愛のカタチ

如月あこ

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 琴音が休むようになるのと並行して、お姉ちゃんの仕事も忙しくなった。
 私は学校と自宅を往復する日々の合間に、お姉ちゃんのアパートに寄って片付けや夕食を作ったりしていた。時間の都合上、お姉ちゃんとはなかなか会うことができないけれど、夕食を食べ終えると「おいしかったよ」とメールをくれるので、私は満足である。
 明日に土曜日を控えた今日、金曜日。
 久しぶりに、お姉ちゃんから「一緒にご飯を食べよう」と誘われた。琴音に会えずにふさぎ込んでいた私は、二つ返事で「了解しました!」とメールを返信する。
 メールでのやりとりの末に、私が新居のほうで夕食をつくることに決定した。お姉ちゃんが食べたがっていたカルボナーラを作るのだ。
 私は放課後になると一度自宅に帰宅した。着替えてから意気込んで買い物をすませ、陽が暮れる前に合鍵を使ってお姉ちゃんの新居にお邪魔する。
 むっとした外と変わらない熱気に包まれながら、玄関の隅に靴を脱ぐ。
 エアコンはつけずに窓を全開にすれば、生暖かいが優しい風がリビングいっぱいに駆け抜けた。ぶわりと広がった白いレースのカーテンを見て、前回来たときにはこのカーテンがなかったことに思い至る。
 真っ白な生まれたての赤子だった新居が、どんどん住み心地のいい家になっていく。まるで我が子が育っていくような感慨深さに囚われて、鼻の奥がつんとした。早く立派な成人男性になってください。女性でも可。
 キッチンへ向かった私は、そこにあったものを見て、あんぐりと口をひらいた。
 白い大きな冷蔵庫が、そこにあったのだ。
 思わず中を見てみる。ビール缶が三本入っている以外は何もないが、これはまごうことなき冷蔵庫である。
 冷蔵庫がないと思って保冷用の氷をたくさんもらってきたのだが、必要なかったらしい。私は卵や生クリーム、サラダ用の野菜などを冷蔵庫へ入れて、エコバックを鞄にしまった。
「ふふふ~ん、新しい冷蔵庫ってなんか嬉しい」
 いつの間に購入したのだろうか。お姉ちゃんが買ったのか、それとも奈良先生が買ったのか。二人で買い物に行った可能性もある。
 上機嫌でソファでくつろぎ始めた私は、少し休憩したのち、お風呂場に向かった。
 風呂場を洗っておこうと思ったのだが、脱衣所にあった洗濯物が先に目に飛び込んできた。どれも奈良先生のもので、何度も衣類を着回すお姉ちゃんと違い、一度着た服は洗濯に回すたちだと知る。
 洗濯物の山は、前回の倍ほどあった。明日と明後日でまとめて洗濯するつもりだろうか。これだけの量ならば、一度や二度の洗濯では終わらないだろう。
「……一回分だけでも、回しておこうかな」
 うん、そうしよう。
 勝手にとはいえ、前にも一度洗濯しているし。もしのちのち「触るな」と言われたら、そのときに従えばいいのだ。
 私は手早く洗濯物を洗濯機に入れる。
「おお!」
 そして再び現れたビキニパンツに、またしても声をあげてしまった。今回のものはエメラルドグリーンのビキニだった。後ろ側が紐になっており、穿いたら間違いなくお尻が丸出しになってしまうだろう。もっとも、それがビキニなんだけど。
 そのビキニは痛まないようにちゃんとネットに入れて、洗濯機に入れた。ほかにも探したらビキニが出てきそうだが、生憎洗濯機がいっぱいになったので、発掘作業はおしまいだ。
 洗濯機を回してから、風呂場を洗った。水垢がこびりつかないように、念入りに行う。それも終えると、私はリビングに戻ってソファに寝転がった。
 疲れたのか身体が重く、眠かった。
 うとうとしながら、携帯電話を開く。
 やはり、琴音からの返信はなかった。

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