女王とは、天国、あるいは地獄を数字によって治める、赤獣の母である。
地上に天国を創造する事で、あらゆる霊をそこに住まわせようと試みる教会があった。それこそが、赤獣(せきじゅう)の女王である。水の身体を持った悪霊、水精霊を退治するために、太陽の輝きを宿した剣を振るう騎士の集団である。そんな時代錯誤な教会に所属する騎士の青年、ノノバラは、長らく守護霊に取り憑かれていた。幼い自らの育ての母となってくれたが、ある日突然不可解な死を遂げた少女、カノンの守護霊である。誰しもが現実ばかりを見据えて生きるようになった現代、ノノバラは、亡きカノンに天国で生き続けてもらうべく、これまで空想と思われていた天国を実現させようと奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる