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しおりを挟むお惣菜とレトルトの白米で夕食を済ませ、空いたパックをゴミ箱に捨てると、食卓には奈良先生が繁華街で購入してきたと思しき、ロゴのない白い紙袋が残った。
奈良先生は夕食後すぐにシャワーを浴びにいったので、リビングには私一人だ。
駄目だ、と思いつつも好奇心が湧きあがる。
紙袋はA5サイズくらいで、見た目的には軽そうだ。
「……なんだろ」
そっと覗き込んでみる。紙袋のなかには、さらに白い紙で覆われた何かが入っていた。ずいぶんと梱包がきっちりとしている。
食卓に置いてあるということは、お菓子か何かだろうか。
「なにやってんだ」
「ひゃっ!」
いつの間にか、ドアのところに奈良先生が立っていた。シャワー上がりに服を着るのが嫌なのか、自慢げに腹筋をさらしている。当然だが、ズボンは穿いていた。
奈良先生は私が紙袋を覗き込んでいたことに気づくと、慌てたように紙袋を取り上げた。
「忘れてた。つか、見んな!」
「なんですか、それ」
「アレだ」
「アレ?」
「だから……アレだっつってるだろ」
「もしかして、ビキニですか?」
ほかに考えつかなくて、まさかと思いながらもそっと聞く。奈良先生は気まずそうにどこかそわそわしつつも、頷く。
「たまにな、仕事が早く終わった日に買いに行くんだ」
「わぁ、見せてください」
「ばか、恥じらいを持てって言っただろうが」
とは言うものの、奈良先生はどこか嬉しそうだった。ある種の共犯者のような、同志の目を向けられたといっても過言ではない。
「やっぱり同じ趣味を持つもの同士で見せ合ったりするんですか」
「しねぇよ、こっそり穿いて楽しむだけだ」
ふと思った。肉体を鍛えていることといい、もしかしたら奈良先生は自分自身が好きなのかもしれない。
部屋で一人ビキニを穿き、鏡の前でポージングをする奈良先生――なにそれ、すごくエロい。
「その中身、見たいです!」
私は鼻息荒く、再び頼み込む。
「……そんなに見たいか」
「めっちゃ見たいです!」
「し、仕方ねぇな。こんなもん見せるべきじゃないんだろうけど」
と言い訳を並べつつも、奈良先生は紙袋を開けてくれた。なかの包み紙から出てきたのは、白と黒のゼブラ柄のビキニだった。
しかもなんと、肩にかけるサスペンダー型のビキニだ。つまり、私がビキニのなかで何よりも好きなムタンガと呼ばれる部類である。
思わず興奮して、ビキニを取り上げて電気に翳した。
「なにこれ、全然隠れない!」
なんと布の小さきことか!
布部分全体がポケットにようになっており、これではぎりぎり陰部しか隠せないうえに、隠した部分が強調されてくっきりしてしまう。
エロい。エロすぎる。私が童貞だったら鼻血を噴いているだろう。
「お前が前に好きだっつってただろ。なんとなく、穿いてみたくなって買ってみた」
「穿いたところも見たいです!」
「俺を犯罪者にする気か。そんなことをしたら普通に興奮するだろうが」
「EDでも勃起ってするんですか?」
「ぼっ……ってお前な。……まぁ、する。オナニーとかは、まぁ、大体できる」
言い終えてから、奈良先生は頭を掻いた。照れているらしい。
私の手のなかから、奈良先生はビキニを取り上げて紙袋にしまった。
「終わりだ」
「穿いたところは?」
「機会があればな。言っておくが、EDだからって性欲がないと思うなよ。俺も男なんだから、その辺弁えて接しろ」
つまり、性欲に狂って狼のように私を襲うかもしれないと言いたいのか。正直な感想としては、奈良先生に抱かれてみたい気もした。私は男性経験が現在一人だけなので、ほかの男に抱かれる自分に興味があったのだ。
だが、奈良先生はお姉ちゃんの旦那さんだ。偽装結婚とはいえ、義兄である人とそういう関係になるのはよろしくないだろう。
私は冷静に判断して、物わかりのいい娘を装って大きく頷いた。
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