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5.南海の秘宝
51.敵は海賊Ⅱ
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「マイク、総員起こし15分前」
艦橋の中で、オスカー副長の声が響きます。その声にうなづいてユイが復唱後、艦内放送を流します。
『総員起こし15分前』
今頃各部屋では起床してトイレやシャワーを浴びている頃でしょう。『総員起こし』後は、簡単な個人のベッドの清掃後に、点呼・体操・艦内清掃と続きます。途中でトイレに行ったりすることはできないので、慌ただしい事になりますね。
「マイク、総員起こし5分前」
『総員起こし5分前』
5分前の艦内放送で、再びベッドに入って待機状態となります。『総員起こし』の放送後に着替えなどを行い、短時間で行うことを続ける事によって、緊急時の反応が早くなるんです。
「マイク、総員起こし」
『総員起こし』
この放送をもって、ようやく着替えや点呼などが始まります。点呼後、状況が各班長に連絡され、オスカー副長に連絡がはいります。5分後には全ての班長から、総員異常なしとの報告が入りました。
「クロエ艦長、全艦異常有りません」
僕はうなづくとオスカー副長に連絡します。索敵魔法では、既に10海里(18.52km内に10隻の船が風上である西側より接近中であることが分かっています。時隔(接敵までの時間)は75分ですね。
「副長、全艦に哨戒配備第1を発令」
クイーンアレキサンドリアの哨戒配備第1は、戦闘などの事態が差し迫っていることを示しています。
オスカー副長も予測はしていたのでしょうね。表情を変えずに、うなづいてくれます。
「全艦、哨戒配備第1に移行」
『全艦、哨戒配備第1』
「航空指令、攻撃機の発艦準備」
「了解しました。1、2番機発艦準備」
ワイアットが部下に指示をしているのを横目に、オスカー副長が僕にささやきます。
「やはり来ますか……」
うなづきながら僕は言いにくいことを言い出さなければありません。
「副長、班長以上の士官をブリーフィングルームへ集合させてください」
副長は複雑な顔をしながらも、うなづいてくれました。
*****
「……と言う訳です。現在、レギニータは懲罰房で反省してもらっています」
昨夜の出来事を連絡します。衛生班長であるイリスさんも、顔色は良くないですが、まっすぐこちらを見ています。
「間もなく、航空隊からの報告もあるでしょうが、40門級の武装商船が10隻、風上から接近中です。接敵まで約1時間。お判りでしょうが、こちらから戦端を開くことはできません。
よって、対応を皆さんに相談したいと思います」
「ようは、このまま包囲されるのを待って、相手の先制攻撃をまって応戦するか、そく逃げ出すか、という事ですかな?」
オスカー副長の言葉に僕はうなづきます。戦闘が控えている以上、現段階で衛生班長・副班長を配置から欠く事はできませんので、責任を問う声は上がりません。
「ちっ、あくまでも専守防衛ってところがめんどくさいな。どうせ攻撃してくるんだから、航空隊で先制攻撃を仕掛ければ簡単なのにな」
機関長であるリアンの発言に、航空指令でもあるワイアットもうなづきます。紅家出身の砲雷長からも交戦に対して賛意が示されます。
「正直申し上げて、このままでは航空隊だけが実戦経験を積むだけです。練度の観点だけで申し上げれば、当艦の兵装も使用したいところです」
「損害を考慮しないのであればそれが良いでしょうが、本艦の修理はアレキサンドリア本国でないとできない点も考慮する必要があります」
まぁ、敵の砲がこちらの防御膜を抜くことは無いでしょうけどと、つぶやきながらもユイが反対意見を述べます。戦闘に傾きやすい若い士官を、中立に抑える役目を自覚してくれていますね。
「……衛生科としては、艦外での戦闘行為を行う飛空艇隊や動力艦の作戦参加には、細心の注意を払っていただきたいですわ。
衛生班員が搭乗するわけにはいきませんし、飛空艇・搭乗員の損耗は、今後の活動に大きく影響します。特に航空指令には、飛空艇隊を抑える事をお願いしますわ」
一通りの意見がでると、オスカー副長が僕をみます。副長の意見を僕がうながすと、彼は黒い笑顔を向けて言いました。
「結果的にはレギニータ嬢の思惑に乗ることになりますが、降りかかった火の粉は払わねばならぬでしょう。
それに、本艦を試験航海に出した軍や委員会の意向は示威であり、逃げるのではそれらの意向に反することになります」
はい、結論頂きました。
「では、敢えて敵が包囲するのに任せて、その後包囲を突破、敵を殲滅するという事でよいでしょうか?」
士官の皆さんがうなづくのを確認した後、僕は一言追加して命令を発します。
「航空隊が敵を発見後、直ちに戦闘配備に移ります。敵は40門級の砲艦が中心ですが、魔法攻撃がある可能性を常に考慮してください。特に飛空艇隊は墜落の危険がありますので、安全高度を維持。では、解散」
「「「「「Yes MA'AM!」」」」」
さぁ、海賊退治の第2ラウンドの開始です。
*****
『敵40門級砲艦、西側より接近を確認。全て2本マストで、その数10。フリッグが4、ブリガンティン6』
『海賊旗は確認できるか?』
『現時点で海賊旗の掲揚は確認できません』
こちらの戦力は知られていないでしょうけど、探知通り10隻のようですね。
「どう出ると思います?」
僕は傍らのオスカー副長にたずねてみます。
「そうですな。恐らく2隻で水道の前後を閉鎖し、降伏を迫るでしょう。残り8隻は風上で待機でしょうな。風上のアドバンテージを失いたくないでしょう」
「副長ならどう戦います?」
再度の僕の問いに、副長は肩をすくめて答えました。
「1対10の戦いなど、そもそも成立させないように動きますね。普通なら、圧倒的不利でしょうが……、貴女方ならどうにかするのでしょう?」
そうでしたね、副長はアドバイザーとして乗艦しているのでした。動力を持ち、風の向きや強さに影響を受けないこの艦の戦い方、見せてあげましょう。
艦橋の中で、オスカー副長の声が響きます。その声にうなづいてユイが復唱後、艦内放送を流します。
『総員起こし15分前』
今頃各部屋では起床してトイレやシャワーを浴びている頃でしょう。『総員起こし』後は、簡単な個人のベッドの清掃後に、点呼・体操・艦内清掃と続きます。途中でトイレに行ったりすることはできないので、慌ただしい事になりますね。
「マイク、総員起こし5分前」
『総員起こし5分前』
5分前の艦内放送で、再びベッドに入って待機状態となります。『総員起こし』の放送後に着替えなどを行い、短時間で行うことを続ける事によって、緊急時の反応が早くなるんです。
「マイク、総員起こし」
『総員起こし』
この放送をもって、ようやく着替えや点呼などが始まります。点呼後、状況が各班長に連絡され、オスカー副長に連絡がはいります。5分後には全ての班長から、総員異常なしとの報告が入りました。
「クロエ艦長、全艦異常有りません」
僕はうなづくとオスカー副長に連絡します。索敵魔法では、既に10海里(18.52km内に10隻の船が風上である西側より接近中であることが分かっています。時隔(接敵までの時間)は75分ですね。
「副長、全艦に哨戒配備第1を発令」
クイーンアレキサンドリアの哨戒配備第1は、戦闘などの事態が差し迫っていることを示しています。
オスカー副長も予測はしていたのでしょうね。表情を変えずに、うなづいてくれます。
「全艦、哨戒配備第1に移行」
『全艦、哨戒配備第1』
「航空指令、攻撃機の発艦準備」
「了解しました。1、2番機発艦準備」
ワイアットが部下に指示をしているのを横目に、オスカー副長が僕にささやきます。
「やはり来ますか……」
うなづきながら僕は言いにくいことを言い出さなければありません。
「副長、班長以上の士官をブリーフィングルームへ集合させてください」
副長は複雑な顔をしながらも、うなづいてくれました。
*****
「……と言う訳です。現在、レギニータは懲罰房で反省してもらっています」
昨夜の出来事を連絡します。衛生班長であるイリスさんも、顔色は良くないですが、まっすぐこちらを見ています。
「間もなく、航空隊からの報告もあるでしょうが、40門級の武装商船が10隻、風上から接近中です。接敵まで約1時間。お判りでしょうが、こちらから戦端を開くことはできません。
よって、対応を皆さんに相談したいと思います」
「ようは、このまま包囲されるのを待って、相手の先制攻撃をまって応戦するか、そく逃げ出すか、という事ですかな?」
オスカー副長の言葉に僕はうなづきます。戦闘が控えている以上、現段階で衛生班長・副班長を配置から欠く事はできませんので、責任を問う声は上がりません。
「ちっ、あくまでも専守防衛ってところがめんどくさいな。どうせ攻撃してくるんだから、航空隊で先制攻撃を仕掛ければ簡単なのにな」
機関長であるリアンの発言に、航空指令でもあるワイアットもうなづきます。紅家出身の砲雷長からも交戦に対して賛意が示されます。
「正直申し上げて、このままでは航空隊だけが実戦経験を積むだけです。練度の観点だけで申し上げれば、当艦の兵装も使用したいところです」
「損害を考慮しないのであればそれが良いでしょうが、本艦の修理はアレキサンドリア本国でないとできない点も考慮する必要があります」
まぁ、敵の砲がこちらの防御膜を抜くことは無いでしょうけどと、つぶやきながらもユイが反対意見を述べます。戦闘に傾きやすい若い士官を、中立に抑える役目を自覚してくれていますね。
「……衛生科としては、艦外での戦闘行為を行う飛空艇隊や動力艦の作戦参加には、細心の注意を払っていただきたいですわ。
衛生班員が搭乗するわけにはいきませんし、飛空艇・搭乗員の損耗は、今後の活動に大きく影響します。特に航空指令には、飛空艇隊を抑える事をお願いしますわ」
一通りの意見がでると、オスカー副長が僕をみます。副長の意見を僕がうながすと、彼は黒い笑顔を向けて言いました。
「結果的にはレギニータ嬢の思惑に乗ることになりますが、降りかかった火の粉は払わねばならぬでしょう。
それに、本艦を試験航海に出した軍や委員会の意向は示威であり、逃げるのではそれらの意向に反することになります」
はい、結論頂きました。
「では、敢えて敵が包囲するのに任せて、その後包囲を突破、敵を殲滅するという事でよいでしょうか?」
士官の皆さんがうなづくのを確認した後、僕は一言追加して命令を発します。
「航空隊が敵を発見後、直ちに戦闘配備に移ります。敵は40門級の砲艦が中心ですが、魔法攻撃がある可能性を常に考慮してください。特に飛空艇隊は墜落の危険がありますので、安全高度を維持。では、解散」
「「「「「Yes MA'AM!」」」」」
さぁ、海賊退治の第2ラウンドの開始です。
*****
『敵40門級砲艦、西側より接近を確認。全て2本マストで、その数10。フリッグが4、ブリガンティン6』
『海賊旗は確認できるか?』
『現時点で海賊旗の掲揚は確認できません』
こちらの戦力は知られていないでしょうけど、探知通り10隻のようですね。
「どう出ると思います?」
僕は傍らのオスカー副長にたずねてみます。
「そうですな。恐らく2隻で水道の前後を閉鎖し、降伏を迫るでしょう。残り8隻は風上で待機でしょうな。風上のアドバンテージを失いたくないでしょう」
「副長ならどう戦います?」
再度の僕の問いに、副長は肩をすくめて答えました。
「1対10の戦いなど、そもそも成立させないように動きますね。普通なら、圧倒的不利でしょうが……、貴女方ならどうにかするのでしょう?」
そうでしたね、副長はアドバイザーとして乗艦しているのでした。動力を持ち、風の向きや強さに影響を受けないこの艦の戦い方、見せてあげましょう。
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