駄女神に拉致られて異世界転生!!どうしてこうなった……

猫缶@睦月

文字の大きさ
196 / 349
5.南海の秘宝

63.後始末……豪遊したのは誰ですか?

しおりを挟む
「「クロエ!」」

「クロエちゃん、意識が戻ったのね。良かったわ……」

 イリスさんとユイに左右から抱き着かれ、目を白黒させている僕に向かって、アレクシアさんがほっとした表情をしています。
 周囲を見回すと、ここは艦中央の機密区画ですのようですね。そうであれば、僕はよほど危険な状態にあったのでしょう。ここは、非常用脱出エクソダス区画で、この艦が沈む場合に全員をアレキサンドリアへの帰還を行う部屋なんですよね。
 当然一方通行なんて、アレクシアさん達には許可してもらえず、アレキサンドリア側からこちらに来られるメンバーは限定させてもらう事を条件に、で装備されたのでした。

 周囲を見渡すと、リリーさんだけではなく、エリックさんやオスカー副長の他に7人の美人さんもいらっしゃいます。これは相当な迷惑をかけた可能性がありますね。おっと、身体にかかっているシーツをとる前に、ちゃんと服を着ていることを確認します。大丈夫のようですね、ちゃんと薄い物ではありますが、着ています。

「どうやら、みなさんにご迷惑をかけてしまったようですね。申し訳ありませんでした。そして、治療に協力していただいたようでありがとうございます」

 多少ふらつきながらもベッドから降りた僕は、集まってくださった皆さんに一礼します。こちらの美人さん方はどなたなのかをユイにたずねると、レギニータと同じ人魚族の皆さんで、治療のために『蒼海の宝珠』を貸していただいたとのことでした。あらためてお礼を言うと、中でも年長に見える美人さんが、手を振りながら僕の謝意を受け取りました。

「なに、これは取引なんだから気にすることはないよ。まずはあたしらも報酬の一つは受け取った。残り一つは、気長にやってもらえればいいよ」

 そういうと、人魚族の皆さんをつれて、ユイの案内で艦を下りていきました。まあ、部屋を立ち去る前に、オスカーさんとエリックさんに何か声をかけて、二人が全力で拒否していたのは見えましたが、僕は忘れてあげる事にします。なにせ、オスカーさんを見るリリーさんとイリスさんの視線が、絶対零度まで下がっていましたからね……

 アレクシアさん達も、夜更かしはお肌に悪いからと、早々に帰って行ってしまいました。オスカーさんは、かなり寂しそうですが、仕方ありませんね。結局リリーさんとは会話の一つもできなかったようですし。

 静かになった非常用脱出エクソダス区画から、一般区画に戻る最中に、イリスさんに言われて、艦とのダメージ共有を解除します。

被害体感システム解除Damage sense system release

『了解しました。クロエとの被害連携を解除します』

 艦内放送のスピーカーから、声が聞こえてきます。

「ねぇ、この声っていうか、貴女に応答してるものいったいなんなの?」

 イリスさんも疑問に思っているようですね。ユイもそういえばと、こちらをじっと見つめます。オスカーさん? 後ろをついてきていますが、何かぶつぶついってますよ。忘れてあげた方が良いでしょう。

「ん~、なんていえばいいんでしょうか」

 ちょっと考えてしまいます。実のところ、何がどうなっているかはよくわかっていないんですよね。

「多分、この艦自体の意識体というか、そういったものだと思うよ。この艦はある意味魔力の塊だから、それを糧に宿った精霊みたいなものかなぁ」

「ちょっと、それって人型をとって艦内を徘徊はいかいしたりしていないでしょうね?」

「イリスさん、それってもしかして艦内で噂になっている……」

 ん? なにか問題があったのでしょうか?

「……いいわ。あれじゃないなら怖がる必要は、ありませんわ」

「そうですか? 知らない物のおなかの中にいるような気がしません?」

 あ~、この艦自体が精霊みたいなものとすれば、艦内はそのおなかの中ともいえるかもしれません。

「気にしなくて大丈夫ですよ。彼女は僕達の味方です。意識体としては、まだ生まれたばかりで幼いですが、僕とつながっていた分、良識とかそういったものは育っていますから」

 イリスさんに張られた右頬をさすりながら、僕がそういうと二人はがく然としています。

「クロエと同じ良識とか、安心できるわけないじゃない!!」

「あ~、クロエ艦長が倒れた後で、魔導砲を操作して海賊船を攻撃したのは……」

『……本艦の行動履歴にはそのような事実はありません……』

 ん? 艦内放送の声を聴いてイリスさんとユイが固まっていますよ。とりあえず、状況を確認したいところですが、オスカー副長も含めて三人は眠ってもらった方が良いですね。深夜をだいぶ過ぎましたし……

「あぁ、そういえば忘れるとこでしたわ」

 そう言って僕を見るイリスさんの表情は、心なしか楽しそうに見えます。

「そういえばそうでしたね。クロエ艦長? お休みの間の艦長決裁の書類は、全て艦長の私室に置いてありますので、朝までに処理をお願いしますね」

「あと、アレクシア様と母様かあさまからも、報告書?てん末書?を提出するようにって言ってたわよ? エリックさんに製造をお願いした、『蒼海の宝珠』を守るための魔道具なんかの材料費は、貴女の資産から出しておいたからって言ってたわよ?」

 ……呆然ぼうぜんとした僕を通路に残し、オスカーさんを含めた三人はそれぞれの私室へと帰っていきました。その後、艦長室に入った僕の目に入ったのは、高く積み上げられた書類の山でした。幸いな事に、一つだけでしたが……

「うぅ、なにこれ。星降りの館宿泊費? テネリB&B宿泊費と飲食代? 二泊分とかはまぁ良いとして、バーのエール代とかワイン代なんて却下に決まってるでしょ。誰ですか、娼館の費用まで出すわけないでしょ! 馬鹿ですか!! 却下、却下に決まっています。
 イリスさん達が決めた宿とは別に、個人で部屋を借りた費用まで混じってるじゃありませんか。これでは適当にサインするわけにはいきませんよ。むう、これ朝までに処理するのか……エマ? ジェシー? 手伝ってくれない?」

 ……返事がありませんね。しかばねではないでしょうから、意図的に無視されてしまっているようです。たっぷり眠ったせいか、全く眠くありませんし、シャワーを浴びた後で、あきらめてお仕事をするとしましょう。

 シャワーを浴びているときに、右足の痛みが少しあったので見てみると、何かにつかまれたような指?のような跡がうっすらと付いていました。目が覚める前の事は、なぜかきれいに覚えていないので、ちょっと悩みましたが、気にしても仕方ないと放置します。
 そしてその跡は、翌朝着替える時に再度確認してみると、何も残っていなかったので気にしない事にしたのでした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...