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4、
3、
しおりを挟むファミレスを出た琴音は、ただやみくもに走っていた。
「待って、走っちゃ駄目だよ!」
私はあとを追う。
やがて琴音は、小さな公園の砂場の上で立ち止り、しゃがみこんだ。私はぎょっとして、琴音の背中をさすりながら傍にしゃがむ。
「どうしたの、どこか辛いの?」
琴音は鼻をすすると、唇を噛みしめた。
ぽろぽろと涙がこぼれ落ち、スカートを濡らしていく。
「あたし、馬鹿みたい」
膝のうえで握りしめられた琴音の拳が、小刻みに震えていた。
「もしかしたら、あっくんと結婚できるかもって、お母さんになれるかもって、思ってた。馬鹿だよ。子どもが出来たのはあたしのせいなのに、それをあっくんに押しつけようとしてた」
「そんなことないよ。あれは、あっくんがおかしいんだよ。子どもは二人の問題でしょ?」
「……愛花はいつだって本当のこと言ってくれるよね。嘘つかない性格なの、知ってるよ。ねぇ、愛花。愛花は、あたしがお母さんになれると思ってた?」
じっと琴音は私を見つめてくる。
愛花が母親になれるかどうかと問われれば――是とは言いずらい。
あっくんが言っていたように琴音は自分のことで手いっぱいなところがあるし、子どもっぽく無邪気といえば聞こえはいいが、常識や社会性を知らないところもあった。
琴音はいつか母親になるだろう。けれど、今、高校二年生の琴音がこのまま母親になれるかどうかなど、愛花にはわからない。
「……わからないよ」
正直に答えた。
琴音は唇を噛みしめると、鼻をすすり、立ち上がる。
「帰る」
「私、送ってくよ」
「……いい」
「でも、一人じゃ危ない――」
「いいってば!」
琴音の怒鳴り声など、初めて聞いた気がした。
しっかりとした足取りで琴音は歩き出す。完全なる拒絶を背中に感じて、私はその場から動くことが出来なかった。
「じゃ、じゃあ、帰ったら無事帰ったってメールして!」
やっとの思いで叫ぶけれど、琴音は何も言わずに公園から去って行った。
琴音の姿が見えなくなっても、私は砂場の上で立ち尽くしていた。
そんな私が我に返ったのは、聞き慣れたメール音が携帯電話から鳴ったからだ。もしかしたら琴音からかもしれない、と慌てて携帯電話を見るが、差出人はお姉ちゃんだった。
――『これから新居にこれる? 一緒に夕食食べない?』
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