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4、
5、
しおりを挟む衣類乾燥機が止まり、なかの衣類を一つずつ畳んでいく。何度見てもセクシィなパンツを隠すように衣類のあいだに挟み、畳み終えて山のようになった衣類を洗濯機の隣に置いた。
リビングに戻ると、お姉ちゃんがソファでうとうとしていた。
「そういえば、今日は旦那さんここに帰ってこないの?」
「ん、ああ。昨日聞いたんだけど、もうここで暮らしてるみたい。もともと、あいつの病院が近いって理由でこの家を選んだから、通勤に便利なんだって」
「ふぅん。じゃあ今日は遅いね、旦那さん」
「いろいろあるんでしょ、まだ若いんだから仕事だけじゃないわよ」
「歳いくつなの?」
「二十八歳」
「結構歳が離れてるんだね。高校のOBだっけ」
「そう。あたしが憧れてた先輩が片想いしてた相手。……思い出すと悔しいわ」
お姉ちゃんの高校時代を私はよく知らない。当時の私はまだ小学生であり、伸二さんに引き取られて間もないころだったので、自分の生活で精一杯だったのだ。
「ねぇ、高校時代のお姉ちゃんってどんなふうだったの?」
「荒れてたわねぇ。思春期の塊みたいで、目につくもの全部敵に回してさ。そのくせに思い通りにならなかったからすぐに切れて、馬鹿みたいに騒いで。結構ね、孤立してたのよ」
「……そう、なんだ」
私の前ではいつだって優しいお姉ちゃんなのに、そんな時代があったなんて。
ふと疑問に思って、それを口にだして問うてみた。
「旦那さんとはどこで知り合ったの?」
「奈良と?」
「うん」
どうやら旦那になる人を名字で呼んでいるらしい、とこのときはじめて知った。お姉ちゃんは思考に耽るように遠くを見て、ソファに凭れると足を組んだ。
「部活の打ち上げよ。あたしが高校一年生のときに、その憧れてた先輩が連れてきたの。嫉妬しかなかったから、よく覚えてるわ」
「お姉ちゃんの憧れてた先輩って、女のひと?」
「もちのろんよ。美人じゃなかったけどすっごく気さくで明るくて、大好きだったの。はぁ、奈良のどこがよかったんだろ。顔だけの男なのに」
酷い言いようである。少なくとも医者という職業をやっているのだから、頭もいいんじゃないの? と言おうとして止めた。何も私まで、奈良先生を知った気になって貶める発言をすることはない。
「あ、もうこんな時間なのね」
お姉ちゃんが携帯電話の時計を見て、驚いた顔をした。
「愛花、今日はここで泊まっていきなさいよ。もう遅いから」
「ううん、帰るよ。今日ね、伸二さんの帰宅が遅い日なの。だから今からでも帰ってお風呂沸かしておかなきゃ。ごはんは食べてくるって言ってたから、大丈夫だけど」
「そう、じゃあ駅まで送ってあげる」
「いいよ! お姉ちゃん、明日も仕事でしょ? ゆっくり休んでよ」
お姉ちゃんは、「じゃあマンションの下まで送ってあげる」と言って微笑んだ。私はそれを甘んじて受けることにして、そっとお姉ちゃんの新居を後にした。
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