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5、
1、
しおりを挟む学校から琴音の姿が消えて、四日がすぎだ。
あの彼氏に会いに行ったあと、琴音は自宅に帰って両親に妊娠を打ち明けたらしい。両親は驚き、すぐに中絶する方向で話を始めたという。
それからのことは、私も知らない。
琴音から連絡もこなくなって、学校にも来ていない。
私は今日も、学校が終えると琴音の自宅を訪れた。琴音は実家暮らしで、庭つきの一軒家に住んでいる。
呼び鈴をならすと、すぐに琴音のお母さんが出てきた。
「愛花ちゃん、いらっしゃい。どうぞ、あがって」
琴音のお母さんはおっとりしていて、滅多なことがない限り怒らなそうな人だ。
リビングに通されて、すすめられるがままに食卓の椅子に座った。私の目の前にアイスティーを置くと、琴音のお母さんは琴音を呼びに行った。
これまでならば、リビングではなく直接琴音の部屋に通されていたのに。琴音が学校を休むようになってから、私はリビングでこうして待たされるようになっていた。
そのささやかな違いが堪える。
多分今日も琴音には会えないだろう。そんな予感がした。
しばらくして、琴音のお母さんが戻ってきた。
申し訳なさそうな顔に、予想が当たっていることを悟る。
「ごめんなさいね。琴音、今日も調子が悪くて会えないみたい」
「……そうですか。あの、今日は帰ります。琴音に、いつでも連絡ちょうだいねって伝えておいてください」
「わかったわ、本当にごめんなさいね。来てくれてありがとう」
本当は無理やりにでも会いたかったけれど、琴音が会いたくないというのならばそれに従おう。
琴音の家を出て、玄関の門から二階の窓をふり仰いだ。
桃色のカーテンが閉め切られているあの部屋に、琴音がいる。
「……琴音、今、どういう状況なの?」
本当に体調が悪いのか、また、体調が悪いのならばその理由は一体なんなのか。それとも精神的に参っており、臥せっているのか。
なにもわからない。ただ、妊娠の件が関係していることは確かなのだろう。
私は琴音にメールした。
「またくるね」と。
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