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2.いつか醒める夢

17.思い出と……

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 いつもと同じメンバーで、今日もお昼中です。僕に懐いてくれているユーリアちゃんは、可愛いですね。といっても、僕の感覚からするとユーリアちゃんは10歳以上に見えるんですが。見た目で年齢判断されると、ユイ≒イリス>>ユーリア>>>>僕なんですよね。ユイが大きく見えるのは、まだ身長が高いからで、それを除くとイリスが一番大人っぽく見えます。エマ、ジェシーはイリスより年上というか、既にお姉さんにしか見えませんし。
 今も可愛いけど2年前のユーリアちゃんはホント天使でしたね。写真に撮って残しておきたい位でしたが、残念ながら少なくてもアレキサンドリアでは、写真は存在していないようです。
 でも、ファロス島の防御要塞内には、監視カメラはあったから、カメラは存在しているはずなんですよね。動画を映せるのだから、写真くらい有りそうですね。もしかすると、役に立たないって廃れた技術なのかもしれませんね。図書室で掘り起こしてみましょう。

 調べてみると、カメラというか、映像を取り出す魔具は比較的簡単な構造で存在するようです。オートマタでも目の役割をしている機構ですもんね。カメラで撮影した映像というか、記録も保管するための魔石を流用した記録結晶というものもあります。
 ここまで出来ているのに、技術的に廃れている理由ですが、記録結晶に保管した映像の取り出し方式が実用的でないらしいですね。記録結晶に保管された内容は、再生することは可能ですが、最初から再生する事しかできません。早送りの出来ないビデオみたいなもので、後に記録した映像を見ようとすると、延々と時間がかかり、実用的ではないと判断されたみたいです。
 ん~、静止画であれば、一枚あたりの容量は決まるでしょうから、何枚目とかのタグ情報を付与してあげれば、特定の情報だけ取り出すことは出来そうですね。あとは、取り出すタグを変数扱いにして、取り出せれば問題は解決できそうです。この辺は、簡単なプログラミングの知識の流用ですね。
 対象の情報を取り出す魔方陣を作成し、取り出すタグの情報を書き換えられるようにします。あとは、記録結晶をセット後、最後のタグを読みとらせて、記録された枚数を表示するようにしてと。表示するタグをセットするダイヤルかタッチ式の数字を入力する機構をつくり、タグを書き換えて実行するようにすれば完成です。
 結局、撮影用のカメラと、再生専用のフォトフレームの2つになってしまいましたが、魔法陣の一部に漢字を使って呪文を圧縮します。これで魔法陣を小さく出来ますので、アルファベッドではありませんが、それなりに文字数があるので、漢字一字で置き換え可能な部分は、漢字にした方が小さく描けます。撮影と再生の両方が一台で出来るようになりました。
 これを、僕とイリス、ユイにユーリアちゃんの分4台の魔道具を作ります。僕のは前世でいえば一眼レフタイプですね。大きいけど収納が有るからかさ張りませんし、高倍率のレンズが取り付けられますから。イリス達の分は簡単にスマホタイプにします。ちょっと撮影したり、撮影した写真を見るには十分なサイズですもんね。

 翌日の昼休みに、イリスと一緒に低年齢クラスに入ると、いました。ユーリアちゃんとユイですね。講義の受講制限が解けたユイは最近はユーリアちゃんと行動を共にしている場合が多いようですよ。

 4人で食事を食べていると、相変わらず周囲に人が居なくなります。まあ、今はかえって都合がいいですね。

 「みんな、今日は面白いもの作ってきたんですよ~。」

 僕がそういうと、イリスが胡散臭げな目で僕をみています。ユイはそんなイリスをとりなしていますし、ユーリアちゃんは相変わらずきらきらした目で僕を見ています。うんうん、ユーリアちゃんは良い子ですね。

 「ちょっと、待ってね。」

 僕はそう言って、3人をそれぞれカメラで写真に収めます。

 「こんなのを作ったんですよ。」

 画面に撮った写真を表示したものをみせて、ボタン操作で映る写真を変えて見ます。

 「なに、これ。監視カメラの技術の流用品?」

 「すごいです。目の前にイリスさんやユーリアちゃんがいるみたいですね。」

 「うわ~、クロエ様こんなものまで作れるんですね。」

 三者三様の驚き方ですが、ユーリアちゃん、様付けはやめてね。僕はスマホタイプのカメラを3人に渡します。

 「はい、みんなの分も作ったからあげるよ。あ、他人に見せられない写真は撮らないほうがいいよ。万が一ってこともあるからね。」

 僕がそういうと、イリスがポツリと呟きます。

 「確かに、太ってる写真は撮れないわね。」

 「いやいや、かえってそれを見返して、絶対太るもんかってなるかも知れないですよ?」

 イリスはその言葉で考え込みますが、やはり太った姿を人に見られるのが嫌なようですね。

 「とりあえず、記録結晶は普通に魔法街で変える奴なんだけど、一度これでとっちゃうと他のカメラでは使えないって事だけ注意してね。」

 「クロエ、これってアレクシアさんに話した? まだなら話しておいたほうがいいわよ、絶対に。これなら、希少植物や生物を無闇に採取してこなくても良くなるし、利用できる分野は多いから。あぁ、うちの母も喜ぶかもしれないわね。そうそう解剖なんてできないし」

 イリスさんの言葉は最もですが、最後の言葉にみんな引いてますよ? まあ、確かに解剖写真は研究には有ったほうがいいのでしょうけど、絶対見たくないなぁ。僕がそう思っていると、ユイもユーリアちゃんも同じ思いのようですね。

 「でも、これで魔都アレキサンドリアはどういう所って、クレナータで友達に聞かれても説明しやすくなります。やっぱり、目で見るものの方がみんなわかってくれますし。」

 うんうん、百聞は一見にしかずって言いますしね。こうして、みんなに使い方とかを説明して、みんなで写真を撮って楽しみました。

*****

 帰宅して課題を済ませた僕は、イリスの忠告に従ってアレクシアさんに報告すべく帰りを待ちます。その間に、エマやジェシーも写真に収めましたし、窓からの風景も撮りました。
 暫らくして、やっとアレクシアさんが帰宅しますが、イリスとリリーさんと一緒に食事をしましょうという事で、二人が来るのを待ちます。
 二人がやって来て4人で和やかに食事をした後、僕がアレクシアさんとリリーさんにカメラとフォトフレームの実機を見せながら、撮影した写真を順に見せて行きます。
 最初はにこやかにしていたアレクシアさんとリリーさんですが、撮影した写真を自由に選んで表示をしたりしていると、顔色が変わります。

 「ちょっと、クロエちゃん。これ貴女が作ったの? これだけしかないのよね?」

 アレクシアさんの問いに、イリス達にもあげた事を説明し、イリスの撮影した写真やスマホ型の実機をみて、さらに表情が険しくなります。

 「クロエちゃん、あとはユイとユーリアちゃんだけね? ホントね?」

 僕とイリスに確認を取ると、夜も更けているというのに僕達から回収したカメラをもって出て行ってしまいました。

 「なにか、まずかったのかな?」

 「だから報告しなさいって言ったでしょ?」

 僕の問いにイリスはドヤ顔で答えます。ちゃんと返してくれるのかが心配になってきましたね。

*****

 翌日の朝、カメラは返してもらいました。何故そうなったかをアレクシアさんに確認します。アレクシアさんとリリーさんが問題としたのは、その再生機(僕がフォトフレームと呼んでいる機構ですね)の大きさが、かなり小さいことと、任意の撮影した映像を取り出すための魔法陣の書き換えの機構が一つです。
 本来、魔法陣は使い捨てのような物ですので、一部を書き換えて再利用するという発想自体が無かった事が大きいようですね。
 当然、これは軍事にも転用が可能であり、動画の方にも時刻をタグ情報として登録すれば、任意の時刻から再生できるようになりますので、その利用価値はかなり高いとのこと。
 最大の問題点は、そのままだと技術のある人であれば、その機構を模倣できてしまうのが大きかったようです。一度僕達からカメラを没収したのも、重要な機構部分に対してアレキサンドリアで最高の暗号化処理をかけ、ブラックボックス化する処理をする為であり、今後は普通に使用してよいとのことです。
 但し、カメラ本体はシリアル番号で管理されているので、廃棄するときは処理が必要とのことと、国外への持ち出しは原則禁止となりました。

 そして、それとは別にアレクシアさんからの相談というか、お願いがありました。この機構を使用したカメラ&再生機の作成&販売を一任して欲しいそうです。
 撮影機構自体は、当面民需ではなく、海軍や冒険者ギルド・医療班などへの販売が主となり、再生部分に関しては国内限定で民間向けに販売しますが、撮影は直営で経営されるお店のみの扱いとなるそうです。依頼があれば出張撮影にも応じるそうです。
 僕達が撮影する分には問題ないそうですが、引き受けると人が殺到するからやめたほうがいいわよと言われます。

 「それじゃ、普通に外で使えないじゃないですか。」

 僕がそう言うと、アレクシアさんがしれっと答えます。

 「貴女達にほいほい近づいて、お願いするような人は居ないわよ。」

 ? 何故でしょう? 別に僕達は普通に皆さんにお話してますが。僕が怪訝な表情を浮かべているのをみて、アレクシアさんが微妙な表情で答えてくれます。

 「もしかして、気付いてなかったの? 貴女達が集まってるときは、周囲で余り人が寄り付かないようにしている人達がいるのよ。主に紅家と青家に連なる学生だけど。イリスちゃんは知ってたから、クロエちゃんも知ってるものだと思ってたわ。」

 なにそれ? 知りませんよそんなこと。じゃあ、お昼を4人で食べているときに余り人を見かけないのもその所為ですか!

 「まあ、気にせず近づくのもいるけどね。あの留学生達とか。他の子はかなり注意しているわよ。実際、ユイ辺りはそろそろ適齢期の入り口だしね。」

 ? 適齢期って、まさか結婚ですか? やけに早くないですか? そんな僕をみて、アレクシアさんはため息をつきながら続けます。

 「12歳で結婚は余りないけどね。成人と共に結婚する娘は結構多いわよ? だから、12歳位から婚約とか、お付き合いのお誘いとかがあるわけ。ユイは一般街に住んでいるのよね。そろそろ引越しを薦めようかしら。まだ、上層街ではユイは元皇女って事が知られているから、積極的にでてる男子はいないけど、これからはアプローチが多くなるでしょうしね。将来的にはユイには学院で符術関連の講義もお願いしたいしね。
 ユーリアちゃんは幼いし、エルフ族だから寿命の違いもあるから、そうそうお誘いするつわものは居ないでしょうけど、中にはそれでも良いって男も居るしね。確か2層に空き家が2件あった筈だから、相談してみましょう。
 貴女とイリスは仮にも次期始祖四家頭首ですからね~。まあ、うちやリリーの処は旦那様になっても別に役得はなにも無いんだけどね。」

 ちょっと、聞いてませんよアレクシアさん。

 「あ、そうそう。新しいお店の宣伝用の写真は、貴女方4人の写真を使いますからね。この件に関しては拒否権はないわよ?」

 絶句する僕を残し、アレクシアさんは嬉々として出かけていきました。クロエちゃんが来てから、おうちの収入が増えて嬉しいわと呟きながら……

 数日後、『四季Four seasons』の隣に、新しいお店『思い出memories』が出来ました。新型の記録結晶再生機の販売と、写真の撮影を行うスタジオです。過去の記録結晶を新型再生機で再生できるようにする変換サービスも行っています。
 今の姿を記録結晶に保管し、何時でも見る事のできる再生機は、お子さんを育てる世代に大うけして、今や人族だけでなく他種族の町や村にまで支店ができるほどの大人気となりました。エルフの里では、おばあさんは昔は美人だったのだと孫達に見せるのがはやっているとか。 
 そこまでなら僕達には問題なかったのですが、『思い出』全てのお店の店頭に、大型の再生機に表示された僕達4人の姿が映されている事がわかり、4人とも笑顔がひきつります。僕はみんなに美味しいお菓子の提供を約束させられてしまいました。
 その後この界隈を、そそくさと隠れる様に小走りで移動する、僕達4人の姿が見かけられるようになりましたとさ。
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